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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。
第107話 謎多き偽りの翁
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山奥から転移門を通して戻ってきた私達は、中央皇国のギルドハウスの接待室にてオキナさんをもてなしていた。
「はぁぁぁぁぁあ…………、やっとまともに休息できたぜ…。さらにシャワーに飯に食後のコーヒーとデザートまで、本当にありがとうな魔女さん。大いに助かったぜ。」
「いやいや、色々と嫌な話もする事になるかもしれないからね。
この程度のもてなしくらいさせてくれたまえ。
さぁて、ではお互い色々と話をする前にだが、この指輪をつけてくれるかい?
お互いの言葉を翻訳して理解できるようにする魔道具だ。」
「ほぉ…、こんな便利なもんがあるのか…。
さすがは異世界って感じだな。」
お爺さんは着物の袖の中をゴソゴソしながら翻訳指輪をはめた。
私たちも同じ指輪をはめたのでこれで漸くお互いまともに意思疎通できるようになった。
「さぁて、これで漸くそこの戦士の嬢ちゃんにもまともに文句が言える訳だな。
テメェ、よくもジジィ相手に本気で鬼ごっこしてくれたな…。こちとらマジで殺されるかと思ってたんだぞオイ。
もっとこう色々やり方があったろうよ…?なぁ?」
「ご、ごめんて…。私もその魔導書を持ってる貴方を逃す訳には行かないと必死だったんだよ…。」
「おう、そうか。じゃあまずはこの本の話から聞かせてもらうとするか。
テメェみたいな嬢ちゃんに追いかけ回されたり、壮年のオッさんに襲われたりするくらいだ。なんかヤベェ奴なんだろ?色々出てくるし。
つぅかどうなってんだこれ。四○元ポケットかよ。」
「そう言えば、ベヒーさん…えっと、執事みたいな服着たおじさんをその本から出てきたもので退けたのよね?
どんな武器や力を使ったの?」
オキナさんは袖に腕を入れると、袖からシュッと木刀を取り出した。
「コイツだな。一番使い慣れてる武器を想像したらよくわからねぇがコイツが出てきたんだ。」
おじいさんは机の上に木刀をコトンっと置いた。
木刀の持ち手の部分だけ鉱石のような見た目をしていることから、コレもヴァリアブルソードの一つであることが見て取れた。
「まぁ、あん時は力任せにぶんぶん拳や蹴りをかましてくるだけだったし、あとは素早いだけ程度だったから割と何とかなった。
猪共もコイツで刺せば大体仕留められたし、意外と便利だなコイツは。
さしずめ刃物になら何にでも変形できるって言うアイテムなんだろうと察したが、あってるか?」
オキナさんが机に置いた木刀を指先で小突くと木刀は形を変えて、【私が持っているヴァリアブルソード】と同じ形のアクセサリーに変化した。
「うむ、正解だよオキナ。
なるほど…、その上これは複製品などではなくあの人の使っていた本物のようだ…。
うぅむ…。リィン、君の持っているヴァリアブルソードを見せてくれるかい?」
私はアズマさんにヴァリアブルソードを渡した。
アズマさんは二つのヴァリアブルソードを見比べてある一点に気付いた。
「モノはなぜかはわからないがまったく同じモノのようだ。だが、一点だけ違う点がある。
レジンの部分や木材の部分をよく見てくれ。」
「これは…茶色く変色している…?でもなんでだろう?」
私がそう問うとアズマさんは難しい顔をした。
「ワイズマンの作るアクセサリーは、経年による色の変化も楽しめるアクセサリーだと本人から聞いたことがある。
ここまで色が変化しているとなると、ざっと50年はエイジングしている事になるだろう…。
むしろ、15年分ほどこっちが新しいなら理解できたがなぜぱっと見で50年ほどこちらのが経年しているのか…。
むぅ…、謎が増えてしまったな…。」
「とりあえず、この本から出てくるモノはそのワイズマンっつう奴が作ったアクセサリーって事か。
ほぉ…なるほどな。まぁ大体わかった。
俺がこの本に触れて必要と思ったモノかつ、ワイズマンが作ったモノが出てくる仕組みってぇところか?
