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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。
第50話 すんません。風邪ひきました。
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「ぶぅええぇえっきしょぉおい!!よいよいぃいっ!!」
魔女さんを呪いから解放する為に南の大陸に行こうと意気込んだはいいものの、俺は思いっきり風邪を引いていた…。
「発熱、悪寒、だるさ、頭痛…。完全に満身創痍じゃないか…。
やはり、伊邪那美命の力は君の魔力だけでなく肉体的な体力も奪ったんだろうね…。」
「くそぉ…。なんかごめん…。いぷしっ!」
「大丈夫かご主人様…?
結構顔色悪いけど…。と言うかすぐに治るのか…?」
「魔法だって万能ではないからね。
失われた肉体の体力までは回復できない。
怪我や毒素を抜くことはできても、体力の回復にはやはり時間は必要なのさ。」
厳密には今の俺の身体からは風邪の原因菌自体は死滅している。
これは魔女さんが魔法でなんとかしてくれた。
だが、その菌が奪った体力や気だるさはそう簡単には回復しないようだ。
とは言え、1日もあれば戻るだろうとの見解だ。
この世界なら病気や怪我など無縁だと勝手に思い込んでいたが、当然ながらやっぱ限界はあったわけだな…。
あああ…しんどい…。
「なぁ、魔女さん。
話は色々と聞いたけど、その男を探し出して具体的にどうすれば解呪出来るんだ?」
「そうだねぇ…。当時も他の研究者たちがその男を囲い込んで解呪させようとしたけど、皆返り討ちにあった…。
彼は私と同じくらいの魔法の天才だからね。
専門分野は呪いだけど…。
それはもう…悲惨なやり方で私の周りの人達の命を奪っていったよ…。
だからこそ、私は今の今まで諦めていたのさ…。」
「なるほどな。要するにその男をぶちのめせば良いのか。
オレの悪魔の右腕で去勢しちまおう。うん、そうしよう。そんなクソ野郎は去勢すべきだ。
去勢させてくれ。」
魔女さんと2人楽しそうに笑う盗賊ちゃん。
「良いねぇ…。それはいい。是非とも頼むよ。あの男の悔しがる顔が見てみたい♪」
「任せろ!その時が来たらトマトのごとくグシャっと言ってやるぜ!」
思わず聞いてる俺の方がタマヒュンしてしまった…。
「それにしても、なんだか済まないね…。
君は私の事を聞いたら、確実に私の呪いの根源を叩きのめしに行くかする事は予想できていたのに…。だが、話さずに死ぬのもだんだんつらくなってきてね…。」
「こっちこそ…。色々とその想いや感情を押し殺しながら俺と過ごすのはつらかっただろう…。
俺と盗賊ちゃんの関係もあったから、気を使わせてしまってもいたと思うけど…。」
「まぁね…。君たち2人を見れば見るほど重荷になりたくないなと思うようになってきてね…。
こんなタイミングになってしまった事を謝罪するよ…。」
盗賊ちゃんは魔女さんの話を聞いた時にすごく辛そうな顔をした。
自分がこのままの立場で良いのかとか色々と考えたのかもしれない。
俺はそこを先回りするように、この呪いの根源である男を叩きのめす事に決めた。
今わかってる情報は、その男は南の大陸の別次元の世界、天上界にいる事くらいだ。
「ひとまず、その男について詳しく聞いても良いかな?天上界に行ってもそいつを見つけ出さなければ意味がない…。」
「うむ。まず、彼は天使族の人間だ。
だが、昔事故で背中の翼を失って地上で生きる事になったんだよ。
翼を失ったとは言えど天上界の天使族である事には変わりない。
故に天使族の秘術を使って、天上界に戻っていたのだろう…。
当たり前のことといえばそうなのだが、完全に見落としていた…。
ただ、天上界に戻っていたとしても、翼を失った天使族は天使族の間では悪に染まる恐れのあるものとして恐れられていてもおかしくはない。
迫害を受けている恐れもある。
天上界にさえ入り込めれば、探し出せる余地は十二分にあると思う。」
