俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。

黒茶

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身体の異変。

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すっかり日課となっている、
エルとラルフの剣術の特訓からの帰り道。

俺たちは二人並んで歩いていた。

今日あったことや、特訓の内容、改善すべきところなんかを
とりとめなく話していたのだが、

ふと気付くと俺は

「もうちょっとエルと一緒にいたいな・・・」

と声に出していた。

なぜだ。
今日のエルとの特訓も成果が得られるところまで十分できたというのに。

するとエルが

「お前、どんだけオレとの特訓が好きなんだよ。」

と笑った。

「あ、いや、エルのおかげでどんどん強くなるのがすごく楽しいから・・・。」

と慌てて俺が答えると、

「はは、褒めたってなんもでないぞ。」

と俺を見てにやっと笑いながら言った。

俺の心臓がはねた。

「ラルフはほんと真面目だよな。
特訓も毎日欠かさずやるし、
普段の授業も、実技も座学も今や学年トップだもんな。
おかげでオレも強くなれたし、ラルフ様々だよ。」

「そんな真面目だなんて・・・
普段の勉強は特別なことはしていないし、
エルがいなかったら特訓は続けられなかった。
今の俺があるのはエルのおかげだ。」

「じゃあお互い様ってことで。
これからも頼むぜ、相棒!」

とエルは俺の肩に右腕を置いた。

また「どくんっ」と俺の心臓が、存在感が増した。


最近、まれにある気がする。

身体が熱くなる。首のあたりが熱くなる。

そしてなぜか、エルの手に、肩に、髪に、触れてみたくなる。

なんだこれ。病気か。



俺がそんな自分の身体の異変が気になり始めた頃。

同じクラスのヤツがエルに

「エルー、
ここがわかんないから教えてくれない?」

と声をかけていた。

エルは成績優秀である上、人当たりもよく明るい性格だから、
クラスメイトからも人望があり、頼られることが多かった。

「しょうがねぇなぁ。どこ?見せてみろよ。」

とエルがやれやれという表情でソイツを隣に座るように促す。

こんな光景は魔法騎士学院に入学してから何度も見てきた。

何度も見てきた。

見てきたはずなのに。

今日はなぜか黒い、苦しい、何とも言えない黒いもやのような空気が
俺の周りを包み始めた。

(なんだこれは!?)

今までに経験したことのない感覚だ。

(エルの隣は俺の場所だ。)

勝手に思考が暴走する。

(勝手にお前らがエルの隣にいるんじゃない。)

俺はなんて勝手なことを思っているんだ。

しかしなぜかエルの隣に座るクラスメイトへの黒い気持ちが止まらない。

おかしい。
この状況はおかしすぎる。
冷静になれ。
思考の暴走を止めろ。

しかし収まらない。

(エルの隣は俺だけの場所だ。)

さらに衝動性まで止まらなくなっていた。

隣のヤツがエルの前に開いた教本のページをめくろうとした腕を、
俺は気付いたら握っていた。

いつの間にか、俺はエルとソイツの背後に立っていた。

「うぉっ、ラルフ、びっくりさせるなよ。」

エルが振り返って言った。

そんなことを言うエルを無視して、俺はソイツに言った。

「それを教えるのは俺でもいいか?」
「え、ラルフが?
学年主席のラルフならもちろんいいけど・・・」

と困惑した顔で言った。

俺はソイツのエルとは反対側の隣に座り、
教本を引き寄せた。

「ああ、ここはこのページの理論を適応させれば簡単だ。」

俺がさっさと解説をすると、
エルが、

「さすがラルフの解説、わかりやすいな。
よかったな。」

とソイツに言った。

少し薄まりかけたと思っていた黒いもやが、また濃さを増す。

ソイツは、

「あ、そういうことか。
エル、ラルフ、助かったよ、ありがと!」

と帰っていった。

すると黒いもやはまた薄れ、俺は自分の身体の自由を取り戻した。

「ラルフがクラスのヤツに教えてあげるなんて珍しいじゃん。どうしたの。」

とエルがちゃかすように俺に言った。

「これはたまたま・・・今まで俺が聞かれなかったというだけで・・・」

俺はタジタジしながら答えた。

身体が勝手に動いていたなんて、エルに言えるはずもない。

この状況は異常だ。

俺が考えるに、
これは・・・精神操作系の闇魔法ではないだろうか。
何者かが俺に闇魔法をかけているとしか思えない。
そうでなければこの状況は説明できない。

しかし一体誰が?

闇魔法は誰でも使える魔法ではない。
使える人間は限られている。
しかも1人の人間の思考や行動を制御してしまうレベルの闇魔法となると、
かなり使える人間は少ない。

例えば、この学院に入学してきた、一学年下のジークハルトのような。

しかしジークハルトが俺にそのような闇魔法をかける理由がない。

他にもこのレベルの闇魔法の使い手がいるということか。
しかし何のために。
悪質なイタズラか。それともなにかしらの陰謀か。

ここのところ、何か変だ。
俺の身体に何が起きているんだ。
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