出涸らし令嬢は今日も生きる!

帆田 久

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第一章  出会い編

閑話  部屋の扉を開けてはならない〜混沌(カオス)再び〜

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ーカリス帝国一行 侍女割り当て部屋ー


……タタタタタタダダダダダダダダ、ガチャ!…バン!!

部屋の扉が勢いよく開き、大きな音を立てて閉まる。


うふふ…

うふふふふ…

うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ…!


『モ、モリー…?』

『ど、どうなさったのモリー??』


『……陛下が』

『『陛下が?』』


ゴクリ×2



『陛下が…遂に、
シェイラ様に告白しましたわ』

『え』


『更には求婚したのです』

『え』


『それも私の目の前で!!私……素晴らしい瞬間を目撃してしまったわ……』






『『……ぇええええええええ!?』』


興奮気味に話し始め、最後にはほぅ……と満足気に息を吐くモリー。
一瞬の思考停止後、同時に興奮パッションメーターを振り切って声(奇声?)を上げるマリーとメリー。

『何、ちょ…ええ!?め、目の前…って、どどどどんな展開でしたの!?』

『私てっきり陛下は帝国にシェイラ様を連れ込んだ後(逃げ道塞いでから)求婚するのだとばかり…!
しかもこのような早朝に呼び出して…!?』


『『モリー』』

『………。』


『『詳しい状況説明を要求しますわ!!』』


『うふふ……いいでしょう。
今日もシェイラ様の御付き役を譲って頂いたお礼にこのモリー。
余すことなく全てを語って差し上げますわ!!』


『『Yahaaaaaaaa!!!』』

混沌カオスな宴は朝の城でも関係なく開かれる……


………………………………………………………………………………


ー早朝より仕事を始めて部屋の前を通り過ぎた侍女・侍従達哀れな者達の話ー


side:侍従

『お、おい』

『あ、ああ』

『何か…さっきからあの部屋の前を通る度に奇声が聞こえるのは俺だけか…?』

『……いや……俺にも聞こえたよ…。何なんだあれは』

『分からんがなんというか……無性に背筋が寒くなる気が』

『しっ!……確かあの部屋、カリス帝国一行の侍女部屋、だったよな??』


『『…………。』』

『『俺たちは何も聞いていないって事で』』


※※※


side:侍女


『……ねぇ。幻聴かしら?私、あちらの部屋から楽しそう(?)な笑い声が聞こえてくるのだけれど』

『安心して頂戴。……私もよ』

『“うふふふふ”って不気味な笑い声が部屋の前を通る度に聞こえてくる……。
一瞬呪われたのかと思ったわ』

『限りなく不気味なのだけど、どこか心惹かれるものがあるのは何故なのかしら…?』

『……聞き耳立ててみる?』

『……部屋の方々に声をかけてみる?』


『『…………。』』


『“君子危うきに近寄らず”といいますものね……やめておきましょう』

『そうね、忘れて仕事に励みましょう…“過ぎた好奇心は身を滅ぼす”ともいいますし』


『『…………。』』


『『………(き、気になる……!!)。』』



その部屋の扉を開けてはならない……。
開けば貴方も、混沌に飲み込まれてしまうのだから……

そんな開かずの間的な噂が暫く流れたとか流れなかったとか。



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