翼をもがれた天使…か。
「なぁ、魔女さん…。もしかしてそいつも、それだけ深い恨みを抱えているなら邪神に魅入られていたとかって可能性はないのか?」
「今となってはわからないね…。ただ、たしかに彼はその呪いで多くの人の命を奪った。
だが、その原因は…出会えるかどうかもわからない異世界人にうつつを抜かしていた私の責任だ…。
この罪は償っても償い切れるものじゃない…。」
盗賊ちゃんは魔女さんのその話を聞いて切ない顔を浮かべる。
魔女さんはずっとこんな想いと罪を抱えて、今この時まで生きてきて、そして俺と出会って、そして、また諦める選択肢を取っていたのか…。
今の今まで…。
「魔女さん、魔女さんの選択は罪じゃないよ。
夢を追うことは罪じゃない。夢を叶えることも罪じゃない。
恋することが罪だって言うなら、俺がそれを背負ってやる。
それは、恋させた俺の罪だ。」
「ふふ、ありがとう。私は君に出会えて幸せだよ。諦めていた人生にようやく光が灯るような気分だ。
私のせいで奪われた命のためにも、共に戦ってくれるかい?敵は強大だ。
もしかしたらまた邪神との闘いになるかもしれない。それでも君は…戦ってくれるかい?」
「当然だよ。俺はもう決めたから。
その為に俺は今、この世界のここにいるんだと思う。ただ、また邪神と戦う事になるなら勇者ちゃんも一緒の方が安心かもだね…。
俺もまた伊邪那美命の力を出せるかわからないし…。出せたとしても、活動限界時間の間にまた邪神を討てるかはわからない…。」
そう、活動限界時間。
俺は初戦は人だ。
魔族と違い、無尽蔵に魔力を持つわけでもないし、空気中の魔祖を取り込む力もない。
体内に蓄えた魔力の範囲でしか力を使えないし戦えないのだ。
今まではその限界までにド派手な必殺技をかまして、なんとか勝利を収めてきた。
だが、毎回それが通用する保証はない。
敵を圧倒できる保証だってないんだから…。
「ふむ、魔力に関しては心配なかろう。
ワシ達がついておる。
魔力が切れる前に存分に口吸いをして補給するが良いぞ!」
「そんな、ど変態みたいなことはなるべくなら遠慮しておきたい…。」
「だが、いざとなればそうも言うてられぬだろう。
お前以外に邪神を討てるだけの神の力を完全行使できる奴はおらぬからな。」
「馬鹿野郎!そう言う時はオレが居るだろ!
オレにこれでもかってくらいにキスすれば良いんだよ!」
んむ。どうしようもなくなれば最優先は当然盗賊ちゃんだな。
「あ、あの…。ところで私はいつまでマスターのおでこの上に尻尾を乗せていれば良いのでしょうか…?
これ、結構恥ずかしいですわね…。」
「氷嚢代わりにはちょうど良いではないか!
早速役に立ってよかったなリヴァイアサンよ!」
「こんな役立ち方は望んでおりませんわ…。」
とは言え、リヴァイアさんの尻尾は結構ひんやりしてて気持ちいい。
そして、鱗がある割には意外とツヤツヤしっとりな上にプニプニしてて触り心地も堪らないのだ。
「ひゃんっ!あ、あんまり尻尾をぷにぷにしないでくださいましっ!そこは私の…その…性感帯ですので…んはぁあんっ!もう!マスター!わかっててやってますわね!?」
「ごめん、このプニプニ感触がすごい癖になって…。ほら、盗賊ちゃんも触ってみて。」
「うぉおぉっ!なんだこれ!もちもちしてる!ひんやりプニプニだな!」
「お二人ともっ!加減を!加減をお願いしますわっ!」
ちなみにケロちゃんは戦士ちゃんと妹ちゃんと一緒に器用に果物を向いてくれていた。
尚、ギルマスちゃんはあまりにも包丁さばきがクソだった為に包丁を持つことを禁止されていた。
「マスター!剥けたぞ!ズルムケだ!」
「その言い方はやめなさい。」
「大賢者、何食べる?ほら、食べさせてあげるわよ。こう言うときくらいしか貴方、人に頼ろうとしないし。」
「賢者様はなんでも1人でやろうとしすぎなのです…。先日の戦いも私たちはまるで傍観者でした…。」
妹ちゃんはしゅんっとしながら先日の戦いのことを思い出してるようだった。
「何を言う魔法使いちゃん!君が私の傷を癒しておいてくれたからこそ、私は復活できたのだ!
