胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

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第二章

46 夏休みの企画

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無事に追試回避という大きな壁を乗り越えた鉄堅と葉月は、恋人になって初めての夏休みを、共に過ごすことを選んだ。


本来なら鉄堅は塾へ勉強に。葉月はロイへバイトに行くはずだったが、話し合って、一年の夏休みはゆっくりと二人で過ごすことにしたのだ。

「鉄堅は、どこ行きたい?海とか行きたい?」
「葉月ちゃんと海!?」

海と云えば、水着、水着といえば、半裸。却下である。葉月の麗らかな半裸を誰が他の人間に見せるものか。

「海は……ちょっと」
「そうだな、お前はどっちかっていうと山派ぽいもんな」
「葉月ちゃんと山!?」

山と云えば、山小屋、狭い空間で葉月ちゃんと過ごす甘い夜……星空を見上げて、二人で過ごすロマンチックな夜。

「山にしよう」
「やっぱ、山派だったか、お前、木とか鳥とか好きそうだもんな」

木も、鳥も特に好きという訳ではなかったが、大丈夫、何を聞かれても答えられるくらい今から勉強する。

「山菜料理とか美味しいかなぁ」

デートスポットの雑誌をペラペラと、めくりながら、葉月が呟く。その様子をじっと見詰めて、鉄堅は、ドキドキが止められなかった。

小さい頃から好きで、大好きだった人が、自分とお出かけのプランを立てている。

こんな贅沢が夏休みは毎日のように続くのだ。夏休み万歳。

「青春18きっぷとか買ってさ、二人で電車乗れるだけ乗って遠くまで行ってみたいよな、何処まで行けるかな」
「何処まででもついていくよ」
「いやまぁ、9時間くらいが限界かな……関西方面なら名古屋とか、京都?朝イチでさ」
「なんて夢みたいな話なんだろう、葉月ちゃんと朝イチで9時間も電車に乗れるなんて、考えただけで胸が一杯だよ」
「……いちいち大袈裟なんだよ」

葉月が、鉄堅に突っ込むと、鉄堅はへにゃりと、しまりの無い顔で照れ笑いをする。嬉しくて嬉しくて気が狂いそう。

「恋人って、凄いね……こんなに幸福で幸せで僕はこの先、葉月ちゃんが居なくなったらもう本当に絶望で溶けて消えてしまうと思う」
「塩をかけたナメクジじゃ有るまいし、人は溶けねぇよ、気持ち悪いな」

ナメクジを想像してしまって、葉月は眉根を寄せた。うう、気持ち悪い。ヌメヌメしたの嫌いなんだよな。

「で、どーすんの、早く決めちゃおうぜ、キャンプとかも良いけど、お前んちキャンプセットとかある?」
「葉月ちゃんとキャンプ!?」

二人で光るランタンを見つめながら、テントの中で眠るのを想像して、鉄堅は頭に血が上りすぎてクラクラした。なんと云う幸せの暴挙。

「川遊びとかも楽しそうだもんな、魚とか捕まえたり」
「はぁ、もう妄想が追い付かない、現実を受け止めきれない」
「しっかりしろよ、2人で決めてるんだから」
「葉月ちゃんが決めて、葉月ちゃんとなら僕はもうどこだって天国だよ」
「エーーもぅ、頼りにならねぇな」

葉月の、頼りにならない発言に、ハッとして、鉄堅は姿勢を正した。

「まって、旅費とか交通手段とかは僕が計算します」
「うん、そーしろ。青春18きっぷは買うとして、5枚綴りだから、いっそ2セット買ってさ」

「まって、葉月ちゃん学割を使って大阪方面なら普通片道キップでも特かもしれない」
「え?どゆこと」

「JRの場合、営業キロが101キロ以上で、後戻りしない限り何回でも乗車券の区間内の途中下車が可能なんだ、しかも営業キロ(km)が101キロ以上200キロで有効期間が2日間に延びるから、それ以降は200キロ毎に有効期間が1日ずつ増える仕組みで……」
「え?え?」

ちょっと葉月が頭に疑問符を浮かべ始めたので、鉄堅は、噛み砕いた。

「つまり、東京駅から大阪駅までのキップを買うと、4日間使えるってこと」
「え!?スゲー」

「青春18きっぷみたいに、あっちこっち戻ったり路線変えたりはできないけど」
「えーーそんなん、迷うじゃん、わーーどうしよう」
「だね、迷うね」

うーん、うーんと唸りながら考えてる葉月を、最高に愛おしいと思いながら、鉄堅はこの幸せがいつまでもいつまでも続くことを願った。なんて、幸せで幸福な……恋人の時間なんだろう。
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