その辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。

風呂桶之水源餅

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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。

第103話 思い出を取り返す旅へ

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かくして私たちはエステレラさんと共にセントラルを抜け、隣国に支配された西の都とセントラルの国境付近まで来ていた。

「ここに来るのも、あの戦い以来になるなぁ~!それにしても強かったな!隣国の王は!私たち全員があっさり負けたからな!」
「その結果、お父さんが納める予定だったこの国はそのまま隣国に支配された…。でも、なんで隣国はそのままセントラルまで侵攻しなかったんだろう?」
「私もその件については正直理由が推察できない!何せ頭が良くないからな!」
「あ、はい。それはよく知ってます。」

途端、剣の持ち手で頭を小突かれた。
ただしエステレラさんの小突くはもはやどつくであるが。

「いっだぁぁぁぁっ!!ちょ、エステレラさん!加減ってもんを少しh」
「少しは言葉を選ぼうな?な?」
「あ、はい。ごめんなさい…。」

自分で頭悪いって言ったくせに理不尽だなこの人…。
ほんと理不尽だわ。超いてぇし…。くそ…。まじムカつく。

「ねぇ、エステレラさん。この国境にそって作られた壁って15年前はなかったんですよね?」
「あぁ、そうだ。この壁はあの戦いの最中で隣国の王が作り出しものだ。」
「これだけの巨大でとんでもない距離の壁を…?」
「あぁ、隣国はそもそも魔剣大国と呼ばれている国だ。
そして、その王は剣王と呼ばれ恐れられていた。
あの国の戦士達は皆、自分の魔力から一本の魔剣を生成しその魔剣で生涯闘うと言われている。
だが、剣王は1本どころか無数の魔剣を生成し扱う力を持っていた。
しかも、その生成した魔剣一つ一つが意思を持って襲いかかってくるんだよ。異常で異質な力だった…。
私の勇者の剣が…初めて折られたんだ。まるで、剣ごと私の心を折るかのような圧倒的力だった。」

そう言ってエステレラさんは空を仰ぎ見て、つぶやくように言葉を続けた。

「そして、王は私たちに向けてあの人の作ってきたアクセサリーや道具のたくさん詰まった鞄を投げつけてきたんだよ。奴の遺品だってね。」
「遺品…、お父さんを殺したのは…剣王ってこと?」
「おそらくね…。奴隷紋が消えてただでさえ情緒不安定になってたヴェルデがそれを見て力を暴走させてたっけなぁ…。
もちろん、我を忘れたのはヴェルデだけじゃない私も他のみんなもだ。
国民やギルドの人たちも皆、だれもが絶望と恐怖と怒りの感情を持ったと思う。
あの人はみんなにとっての大きな希望で、光だったからね。」

あの戦いでお父さんの築いた街に住んでいた多くの人たちが犠牲になった。
最も犠牲になったのは国を守らんと戦ったギルド所属の冒険者や賞金稼ぎの人たちと聞く。

「あの戦いで生き残った国民や冒険者の人たちは、確か今は隣国の国民として扱われてるんだっけ…。」
「そうだな。私たちロイヤルナイツと魔王やその配下は国外へと追放されたけどね。
ギルマスはあの国の人間として扱われてると聞いてる。」
「それってつまり…。」

そんな会話をしながら国境の壁に近づいたその時、会話の続きとして話そうとしていた内容が結果として目の前に現れた。

「はぁ…、なんでよりによってリィンと一緒にここにきたのニャ‥エステレラ…。」
「やぁ!久しぶりだねギルマス!
決まっているだろう!彼の作ったこの地を取り戻しにきたのさ!」

さっきまで湿っぽい話をしていたエステレラさんがいつものテンションで猫耳の少女に声をかける。

「何故!よりによって!あの人の子どもと一緒に死ににきたんだと言ってるのニャ!!ここがどこで!ワタシが誰かわからないわけじゃないだろうハズにゃ!!」
「あぁ。わかってるよ。だから言ったろう?取り戻しにきたんだって。
闘えるだけの力をつけるのに15年もかかってしまったけどね!」

そう言うとエステレラさんは、腰に下げた剣を抜いた。

「え?エステレラさん…その剣…折れてますけど…?」
「あぁ、そういえばリィンに見せるのは初めてだったな!これこそ、かの戦いで折られた私の剣だ!
そして…私の…魔剣だ!!ブレイブチャーーーージッ!!!!」

そう言うと、折れた剣が光り輝き新たな形へと変化していった。

「これが私の魔剣…エクスカイザーだ!!」
「にゃっ…!?まさか…剣王の加護もなく自ら魔剣を生成しただニャンて…いったいどう言うことにゃ!?」
「まぁ、勇者だからな!出来ると思えば大体のことは割となんとか出来る!!15年かかった事はびっくりしたがな!はっはっはっ!」
「相変わらずデタラメなヤツだにゃ…。」
「出まかせ運次第は私の専売特許みたいなもんさ!
で、どうするんだいギルマス。君は私と戦うのかい?」