あれは大賢者の力だけではないんだぞ!」
「でも、そのせいで邪神さんに利用されましたし…。」
「うぐっ!それはー…。あれだ…。タイミングが悪かっただけだ!汚い!邪神汚い!」
実際、邪神は果たしてどんなタイミングで勇者ちゃんに取り憑いたのだろう?
イフリーちゃんの力ごと消しとばしたと思っていたのに…。
あの場のどこかに留まっていたのか、それとも湧いて出てきたのか…。
その辺はまだ色々と謎と考察を重ねないとだな…。
なんというか…邪神についても根源を叩かなければ、今後もっと数を増やしたり強力すぎる存在と化して現れる危険の予感がする…。
「ところで大賢者!南の大陸まではケルベロス殿の手を借りるとして、そこから先、天上界にはどうやって至るつもりなんだ?」
「と言うと…?
簡単に行けないってことか?」
「そうだね、そこに関してはまず天使族の話をしようか。
天使族と言うのは肉体を持たない種族なのだよ。
故にこの世界と隣り合う、死者の世界でもある天上界という世界にその身を普段は置いている。
だが時々、地上の人間達と交流する為に肉体を作り出して降りてきたりするものもいるんだ。
その1人が私の元で研究者として働いていて、私にこんな呪いを施した男というわけだね。
つまり、天上界と言うものは死者を除けば本来なら肉体を持つものは入り込めない世界なんだ。」
うぉぉぉぉい…。行くと意気込んだは良いもののいきなり超難題じゃねぇかよ…。
「方法が全くないわけでも無いがな。
ワシの爺さん世代は天上界のアホ天使どもを皆殺しにしようと肉体ありきで乗り込んだりもしておる。方法はあるんだよ。
おい、戦士の小娘。お前、大賢者の記憶に寄ると次元斬を使えるな?」
「え?えぇ。ただ、あれっきり使ってないしあの時はその…大賢者をこの世界に連れ戻したいって必死だったから…。
今もできるかどうかとか、任意の世界へ繋げられるかはわからないわよ?」
「ふん!そこは案ずるな!ワシがおるからな!
お前はただ、次元斬を振るえば良い。
座標はワシが指定して切り開いてくれようぞ!」
「おー、マオちゃん頼もしい~。」
そう言えば、この子。この城含めて易々と転移魔法を使っていたな…。
まぁ、魔王だし。と納得してたけど、よくよく考えれば色々ととんでもないよな…。
「ひとまずだ。南の大陸には天上界へ通ずると言われている遺跡があるのだ。
まずはそこへ至り、そしてそこから次元斬でゲートを開く。
そのあとはそのクソ野郎を探す作業だな。
そこはそうだな…。盗賊!お前のスキルを利用しよう。
ワシが力を注げば、より強大なスキルへと進化するはずじゃ。
世界の果てまで見渡せる最強の千里眼にな。
と、そういえば肝心のそいつの肖像画とかはないのか?」
「ないよ。そんなものは…。
とはいえ、たしかに姿を知らなければ探しようもないか…。
魔王様、記憶を読み取ってくれるかい?」
そう言うと、マオちゃんは魔女さんの額に手をかざし記憶を読み取る。
「うわっ!なんだこの絵に描いたようないけ好かないイケメン野郎は…。さぞかしもてたろうな…。」
「そう見えて、彼は結構一途なんだよ。
他の女性を誰一人寄せ付けず、私にだけ好意を抱いていた。
だがその届かぬ愛の強さ故に暴走してしまったのさ…。」
「難儀なやつだな…。惚れる相手を誤らなければもっと違う未来もあったろうにのう…。
おい、大賢者。すまほとやらを出せ。
そこにこの男の姿を書き込む。」
俺はスマホを取り出し、マオちゃんに手渡す。
どんな魔法かは知らないが、カメラロールに男の画像が一枚追加された。
割と真面目にどんな魔法だよ…。
「あー、うん…。たしかにこれはイケメンだなぁ…。」
「私にも見せてくれ大賢者!うわ…まるでこう、ユーやっちゃいなよとか言いそうな社長がプロデュースしてそうなアイドル顔だね…。」
「そのネタ、この世界の人たちわかんないから…。」
いやまぁしかし、性格はまだしも顔は良い。
それはたしかだった。
「おや?賢者くん、もしかして彼の顔に嫉妬してるのかい?
