好奇心は〇〇をも殺す…?

帆田 久

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その2

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大神 仁おおがみ ひとし

僕はたった今入店してきたその男を知っていた。
何故なら同時に入社して、研修した同い年の同期だからだ。
だが知っているのは何もそれだけが理由ではない。
ただ単に、有名人だからだ。

ギリギリ170な僕と違って、余裕で180以上はある高身長
スマートに見えて意外と胸板が厚そうながっしり体型
曰く、艶のある黒髪を少し刈り上げてるのにちっとも脳筋臭を感じさせない男らしくもクールな男前
曰く、目は切長で鋭いのに笑った時の色気で人を殺せる
曰く、低音ボイスが凶器
曰く、実家がかなりの金持ちらしい
曰く、営業部でこの3年トップ独走中な不動のエース

……などなど。
平凡且つ幼く見られ、
ともすれば後輩にまでナメたあだ名を連呼される僕とのこの差、よ。
嫉妬すら通り越してすげぇやつとしか思えない。

しがない経理部職員の自分と違って営業部のエースと呼び声の高いこの男が、
何故こんな時間このコンビニに?
職場から徒歩5分以内にあるこのコンビニは自分のような残業ばかりをやっている周辺の会社の社員達が頻繁に使う店だけに、花形部署の所謂勝ち組社員は逆に絶対近づかないことでも有名。
しかも時刻は22時を回っている。
アパートが幸か不幸か会社から近く自転車通勤が常の自分とは違い、
風の噂で3駅先にある有名なハイクラスマンションに住んでると言われているこの男が、通り違いに繁華街もあり夜になると少々治安も悪くなるこの場に、しかもこんな時間にいること自体が非常に不自然だった。

なんかエリート様が残業するようなビッグプロジェクト、あったっけ?
あ、それとも接待かな??


しかし彼は一人で、会社の役員の姿もないし??

釣りを店員から受け取りながらも、あーでもないこーでもないだのまぁ自分には関わりのない事だよなぁだのと脳死な思考を続けてそのままふわふわする意識のままビニール袋を手に退店、
…していれば良かった。

そのまま真っ直ぐに帰宅して飯食って風呂にさえ入っていれば少なくともその夜は久しぶりにぐっすりと眠れただろうに自分という奴は。

好奇心は猫をも殺す、とは一体誰の言葉だったか。

兎も角その時の自分は過労からどうかしていたんだ。
研修時代に同期にしてその優秀さを上役や先輩方から絶賛されて部署間で壮絶な争奪戦が繰り広げられたことで有名な、今現在も普通に営業成績トップをひた走る生活水準も仕事ぶりも見た目もハイクラスなこの男が。
果たしてこの社畜の常連しか出入りしないと評判のコンビニなんかで一体何を買うのか、なんて。
普段じゃ微塵も興味すら惹かれないそんな些細な好奇心が、全く抑えられなかった。

故に、目にしてしまった…。
よりにもよって僕は自身と入れ違えでレジにカゴを置いた営業部エースのカゴの中の商品を横目でガッツリと見てしまい。
動揺するあまりにかなり上背のある大神の顔を素早くふり仰いでしまった。
いきなり振り返って自身を見上げて凝視する僕に目を見開いたその精悍な男前は。
直後に僕が発してしまった

「え、マ?どんだけ欲求不満だよ」

などという不用意極まりない一言を正確に耳で拾い、切長の目をスゥと細めて笑った。

「確か経理の・・・宇佐だよな?同期の」

まことに残念ながら彼は研修時代一緒だった自分のことをしっかりと覚えていた。
ごめん好奇心で!
こんな時間にこんなところで営業部のエースが何買うのか気になっちゃってつい!!

言い訳が頭を駆け巡るもののそれらが口から発せられることはなく。
代わりに大神に名を呼ばれてびくりと肩をすくめてしまった。
小さくひっと悲鳴も漏れたかもだしなんなら泣きそうになっている自覚もある。
そんな自分をじっと見下ろしながら。
片手でスマホのペイ機能で精算を済ませて店員から袋を器用に受け取った大神は
自分の様子に、へぇ・・・と呟き口角を上げると
にっこりと微笑んでガッと自分の肩に腕を回した。

「今帰り?週末だし時間、あるよな(低音ボイス:ないなんて言わないよな)?」

「(なんか絶対今副音声した!!)、えっ、えー…と……ハイ」

笑顔の圧とガッチリと引き寄せられたまま固定された腕の力の強さに完全に捕獲され、
男と自分は連れ立ってコンビニを退店した。


あれよあれよとコンビニ前に停めておいた自転車を四駆車(高級)に回収されて、
僕は己の自宅ではなく、大神の噂のハイクラスマンションへとあっさりお持ち帰りされてしまったのだった。

自分が買ったSAN値回復セット袋と、大神の買った、大量の0.02㎜コンドーさん(極太用)の入った袋と共に。





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