そう言うと、ギルマスと呼ばれる少女は腰につけていた6本の短剣を指の間に挟んで構えた。

「忘れるな勇者エステレラ。いまお前の目の前にいるのは‥隣国に支配された土地のギルマスで…お前の敵にゃ…。
戦わないと言う選択肢は…選ぶことを許されていない!」

そう言うとギルマスは手足を虎のような姿に変化させ、獣人特有の特殊形態である獣化形態へと移行した。

「そうか。ギルマスは私と戦わなければならないか…!大変だな!何故なら私はかーなーり、強い!!からな!!」
「言ってろ小娘。数十年しか生きていない小童が私に敵うと思うなよ?」

ギルマスって人、目つきも鋭くなったと思ったら口調もかわってるぅうっ!?
と言うかこれもう私いない方が良くない!?
戦う前から次元が違いすぎるのまるわかりなんですけどぉぉおおっ!?

「ギルマスも魔剣を発動させたらどうだい?
それ、魔剣なんだろう?」
「ふん…後悔するなよ?」

指の間に挟んでいた短剣が巨大な虎の爪のような形に変化する。
その周りには雷がまとわりつき、見るからに強力そうに見える…。

「さて、やってみるか!いくぞギルマス!!」

エステレラさんがそう言うとギルマスはエステレラさんではなく、私目掛けてとんでもない速さで迫ってきt…

え!?私!?ちょちょちょ待って!私!?
ムリムリムリムリ!!戦えないから!!死ぬから!!

「待って待って待って!速っ!」

ギルマスさんが私に腕を大きく振りかぶり斬りかかろうとしてきたその時…、ズボンにつけてたヴァリアブルソードが勝手に姿を変えて大剣になって防御してくれた。

「うぉ…なんかよくわからないけど…助かった!!」

剣を握ると、剣は形を変えて細長い「刀」と言う武器の形に変化した。
なんでもこの「刀」と言うのは父の世界の故郷に伝わるそれはもうすごい剣だったとかなんとか…。

って今はそれどころじゃない!!

「ほう…?疾風迅雷の爆裂猫娘と恐れられた私の速度に対応するか…。よく鍛えられているじゃないか?リィン…。」
「私もこの速度が目に追えてることに驚いてますよ!
ていうかほんと速い!怖い!!」
「ギルマス!君の相手は私だろう!!こっちを向かないか!!」

エステレラさんが私の元へ駆け寄ろうとしたその時だった。

「エステレラさんストップ!!なんか足元で光ってる!!」
「これは…糸か…!!」

エステレラさんは糸に触れることなく器用に飛び跳ねて、私の元へと駆け降りた。

「ふぅ…流石ですね勇者さん。お久しぶりです。」
「ラルカ!君も私を阻もうとは驚いたな!」
「えぇ、あの人に名前は頂きましたが、私はロイヤルナイツではありませんから。」
「ただの人形屋さんの娘さんだった君が私相手に戦いを挑もうとは驚いたな!」
「仕方ありませんよ。私も此方に残された側ですから…。
剣王に従わない訳にはいきません…、癪に触りますが…。」

そう言うと、ラルカと言われた人の背中から8本の蜘蛛の足のようなものが現れる。
どうやらこれも魔剣の一つのようだ。

「魔剣まで蜘蛛なんだな君は!驚いたな!」
「まるで私にとっての罪や業が形にされたような気分ですよ…この形は…。ですが、とっても扱いやすいんです。」

見えないほど細い糸の刃がエステレラさんの周囲を複雑に囲っていく、動きを一つ間違えば全身をバラバラに切り落とすのではないか?と思えるほど足元の草を切り落として迫って来ている。

「ふむふむ!たしかにこれはすごいな!少し動けばバラバラ死体になってしまいそうだ!しかぁし!これでどうにか出来る私ではないのだ!」

エステレラさんが剣を構えると、剣は眩い光を放ち糸を消滅させていく。

「この力…!マジックキャンセラーですか!?」
「正直よくわからん!!とりあえず、消せるだろうと思ったらなんか消せた!それだけだ!」

相変わらずデタラメである。

一方、私の方はと言うと先ほどから高速移動しながら切りかかってくるギルマスさんの剣を、なんとか刀を打ちあわせることで軌道を逸らし凌いでると言う状態だった。

正直、反撃も出来る気がしない以上勝てる気が全くしないと言うところだった。

「死にたくないならさっさと逃げ帰ったらどうだ?逃げるなら私たちも戦う必要はない、あの人の子どもを私に傷つけさせないでくれないか?」
「それなら二人とも剣を納めてすんなりと中へ通してくださいよ!私はここに現れたとか言うお父さんの噂を確かめにきただけなんですから!!」
「それが出来るならそうしてる…。私たちに与えられた魔剣は呪いのようなものだ。ここに侵入する者を排除するために自動で発動し、私たちの身体を使っているような物だからな…。」

つまり、意志を持った魔剣に操られてるような状態って事か…。だったらこの魔剣を叩き壊す以外にはないって事だよね…。
とはいえ、弾き返すだけで精一杯なのにいったいどうしろって言うのよ…!