もしそうならば安心したまえ。
私にとって君は誰よりも魅力的で素敵なただ一人の愛しき人だよ…。」
身体を半分起こしてる俺を、魔女さんは優しく抱きしめてきた。
「それについてはオレにとってもだぞご主人様?
いや、みんなにとってもかもだけど…。
ここに居るみんな、ご主人様のことを誰よりも素敵で魅力的な人だって思ってんだ。
だからさ、自分を悲観する必要はないんだぜ?」
俺は思わず自分の腹に溜まった駄肉を見る。
「この腹でもか?」
笑いを取ろうとシパーンシパーンッと自分の腹を叩いて弛ませてみる。
「お、おう…。そんなのどうでも良いくらい好きだが、まぁたしかに引き締まったらもっと好きになると思うぞ…。な、なぁみんな?」
全員が肩で笑いをこらえて振るえている。
「お前らなぁ!ほーらやっぱイケメンがいいんだ!引き締まった男の方が良いんだー!
ふーんだっ!いいもんいいもん。リヴァイアさんの尻尾抱き枕にして寝てやるもんっ!」
「あぁ~!マスター!そこで私をまきこまないでくださいましーっ!」
俺はふてくされながらリヴァイアさんの尻尾を枕にして一眠りすることにした。
「ふふ…。賢ちゃんは変わらないな…。
昔のままでお姉さんは安心したよ…。」
そして、周りに聞こえるか聞こえないかくらいの声で、勇者ちゃんはそうそっと呟くのだった。
魔女さんを呪いから解放する為に南の大陸に行こうと意気込んだはいいものの、俺は思いっきり風邪を引いていた…。
「発熱、悪寒、だるさ、頭痛…。完全に満身創痍じゃないか…。
やはり、伊邪那美命の力は君の魔力だけでなく肉体的な体力も奪ったんだろうね…。」
「くそぉ…。なんかごめん…。いぷしっ!」
「大丈夫かご主人様…?
結構顔色悪いけど…。と言うかすぐに治るのか…?」
「魔法だって万能ではないからね。
失われた肉体の体力までは回復できない。
怪我や毒素を抜くことはできても、体力の回復にはやはり時間は必要なのさ。」
厳密には今の俺の身体からは風邪の原因菌自体は死滅している。
これは魔女さんが魔法でなんとかしてくれた。
だが、その菌が奪った体力や気だるさはそう簡単には回復しないようだ。
とは言え、1日もあれば戻るだろうとの見解だ。
この世界なら病気や怪我など無縁だと勝手に思い込んでいたが、当然ながらやっぱ限界はあったわけだな…。
あああ…しんどい…。
「なぁ、魔女さん。
話は色々と聞いたけど、その男を探し出して具体的にどうすれば解呪出来るんだ?」
「そうだねぇ…。当時も他の研究者たちがその男を囲い込んで解呪させようとしたけど、皆返り討ちにあった…。
彼は私と同じくらいの魔法の天才だからね。
専門分野は呪いだけど…。
それはもう…悲惨なやり方で私の周りの人達の命を奪っていったよ…。
だからこそ、私は今の今まで諦めていたのさ…。」
「なるほどな。要するにその男をぶちのめせば良いのか。
オレの悪魔の右腕で去勢しちまおう。うん、そうしよう。そんなクソ野郎は去勢すべきだ。
去勢させてくれ。」
魔女さんと2人楽しそうに笑う盗賊ちゃん。
「良いねぇ…。それはいい。是非とも頼むよ。あの男の悔しがる顔が見てみたい♪」
「任せろ!その時が来たらトマトのごとくグシャっと言ってやるぜ!」
思わず聞いてる俺の方がタマヒュンしてしまった…。
「それにしても、なんだか済まないね…。
君は私の事を聞いたら、確実に私の呪いの根源を叩きのめしに行くかする事は予想できていたのに…。だが、話さずに死ぬのもだんだんつらくなってきてね…。」
「こっちこそ…。色々とその想いや感情を押し殺しながら俺と過ごすのはつらかっただろう…。