なるほどな…、察するにワイズマンってやつぁ、この国でかなり重鎮な魔法使いかなんかだったってところか?
いや、ワイズマン…だから賢者か。
なんにせよそんなすげぇ奴が作った最強の魔道具をホイホイ出せる本を俺みてぇなジジィが手にしちまったもんだから血眼になって探してたってところか。
つうか、さっきちらっと言ってた15年って時間はどっから出てきた?」
【15年】
それはワイズマンことお父さんが姿を消して生死不明になってからの時間。
私達はお父さんの事を知り得る限り全て話した。
そして、その唯一の手掛かりになるかも知れない事がこの本とこの本を使える人かも知れないことも。
「なるほどなぁ…。そう言う事だったのか…。盗賊っぽい見た目のねぇちゃんもこの15年辛かったろう…。
寂しかったろうなぁ…。察する、察するぜっ…。
あぁ、だめだ涙出てきた。」
オキナさんはおいおい泣きながら袖で涙を拭いつつお母さんの背中をポンポン叩いていた。
「だったら、なんつぅかお嬢ちゃんお姉ちゃん方には随分と悪ぃことしちまったかもしんねぇな…。
このジジィは何でこの本を使えるかが正直わからねぇ。
自分の名前もろくに思い出せねぇし、ここにくる以前の記憶がかなり欠落してんだ。
まぁ元々死にかけのジジィだしな。ボケちまってるだけだたぁおもうだがよ。
流石にボケを治せそうなモンはコイツからも出てきやしねぇ…。すまねぇな…。力になりそうにねぇ…。」
「仕方ないさ…、さて結局振り出しに戻ってしまったかな…。これからどうするか…。
もう1人の手かがりかもしれない赤いコートのワイズマンもどきを探す方にシフトすべきか…。」
「でもそっちこそ情報が何もないしね…。私とリィヴェルを助けに現れて以降、一切見かけられてないし…。」
全員が顔を見合わせて大きなため息を吐く。
15年越しの手掛かりが白紙に戻ってしまったのだから…。
「赤いコートのワイズマンもどきか…、そいつぁ他にどんな特徴がある?聞かせろ小娘供。」
「そうだなぁ…、赤いコートに黒い帽子、白い薄手のセーターにデニムのジーンズと茶色い皮のブーツ。
顔は色のついたレンズの眼鏡をかけててよく見えなくて、頭髪は綺麗に手入れされたキラキラした白髪だったよ。
見た目は…10代後半か20代前半か…そんな感じ。
見た目以外だと炎の魔法を駆使してたのが特徴ってところかな。」
「ほぉん…。ワイズマンもどきっつぅか俺もどきとも言えるな…。
このジジィも目が光に弱くなっちまっててな。
それで色付きのレンズの眼鏡をかけてる。
白髪に至ってはジジイだから当然だ。
あと、綺麗に手入れされてねぇから髪が軋んでるんじゃねぇぞ。ジジィだからだ。
なんっつぅか、俺の若い頃みてぇな服装の奴だな…。
変に気になって来やがるぜ…。」
少し不貞腐れてたようにも見えるオキナさん。
おじいさんである事を地味に気にしてるかな?
