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第二章 帝国編
第60話 激突①
しおりを挟む(【シェイラ!!今すぐ結界を張れ!そしてこの建物から皆退避せよ!!!】)
(!!!?)
騎士団員達が部屋内にある無残な有様の死体二体と倒れ伏す騎士団副団長を複雑な面持ちで白磁宮から運び出し、片付ける作業があらかた終わりを迎えたのを見守りつつ奥の部屋を注視していた自分の頭の中に、酷く焦燥を含んだオーギュスト様の声が大音量で響き渡り、ビクリと肩を震わせる。
『シェイラ?どうし』
『皆様こちらに!!』
残ってガド様に指示を仰いでいた数人の騎士達や未だ身体に力が戻らないモリーに声を張り上げ、咄嗟に肩を抱くルードにより身を寄せながら結界を張る。
流石は騎士団というべきか、唐突の指示だったにも関わらず素早い身のこなしで私の側へと集まってくれたことにホッとしつつ、結界をより強固なものにすべく力を入れる。
と、次の瞬間。
どがぁああああんんん!!!!
『きゃっ!!』
『ぐっ!!』
『『うわぁああああ』』
『っ情けねぇ声上げてねぇでこらえろ!!テメェら騎士団員だろぅがッッ』
『…っ貴方は貴方で、うるっさいですよ』
轟音と共に強烈な振動が発生し、シェイラを含めたその場に集まった騎士団員が悲鳴を上げる。
シェイラは兎も角、彼女を守らねばならない立場の自分達まで情けない声を上げてどうする!と振動を必死に踏ん張って耐えながらゲキを飛ばすガド、そのガドに同じく振動と傷の痛み・目眩や脱力感を現在進行形で耐えているモリーから苦言が呈される。
が、何れにしても二人とも叩く軽口程に余裕はない。
幾らシェイラが結界を張ったところで、物理は防げても地震等から発生する振動までは防げないのである。
それに、この揺れは突然の上かなりの物。
精々その場で踏ん張り耐え凌ぐのが精一杯なのだ。
目前の部屋も衝撃と共に破壊され、盛大に埃と破壊された壁材の細かな破片が飛散し舞い散る中をじっと耐える事暫し。
埃も振動も落ち着き視界が開け、シェイラ、ルード、ガド、モリー、その他騎士団員らが目前を確認するとそこはー…。
『おいおい……嘘だろ!』
『これはっ』
『『!!!??』』
『そんな…!』
『とんでもないな』
ぽっかりと。
部屋はおろか、壁すらまるで跡形なく消し飛んで、宮殿の外の景色がそのまま広がっていた。
幸い、と言っていいかどうかは分からないが、消失したのは目前の部屋と精霊王達が入っていった続きの部屋だけで廊下や宮の他の部分は倒壊を免れてはいたものの、其処彼処に多くの亀裂が入り、正直次に同じかそれ以上の衝撃を受ければ持ち堪えることは難しい事は想像に易いのは誰の目にも明らか。
それも、よりにもよってこの白磁宮が、だ。
(皇帝の住処である為に相当に厳重且つ頑丈に造られたはずのこの宮を内側からとはいえここまでボロボロにするって…とんでもねぇぞ精霊王さんよぉ!
いや、それともあの翁とかっていう爺ィの仕業かまさか!?)
背中にびっしょりと汗を掻きながら渦中の人物ーこの惨事を引き起こしたであろう二人(?)を探すガド。
苦労することもなく彼らは見つかった。
二人とも、視界の開けた外、それも上空に浮いていたのだから。
『本当に、なんなのだあの老人は。
いや…最早老人などとは呼べんなあの姿は』
『あんなのがただの人間の老人であってたまるかよ…』
『なんと禍々しい』
(やはり、人ではありませんでしたか)
ルード達があれは一体何なんだと呆然と呟く中、シェイラはやはり自分が感じていた通り、かの老人が人ならざるー人の枠から遠く離れた存在であることをその姿から確信を得た。
人ではあり得ない継続的空中浮遊、変形し歪にダラリと伸びた両腕に鋭い両手の爪。
顔形の変化は、彼らの遥か下に位置する自分達からは見てはとれないものの兎も角。
醸す雰囲気も何もかもが、禍々しい。
『あんな存在が、人であって、たまるか』
額に汗を滲ませながらのルードの呟きに、生唾をごくりと飲み込み震え上がる騎士団員らを横目にちらりと見やると、
『兎も角…ここにこうしていてもどうしようもないし何より危険だ。
建物がいつまで持つかも分からんしここには我らが皇帝もいらっしゃる。
それにいつ追撃が来るとも限らん以上、さっさと宮から退避する。
お前達は宮に残っている人間を急ぎ裏の庭園まで退避させろ!皇族以外立ち入り禁止!?この非常時にんなこと関係ねんだよさっさと行け!!
俺はこのまま陛下とシェイラ嬢達を安全なところへとお連れする!!』
『『は!り、了解しました!!』』
野獣の如く吠えて指示を飛ばしたガドの気迫に先ほど感じた恐怖とは別の意味で震え上がった騎士団員達が慌てて散開していく。
『へい…ルード、モリー、嬢ちゃん、そういう訳でここは危ねぇ。
引き続きあの化物は精霊王さんに任せて、今の内にとっとと場所を移すぞ!』
『ああ、分かっている!』
『っですがモリーが!!』
『シェイラ様私のことはお気になさらずお先に避難を』
『あ?ああ、心配ねぇよ嬢ちゃん。っよっと!!』
『っひゃっっ!?な、なな何を!??』
先の戦いで身体に力が入らないモリーをひょいと肩に担ぎ上げるガドに、酷く動揺した声を上げて狼狽るモリー。
『動けねぇんだろ?…じっとしてろよ侍女頭殿』
『~~~!!!』
ポンと背中を軽く叩くガドに、羞恥で真っ赤に顔を染めたモリー。
鉄の侍女頭とまで呼ばれた普段は戦いの中にあってさえ無表情を貫く彼女の大変貴重且つ珍しい表情を、荷袋でも担ぐようにしているガドが見ることは、残念ながらなかったが。
行くぞと告げられ彼の後ろに続いたルードとシェイラはバッチリ目撃していた訳で。
『『(デリカシーが欠如しているな(ますね)朴念仁)』』
『ん?なんか言ったか二人とも??』
『『いや(え)何も』』
事態は深刻、場も状況も緊迫しているはずなのに、場違いながら妙な脱力感と共に二人同時に心中で呟いた言葉は、これまた残念ながら(?)女心と気遣いを忘れているガドに伝わることはなかった。
ともあれ。
シェイラ達が宮からの退避を急ぐ中。
空中では睨み合っていた二つの人ならざる存在が、再び動き出そうとしていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※やっと…やっと公開できました!!
公開ボタンを押すと何故かページが丸々削除されるという謎現象が相次ぎ、
予告していた続きが書けども書けども更新できずに難儀しておりましたが、漸く復活した模様!!
続きを楽しみにして下さっていた皆様すんませんandお待たせです!!
これで明日以降も無事に更新できる、はず(と作者は信じたい!!)
システムさん正常なお仕事お願いします~(><)
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