俺と盗賊ちゃんの関係もあったから、気を使わせてしまってもいたと思うけど…。」
「まぁね…。君たち2人を見れば見るほど重荷になりたくないなと思うようになってきてね…。
こんなタイミングになってしまった事を謝罪するよ…。」
盗賊ちゃんは魔女さんの話を聞いた時にすごく辛そうな顔をした。
自分がこのままの立場で良いのかとか色々と考えたのかもしれない。
俺はそこを先回りするように、この呪いの根源である男を叩きのめす事に決めた。
今わかってる情報は、その男は南の大陸の別次元の世界、天上界にいる事くらいだ。
「ひとまず、その男について詳しく聞いても良いかな?天上界に行ってもそいつを見つけ出さなければ意味がない…。」
「うむ。まず、彼は天使族の人間だ。
だが、昔事故で背中の翼を失って地上で生きる事になったんだよ。
翼を失ったとは言えど天上界の天使族である事には変わりない。
故に天使族の秘術を使って、天上界に戻っていたのだろう…。
当たり前のことといえばそうなのだが、完全に見落としていた…。
ただ、天上界に戻っていたとしても、翼を失った天使族は天使族の間では悪に染まる恐れのあるものとして恐れられていてもおかしくはない。
迫害を受けている恐れもある。
天上界にさえ入り込めれば、探し出せる余地は十二分にあると思う。」
翼をもがれた天使…か。
「なぁ、魔女さん…。もしかしてそいつも、それだけ深い恨みを抱えているなら邪神に魅入られていたとかって可能性はないのか?」
「今となってはわからないね…。ただ、たしかに彼はその呪いで多くの人の命を奪った。
だが、その原因は…出会えるかどうかもわからない異世界人にうつつを抜かしていた私の責任だ…。
この罪は償っても償い切れるものじゃない…。」
盗賊ちゃんは魔女さんのその話を聞いて切ない顔を浮かべる。
魔女さんはずっとこんな想いと罪を抱えて、今この時まで生きてきて、そして俺と出会って、そして、また諦める選択肢を取っていたのか…。
今の今まで…。
「魔女さん、魔女さんの選択は罪じゃないよ。
夢を追うことは罪じゃない。夢を叶えることも罪じゃない。
恋することが罪だって言うなら、俺がそれを背負ってやる。
それは、恋させた俺の罪だ。」
「ふふ、ありがとう。私は君に出会えて幸せだよ。諦めていた人生にようやく光が灯るような気分だ。
私のせいで奪われた命のためにも、共に戦ってくれるかい?敵は強大だ。
もしかしたらまた邪神との闘いになるかもしれない。それでも君は…戦ってくれるかい?」
「当然だよ。俺はもう決めたから。
その為に俺は今、この世界のここにいるんだと思う。ただ、また邪神と戦う事になるなら勇者ちゃんも一緒の方が安心かもだね…。
俺もまた伊邪那美命の力を出せるかわからないし…。出せたとしても、活動限界時間の間にまた邪神を討てるかはわからない…。」
そう、活動限界時間。
俺は初戦は人だ。
魔族と違い、無尽蔵に魔力を持つわけでもないし、空気中の魔祖を取り込む力もない。
体内に蓄えた魔力の範囲でしか力を使えないし戦えないのだ。
今まではその限界までにド派手な必殺技をかまして、なんとか勝利を収めてきた。
だが、毎回それが通用する保証はない。
敵を圧倒できる保証だってないんだから…。
「ふむ、魔力に関しては心配なかろう。
ワシ達がついておる。
魔力が切れる前に存分に口吸いをして補給するが良いぞ!」
「そんな、ど変態みたいなことはなるべくなら遠慮しておきたい…。」
「だが、いざとなればそうも言うてられぬだろう。
お前以外に邪神を討てるだけの神の力を完全行使できる奴はおらぬからな。」
「馬鹿野郎!そう言う時はオレが居るだろ!