「とりあえず、俺はその俺もどきを探す旅に出ようかね。
どうせこの世界でやることもねぇしな。
後は旅の資金稼ぎか…。」
「旅をするならこの国の中ではこの札を使えば良い。
君の世界で言うクレジットカードみたいなものだ。
お金を負担しなくて済む魔法のカードという所だね。」
「おいおい、後でこいつをダシに俺を脅そうってんじゃねぇだろうな?念書でも書かしておくか…。いや、この世界でそもそも念書に効力があんのか…?」
「心配しなくても良いよ。万が一でも私がそれをダシに君が不利益を被る行いをした時は私を宿に連れ込んで好きにしてくれても良いよ?」
「ケッ、吐かせ。俺ぁ嫁一筋だ。他の女を抱く気なんかさらさらねぇよ。」
かくして、とりあえず私達は赤いコートの人を探して再び旅に出る事にした。
とりあえずの目的地をどうするかという話になってオキナさんから提案されたのは、再び西の都に戻りたいという話だった。
「ワイズマンの本家本元が居た場所で、オメェらが入りづらくなってた場所って言うなら集められてない手掛かりもあるかもしんねぇだろ?一度行ってみる価値はあるだろう。後はそれから考えりゃ良い。
あぁーでも、この札が使えねぇのか…。
ま、良い、何とかなるだろう。」
私とリィヴェルはオキナさんと一緒に西の都に戻る事に、他のみんなはここまでの報告書を書くために一時中央皇国に滞在する事になった。
しかし、転移門が使えれば楽に戻れるんだけど、こればかりは国同士の問題もあるしなぁ…。
「ひとまず国境まで戻って来たけど、私は良いとして2人もすんなり通してくれるかしら…。」
「通してくれねぇなら力か知恵を行使すりゃ良いだけだ。
相手に合わせてな。」
国境に近付くとカイザの部下の騎士たちが居た。
見覚えのある人も居たので入国したい項を伝えてみる。
「普通なら簡単に入国させる訳には行かないんですが、団長から貴方に対しては無理融通を聞くよう指示されています。
あの人は誇りにかけてとなると尋常じゃなく頑固ですから…。
だからこそ、わからないんですよ。
貴方達2人にあのような事をした自分達の事が…。」
「完全に許した訳じゃないし、きっと一生許さないとは思う。
でも、いつか笑い話に出来るくらいには、私は貴方達と仲良くなれればって思う。
同じ人間だしね。さて、入らせてもらおうか2人とも。」
私はリィヴェルとオキナさんに声をかけて西の都へと入国する。
街の活気一つ見てても、違う国に支配されてるという感じは特に感じない。
あまり深く事情を知らない私達には輪をかけて不思議な光景に見えて来ていた。
「ほぉん…。俺の世界の田舎町程度には栄えてんだな。
この都は確かお前らの父親が王様になった直後くらいに隣国に侵攻されたんだったか?」
「はい。一夜にして隣国の剣王自ら信仰して支配し、その時この土地にいた民全員に魔剣因子を打ち込んだと聞いています。
ですが、私や姉さん、ロイヤルナイツの方達はこの都の外へと追放されて今に至ると…。
ですが、国境を広げる以外には剣王は特に何かをするわけでもなく、実質的にこの土地は中立の立場になっています。ただし互いの国民の行き来については騎士団以外は禁じられていますが…。
あと、この都を収めているのはお父さんの配下になった魔王様らしいですよ。」
「ほぉ…。じゃあお前らの父親の城は今や立派な魔王城って訳か…。おもしれぇ話だな。
魔王ってどんな見た目と性格してんだ?お前らの父親の配下になるくれぇだから、さぞ高貴な奴なんだろうが…。」
リィヴェルが私に視線を移してくる。
まぁ、私も殆ど会ったことはないんだけども、高貴と言うかあのお方は…。
「あのお方は…なんじゃ?美しくて誰もが平伏すような強さを持つ偉大なお方か?それとも、今お前ロリ幼女と言おうとしたか?お?お??」
背後に感じる唐突に現れた殺気に振り返れない私。
一方私の背後に唐突に現れた殺気に目線をやり固まるリイヴェルと、何故かケロッとした顔で私の背後を見ているオキナさん。
「なるほど、そいつが魔王か。
はじめまして、だな。魔王ちゃんとでも呼ぶべきか?」
「ふむ…、確かにお前とははじめましてだな老人よ。
名は何と申す?」
「オキナ。俺の世界でジジィを意味する言葉だ。
そう呼んでくれりゃ良い。」
「そうか、ワイズマンと呼ぶよりその方が良いのかお前は。」
「まぁ俺は紛い物だからな。つぅか、俺とソイツでは生きてきた年季が違い過ぎる。俺の方が多分、ワイズマンより強ぇぞ。
なのに、わざわざ弱いやつの名前なんか、名乗るわけねぇだろう?」
「カカっ!吐かすではないか!では試してみるか?
