辺境の地へ飛ばされたオメガ軍医は、最強将軍に溺愛される

夜鳥すぱり

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 リュカの手紙をまた、胸にしまって、リズは空を見上げていた。すると、不思議なことに、赤い球みたいな光が一本ぴゅいっと空をかけて行くのが見えた。

「ん?なんだろ」

眼をゴシゴシこすって、よく見ようとすると、遥か先の丘陵に人影が見えるような気がする。リズは、ドキンっとして、胸をおさえた。

その時、塔の中から、女性騎士達の悲鳴が聞こえた。

「何事だ!!」
「塔を開けろ!!」
「だめです、扉が開きません
「なんだと!!壊していいから開けるんだ」
「はいっ」

騒ぎ出した兵士たち、リズは丘陵の人影をじいっと見つめていた。何かが起こっている。あの人たちはいったい何だ?ゼクスはリズを探していた、有事の際は自分が守るようにと、モーガン隊長から指示をうけているし、なにより、ゼクス個人としてもリズを守ってあげたかった。騒ぎのなか、ゼクスがリズをみつけたのは、塔の入り口の反対側だった。


「先生、ここに居たのか、ちょっとうろうろしないでくださいよ」
「ゼクスさん、あっち、ほら、あそこ見て下さい人が!!」
「え?人?どこ」
「ほら、あっちの丘陵の」

指をさす方向にはもう人はいなかった。二人で丘陵をみつめていると、塔の扉を破るために、ゴーーン、ゴーーンと木を打ち付ける音と、その振動で塔がぽろぽろと、崩れはじめ、危ないと、叫び声、悲鳴が、新人騎士達の混乱を煽った。

ようやく扉が開き、騎士が中に入ろうとしたとき、ゴオオオオオオと突然火の手が上がって、塔が燃えだした。

「なんてことだ、救助をいそげ」
「無暗に中へはいるな」

「どうなってるんだ、無事なのか」
「はやくしろ!!」

様々な怒号がとびかい、リズは先ほどの人影のことが気になってしかたなくて、燃える塔、から離れ、丘陵へと走った。

「ちょ、先生!!なにして」
「ゼクスさん、あそこまで行きましょう」

「だめだって、今は動くな」

リズはゼクスが止めるのも聞かず、全力で走った。丘陵の高みを超えると、その遥か先に、小さな井戸みたいなものがあって、その周りには、無数の足跡、そして遥か先に馬のいななき。

「これは……もしかして」
「ちょっとまった、中になんて入らないで!!いったん、報告をしてこよう、あんたと俺だけじゃ、無理だって」

「何が無理なんだい?」

井戸の中から男の声が聞こえ、はっとして、リズとゼクスが後ずさると、井戸から三人の男が出てきた。

「こりゃぁ、珍しい、こいつオメガだぜ」
「ほう」
「予定と違うがこいつもさらうか」

三人がリズに手を伸ばして、しかし、その手をゼクスが払いのけた。

「あんたら、この一件の犯人だな」
「にぃちゃん、勇ましいのは褒めてやるが、多勢に無勢って言葉を知ってるか」

 一人の男が、剣を取り出し、ぱんぱんっと威嚇するように、砂をうちつけた、視界の端で、ゼクスをみると、なんとゼクスは武器をもっていなかった。

「ぜ、ゼクスさん、逃げましょう」
「無理っぽいですね」

「せぃか~~い、お前はここで死ぬんだよ」

それが合図に、男が、ゼクスに襲い掛かった、ゼクスはひょいっと身をかわしたが、背後から違う男に羽交い締めにされ、リズは助けようとするが、逆にもう一人につかまってしまった。

「男前のにいさん、解るだろ?おとなしくしないと、このオメガちゃんが傷つくぜ」
「それは、勘弁してほしいな、連れてくなら俺をつれていけよ、俺はドラクロン王国の皇子だぜ」

「なんだって?はぁん、確かに紫の髪に紫の瞳か、ふ~~ん」
「どうする?」
「こいつを縛れ、はやくしろ」
「連れてくのか?」

「いや」

男はゼクスを縛ると、ガンンッと思いっきり殴りつけ、ゼクスががくっと気を失うと、その体を井戸へ頬り投げた。

「ゼクスさんっ!!」

「お前もおとなしくしな」

何か薬をかがされ、リズは意識が遠のいていくのを感じた。ここで寝たらだめだと、本能は叫んでいたが、動かなくなった体を、男たちは、まるで荷物のように担ぎ、その場を後にした。









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