前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい

夜鳥すぱり

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38 痛み

 パチリと目を覚ました、ここはラクロア様のお部屋。どうやら僕は、あのまま気を失って、ラクロア様にここに運ばれたみたい。

ベットの上にはラクロア様はいない。部屋にも気配はない。窓の外を見ると真っ暗。何時かしら?

喉がかわいたから、テーブルの上にあるお水を飲もうとベットから降りようとした、身体に力を入れた瞬間に悲鳴を上げる。

「ひっ、いっ」

身体中痛い。なにこれ、僕、走りすぎて病気になっちゃったのかな。

「いててて、うう、何であちこち痛いの」

のそのそと、年老いた老人のように、ぷるぷるしながらテーブルに近づき、水を飲んだ。喉が潤って乾きが満たされたが、身体の痛みはひかない。

ラクロア様はまだ帰らないのかな、メルもいないし、トマスさんもいない。屋敷自体が寝てるみたいにシーーンと静まり返っている。

あれから、王宮はどうなったんだろう?

誰かに聞きたいけど、部屋のドアが遠く感じる。痛みを我慢して、1歩、1歩とドアに近づいて、開けるのもまた苦労した。ドア重いの。

必死に開けたら、ぐいっと逆に押されて、転げそうになった。

「ひゃわぁ」
「ニャリス、どうした」

僕を片手で軽々と抱き止めてくれたのは、ラクロア様だった。真っ白な礼服はもう着てない。なんだか、それがちょっぴりさびしかった。

「ラクロアさまぁ」
「目が覚めて誰も居なかったから不安に思ったのか?外にはちゃんと護衛の騎士がいるし、メルとトマスもさっきまでいたんだ、俺が休むように言ったから」
「んんっ、いいの、ラクロア様がいれば」

むぎゅうっと、しがみついてたら、ひょいっと抱き上げられた。

「痛むところは無いか?」
「……全部」
「え?どこだ、怪我をしていたのか」

ラクロア様はあせあせと、僕を急いでベットへ運び寝かせた。

「身体中痛いの、動くだけで、何もかも痛いの、ラクロア様、僕、死んじゃう?」
「なんだって!?いま、医師を連れてくるから、待つんだ、ニャリス、すぐもどるから、待てるな」

ラクロア様が真っ青になって、部屋から飛び出ていった。

たぶん、偉いであろう医師さまが、ラクロア様にぐいぐい引っ張られて入ってきた。

「ニャリス、大丈夫か、先生はやく、見てください、全身が痛いと言うんです、全身が痛いなんて、そんなつらいこと、こんな小さな身体で、先生っ」

「解ってます、いま、見てますから、落ち着きなさい」

ラクロア様にせかされながら、医師さまは、僕の身体を丹念にみてくれた。

「ここは痛みますか?」
「痛い」
「ここは?」
「痛い」
「曲げれますか?痛みは?」
「痛い」
「アアァァァァ、全部痛いじゃないか」

「落ち着いて下さい、こちらは?」
「痛い」

「解りました」

先生が、もはや、顔色は青を通り越して白くなりかけたラクロア様をみた。

「筋肉痛です」
「は?」
「筋肉痛って、怖い病気ですか」

僕は涙目になった、だって、筋肉が痛い病気なんて、怖すぎるよ、治るの?

ラクロア様がまだ不安げに、先生の肩を掴む。

「子供でも筋肉痛になるんですか!?」
「なります……もう少し運動させるべきです」
「子供でもなる病気!!」

ガタガタ震える僕の頭をラクロア様が優しく撫でる。

「大丈夫、怖くない、治るし、病気というほどの病気ではない」
「ほんとぅ?」
「もっと運動するべきです、ラクロア様、甘やかすのは良くありませんぞ」
「……うむ」

先生が、冷静な一言を呟き、やれやれと部屋を出ていく。

「ラクロア様?」
「今度、剣の稽古でもしてみるか?馬にも乗り方を教える、水泳は……」
「嫌なの」
「だな、うん、まぁ、今はゆっくり休まなきゃな、痛みは明日には楽になる、もう寝なさい」

よしよしと、撫でられて、ようやく安心して瞳を閉じた。

「ラクロア様、次起きたらそばにいてね」
「あぁ、約束だ」

優しい手にすりすりして僕は再び眠りについた。


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