お前が妾に敵うならそのまま配下になってやろうではないか!」
その言葉を聞いていた周りに居た街の人たちや見回りをしていた騎士団の人たちがざわめき出す。
「ケッ、おもしれぇ。この世界に来てからロクに強い奴とやり合えてなかったからな。
手応えのある奴とやり合えるのは実におもしれぇよ。」
「ククク…、後で後悔しても知らぬぞ年寄り風情が…。
ま、死なぬ程度に遊んでやろう。
よし、ギルドハウス併設の闘技場へ行くぞ。」
そう言うと魔王様はオキナさんの手を取り、楽しそうにギルドハウスへと走り去っていった。
私たちも置いてかれないように必死に追いかける。
それにしても…お父さんより強いぞ、か。
それはちょっと私も聞き捨てならなかったな…。
見たことあるわけじゃないけど、なんかこう、お父さんを馬鹿にされたみたいで…。
「ほぉ…、これはまたでっかい闘技場だな。
つぅかおい、この短時間で何であんなにギャラリーが集まってやがる。数分だぞ数分。」
「この街、噂が広がるのが早いですからね…。
それに回覧板と言うツールで情報共有がすぐ行えるシステムが冒険者にはあるので…。」
「なるほどな…。まぁ良い。
魔王ちゃんはアレか?そんななりでも実年齢は俺なんざより余程長生きしてる的な奴だろ?
俺が負かされたら…、まぁ、敬ってやるよ。」
ジィさん良いぞー!やっちまえー!という野次がギャラリーから飛んでくる。
「オキナさん、ほんと何者なんだろう。」
「と言うと?」
「オキナさん、多分すごく嘘ついてる。
記憶を無くしてる筈なのに嫁さん一筋だとか言う発言を自然としてたり、かと思えば、盗賊じゃないお母さんの事も【盗賊っぽい見た目のねぇちゃん】とか言ってたし…。
それに加えて何となくお父さんを知ってるんじゃないかと思える様子が節々にある。
魔王様も言ってたじゃない?ワイズマンと呼ぶよりオキナと呼んだ方が良いのか?って。
オキナさんは…もしかしてお父さんなんじゃ…。
本当に記憶を無くしてるんだとしても少しづつ思い出してたりとか…。」
闘技場へ入場していく魔王様とオキナさんを見送りながら、私はそんな希望とも言える考えを巡らせていた。
「さてさて、オキナ。やるなら本気を出した方が良いぞ?
手加減することになれてないからのう。殺してしまうかもしれん。」
「そうか、じゃあ仕方ねぇ…。本気(マジ)で行くか…。
また死ぬのもごめんなんでな。」
オキナさんは着物の袖から魔導書を取り出すと、本の中から時計を取り出した。
「ジジィのままじゃ、さすがに動きがしんどいからな…。
若返って戦ってやるよ。多分、できんだろ?こいつの力を使えばよ。」
オキナさんは取り出した時計を腕に巻いて、深く深呼吸をした。
「にゃにゃっ!?アレは…ドラゴンアゲートのブレスウォッチかにゃ!?」
「ギルマスさん!?いつのまにギャラリー席に…!?」
「つい、今しがたにゃ。あいつが例のワイズマンの魔導書を手に入れたおじいさんにゃ?」
「は、はい。あの人がそうです。たしかドラゴンアゲートのブレスウォッチは触れたものの時を操るアイテム…。
自分の時間だけでなく、触れた相手の時間すらも操作できる…。
ただ、自分より離れたり範囲が大きいほど莫大な魔力を必要とする…。若返るだけにしても時間が長い分相当の力を必要とはする筈…。」
左手に巻いたブレスウォッチにオキナさんが魔力を通していく様子が見て取れる。
やっぱり…この人も同じだ。
魔力がない筈なのにアクセサリーを身につけるとそのアクセサリーにかけた魔法が使える…。
そんなことが出来るのはこの世界ではお父さんだけだったらしい。
オキナさん…あなたは、私たちのお父さんじゃないの…?
