辺境の地へ飛ばされたオメガ軍医は、最強将軍に溺愛される

夜鳥すぱり

文字の大きさ
9 / 66

9

負傷者を除く、騎士と、もともとこのオアシスに滞在しいた兵士達の代表が、軍義を開くことになった。

オアシスの兵士達は、リュカを一目みると、おおっと誰もが歓喜の声を上げた。

「なんと、リュカ様がいらっしゃるなんて」
「リザードベアが来ると聞いたときは生きた心地がしなかったが、なんだ、良かった」
「リュカ様がいらっしゃるなら安心して戦える」

古参兵士達がざわざわと会話するのを、新人騎士達は頭に?マークを付けて様子を伺っている。そりゃそうなるわなと、モーガン団長だけが理由を解っていた。

不思議そうな顔をして新人騎士達は、隣の者同士、知識を確認するように質問をし合っている。

「なぁ、リュカって、あの怖い人だよな、いつもカリル医師にくっついてる」
「あ、ぁぁ、なんか、有名な人なのか?おまえ知ってる?」
「いや、そういや、あの人は元々この部隊には居なくて、カリル公爵令嬢が連れてきたとかきいたぞ」

「まじで、それって、銀の女豹だっけ」
「ばか、銀狐だよ、それ本人に聞かれたやつ、ボコボコにされたから気を付けろよ」

「だいたい、あの人は先生のなんなんだよ」

ゼクスが、ぼそっと、隣の負傷者に聞いた。聞かれた負傷者は、さぁと首を傾げたが、その隣の男が答えた。

「守護を任されてるって、俺は聞いたけど」
「守護をねぇ、まぁ、医者は貴重だもんな、でもさ、あの人はそんな護衛とか生ちょろい騎士とは訳が違うぞ、なんかこう、殺戮者みたいな感じだし」

「まぁ、カリル公爵家の護衛だし、普通とは違うさ、良いよな身分が高いって」

ゼクスは、隣の負傷者にどすっと蹴りをいれた。

「イテッ!!おい、何すんだよ」
「お前の手当てをしてくれたのは、先生だろ、身分とか言うなよ、あの人は、凄い人だったよ」

「ちぇ、そりゃまぁ、丁寧で優しかったけどさ」

足をさすさすと、さすりながら、新人騎士は、頬を膨らませた。

「身分とか、努力に関係ねぇよ、あの先生は、俺らの事全員の名前や経歴や、アレルギー、所属先まで覚えてるんだぜ、お前、全員の名前と顔解るのかよ」

「え?全員の?そんなの、無理だろ」

「お前の名前、先生は呼ばなかったのか?」

ゼクスが、そう、新人騎士に尋ねると、新人騎士は少し間を置いてから、ふるふると頭を振った。

「目が合った瞬間に呼ばれた、俺てっきり、誰かに聞いたんだと思ってた」

「覚えてるんだよあの人、それって、凄いことだろ?俺にはできないよ」

「そう……だな、あぁ、俺にもできない、精々が自分の部隊の奴らの名前くらいだ、しかもフルネームとか全然知らんし」

新人騎士は、ショボッと、下を向いた。偏見で、思ったことを直ぐ口に出したことを恥じた様だった。

「俺らは、今回戦いに参加出来ないけど、もしも、あの人……リズ·カリル医師が危険になった時は、護ろうぜ、凄い人だと思う」

ゼクスがそう言うと、隣の騎士は今度は素直に頷いた。

「あぁ、そうだな、で、お前の名前は?」

「バーカ、俺はゼクスだよ、お前は?」

「お前もバカじゃねーか、俺はライカだよ」

ライカはそう言うと、軽くゼクスの足を蹴った。バカは名前も覚えてないよななんて言いながら。自分達の情報を全部覚えてるリズをやっぱり凄いなと誉め称えた。


◇◇◇◇

軍義に参加したのは、団長であるモーガン、副団長ホフマン、オアシス駐在兵士長のガンダッド、オアシスの管理者ドリカ、商人代表バスラン、そしてリュカだった。

副団長のホフマンが疑問に思うのは、リュカが軍義室へはいってきて直ぐに、モーガンよりも上位の位置に着いた事だった。

「おぃ、おまえ……」
「良いんだ、ホフマン」

ホフマンが、リュカを注意して下がらせようとした時、モーガンは首を振った。

「リュカ将軍にこの軍義を仕切って頂く」
「将軍?え?」

リュカは、当然のように頷いて、机の上に地図を広げ、オアシスを指した。

「昨日の部隊の経路から判断してリザードベアは、おそらく、オアシスの南ここら辺の岩場を巣にしているはずだ、商人のバスランなら知っていた情報だろう?」

名指しされ、商人代表のバスランが答える。

「はい、勿論です、我らはここら辺の岩場には近付きません、リザードベアの巣があることは共有されております、ただ、この岩場の近くに生える苔が良い薬草でして、中には無理をして近付く者もなきにしもあらずということで」

