日常

さくら

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1月

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1月。白い息が雲1つない青空に浮かぶ。今日からまた新たな1年が始まる。あっという間な1年だったな。
私、安住 茜。今は高校も冬休み。お正月だからといって特別やることもなく、家でごろごろしていると、母に「初詣でも行ってきたら?」と言われて、外に出た。思ってたより寒い。マフラーに顔を埋めた。友達のみっちゃんでも誘えば良かったなーと内心思いながら10分ほど歩くと、昔から初詣によく来た小さな神社に着いた。人はまばらにしかいない。お参りを済ませて、並べてある御守りを眺めていると、おみくじがふと目に入った。せっかく来たし、引いてみるか。お金を支払い、からからとおみくじ筒を左右に振る。すると隣から声が聞こえた。
「おみくじ1回。」
そう言ってお金を巫女さんに渡した男の顔に見覚えがあった。
「あれ、茜じゃん。お前も初詣?」
幼なじみの燈哉だった。家が近所で幼稚園からの付き合いだ。新年早々にこいつの顔を見るとは。
「…そうですけど。そっちも?」
「そうそう。家でのんびりしてようかと思ったのに、初詣でも行ってこいって母さんに言われて。弟の受験の御守り買ってこいってさ。」
同じ理由かい。派手にがらがらと音をたてながらおみくじ筒を振る燈哉を横目に、私はおみくじ棒を引いた。書かれた番号を巫女さんに見せる。おみくじを渡された。
「せーので見ようぜ。俺もお前も去年小吉だったろ?俺は今年は大吉引くぜ。絶対大吉な気がする。」
そう言いながら燈哉もおみくじを受け取る。そういえば去年もふらふらと初詣に来た時に、燈哉に会った。そこで今日みたいにおみくじ引いたんだっけ。1年長いと思ってたけど、いざ思い出すとあっという間だ。確かこいつは去年も同じようなこと言って小吉引いてたな。そんなことを思いながらふっと笑ってせーのでおみくじを開いた。

「やっぱ持ってるな、俺。」
満足げな表情の燈哉は宣言通りに大吉を引いた。まじか。私は吉だった。小吉よりは良いし、去年よりはいい年になることを願おう。学校のこと、近所のことなど他愛ない話をしながら家を目指す。なんだか去年と代わり映えのない今年のスタートだ。まあ、それもまたいいかな。変化することに対してはストレスを感じやすい。いつも通り、今まで通りが私にとってはいいのかもしれない。家が見えてきた。一歩手前の曲がり角が燈哉の家との分かれ道だ。角で止まり、「じゃあ。」と手をあげる燈哉に向き直る。この景色がいつまで見れるだろうか。わからないけれど、私は変わらない今の時間を大切にしていこう。笑顔で燈哉の顔を見上げた。新年の挨拶がまだだった。お互い言おうとしてた言葉がハモった。

「「明けましておめでとう。」」
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