4 / 24
4
しおりを挟む
※主人公と卒業年を合わせるため、薬剤師の国家試験に必要な在学年数が4年のままの世界線にしています。
木曜のおやつ時。
僕らは有名なデパート街にある、鈴虫通りに位置する紅茶専門店に居た。
「ホント紅茶好きだよな」
「んー、そうだね。檸凰の水と一緒かな」
檸凰は水のペットボトルを欠かしたことがないほど、普段は水しか飲まない。
でも優しいから、今日みたいに僕につきあって紅茶を飲んでくれることもある。
いつも僕の飲んでみたい紅茶を頼んで、すこし飲ませてくれる。
人を慮れる、僕にはもったいない完璧な人だ。
「アールグレイ、それもファーストフラッシュのダージリン、だろ?」
「正解。これが一番好きだな、って」
春摘みダージリンで作ったアールグレイ。
ここのは変わっていて、ベルガモットではなくシチリア産のレモンを用いている。
これが一番檸凰の香りに似ているから、好きだ。
「そういうもん?」
「あ、柘榴珈琲のコーヒーは別格ね」
「ザクロはな、確かに別格かもな。身内びいきで悪いが、ウチの従兄弟が趣味で始めたトコだし。また行こうよ」
「え?檸凰の親戚のお店だったの?どうりでおいしいワケだ」
「どういう意味?」
「深い意味はないよ。檸凰ってすごくセンスがいいから、ザクロの店主さんも目利きが上手なのかなって」
「ありがと」
照れてる。
そっぽを向いて、ミックスベリー味の紅茶を口に運んでごまかしているが、耳まで真っ赤なのがまる見えだ。
「檸凰は、さ、来年度、国家試験と院試、ある、よね?」
「うん」
「やっぱ院試も?」
「まぁ。ウチ継ぐには、博士無いと難しいからな」
「そっか」
「吹雪は?」
「僕?僕も、かな。僕、勉強しか出来ないし」
コミュ障だから、大学でも友達は少ない。
檸凰と、同じ学部でオメガのあやめくんと経済学部の美郷くんぐらい。
オメガが入れるサークルも少なくて、帰宅部。
だから、檸凰以外、親密な人は居ない。
「そんなことないよ。吹雪の作ってくれたシルバーリング、よく褒められるんだ。鼻が高いよ」
「そんな、簡単なリングだよ。でも、ありがと。使ってくれて、嬉しいよ」
息抜きをかねて、ちょっとした小遣い稼ぎに作っているシルバーアクセ。
その一つを檸凰が気に入ったから、ラッピングしてプレゼントしたものだ。
もう3年以上使ってくれてるリング。
いつも付けてる場所が違っていて、実験が無い日は右手の薬指、実験のある日はネックレスとして首元に。
今日は木曜だから実験は無いはずなのに、なぜかネックレスの気分らしい。
右手は空で、黒のタートルネックで隠れているが、首元からアクセサリーの揺れる音がする。
「そろそろ出る?」
「そうしよっか。あ、ちょっと、支払い」
「さっきお手洗いに立った時、済ませてきたよ」
「ごめん。今日も全部持ってもらって。僕の分出すよ。いくらだった?」
「いくらでも出すよ。俺、この国でも指折りの大金持ちだから」
「またそんなこと言って。危ないよ」
「吹雪は、『ごちそうさま』って喜ぶのがお仕事」
「もー。ごちそうさまでした。おいしかった」
「どういたしまして」
楽しく談笑しながら、鈴虫通りを歩いて、目抜き通りに出た時だった。
木曜のおやつ時。
僕らは有名なデパート街にある、鈴虫通りに位置する紅茶専門店に居た。
「ホント紅茶好きだよな」
「んー、そうだね。檸凰の水と一緒かな」
檸凰は水のペットボトルを欠かしたことがないほど、普段は水しか飲まない。
でも優しいから、今日みたいに僕につきあって紅茶を飲んでくれることもある。
いつも僕の飲んでみたい紅茶を頼んで、すこし飲ませてくれる。
人を慮れる、僕にはもったいない完璧な人だ。
「アールグレイ、それもファーストフラッシュのダージリン、だろ?」
「正解。これが一番好きだな、って」
春摘みダージリンで作ったアールグレイ。
ここのは変わっていて、ベルガモットではなくシチリア産のレモンを用いている。
これが一番檸凰の香りに似ているから、好きだ。
