俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。

黒茶

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魔法騎士学院での最後の大会。

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ラルフが身体の異変を不安に思って医務室に相談に行ってみたが、

「自分でなんとかするしかない。」

と言われてから2年近くが経った。
だがこの間もこれらをなんとかできてはいなかった。
相変わらず身体の異変はあるし、
闇魔法かと思うような思考の暴走や身体が乗っ取られているようなことがあった。
まあ、騎士団への入団に支障がなければ、自分なりにこの異変ともつき合っていくしかない。

少し変わったと言えば、エルがちょっと苦しそうな悲しそうな顔をすることが増えた。
エルも何か俺のような病気になっているのだろうか。

そしていよいよ俺たちが魔法騎士学院を卒業するときが近づいてきた。
卒業の時期になると、魔法騎士学院の全生徒が参加できる武術大会が開催される。
1対1のトーナメント方式で、
魔法あり剣術ありの、バトルロワイアルだ。
この大会は騎士団の幹部が視察にきていて、有能な新人を見極めているという噂もある。

俺は順当に勝ち進み、とうとう決勝戦まで駒を進めていた。
相手は1学年下のジークハルトだ。
1学年下でありながら、ジークハルトは
今では戦闘面においてこの学院で右に出るものはいない存在になっていた。

準決勝で惜しくもジークハルトに敗れたエルが俺に言った。

「ラルフ、オレにまかせろ。
ジークハルトに勝てる戦術を考えてやる。

ジークハルトは氷魔法が得意だから、
絶対に氷魔法をメインの攻撃で使ってくるだろう。
だからラルフは氷魔法に対抗できる雷魔法で氷を撃退しつつ、
ジークハルトと距離をつめろ。

ジークハルトは土魔法で防御をしてくるだろう。
そうるすと死角ができるはずだ。
その死角からラルフは剣で決着をつけろ。」

今までのジークハルトの戦いを見ていても、
エルの戦術は的確だった。

「わかった。エル、ありがとう。俺は勝つよ。」

そうして俺とジークハルトとの決勝戦が始まった。

エルが想定した通り、
ジークハルトは俺のまわりに氷を展開して攻撃をしかけてくる。
それを雷魔法でいなしながら、距離を詰める。

エルの想定通りの展開だ。

そしてジークハルトは防御のために土魔法を展開した。
その陰から攻撃しようとしたとき、俺は気付いてしまった。

これは罠だ。

ジークハルトはわざと俺に攻撃させている。

ジークハルトにとって俺が死角ならば、
俺にとってもジークハルトは死角なのだ。

気付いたときにはジークハルトの剣先は俺の首元につきつけられていた。

完敗だった。


試合後、俺はエルの元へ走った。
勝つ、と言った約束を守れなかったのを謝罪するためだ。

そしてなぜかエルが泣いていた。

「ラルフの魔法騎士学院での最後の大会だったのに・・・
オレの作戦が不十分だったせいでラルフが負けた。
ほんとゴメン・・・オレのせいで・・・」

「なんでエルが泣くんだ。
なんでエルが謝るんだ。
謝るべきは俺だ。
そして全部、俺の実力不足だ。
まだジークハルトには俺の実力は届いていない、というだけだ。」

「学院生活の最後に、お前の夢をかなえてやりたかったんだよ。
最後に、ジークハルト相手に勝たせてやりたかったんだよ。」

まだ涙が止まらないエルの隣に立ち、俺は言った。

「俺の夢はジークハルトに勝つことじゃない。
金獅子騎士団で、王太子殿下の専属護衛騎士になることだ。
その夢がかなうなら、ジークハルトなんていいんだよ。」

「でも・・・ゴメン・・・」

「もういいんだ、エル。
どちらにしろもう俺達は卒業だ。
エルも金獅子騎士団への志望願いを出したんだろう?
卒業してからも一緒に相棒としてやっていこうな。」

するとエルは

「ああ、そうだな。」

と涙を拭きながら言った。

そのとき、エルが最終的にどの騎士団へ志望願いを出したのか、
聞いていないことに俺は気付いていなかった。


数日後、
約2年前に銀鷲騎士団に入団したレグルス兄さんが
異例の早さで銀鷲騎士団の団長になることになり、
その任命式が王宮で行われることになった。
俺はゲーゲンバウアー家の一員として、
王族の方々から授与される式に参列することになった。

子供の頃に拝謁して以来の王宮。
俺がお仕えしたいと思っている王太子殿下と拝謁するのも、その時以来であった。

そして俺達は謁見の間に入場し。
とうとうお姿を拝見するときがきた。

あの頃の記憶とかわらない、まぶしい紅い髪。
そして紅い瞳。
そのほほえみからは神々しささえ感じられた。

だが、俺はそれ以上にショックを受けていた。

「なんで・・・エルが・・・。」

俺が見間違えるはずもない。
髪の色と瞳の色こそ違うが、
あの王太子殿下は、

俺が幼いころから専属護衛騎士になりたい、お守りしたいと
願ってきた王太子殿下は、

俺が6年間魔法騎士学院でずっと相棒で、親友で、
卒業してからもずっと一緒に騎士団で切磋琢磨したいと思っていた、
エル本人だったのだ。





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ここまで読んでいただき、本当に、本当にありがとうございます!

読んでくださった方、エルの正体、わかっていらっしゃいましたかね!?

やたら人間関係に詳しかったり、
いきなり人に剣術教えられるほど詳しかったり、
リーダーシップや戦術練るのが得意だったりと、
王太子っぽいエピソードをちりばめてみたのですが・・・

まあ作品タイトルが最大のネタバレですよね笑

次回はエル視点のお話です。
よろしくお願いします!
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