閣下は罪人と結ばれる

帆田 久

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14:最高から最悪へ

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※短いです。

===


(帰ったらすぐにでも、彼女にもう一度求婚しよう)

突然の呼び出しにより登城し、悪友こくおうの口から期せずして彼女の身元を含めた真実を知ることとなった俺は。
来た時の不機嫌さが嘘のような晴れやかな心持ちで、官舎へと馬を進めていた。

真実彼女が無実だと知った途端に憂いが晴れたなど現金な男だと笑うなら笑え!
誰にともなく心中で叫ぶ。
例え真実彼女が罪人であったとしても、
元より彼女を手放したり罪人として捕らえたりするつもりはなかった。

長年待ち望んだ番。
身分ある者である自覚は充分あったが、もしもそのせいで折角出会えた彼女を手放さなければならないくらいなら家の者達には悪いが、とそれこそ己の全てを捨てることにも否やはなかった。

ただーー

彼女があまりに儚く笑うから

彼女の抱える憂いが晴れない限りは彼女の心からの笑みを見ることができない。
未だ聞くことの出来ない彼女の声を、永遠に聞くことも叶わぬかもーー

そうも思ったからこそ、あの時すぐに彼女へと答えを出すことをしなかった。
それもこれも、彼女に何の憂いもなく、俺を愛してもらうため……

彼女の事情を調べる時間を邪魔されるどころか、
あっさりと真実を教えてくれた悪友へ、今日ほど心から感謝の念を抱いたことはない。

(今日はさっさと書類仕事を片付けて早く家路につかねば)

常に鍛えて筋肉の重さを感じる己の身体がいやに軽く、
ご機嫌で官舎へとたどり着く。
と、何やら妙に官舎内が騒がしい。

(なんだ……?)

折角上機嫌で緩んでいた顔ーー主に眉間に皺がよる。
取り敢えず馬を馬屋へ運ばねばと進行方向を変えようと手綱を引き掛けたその時。

「ああっ!や、やっと見つけましたよ将軍んーーっ!!」

いつにも増して落ち着きのない、
どころか蒼褪め汗をだらだらと流したアガジが官舎から転がり出てきた。

「……お前な…、少しは落ち着きというものを」

「そんなことよりすぐ!すぐにお屋敷へとお帰り下さい閣下…!!」

「……あ?」

ーーそうして告げられた、
アガジが現侯爵へ俺が少女を連れ帰ったと告げたのを盗み聞いて知ったアガジの姉が、
同じく俺の登城の隙を見計らって我が屋敷へと向かったという最悪極まる報告に。

(あのクソ女……!!
ディーの身に傷一つでもつけてみろ!
侯爵家長子といえどその場で八つ裂きにしてやる……!!)

家が侯爵家、弟が俺の副官であることを傘に来て
いつも好き勝手に振る舞い己に媚びを含んだ眼差しを向けて纏わりついてくる高慢極まる金髪の豹獣人女へあらぬ限りの罵声を心で叫びつつ。
愛馬を労る余裕すらなく一路、公爵屋敷へ向けて駆け出した。
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