お父さんなら何故…嘘をつくの…?教えてよ…。
「はぁぁぁぁぁあ…………、やっとまともに休息できたぜ…。さらにシャワーに飯に食後のコーヒーとデザートまで、本当にありがとうな魔女さん。大いに助かったぜ。」
「いやいや、色々と嫌な話もする事になるかもしれないからね。
この程度のもてなしくらいさせてくれたまえ。
さぁて、ではお互い色々と話をする前にだが、この指輪をつけてくれるかい?
お互いの言葉を翻訳して理解できるようにする魔道具だ。」
「ほぉ…、こんな便利なもんがあるのか…。
さすがは異世界って感じだな。」
お爺さんは着物の袖の中をゴソゴソしながら翻訳指輪をはめた。
私たちも同じ指輪をはめたのでこれで漸くお互いまともに意思疎通できるようになった。
「さぁて、これで漸くそこの戦士の嬢ちゃんにもまともに文句が言える訳だな。
テメェ、よくもジジィ相手に本気で鬼ごっこしてくれたな…。こちとらマジで殺されるかと思ってたんだぞオイ。
もっとこう色々やり方があったろうよ…?なぁ?」
「ご、ごめんて…。私もその魔導書を持ってる貴方を逃す訳には行かないと必死だったんだよ…。」
「おう、そうか。じゃあまずはこの本の話から聞かせてもらうとするか。
テメェみたいな嬢ちゃんに追いかけ回されたり、壮年のオッさんに襲われたりするくらいだ。なんかヤベェ奴なんだろ?色々出てくるし。
つぅかどうなってんだこれ。四○元ポケットかよ。」
「そう言えば、ベヒーさん…えっと、執事みたいな服着たおじさんをその本から出てきたもので退けたのよね?
どんな武器や力を使ったの?」
オキナさんは袖に腕を入れると、袖からシュッと木刀を取り出した。
「コイツだな。一番使い慣れてる武器を想像したらよくわからねぇがコイツが出てきたんだ。」
おじいさんは机の上に木刀をコトンっと置いた。
木刀の持ち手の部分だけ鉱石のような見た目をしていることから、コレもヴァリアブルソードの一つであることが見て取れた。
「まぁ、あん時は力任せにぶんぶん拳や蹴りをかましてくるだけだったし、あとは素早いだけ程度だったから割と何とかなった。
猪共もコイツで刺せば大体仕留められたし、意外と便利だなコイツは。
さしずめ刃物になら何にでも変形できるって言うアイテムなんだろうと察したが、あってるか?」
オキナさんが机に置いた木刀を指先で小突くと木刀は形を変えて、【私が持っているヴァリアブルソード】と同じ形のアクセサリーに変化した。
「うむ、正解だよオキナ。
なるほど…、その上これは複製品などではなくあの人の使っていた本物のようだ…。
うぅむ…。リィン、君の持っているヴァリアブルソードを見せてくれるかい?」
私はアズマさんにヴァリアブルソードを渡した。
アズマさんは二つのヴァリアブルソードを見比べてある一点に気付いた。
「モノはなぜかはわからないがまったく同じモノのようだ。だが、一点だけ違う点がある。
レジンの部分や木材の部分をよく見てくれ。」
「これは…茶色く変色している…?でもなんでだろう?」
私がそう問うとアズマさんは難しい顔をした。
「ワイズマンの作るアクセサリーは、経年による色の変化も楽しめるアクセサリーだと本人から聞いたことがある。
ここまで色が変化しているとなると、ざっと50年はエイジングしている事になるだろう…。
むしろ、15年分ほどこっちが新しいなら理解できたがなぜぱっと見で50年ほどこちらのが経年しているのか…。
むぅ…、謎が増えてしまったな…。」
「とりあえず、この本から出てくるモノはそのワイズマンっつう奴が作ったアクセサリーって事か。
ほぉ…なるほどな。まぁ大体わかった。
俺がこの本に触れて必要と思ったモノかつ、ワイズマンが作ったモノが出てくる仕組みってぇところか?
