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9:暴かれる真実と真の罪人(上)
しおりを挟むミルドルア王国
王太子と侯爵家令嬢の成婚式が1週間後に差し迫ったこの日ーー
王城では各貴族家の当主らが謁見の間へと集結していた。
『本日はいったい何の招集なのですかな?』
『御成婚間近だというのに、当の殿下と国王陛下直々に重大発表とは…』
各家がいったい何事かと騒つく中、王太子と守護に当たっている騎士団長、陛下と王妃が順に入場して壇上の席へと着く。
騒つく周囲が鎮まったのを見計らい、
王太子・アドゥルフが声を張り上げる。
「皆の者、慶事を前に多忙の中、よくぞ集まってくれた。
陛下共々感謝する」
彼の言にすかさず宰相が前に出る。
「此度、皆が集められたのは。
間も無く訪れる予定であった慶事に重大なる問題が発覚したため!」
ザワッ!
慶事に問題?
重大なる?
王太子殿下の成婚が!?
「どういうことなのですか陛下!アドゥルフ!?
私は何も聞いておりませんよ!、」
「王妃様の仰る通りだ!
慶事に重大なる問題?まるで我が侯爵家に何か問題があると言っているようではないか!!」
宰相の言葉に、国王の隣に着席していた王妃、そして高位貴族の列にて並んでいたエヴリン侯爵が不快げに声を張り上げた。
が、宰相が動揺することも、己の言を謝罪することはなかった。
「そう言っているのだが?エヴリン侯爵」
「なっ!!」
「控えなさい宰相!
間も無くアドゥルフと成婚予定の侯爵家をよりにもよって国に仕える貴方が誹謗するとはいったいどういうつも」
「王妃よ、少し黙っていなさい」
「っ陛下!?」
「黙れ、と。三度は言わせるな」
「………」
いつになく強い口調で騒ぐ王妃を黙らせた国王の尋常ならざる怒気に、
謁見の間が静まり返る。
「宰相、続けよ」
「はっ」
「問題というのはいうに及ばず、エヴリン侯爵並びにその協力者。
凡そひと月前、間も無く王太子妃となることを約束されていた令嬢にとある方法を使いありもしない罪を着せ!
罪人として投獄したのち断罪、更には自身の娘を易々とその令嬢の後釜に据えんと画策した張本人であることが発覚した!!」
『『『『!!!!!』』』』
「ふっ、ふざけ」
「勿論ふざけてなどいないし、純然たる真実である!
証人をここへ!!」
「!?」
声と同時、入場してきた痩せこけた小汚い男に。
他ならぬ侯爵は顔を青褪めさせた。
「男。我らに語ったこと、一言一句違えずこの場で語れ」
「はい、宰相様。
…私は元は商人をしておりましたが、商売が上手くいかずに借金に苦しんでいたところ、エヴリン侯爵様に仕事を頼まれました。
唯一の取り柄であった豊富な魔力を使い、先だって行われた王妃様の生誕祝賀会にて魔法を使って欲しい、と。
侯爵様は私に
“何、ほんの余興だ。王妃様もきっと御喜びになられる”とそう言い、
私めに見知らぬ詠唱の書かれた紙を渡しました」
「だ、黙れ貴様ぁ!!」
「ひっ!」
「騎士達は侯爵を黙らせろ。
ーー…続きを」
「は、はい。
私は侯爵の言葉でそれが何かの余興となる魔法なのだろうと理解し、
また、それを終えれば借金を肩代わりしてくださるとの言葉を信じて、侯爵様の計らいの元に会場へと入り、言われた時間に詠唱を致しました。
するとごっそりと魔力を失いよろめいた次の瞬間、
私の隣で侯爵様が、
“王太子殿下のワイングラスに、婚約者であるアデライド伯爵令嬢が毒を入れた!”と突然叫んだのです!!」
「黙れぇぇぇぇ………!!」
「私は、侯爵様はいったい何を言っているのだろう?と思いました。
だってその婚約者のご令嬢はその時、ワイングラスからも殿下からも離れたところにいたからです。
そもそもグラスに触ってすらおりませんでした。
だというのに、侯爵の言葉が会場に反響した途端!私の身体から更に魔力が抜け!
国王陛下はおろか会場中の人間が侯爵様が叫んだ通りにご令嬢が毒を盛って王太子殿下を、さ、殺害しようとしたと怒りだし…彼女はその場で罪人として連れて行かれてしまいました。
その様子を侯爵様とも、もうお一人が酷く満足げに笑って眺めているのを目にし。
もしや私が詠唱したのは危険な魔法だったのかとっ、そうであれば殺されてしまうかも知れないと恐ろしくなり!
殿下方に保護して頂くまで逃げ回っておりました!!」
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