オレにこれでもかってくらいにキスすれば良いんだよ!」
んむ。どうしようもなくなれば最優先は当然盗賊ちゃんだな。
「あ、あの…。ところで私はいつまでマスターのおでこの上に尻尾を乗せていれば良いのでしょうか…?
これ、結構恥ずかしいですわね…。」
「氷嚢代わりにはちょうど良いではないか!
早速役に立ってよかったなリヴァイアサンよ!」
「こんな役立ち方は望んでおりませんわ…。」
とは言え、リヴァイアさんの尻尾は結構ひんやりしてて気持ちいい。
そして、鱗がある割には意外とツヤツヤしっとりな上にプニプニしてて触り心地も堪らないのだ。
「ひゃんっ!あ、あんまり尻尾をぷにぷにしないでくださいましっ!そこは私の…その…性感帯ですので…んはぁあんっ!もう!マスター!わかっててやってますわね!?」
「ごめん、このプニプニ感触がすごい癖になって…。ほら、盗賊ちゃんも触ってみて。」
「うぉおぉっ!なんだこれ!もちもちしてる!ひんやりプニプニだな!」
「お二人ともっ!加減を!加減をお願いしますわっ!」
ちなみにケロちゃんは戦士ちゃんと妹ちゃんと一緒に器用に果物を向いてくれていた。
尚、ギルマスちゃんはあまりにも包丁さばきがクソだった為に包丁を持つことを禁止されていた。
「マスター!剥けたぞ!ズルムケだ!」
「その言い方はやめなさい。」
「大賢者、何食べる?ほら、食べさせてあげるわよ。こう言うときくらいしか貴方、人に頼ろうとしないし。」
「賢者様はなんでも1人でやろうとしすぎなのです…。先日の戦いも私たちはまるで傍観者でした…。」
妹ちゃんはしゅんっとしながら先日の戦いのことを思い出してるようだった。
「何を言う魔法使いちゃん!君が私の傷を癒しておいてくれたからこそ、私は復活できたのだ!
あれは大賢者の力だけではないんだぞ!」
「でも、そのせいで邪神さんに利用されましたし…。」
「うぐっ!それはー…。あれだ…。タイミングが悪かっただけだ!汚い!邪神汚い!」
実際、邪神は果たしてどんなタイミングで勇者ちゃんに取り憑いたのだろう?
イフリーちゃんの力ごと消しとばしたと思っていたのに…。
あの場のどこかに留まっていたのか、それとも湧いて出てきたのか…。
その辺はまだ色々と謎と考察を重ねないとだな…。
なんというか…邪神についても根源を叩かなければ、今後もっと数を増やしたり強力すぎる存在と化して現れる危険の予感がする…。
「ところで大賢者!南の大陸まではケルベロス殿の手を借りるとして、そこから先、天上界にはどうやって至るつもりなんだ?」
「と言うと…?
簡単に行けないってことか?」
「そうだね、そこに関してはまず天使族の話をしようか。
天使族と言うのは肉体を持たない種族なのだよ。
故にこの世界と隣り合う、死者の世界でもある天上界という世界にその身を普段は置いている。
だが時々、地上の人間達と交流する為に肉体を作り出して降りてきたりするものもいるんだ。
その1人が私の元で研究者として働いていて、私にこんな呪いを施した男というわけだね。
つまり、天上界と言うものは死者を除けば本来なら肉体を持つものは入り込めない世界なんだ。」
うぉぉぉぉい…。行くと意気込んだは良いもののいきなり超難題じゃねぇかよ…。
「方法が全くないわけでも無いがな。
ワシの爺さん世代は天上界のアホ天使どもを皆殺しにしようと肉体ありきで乗り込んだりもしておる。方法はあるんだよ。
おい、戦士の小娘。お前、大賢者の記憶に寄ると次元斬を使えるな?」
「え?えぇ。ただ、あれっきり使ってないしあの時はその…大賢者をこの世界に連れ戻したいって必死だったから…。
今もできるかどうかとか、任意の世界へ繋げられるかはわからないわよ?」
「ふん!そこは案ずるな!ワシがおるからな!
お前はただ、次元斬を振るえば良い。
座標はワシが指定して切り開いてくれようぞ!」
「おー、マオちゃん頼もしい~。」
そう言えば、この子。この城含めて易々と転移魔法を使っていたな…。
まぁ、魔王だし。と納得してたけど、よくよく考えれば色々ととんでもないよな…。
「ひとまずだ。南の大陸には天上界へ通ずると言われている遺跡があるのだ。
まずはそこへ至り、そしてそこから次元斬でゲートを開く。
そのあとはそのクソ野郎を探す作業だな。
そこはそうだな…。盗賊!お前のスキルを利用しよう。
ワシが力を注げば、より強大なスキルへと進化するはずじゃ。
世界の果てまで見渡せる最強の千里眼にな。
と、そういえば肝心のそいつの肖像画とかはないのか?」
「ないよ。そんなものは…。
とはいえ、たしかに姿を知らなければ探しようもないか…。
魔王様、記憶を読み取ってくれるかい?」
そう言うと、マオちゃんは魔女さんの額に手をかざし記憶を読み取る。
「うわっ!なんだこの絵に描いたようないけ好かないイケメン野郎は…。さぞかしもてたろうな…。」
「そう見えて、彼は結構一途なんだよ。
他の女性を誰一人寄せ付けず、私にだけ好意を抱いていた。
だがその届かぬ愛の強さ故に暴走してしまったのさ…。」
「難儀なやつだな…。惚れる相手を誤らなければもっと違う未来もあったろうにのう…。
おい、大賢者。すまほとやらを出せ。
そこにこの男の姿を書き込む。」
俺はスマホを取り出し、マオちゃんに手渡す。
どんな魔法かは知らないが、カメラロールに男の画像が一枚追加された。
割と真面目にどんな魔法だよ…。
「あー、うん…。たしかにこれはイケメンだなぁ…。」
「私にも見せてくれ大賢者!うわ…まるでこう、ユーやっちゃいなよとか言いそうな社長がプロデュースしてそうなアイドル顔だね…。」
「そのネタ、この世界の人たちわかんないから…。」
いやまぁしかし、性格はまだしも顔は良い。
それはたしかだった。
「おや?賢者くん、もしかして彼の顔に嫉妬してるのかい?
もしそうならば安心したまえ。
私にとって君は誰よりも魅力的で素敵なただ一人の愛しき人だよ…。」
身体を半分起こしてる俺を、魔女さんは優しく抱きしめてきた。
「それについてはオレにとってもだぞご主人様?
いや、みんなにとってもかもだけど…。
ここに居るみんな、ご主人様のことを誰よりも素敵で魅力的な人だって思ってんだ。
だからさ、自分を悲観する必要はないんだぜ?」
俺は思わず自分の腹に溜まった駄肉を見る。
「この腹でもか?」
笑いを取ろうとシパーンシパーンッと自分の腹を叩いて弛ませてみる。
「お、おう…。そんなのどうでも良いくらい好きだが、まぁたしかに引き締まったらもっと好きになると思うぞ…。な、なぁみんな?」
全員が肩で笑いをこらえて振るえている。
「お前らなぁ!ほーらやっぱイケメンがいいんだ!引き締まった男の方が良いんだー!
ふーんだっ!いいもんいいもん。リヴァイアさんの尻尾抱き枕にして寝てやるもんっ!」
「あぁ~!マスター!そこで私をまきこまないでくださいましーっ!」
俺はふてくされながらリヴァイアさんの尻尾を枕にして一眠りすることにした。
「ふふ…。賢ちゃんは変わらないな…。
昔のままでお姉さんは安心したよ…。」
そして、周りに聞こえるか聞こえないかくらいの声で、勇者ちゃんはそうそっと呟くのだった。
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わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
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内容紹介
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