「では、昨晩、誰かがベアを刺激した情報でもあるのか?」

バスランがおお汗をかきながら、滅相もないと首を振る。商人だって命が惜しい。砂漠で貴重な薬草があるからといって、リザードベアの巣に近づくなんて馬鹿げている。

そこで、オアシスの管理者ドリカが重い口を開く。

「実は、その苔を欲しがる子供がいまして、我々は誰もが取り合わずにいたのですが、自分の母の病を治すために岩場に向かったのを見たと申す者がおりまして」

「そうか、その子は帰ってきたのか」

「いいえ、帰っておりません」

恐らくは、その子はもうリザードベアに命を奪われたのだろうと、沈痛な表情でドリカは下を向いた。

リュカは、しばらく考えていたが、ドリカを鋭く見つめた。

「生け贄を出していたのか」
「あっ……そ、それは、生け贄というわけでは、くっ、しかし、オアシスを守るにはやもえない事でございました」

ドリカが、ずざっと、土下座をした。リュカは冷たい瞳でドリカを見据える。つまりは、オアシスを守るために母を想う子に苔の情報をわざと流したのかもしれない。下衆な話だ。

「リザードベアが岩場を巣にしたのはいつからだ、なぜ軍に報告をしない」

「ここ、二年程の事です、何処からか流れてきたリザードベアがいつのまにか、増えて」

「オアシスへ来るようになったのは何時からだ」

「ここ、2ヶ月でございます、やつらどんどん数が増えてもはや」

「兵士長は知っていたか?」

急に話を振られ、兵士長ガンダッドは、ブンブンと頭をふった。

「私はここへ赴任してまだ1ヶ月です、前の兵士長は亡くなって……まさか」

兵士長達はリザードベアを自分達だけで何とかしようとしたのかもしれない。もしくは、リザードベアの肉は高く売れるし、心臓や爪の全てが高価な薬剤にもなる。

サァッと、皆の顔色が青ざめていくなか、リュカは、バンッと、机を叩いた。

ビクッとそこに居たもの全てが、震え上がった。リュカの鬼のような気迫に誰もが萎縮している。

「これは、必然に起きた事故だ、解るな」

「はぃ」

「では、これより、リザードベア殲滅の作戦を立てる、モーガン、騎馬に乗れる者は何名いる」

「は、私とホフマン含め40名程は」

「では、騎馬に乗りながら戦える者は?」

「乗りながら……お、おそらく14名程かと」

馬の名手として、新人の中でも数名は片手で操れる者がいた。だが、果たして戦えるとなると、モーガンやホフマンでも怪しい、しかもここは足場の悪い砂漠だ。

「そうか、なら、今すぐにその14名を連れてこい」

「はっ」

モーガンと、ホフマンが、慌てて部屋から飛び出し、騎士に召集をかけた。

あなたにおすすめの小説

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます

ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。 しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。 ——このままじゃ、王太子に処刑される。 前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。 中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。 囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。 ところが動くほど状況は悪化していく。 レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、 カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、 隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。 しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。 周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり—— 自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。 誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う—— ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】末っ子オメガ

鉾田 ほこ
BL
「晴にいさま、大好き」 アルファばかりのエリート一家の四人兄弟の末っ子に生まれた 亜季。 思春期の第二性検査を受けるまで、誰もがアルファだと信じて疑っていなかったが、結果は「オメガ」だった。確かに他の息子たちに比べて、身体も小さく、性格もおっとりしていた末っ子オメガ。親戚を含めてアルファばかりで、オメガがいないゆえに扱いがわからない。 だが、はじめは家族の誰一人として末っ子がオメガであることを疎むことなく可愛がっていた。 ある日、転機が訪れる── 末っ子オメガに発情期(ヒート)が訪れ、事故が起こってしまう。それを理由に亜季はひとり家族と離れて暮らすことになった。 そして末っ子は──男娼になって……長男 晴臣と再会する。 すれ違いオメガバース。

偽りベータの宮廷薬師は、氷の宰相に匂いを嗅がれ溺愛される

水凪しおん
BL
「お前の匂いがないと、私は息ができない」 宮廷薬師のルチアーノは、オメガであることを隠し、自作の抑制薬でベータと偽って生きてきた。 しかしある日、冷徹無比と恐れられる「氷の宰相」アレクセイにその秘密がバレてしまう。 処刑を覚悟したルチアーノだったが、アレクセイが求めたのは、ルチアーノの身体から香る「匂い」だった!? 強すぎる能力ゆえに感覚過敏に苦しむ宰相と、彼の唯一の安らぎとなった薬師。 秘密の共有から始まる、契約と執着のオメガバース・ロマンス!

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

回帰したシリルの見る夢は

riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。 しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。 嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。 執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語! 執着アルファ×回帰オメガ 本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけます。 物語お楽しみいただけたら幸いです。 *** 2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました! 応援してくれた皆様のお陰です。 ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!! ☆☆☆ 2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!! 応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。