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第一章 出会い編
第28話 side:ルード〜集う情報〜
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哀れな声を上げながら侍女達に引きずられていったシェイラの余りの狼狽えぶりに、暫くニヤニヤ笑いが止まらなかったルードだったが。
入れ替わるようにして入ってきた人物を視界に捉えると一転無表情へと変わる。
男に向けて軽く頷くと、静かに扉を閉めて、男はルードの前に膝を折る。
皇帝直属の【影】であり、ガドとの連絡役兼王都の情報収集に向かわせた内の一人だ。
『連絡が遅くなりました事、誠に申し訳なく』
『そういった下らん前置きは要らん。
何か分かったのか、そうでないのか。取り敢えず一番に知りたいのはそこだ』
温度の無い声が、部屋を支配する。
『は。トリアドス王国王都潜入後、二手に分かれ行動開始。自分はガルディアス騎士団長と接触し、情報を交換・擦り合わせを行った後、急ぎこちらに引き返してまいりました。
なお、ガルディアス団長からは任務が長引く為、合流が遅れる事を陛下にお伝えするように、と』
『……ほう?ガルディアスが、か。理由は。
目標はこの国の宰相とのことだったが。それ程までに接触が困難な人物ということか?』
『いえ、もう既に目標とは接触済みです、陛下。ただ、それがおそらくは任務遂行できない理由でして…』
『詳しく』
『……率直に申し上げます。
目標が、長年に渡ってアリスリリア…通称【誘い花】の被害に遭っていたためであります』
『!!?』
(アリスリリアとはまた…厄介な物が使われたな)
しかしこれで、ずっと納得のいってなかった事にも説明がつく。
高位貴族であればあるだけ世間体は気にするもの。
ましてや亡き妻の残した一人娘を
何の言伝もなく9年間の長期に渡って放置している事自体あり得ない。
後は、誰の仕業か、といったところだが。
昨日、シェイラの話を聞き終えた俺の中にはもう、一人の人物しか浮かんではいなかった。
『誰の仕業か分かっているのか』
『は。その点に関してのみ、現在確証が取れているそうです』
そして点と線が、繋がった。
『アリスリリアを目標に運んだ男の名は【ケイン】。どうやら目標の補佐役兼この領地の管理・運営代行を担っている人物であるとの証言が取れました』
『そうか。ケイン、だな。よく知らせてくれた。…その名が一番知りたかった』
滅多に部下を褒めることをしない主に褒められ、思わず顔を上げてしまったその影は後に、この時その行動を取ったことをひどく後悔したと他の同僚に語ったらしい。
視界に映った俺の顔が、強烈な殺意を滲ませた、酷く禍々しい笑顔であった為らしい。
『他に報告は?』
『い、いえ残念ながら。ガルディアス団長におかれましては、目標の状態が正常に回復し次第、任務続行するとのことです』
『では、他の連中に伝達。領地の調査に当たっている者は、
ある程度の情報と悪事の証言・証拠が集まり次第撤退。深入りするな。
それらが終わり次第、この領地から出る故、予定を早めての王都入りも視野に入れておくように』
『は。……あの』
『どうした、指示は出したぞ』
『……恐れながら、我が皇帝陛下にとって今回の調査はどのような意図のものなのか、お聞きしても』
『ん、ああ。そうだな』
そう呟くと、先ほどまでの殺気まみれの笑顔から一転、俺はニヤリと笑って見せた。
『事は、今後。
俺の隣に立つ女の安全に関わる、と言えば、納得するか?』
『……!!はっ!!』
その意味するところに直ぐに思い至った影は、深く、深く頭を下げた。
『では行け』
『は』
そうして音を立てることなく部屋から退出していった男から直ぐに興味を失うと、俺は誰もいないことをいいように、再びうっそりと笑った。
「ケインとやら。これだけ手間をかけさせられているんだ…。
絶対に逃しはしないし、赦しはしない。
精々、今のうちに万能感にでも酔っているがいいさ……酔いに任せて、無様に踊らせてやる」
ふと、先程の狼狽きったシェイラの顔が脳裏に浮かび、くく…と忍び笑いが溢れる。