「そういうもん?」
「あ、柘榴珈琲のコーヒーは別格ね」
「ザクロはな、確かに別格かもな。身内びいきで悪いが、ウチの従兄弟が趣味で始めたトコだし。また行こうよ」
「え?檸凰の親戚のお店だったの?どうりでおいしいワケだ」
「どういう意味?」
「深い意味はないよ。檸凰ってすごくセンスがいいから、ザクロの店主さんも目利きが上手なのかなって」
「ありがと」
照れてる。
そっぽを向いて、ミックスベリー味の紅茶を口に運んでごまかしているが、耳まで真っ赤なのがまる見えだ。
「檸凰は、さ、来年度、国家試験と院試、ある、よね?」
「うん」
「やっぱ院試も?」
「まぁ。ウチ継ぐには、博士無いと難しいからな」
「そっか」
「吹雪は?」
「僕?僕も、かな。僕、勉強しか出来ないし」
コミュ障だから、大学でも友達は少ない。
檸凰と、同じ学部でオメガのあやめくんと経済学部の美郷くんぐらい。
オメガが入れるサークルも少なくて、帰宅部。
だから、檸凰以外、親密な人は居ない。
「そんなことないよ。吹雪の作ってくれたシルバーリング、よく褒められるんだ。鼻が高いよ」
「そんな、簡単なリングだよ。でも、ありがと。使ってくれて、嬉しいよ」
息抜きをかねて、ちょっとした小遣い稼ぎに作っているシルバーアクセ。
その一つを檸凰が気に入ったから、ラッピングしてプレゼントしたものだ。
もう3年以上使ってくれてるリング。
いつも付けてる場所が違っていて、実験が無い日は右手の薬指、実験のある日はネックレスとして首元に。
今日は木曜だから実験は無いはずなのに、なぜかネックレスの気分らしい。
右手は空で、黒のタートルネックで隠れているが、首元からアクセサリーの揺れる音がする。
「そろそろ出る?」
「そうしよっか。あ、ちょっと、支払い」
「さっきお手洗いに立った時、済ませてきたよ」
「ごめん。今日も全部持ってもらって。僕の分出すよ。いくらだった?」
「いくらでも出すよ。俺、この国でも指折りの大金持ちだから」
「またそんなこと言って。危ないよ」
「吹雪は、『ごちそうさま』って喜ぶのがお仕事」
「もー。ごちそうさまでした。おいしかった」
「どういたしまして」
楽しく談笑しながら、鈴虫通りを歩いて、目抜き通りに出た時だった。
257
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
隣の番は、俺だけを見ている
雪兎
BL
Ωである高校生の湊(みなと)は、幼いころから体が弱く、友人も少ない。そんな湊の隣に住んでいるのは、幼馴染で幼少期から湊に執着してきたαの律(りつ)。律は湊の護衛のように常にそばにいて、彼に近づく人間を片っ端から遠ざけてしまう。
ある日、湊は学校で軽い発情期の前触れに襲われ、助けてくれたのもやはり律だった。逃れられない幼馴染との関係に戸惑う湊だが、律は静かに囁く。「もう、俺からは逃げられない」――。
執着愛が静かに絡みつく、オメガバース・あまあま系BL。
【キャラクター設定】
■主人公(受け)
名前:湊(みなと)
属性:Ω(オメガ)
年齢:17歳
性格:引っ込み思案でおとなしいが、内面は芯が強い。幼少期から体が弱く、他人に頼ることが多かったため、律に守られるのが当たり前になっている。
特徴:小柄で華奢。淡い茶髪で色白。表情はおだやかだが、感情が表に出やすい。
■相手(攻め)
名前:律(りつ)
属性:α(アルファ)
年齢:18歳
性格:独占欲が非常に強く、湊に対してのみ甘く、他人には冷たい。基本的に無表情だが、湊のこととなると感情的になる。
特徴:長身で整った顔立ち。黒髪でクールな雰囲気。幼少期に湊を助けたことをきっかけに執着心が芽生え、彼を「俺の番」と心に決めている。
上手に啼いて
紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。
■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる