出涸らし令嬢は今日も生きる!

帆田 久

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第二章  帝国編

第43話  脱獄成功(プリズンブレイク)?(前)

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『ー………で。
一体どこから湧いてでたのよ貴女』

『ぇ、ぇええっとですね……うん、普通に隠れてましたよ?(テヘペロ♪;)』

『そんなあざと可愛い仕草したって誤魔化されないからっ!!
ど・こ・か・ら!現れたのかって聞いてんのよ!!』

『シーッ!!(お願い静かにして~!!)』



(お、おかしいわね…モリーからこの仕草は
一発で相手を黙らせることが出来ると聞いていたのだけれど……)

ビシィッ!!とこちらを指差しながら声高々に問い詰めてくるジョルダン嬢に、
必死で声のボリュームを落とすよう願うが。
興奮気味の彼女にはまるで聞き入れてもらえない。
すると見かねたのか……


【あーっ!!ほんに小煩い娘御め!!
少し黙っておれッ!!】


頭の中ではなく直接その場に聞こえた男の声にびくりと肩を震わせたジョルダン嬢は、またもや大きな声を上げようとするも。
パチンと指を鳴らす音の後、自身の口から声が出ないことに気付く。
口は動くのに声が出ない。
何が起こったのか?今の声の主は!?と視線を彷徨わせる彼女の前に、
かの精霊王が姿を見せる。


暗闇の中でふわりと淡く光りながら現れた年齢不詳の美丈夫に、
ポカンと口を開けっぱなしにした間抜けな顔で彼に魅入る。
しかも宙に浮いた状態での出現。
シェイラの元へと寄ると、
さっさと出るぞ!ここは汚くて敵わん!!と牢のカビ臭さや汚さに怒った素振りで脱出を促す。


『(あの、オーギュスト様?)』

【なんじゃシェイラ、さっさとここを……】

『(お声、出ていますよ?あと…お姿もおそらく…)』

【む?……やや!主らがうだうだとやっていた故苛立って顕現してしもうた!!】


しまった!!と美丈夫(しかも年寄り口調)が慌てる様はなんだかひどく場にそぐわず、
ついこみ上げてくる笑いを必死で噛み殺していると、驚愕の表情を浮かべていたジョルダン嬢が私からオーギュスト様へ指差す方向を変えながら何やら口をぱくつかせているのが目に入った。


(え~と、“この人は一体何者?”と言っているのでしょうか?)

そう小声で問うと、うんうんと凄い勢いで頷く。
説明してもいいかと当人を伺えば、


【我は故あってこの娘に加護を与えている者じゃ。
人は我のことを精霊王などと呼んでいるがな!】

致し方なしとばかりに自己紹介を自分で始めた。
呆然とオーギュスト様を眺めた後にぺたりと床にへたり込んだ彼女に、恐れ入ったか!と何故か胸を張る精霊王。
次いで彼女に自分が如何に私に恩恵を与えているかを話し始めた段になって、
思わず脱出はいいのか、と突っ込んでしまった私を責めるものはいないだろう。

またもやしまった!!と固まる彼を放置することに決め、
シェイラは彼女に話しかける。



『不本意ながらここに連れてこられたことは今は何も申しませんわ。
期せずして大まかにお話も聞かせてもらいましたし…。
私はこれからここを去りますが、貴女はどうなさるおつもりですか?』

『え……私?』

『ええ…犯罪に加担したといっても何やら退っ引きならない事情がおありの様子。
どの道裁かれるお覚悟があるのなら、共に陛下の元へと行きませんか?』

『へ、陛下の御前に…』

『ええ。彼は罪は罪とはっきりけじめをつける方とは思いますが、
事情を聞かずに容赦なく断罪なさるほど話のわからない方ではありませんよ…多分』

『……そこで多分って付け加える辺りに著しく不安を覚えるけれど、まぁいいわ。
このままここに残って豚野郎の八つ当たりで死ぬよりは遥かにマシだもの。
貴女に、貴女達に支障がないのなら同伴させて頂戴』

『そうですわね、あの豚野郎…あらやだ失礼、私ったらつい。
コホン!…名前は存じ上げないけれど先ほどのな方に貴女が酷い目に遭わされるのは拐われた当人である私も“なんか違う”感が強いので。
ー…よろしいですよね、オーギュスト様?』

【ん。シェイラが決めたことじゃ、文句は言うまい。が、
娘御……承知のこととは思うがシェイラに何ぞこれ以上何かを企むことや害そうなどという意思あらば……分かっているじゃろうな?】

『この場から出してもらえるならそんなことはしないわよ。
そもそもシェイラさん、だっけ?別に貴女自身にはなんの恨みも憎しみもあるわけじゃないもの。巻き込んで悪いとは思っているけど……』

【ならば良い。あとはそうじゃのぉ、娘御お主。
その衣服の収納に入れておる物騒なものはここに捨てていけ!
臭くて敵わん】


『………嫌よ。何でこれを捨てなきゃならないのよ』

【強情なやつじゃの、こんなものを持ってついてこられても安心できんわ。
ほい!!これじゃこれ!】

『あ!返して!!』

『それは?』


ギュッとスカートの一部を握りしめる彼女から粉のようなものの入った小瓶をどうやってかするりと抜き取ると、返せと手を伸ばす彼女を無視してパン!と手を打ち鳴らして消してしまう。
ああ!!と絶望したように再びへたり込んだ彼女を起こしてあれが何なのかを問うと、
主もある意味知っているものじゃと思うぞと答える。


『……あの方にもらった…最後の残りだったのに……』

【その説明をしてやるのも吝かではないが、兎に角あの輩どもが踊っておる間に行くぞ】

『そうですわね、そろそろ本当にここをお暇しましょうか。
……いいですね?』

『うう……分かったわよ』


もうどうにでもなれだわ…と何やら投げやりになった彼女の背中を撫でながらも、
ようやくシェイラは脱出に向けて動き出すのだった。



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※すみません、長くなりそうなので一度区切ります!
続きは16時頃更新予定です♪(´ε` )

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