などと考えていたら再びヴァリアブルソードが勝手に形を変え始めた。

「なにこれ…鎌?って重っ!!」

急に重心が変わりバランスを崩した私はその鎌を翻弄されるように振り回してしまう。
が、たまたま振り回した鎌はギルマスさんの胸元を大きく切り裂いた。

「ふむ…!なるほどな!さすがはあの人の剣だ!!」

ギルマスさんの胸元を切り裂いた鎌は、ギルマスさんの胸元から黒い球体を引き摺り出してきた。

「よしいいぞリィン!そのまま振り回してその球体を切り裂け!」
「ええっ!?よくわかんないけど…うぉぉおりやぁあっ!!」

そのままその場で一回転するように鎌を振り回すと、黒い球体は砕け散っていった。

「よぉし!よくやった!」

エステレラさんがそう言ってガッツポーズをとるとギルマスさんが構えていた魔剣が消滅し、ギルマスさんは元の可愛い少女の姿へと戻っていった。

「にゃっ…!魔剣が破壊されたのにゃ…!」
「おぉ…それはたすかります。そのまま私もえいやっと頼みます。」
「えぇっ!?え、えいやーっ!」

私は再び鎌を振り下ろし、ラルカさんの胸元を同じように切り裂き引き摺り出された球体を破壊した。

「魔剣のコアだけを引き摺り出して破壊できる鎌…。
名付けて、ソウルイーターとでも言うべきでしょうか?
さすが彼の方の娘様ですね。お見事です。助かりました。」
「わけわかんないし…。もはや何が起こった…。」
「それがインフィニティブレードの真髄だリィン!
その剣は持ち主が望み、思い描いた力を持つ剣に自在に姿形を変えるアイテムなんだ!よくぞ使いこなしたな!
今更すぎて腹が立ってきたぞ!!」

なるほど…無意識で私、この剣を変化させたわけか…。
普段はただの木刀にしかならなかったのに…。

ん…?

「今最後にしれっとディスりました?」
「え?事実だろ?」

多分今の私、チベットスナギツネみたいな顔してる気がする。
いや、現物見たことないしこの世界にチベットとかないけど、多分伝え聞いたそんな生き物の顔してる。

「と、とりあえず!これで二人が私たちと戦う必要は無くなったわけね!さぁ!侵入しますよエステレラさん!なんならギルマスさんとラルカさんも!!」
「いやぁ…そう簡単にはいかないと思うにゃあ…。
大体こういう時こそろくでもないやつが来るもんだにゃ。
ほら、来た。えーーーーっと…にゃんだっけ…なんかこう、めちゃくちゃどすけべみたいな名前の。」
「ギルマスさん。聖豪騎士団です。
あと、ギルマスさん、響きは同じですがどっちかというとその考えに至るあなたの方がどすけべです。」
「にゃっ…にゃって…それはあの人にどすけべな身体に…」
「されてませんね私含め。幻想ですよ幻想。ハハッ…。」

な、なんだろう、この人たちの会話を聞けば聞くほど父を軽蔑しなければいけない気がするのはなんでだろう…。
などと考えてたら目の前にアイツが現れた。

カイザ…。また会うなんて…。


「ほう…。貴女は先日の…。一度は拾ったその命をわざわざ散らしにきたんですか?」
「カイザ…。」
「おやおや、顔が青ざめてますよ?今から死ぬ恐怖で青ざめるとは案外可愛いところもあるのですね。」
「ち、ちかづかないで!!お願いだからそれ以上!」
「近づかなければ殺せないでしょう?」
「じゃあせめてそれしまえ!この性豪騎士!!」

私はカイザの股間を指さした。
そこには亀さんが顔を出していました。

「……………、これは大変失礼を…。用を足してそのまま急いで来たせいで…。」
「言い訳とかいいから!!10代になんてもん見せてんのよこの性豪騎士!!」
「ぐふっ!!」

カイザが胸を押さえて倒れた。

「だ、団長!?しっかり!大丈夫ですよ!!団長は本当に性豪だとしても私はウェルカムですから!!」
「その励まし方はやめろ!!後ろで女性団員が引いてるだろ!」

イケメン同士が濃厚な絡みをしてるせいで、その後ろの女性団員がドン引き組とガッツポーズ組に分かれているのを私は見逃さなかった。

「あ、あんたもその…大変なのね…。」
「そんなことはどうでも良い…。国に入るなら私は今度こそ貴女を殺しますよ。」
「そうなるよね…。ところでさ…。」

明らかに胸を押さえて震えてるカイザに私は一応聞いてみた。

「戦えそう?」
「ごめんなさい。落ち着くまで少し待ってください。」

カイザは意外と女の子の一言に弱いことが判明したのであった。
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