愛人かと思いきや、僕にだけポンコツな溺愛夫ができました

だし巻たま子

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※主人公と卒業年を合わせるため、薬剤師の国家試験に必要な在学年数が4年のままの世界線にしています。

木曜のおやつ時。
僕らは有名なデパート街にある、鈴虫通りに位置する紅茶専門店に居た。

「ホント紅茶好きだよな」
「んー、そうだね。檸凰れおの水と一緒かな」

檸凰は水のペットボトルを欠かしたことがないほど、普段は水しか飲まない。
でも優しいから、今日みたいに僕につきあって紅茶を飲んでくれることもある。
いつも僕の飲んでみたい紅茶を頼んで、すこし飲ませてくれる。
人を慮れる、僕にはもったいない完璧な人だ。

「アールグレイ、それもファーストフラッシュのダージリン、だろ?」
「正解。これが一番好きだな、って」 

春摘みダージリンで作ったアールグレイ。
ここのは変わっていて、ベルガモットではなくシチリア産のレモンを用いている。
これが一番檸凰の香りに似ているから、好きだ。

「そういうもん?」
「あ、柘榴珈琲のコーヒーは別格ね」
「ザクロはな、確かに別格かもな。身内びいきで悪いが、ウチの従兄弟が趣味で始めたトコだし。また行こうよ」
「え?檸凰の親戚のお店だったの?どうりでおいしいワケだ」
「どういう意味?」
「深い意味はないよ。檸凰ってすごくセンスがいいから、ザクロの店主さんも目利きが上手なのかなって」
「ありがと」

照れてる。
そっぽを向いて、ミックスベリー味の紅茶を口に運んでごまかしているが、耳まで真っ赤なのがまる見えだ。

「檸凰は、さ、来年度、国家試験と院試、ある、よね?」
「うん」
「やっぱ院試も?」
「まぁ。ウチ継ぐには、博士無いと難しいからな」
「そっか」
「吹雪は?」
「僕?僕も、かな。僕、勉強しか出来ないし」

コミュ障だから、大学でも友達は少ない。
檸凰と、同じ学部でオメガのあやめくんと経済学部の美郷みさとくんぐらい。  
オメガが入れるサークルも少なくて、帰宅部。
だから、檸凰以外、親密な人は居ない。

「そんなことないよ。吹雪の作ってくれたシルバーリング、よく褒められるんだ。鼻が高いよ」
「そんな、簡単なリングだよ。でも、ありがと。使ってくれて、嬉しいよ」

息抜きをかねて、ちょっとした小遣い稼ぎに作っているシルバーアクセ。
その一つを檸凰が気に入ったから、ラッピングしてプレゼントしたものだ。
もう3年以上使ってくれてるリング。
いつも付けてる場所が違っていて、実験が無い日は右手の薬指、実験のある日はネックレスとして首元に。 
今日は木曜だから実験は無いはずなのに、なぜかネックレスの気分らしい。
右手は空で、黒のタートルネックで隠れているが、首元からアクセサリーの揺れる音がする。

「そろそろ出る?」
「そうしよっか。あ、ちょっと、支払い」
「さっきお手洗いに立った時、済ませてきたよ」
「ごめん。今日も全部持ってもらって。僕の分出すよ。いくらだった?」
「いくらでも出すよ。俺、この国でも指折りの大金持ちだから」
「またそんなこと言って。危ないよ」
「吹雪は、『ごちそうさま』って喜ぶのがお仕事」
「もー。ごちそうさまでした。おいしかった」
「どういたしまして」

楽しく談笑しながら、鈴虫通りを歩いて、目抜き通りに出た時だった。
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