なるほどな…、察するにワイズマンってやつぁ、この国でかなり重鎮な魔法使いかなんかだったってところか?
いや、ワイズマン…だから賢者か。
なんにせよそんなすげぇ奴が作った最強の魔道具をホイホイ出せる本を俺みてぇなジジィが手にしちまったもんだから血眼になって探してたってところか。
つうか、さっきちらっと言ってた15年って時間はどっから出てきた?」
【15年】
それはワイズマンことお父さんが姿を消して生死不明になってからの時間。
私達はお父さんの事を知り得る限り全て話した。
そして、その唯一の手掛かりになるかも知れない事がこの本とこの本を使える人かも知れないことも。
「なるほどなぁ…。そう言う事だったのか…。盗賊っぽい見た目のねぇちゃんもこの15年辛かったろう…。
寂しかったろうなぁ…。察する、察するぜっ…。
あぁ、だめだ涙出てきた。」
オキナさんはおいおい泣きながら袖で涙を拭いつつお母さんの背中をポンポン叩いていた。
「だったら、なんつぅかお嬢ちゃんお姉ちゃん方には随分と悪ぃことしちまったかもしんねぇな…。
このジジィは何でこの本を使えるかが正直わからねぇ。
自分の名前もろくに思い出せねぇし、ここにくる以前の記憶がかなり欠落してんだ。
まぁ元々死にかけのジジィだしな。ボケちまってるだけだたぁおもうだがよ。
流石にボケを治せそうなモンはコイツからも出てきやしねぇ…。すまねぇな…。力になりそうにねぇ…。」
「仕方ないさ…、さて結局振り出しに戻ってしまったかな…。これからどうするか…。
もう1人の手かがりかもしれない赤いコートのワイズマンもどきを探す方にシフトすべきか…。」
「でもそっちこそ情報が何もないしね…。私とリィヴェルを助けに現れて以降、一切見かけられてないし…。」
全員が顔を見合わせて大きなため息を吐く。
15年越しの手掛かりが白紙に戻ってしまったのだから…。
「赤いコートのワイズマンもどきか…、そいつぁ他にどんな特徴がある?聞かせろ小娘供。」
「そうだなぁ…、赤いコートに黒い帽子、白い薄手のセーターにデニムのジーンズと茶色い皮のブーツ。
顔は色のついたレンズの眼鏡をかけててよく見えなくて、頭髪は綺麗に手入れされたキラキラした白髪だったよ。
見た目は…10代後半か20代前半か…そんな感じ。
見た目以外だと炎の魔法を駆使してたのが特徴ってところかな。」
「ほぉん…。ワイズマンもどきっつぅか俺もどきとも言えるな…。
このジジィも目が光に弱くなっちまっててな。
それで色付きのレンズの眼鏡をかけてる。
白髪に至ってはジジイだから当然だ。
あと、綺麗に手入れされてねぇから髪が軋んでるんじゃねぇぞ。ジジィだからだ。
なんっつぅか、俺の若い頃みてぇな服装の奴だな…。
変に気になって来やがるぜ…。」
少し不貞腐れてたようにも見えるオキナさん。
おじいさんである事を地味に気にしてるかな?