(……到底見せられたものじゃないな、こんな俺の様は)
俺は彼女の中で果たして、優しい男に映っているだろうか
入れ替わるようにして入ってきた人物を視界に捉えると一転無表情へと変わる。
男に向けて軽く頷くと、静かに扉を閉めて、男はルードの前に膝を折る。
皇帝直属の【影】であり、ガドとの連絡役兼王都の情報収集に向かわせた内の一人だ。
『連絡が遅くなりました事、誠に申し訳なく』
『そういった下らん前置きは要らん。
何か分かったのか、そうでないのか。取り敢えず一番に知りたいのはそこだ』
温度の無い声が、部屋を支配する。
『は。トリアドス王国王都潜入後、二手に分かれ行動開始。自分はガルディアス騎士団長と接触し、情報を交換・擦り合わせを行った後、急ぎこちらに引き返してまいりました。
なお、ガルディアス団長からは任務が長引く為、合流が遅れる事を陛下にお伝えするように、と』
『……ほう?ガルディアスが、か。理由は。
目標はこの国の宰相とのことだったが。それ程までに接触が困難な人物ということか?』
『いえ、もう既に目標とは接触済みです、陛下。ただ、それがおそらくは任務遂行できない理由でして…』
『詳しく』
『……率直に申し上げます。
目標が、長年に渡ってアリスリリア…通称【誘い花】の被害に遭っていたためであります』
『!!?』
(アリスリリアとはまた…厄介な物が使われたな)
しかしこれで、ずっと納得のいってなかった事にも説明がつく。
高位貴族であればあるだけ世間体は気にするもの。
ましてや亡き妻の残した一人娘を
何の言伝もなく9年間の長期に渡って放置している事自体あり得ない。
後は、誰の仕業か、といったところだが。
昨日、シェイラの話を聞き終えた俺の中にはもう、一人の人物しか浮かんではいなかった。
『誰の仕業か分かっているのか』
『は。その点に関してのみ、現在確証が取れているそうです』
そして点と線が、繋がった。
『アリスリリアを目標に運んだ男の名は【ケイン】。どうやら目標の補佐役兼この領地の管理・運営代行を担っている人物であるとの証言が取れました』
『そうか。ケイン、だな。よく知らせてくれた。…その名が一番知りたかった』
滅多に部下を褒めることをしない主に褒められ、思わず顔を上げてしまったその影は後に、この時その行動を取ったことをひどく後悔したと他の同僚に語ったらしい。
視界に映った俺の顔が、強烈な殺意を滲ませた、酷く禍々しい笑顔であった為らしい。
『他に報告は?』
『い、いえ残念ながら。ガルディアス団長におかれましては、目標の状態が正常に回復し次第、任務続行するとのことです』
『では、他の連中に伝達。領地の調査に当たっている者は、
ある程度の情報と悪事の証言・証拠が集まり次第撤退。深入りするな。
それらが終わり次第、この領地から出る故、予定を早めての王都入りも視野に入れておくように』
『は。……あの』
『どうした、指示は出したぞ』
『……恐れながら、我が皇帝陛下にとって今回の調査はどのような意図のものなのか、お聞きしても』
『ん、ああ。そうだな』
そう呟くと、先ほどまでの殺気まみれの笑顔から一転、俺はニヤリと笑って見せた。
『事は、今後。
俺の隣に立つ女の安全に関わる、と言えば、納得するか?』
『……!!はっ!!』
その意味するところに直ぐに思い至った影は、深く、深く頭を下げた。
『では行け』
『は』
そうして音を立てることなく部屋から退出していった男から直ぐに興味を失うと、俺は誰もいないことをいいように、再びうっそりと笑った。
「ケインとやら。これだけ手間をかけさせられているんだ…。
絶対に逃しはしないし、赦しはしない。
精々、今のうちに万能感にでも酔っているがいいさ……酔いに任せて、無様に踊らせてやる」
ふと、先程の狼狽きったシェイラの顔が脳裏に浮かび、くく…と忍び笑いが溢れる。
(……到底見せられたものじゃないな、こんな俺の様は)
俺は彼女の中で果たして、優しい男に映っているだろうか
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