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第一章 出会い編
閑話 side:ロイド〜父の焦りと葛藤②〜
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なんて事を言ってしまったのだろう。
そんな言葉を浴びせられても、娘は、シェイラは、泣かなかった。
大きなアメジストと琥珀のオッドアイは今にも溢れんばかりに潤んでいたにも関わらず。小さな桜色の唇は噛み切らんばかりに力が入っているにも関わらず。
何かに耐えるかのように、じっと。
たった6歳になったばかりの娘が。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(あの時シェイラは…何かを私に伝えようとしていたのに……)
あの日、私は逃げた。
情けなくも、妻の死から、娘から、自分自身から。
娘を屋敷に残し、使用人に彼女と留守をまかせ、王都の城に。仕事に逃げたのだ。
仕事に逃げたは良いが、置いてきたシェイラのことが気にかかる。しかし彼女の前に顔を出す事を恐れ、ならば手紙でと思ったものの、もし父親である自分に失望したと綴られた手紙がきたら?逆に返事の手紙すらもらえなかったら?そう思うと怖くて恐くて仕方なく、結局送れなかった。
宰相としての膨大な仕事と家庭の悩みが押し寄せ半年もたたないうちに限界が来た。
仕事でも些細なミスをするようになり、王や同僚からも心配する声が聞こえだし、療養がてら領地に一度戻っては?とまで打診されたが、抱えている仕事はとても難しい事案が多く、とても人任せにはできない。
言い訳なのは自分も周囲も百も承知ではあったが、それでも、と。
そんな中、領地の屋敷より一通の手紙が届いた。
『まさかシェイラから?』
期待半分、怖さ半分で開けた手紙の送り主は、残念ながら娘からではなく、彼女の乳母だった。カミラという名の彼女は元は子爵家の長女だったが若くして病に侵された夫を亡くして以来、家を出て我が妻エリーシェの専属侍女となった女性だ。妻とはとても仲が良く妻も姉ができたようだととても懐いていたし、シェイラが生まれた折も、一人息子を子爵家の当主に育て上げた彼女ならばと夫婦一致で乳母となって欲しいとお願いしたほどだ。
今もなおシェイラの世話を侍女達としてくれているはずの彼女からの用事とは…と内容を改めてみると。
(要約するに、体調が優れない日々が続き、乳母としても侍女としても仕事の継続が困難な為という暇乞い、か。ふむ………。………ん?)
更には追記にて、子爵家の縁戚で男爵家に嫁いだ女性が諸事情により家を出て当家で働きたい。なお、シェイラと半年生まれ違いの同い年の娘も一緒との事。私が帰らないことに寂しさを覚えているだろうシェイラの遊び相手にもなれるのでは、との使用人としての推薦が綴られていた。
家の名前も書かれ、本人と娘の名前も記載されている。
(寂しい思い、か。……同年の娘が話し相手として居ればあるいは)
またあの、屈託のない愛らしい笑顔を…私に向けてくれるだろうか
そんな感傷に思考を支配された私はその時確かに疲れていたのだろう。しかし、伯爵の地位にあり宰相という重要な役柄のために、家に入れる者には最新の注意を払い自選他薦問わず徹底的に身元や為人、経済面での不安の可否を調べるのを常としていた私は。
長年勤めてきた実績あるカミラの言葉をそのまま信じまた、その場で許可し娘の教育を一任する旨を自身のサインとともに書き添え、手紙を出した。出してしまった。
それが後にレイランドルフ家に、そして一人娘・シェイラに何をもたらすのか考えもつかず。
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※次回、9年後の本編に戻ります!!
そんな言葉を浴びせられても、娘は、シェイラは、泣かなかった。
大きなアメジストと琥珀のオッドアイは今にも溢れんばかりに潤んでいたにも関わらず。小さな桜色の唇は噛み切らんばかりに力が入っているにも関わらず。
何かに耐えるかのように、じっと。
たった6歳になったばかりの娘が。
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(あの時シェイラは…何かを私に伝えようとしていたのに……)
あの日、私は逃げた。
情けなくも、妻の死から、娘から、自分自身から。
娘を屋敷に残し、使用人に彼女と留守をまかせ、王都の城に。仕事に逃げたのだ。
仕事に逃げたは良いが、置いてきたシェイラのことが気にかかる。しかし彼女の前に顔を出す事を恐れ、ならば手紙でと思ったものの、もし父親である自分に失望したと綴られた手紙がきたら?逆に返事の手紙すらもらえなかったら?そう思うと怖くて恐くて仕方なく、結局送れなかった。
宰相としての膨大な仕事と家庭の悩みが押し寄せ半年もたたないうちに限界が来た。
仕事でも些細なミスをするようになり、王や同僚からも心配する声が聞こえだし、療養がてら領地に一度戻っては?とまで打診されたが、抱えている仕事はとても難しい事案が多く、とても人任せにはできない。
言い訳なのは自分も周囲も百も承知ではあったが、それでも、と。
そんな中、領地の屋敷より一通の手紙が届いた。
『まさかシェイラから?』
期待半分、怖さ半分で開けた手紙の送り主は、残念ながら娘からではなく、彼女の乳母だった。カミラという名の彼女は元は子爵家の長女だったが若くして病に侵された夫を亡くして以来、家を出て我が妻エリーシェの専属侍女となった女性だ。妻とはとても仲が良く妻も姉ができたようだととても懐いていたし、シェイラが生まれた折も、一人息子を子爵家の当主に育て上げた彼女ならばと夫婦一致で乳母となって欲しいとお願いしたほどだ。
今もなおシェイラの世話を侍女達としてくれているはずの彼女からの用事とは…と内容を改めてみると。
(要約するに、体調が優れない日々が続き、乳母としても侍女としても仕事の継続が困難な為という暇乞い、か。ふむ………。………ん?)
更には追記にて、子爵家の縁戚で男爵家に嫁いだ女性が諸事情により家を出て当家で働きたい。なお、シェイラと半年生まれ違いの同い年の娘も一緒との事。私が帰らないことに寂しさを覚えているだろうシェイラの遊び相手にもなれるのでは、との使用人としての推薦が綴られていた。
家の名前も書かれ、本人と娘の名前も記載されている。
(寂しい思い、か。……同年の娘が話し相手として居ればあるいは)
またあの、屈託のない愛らしい笑顔を…私に向けてくれるだろうか
そんな感傷に思考を支配された私はその時確かに疲れていたのだろう。しかし、伯爵の地位にあり宰相という重要な役柄のために、家に入れる者には最新の注意を払い自選他薦問わず徹底的に身元や為人、経済面での不安の可否を調べるのを常としていた私は。
長年勤めてきた実績あるカミラの言葉をそのまま信じまた、その場で許可し娘の教育を一任する旨を自身のサインとともに書き添え、手紙を出した。出してしまった。
それが後にレイランドルフ家に、そして一人娘・シェイラに何をもたらすのか考えもつかず。
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※次回、9年後の本編に戻ります!!
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