「とりあえず、俺はその俺もどきを探す旅に出ようかね。
どうせこの世界でやることもねぇしな。
後は旅の資金稼ぎか…。」
「旅をするならこの国の中ではこの札を使えば良い。
君の世界で言うクレジットカードみたいなものだ。
お金を負担しなくて済む魔法のカードという所だね。」
「おいおい、後でこいつをダシに俺を脅そうってんじゃねぇだろうな?念書でも書かしておくか…。いや、この世界でそもそも念書に効力があんのか…?」
「心配しなくても良いよ。万が一でも私がそれをダシに君が不利益を被る行いをした時は私を宿に連れ込んで好きにしてくれても良いよ?」
「ケッ、吐かせ。俺ぁ嫁一筋だ。他の女を抱く気なんかさらさらねぇよ。」
かくして、とりあえず私達は赤いコートの人を探して再び旅に出る事にした。
とりあえずの目的地をどうするかという話になってオキナさんから提案されたのは、再び西の都に戻りたいという話だった。
「ワイズマンの本家本元が居た場所で、オメェらが入りづらくなってた場所って言うなら集められてない手掛かりもあるかもしんねぇだろ?一度行ってみる価値はあるだろう。後はそれから考えりゃ良い。
あぁーでも、この札が使えねぇのか…。
ま、良い、何とかなるだろう。」
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しかし、転移門が使えれば楽に戻れるんだけど、こればかりは国同士の問題もあるしなぁ…。
「ひとまず国境まで戻って来たけど、私は良いとして2人もすんなり通してくれるかしら…。」
「通してくれねぇなら力か知恵を行使すりゃ良いだけだ。
相手に合わせてな。」
国境に近付くとカイザの部下の騎士たちが居た。
見覚えのある人も居たので入国したい項を伝えてみる。
「普通なら簡単に入国させる訳には行かないんですが、団長から貴方に対しては無理融通を聞くよう指示されています。
あの人は誇りにかけてとなると尋常じゃなく頑固ですから…。
だからこそ、わからないんですよ。
貴方達2人にあのような事をした自分達の事が…。」
「完全に許した訳じゃないし、きっと一生許さないとは思う。
でも、いつか笑い話に出来るくらいには、私は貴方達と仲良くなれればって思う。
同じ人間だしね。さて、入らせてもらおうか2人とも。」
私はリィヴェルとオキナさんに声をかけて西の都へと入国する。
街の活気一つ見てても、違う国に支配されてるという感じは特に感じない。
あまり深く事情を知らない私達には輪をかけて不思議な光景に見えて来ていた。
「ほぉん…。俺の世界の田舎町程度には栄えてんだな。
この都は確かお前らの父親が王様になった直後くらいに隣国に侵攻されたんだったか?」
「はい。一夜にして隣国の剣王自ら信仰して支配し、その時この土地にいた民全員に魔剣因子を打ち込んだと聞いています。
ですが、私や姉さん、ロイヤルナイツの方達はこの都の外へと追放されて今に至ると…。
ですが、国境を広げる以外には剣王は特に何かをするわけでもなく、実質的にこの土地は中立の立場になっています。ただし互いの国民の行き来については騎士団以外は禁じられていますが…。
あと、この都を収めているのはお父さんの配下になった魔王様らしいですよ。」
「ほぉ…。じゃあお前らの父親の城は今や立派な魔王城って訳か…。おもしれぇ話だな。
魔王ってどんな見た目と性格してんだ?お前らの父親の配下になるくれぇだから、さぞ高貴な奴なんだろうが…。」
リィヴェルが私に視線を移してくる。
まぁ、私も殆ど会ったことはないんだけども、高貴と言うかあのお方は…。
「あのお方は…なんじゃ?美しくて誰もが平伏すような強さを持つ偉大なお方か?それとも、今お前ロリ幼女と言おうとしたか?お?お??」
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「なるほど、そいつが魔王か。
はじめまして、だな。魔王ちゃんとでも呼ぶべきか?」
「ふむ…、確かにお前とははじめましてだな老人よ。
名は何と申す?」
「オキナ。俺の世界でジジィを意味する言葉だ。
そう呼んでくれりゃ良い。」
「そうか、ワイズマンと呼ぶよりその方が良いのかお前は。」
「まぁ俺は紛い物だからな。つぅか、俺とソイツでは生きてきた年季が違い過ぎる。俺の方が多分、ワイズマンより強ぇぞ。
なのに、わざわざ弱いやつの名前なんか、名乗るわけねぇだろう?」
「カカっ!吐かすではないか!では試してみるか?
