殿下、それは求愛ではなく監禁では?〜王太子の執着愛から逃げたいのに、なぜか心が揺らぐのですが?〜

のち

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そしてあなたに囚われる



 解放された手首を見つめながら、リリアは息を呑んだ。

(自由になった……はず、なのに……)

 エドワードは確かに手錠を外してくれた。
 もう彼女を拘束するものは何もない。

 なのに——

「……リリア?」

 静かに名を呼ばれ、肩が震えた。
 ゆっくりと伸ばされたエドワードの指先が、そっと頬に触れる。
 その瞬間、心臓が跳ね上がった。
 熱を持った彼の手のひらが、指先が、たしかに彼女の肌を撫でている。
 それなのに、まるで触れられた部分から体温が吸い取られるように感じた。

「……もう、僕から逃げない?」

 まるで確かめるように、そっと囁かれる。

(……私は……)

 逃げなければならない。
 自由になったのだから、この場を離れなければ。

 でも——

「っ……」

 エドワードの指が、頬を撫でる。
 優しくて、切なくて、胸が痛くなるほど甘やかな仕草。
 触れられているだけなのに、心がひどく揺さぶられる。
 もう、分かってしまった。

(私……この人に……)

 最初はただ振り回されていただけだった。
 強引で、支配的で、圧倒的な存在。
 逃げなければならないと思っていたのに——
 気づけば、心が抗えなくなっていた。

「リリア……」

 彼の顔が近づく。
 呼吸が混ざり合うほどの距離で、彼の視線が唇へと降りていくのが分かった。
 吐息が絡む。

(……くる……)

 リリアが思考するよりも早く、彼の唇が重なった。
 最初はそっと触れるだけ。
 けれど、それはすぐに熱を帯びたものへと変わる。

「ん……っ……」

 柔らかく啄まれ、次第にその動きは深くなる。
 リリアが逃げようとすれば、逃がすまいとエドワードの腕が絡みつく。
 腰を引こうとすれば、背中に回された腕が彼女を抱き寄せた。
 唇が開かれる。
 そこへ迷いなく、彼の舌が入り込んできた。

「ん……ふ……っ」

 ぬるりと絡みつく熱。
 舌の動きに合わせて、リリアの思考が白く染められていく。
 抗おうとしても、甘く吸われ、深く舌を絡め取られるたびに、指先の力が抜けていく。

 ——もう、抗うことなどできなかった。

「……っは、……」

 ようやく唇が離れる。
 けれど、エドワードはすぐに耳元に唇を寄せ、低く囁いた。

「ずっと、僕のそばにいて」

 その言葉に、リリアは静かに瞳を閉じた。
 逃げなくていい。
 もう、抗わなくていい。

 彼の腕の中が、こんなにも心地いいのだから——。

「……はい」

 小さく、けれど確かに紡がれた返事に、エドワードは満足げに微笑む。
 再び、彼の唇が降りてくる。
 今度は最初から深く、絡みつくような口づけ。
 まるで、お互いのすべてを確かめ合うように。
 エドワードの舌が、何度もリリアを味わうように絡みつき、彼女の息を奪っていく。
 熱に浮かされたように、リリアもまた、彼に縋るように唇を開く。
 唇が触れ、離れ、また触れる。

 息をする間さえ惜しむように、何度も、何度でも——。

 どちらからともなく求め合い、二人の影は重なり合う。
 静寂の中、ただ、甘く濃厚な口づけの音だけが響いていた。



 
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