出涸らし令嬢は今日も生きる!

帆田 久

文字の大きさ
10 / 161
第一章  出会い編

閑話  side:ルード〜未知との遭遇①〜

しおりを挟む
※今回ルード視点で閑話として何話かに刻みます。
(第3話~第6話の時点)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『『迷った(な)』』

俺の名はベルナード。フルネームはベルナード・イグニス・カロル・カリスティリアというのだが、まぁ長ったらしく面倒臭いことこの上ないので護衛役や近しい者にはルードと呼ばせている。
名前から解るものもいるだろうがカリス帝国の皇帝なんぞをやっている。そんな俺は現在、トライアド王国の領地視察巡り中、次の領地に移動する際に近道をしようとして入った境界を跨ぐように広がる森の中で。

護衛のガド(このおっさんの名もガルディアス・デル・ゴードンというのだが、同じく長いので以下略)とともに二人で仲良く、絶賛迷子中なのである。

しかも何がやるせないかと言えば…

『だぁから言ったじゃねぇかこのクソガキ帝が!!面倒くさかろうが何だろうが、検問の接待が嫌だろうが!知りもしない森に近道目的で安易に入って迷う皇帝が何処にいる!?』

『…此処にいるが何か。あとどこに誰の耳があるかわからんから皇帝呼びはよせと言ってるだろうガド。ルードだルード』

『~~~っっ(何年皇帝やってんだこのクソガキ)!誰のせいで焦ってると思ってやがるこの野郎!!?本当だったらもうとっくにに入領してる頃合いだろうがっ。』

きっと身代わり立てて検問から正式に入った#護衛達__ヤツラ_#領内の街のどこにも居なくて大慌てだぞ!??との年上の部下からのとお小言にそんなことは言われんでもわかってると悪態をつきつつも、同時にこの状況を作り出したのが他ならぬ自分自身であることも又、わかり切っていることが、なのだ。


にしても、だ。


『…ったくルードよぉ。一体全体この森どうなってやがる?』

『……ああ。』



ー そう。

ただの、林が広がって出来上がった森程度ならばかつてより遠征や森での野営に慣れている俺たちが迷うはずがないのだ。
真っすぐに突っ切ろうとしても駄目。
印を木の幹に刻みながら少しずつ進もうにも、印をつけて前を向き、直ぐに振り返ると何故か印が無くなっている為これも駄目。
自棄になって闇雲に進もうと駆け出そうとすれば、四方八方から獰猛な獣の気配と唸り声が聞こえ、そのくせその獣達の実体を一度も見ていないのだ。


(……もうどうしろと……?)


一体此処は
果たして自分達は無事にこの森を…、いやそもそも生きて祖国へ帰れるのだろうか。


この初めての奇妙で、不気味で、終わりの見えない樹々の迷宮に。
自国で“冷酷皇帝”だの“鋼の神経の男”だのと図太い人間代表のように言われ続けている俺や同種の図太さをもっている筈のガドですら焦りとある種の不安を滲ませ始めた、そんな頃だった。



『『!!!』』


微かに。
本当に微かに、水の音を二人の耳が捉えたのは。


しおりを挟む
感想 608

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。 自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。 彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。 そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。 大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました

四折 柊
恋愛
 子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ

・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。 アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。 『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』 そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。 傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。 アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。 捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。 --注意-- こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。 一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。 二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪ ※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。 ※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。

【完結】見返りは、当然求めますわ

楽歩
恋愛
王太子クリストファーが突然告げた言葉に、緊張が走る王太子の私室。 この国では、王太子が10歳の時に婚約者が二人選ばれ、そのうちの一人が正妃に、もう一人が側妃に決められるという時代錯誤の古いしきたりがある。その伝統に従い、10歳の頃から正妃候補として選ばれたエルミーヌとシャルロットは、互いに成長を支え合いながらも、その座を争ってきた。しかしーー 「私の正妃は、アンナに決めたんだ。だから、これからは君たちに側妃の座を争ってほしい」 微笑ながら見つめ合う王太子と子爵令嬢。 正妃が正式に決定される半年を前に、二人の努力が無視されるかのようなその言葉に、驚きと戸惑いが広がる。 ※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))

処理中です...