お前が妾に敵うならそのまま配下になってやろうではないか!」
その言葉を聞いていた周りに居た街の人たちや見回りをしていた騎士団の人たちがざわめき出す。
「ケッ、おもしれぇ。この世界に来てからロクに強い奴とやり合えてなかったからな。
手応えのある奴とやり合えるのは実におもしれぇよ。」
「ククク…、後で後悔しても知らぬぞ年寄り風情が…。
ま、死なぬ程度に遊んでやろう。
よし、ギルドハウス併設の闘技場へ行くぞ。」
そう言うと魔王様はオキナさんの手を取り、楽しそうにギルドハウスへと走り去っていった。
私たちも置いてかれないように必死に追いかける。
それにしても…お父さんより強いぞ、か。
それはちょっと私も聞き捨てならなかったな…。
見たことあるわけじゃないけど、なんかこう、お父さんを馬鹿にされたみたいで…。
「ほぉ…、これはまたでっかい闘技場だな。
つぅかおい、この短時間で何であんなにギャラリーが集まってやがる。数分だぞ数分。」
「この街、噂が広がるのが早いですからね…。
それに回覧板と言うツールで情報共有がすぐ行えるシステムが冒険者にはあるので…。」
「なるほどな…。まぁ良い。
魔王ちゃんはアレか?そんななりでも実年齢は俺なんざより余程長生きしてる的な奴だろ?
俺が負かされたら…、まぁ、敬ってやるよ。」
ジィさん良いぞー!やっちまえー!という野次がギャラリーから飛んでくる。
「オキナさん、ほんと何者なんだろう。」
「と言うと?」
「オキナさん、多分すごく嘘ついてる。
記憶を無くしてる筈なのに嫁さん一筋だとか言う発言を自然としてたり、かと思えば、盗賊じゃないお母さんの事も【盗賊っぽい見た目のねぇちゃん】とか言ってたし…。
それに加えて何となくお父さんを知ってるんじゃないかと思える様子が節々にある。
魔王様も言ってたじゃない?ワイズマンと呼ぶよりオキナと呼んだ方が良いのか?って。
オキナさんは…もしかしてお父さんなんじゃ…。
本当に記憶を無くしてるんだとしても少しづつ思い出してたりとか…。」
闘技場へ入場していく魔王様とオキナさんを見送りながら、私はそんな希望とも言える考えを巡らせていた。
「さてさて、オキナ。やるなら本気を出した方が良いぞ?
手加減することになれてないからのう。殺してしまうかもしれん。」
「そうか、じゃあ仕方ねぇ…。本気(マジ)で行くか…。
また死ぬのもごめんなんでな。」
オキナさんは着物の袖から魔導書を取り出すと、本の中から時計を取り出した。
「ジジィのままじゃ、さすがに動きがしんどいからな…。
若返って戦ってやるよ。多分、できんだろ?こいつの力を使えばよ。」
オキナさんは取り出した時計を腕に巻いて、深く深呼吸をした。
「にゃにゃっ!?アレは…ドラゴンアゲートのブレスウォッチかにゃ!?」
「ギルマスさん!?いつのまにギャラリー席に…!?」
「つい、今しがたにゃ。あいつが例のワイズマンの魔導書を手に入れたおじいさんにゃ?」
「は、はい。あの人がそうです。たしかドラゴンアゲートのブレスウォッチは触れたものの時を操るアイテム…。
自分の時間だけでなく、触れた相手の時間すらも操作できる…。
ただ、自分より離れたり範囲が大きいほど莫大な魔力を必要とする…。若返るだけにしても時間が長い分相当の力を必要とはする筈…。」
左手に巻いたブレスウォッチにオキナさんが魔力を通していく様子が見て取れる。
やっぱり…この人も同じだ。
魔力がない筈なのにアクセサリーを身につけるとそのアクセサリーにかけた魔法が使える…。
そんなことが出来るのはこの世界ではお父さんだけだったらしい。
オキナさん…あなたは、私たちのお父さんじゃないの…?
お父さんなら何故…嘘をつくの…?教えてよ…。
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