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妄想聖人

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終末編 2

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「お前たちに言っておくことがある」
 カオナシは調理中の海斗たちに声をかけた。ボドウのことがあり、気持ちは沈んでいるのだが、何があろうとも腹は減るので、ご飯は作らないといけない。楽しみにしている乗組員もいる。海斗はアマネと一緒に、野菜の皮むきをしている。
 無理してないか……。
 カオナシのいつもと変わらない調子に、海斗は不安になった。ガンザンとボドウという、古い家族にして友人を立て続けに失ったことで、心に何らかの影響を及ぼしているのではないかと考えてしまう。弱音の一つでも吐いてくれればいいのに、いつもと変わらない調子が、却って気になってしまう。
「東方鎮守だが、あいつには協力を期待するな」
「どうして?」野菜を切りながら美月が訊いた。
「あいつは私たちの中で、一番好戦的だからだ。……今となっては、あいつが一番現実的な判断をできる。仮にガンザンとボドウの協力を取り付けることができていたとしても、あいつだけは説得できない可能性が高い」
「それじゃあ、どうして私たちは向かっているの?」
「今後のことで、私が話し合いをしたい」
「その意見には賛成だ」一朗太は支持した。「というか、俺たちの目的を優先するような状況じゃない。まずあいつらを何とかしないことには、説得も何もない」
「その通りではあるが、その点を差し引いても、やはりあいつだけは、説得できる気がしない。……それ以前に、私が会ってもらえるかどうか怪しい」
「古い家族で友達じゃないの?」日奈が訊いた。
「私はそう思っているが、今となっては、あいつがどう思っているのかわからない。この状況じゃなくても、良くは思っていないだろう」
「その理由は聞いてもいいの?」
「……大戦争終結直後のある決断をする時に、あいつだけは猛烈に反対した。だが、私たち三人は説き伏せて無理に従わせた。大いに不服だったのは、態度でわかっていた」
「……大昔のことだろ?まだ根に持っているのか?」一朗太は訊いた。
「……その時の決断は、今の状況と連動している。間違っていたのは私たちで、あいつの考えが正しかったということだ」
「その時の決断の内容は訊いてもいい?」アマネが訊いた。
 カオナシは沈黙で返した。
 最近のカオナシは沈黙することが多かった。単純に、それは触れて欲しくない。という現れなのは理解できるのだが、信用されていない気がして、海斗は寂しい思いをする。
「あ~……」伝声官から声が届いた。「カオナシ。艦橋に来てくれ。大変なことになった」
 海斗たちの頭の上に疑問符が浮かんだ。一体何が起こったのか不明だが、海斗は作業を中断して立ち上がった。
「念のため私も行こう」ゴンが申し出た。
 鎮守ほどではないにしろ、思慮深き者に対する家族の信用は厚い。海斗はゴンと共に艦橋に向かった。
「一体何が――」海斗は途中で言葉を失った。艦橋の窓から見えるだけでも、巨大な鳥が大勢いるのだ。その鳥たちは、海斗よりも大きく、二対の羽で羽ばたいている。しかも胴からは、人間のような一対の腕が生えている。恐らくズイチョウマルは、こいつらに取り囲まれて身動きが取れない状況と思われる。
「雄大に羽ばたく者か」ゴンは言った。
 その種族名に海斗は納得してしまった。羽ばたいている姿に、どこか見惚れてしまうのだ。
「引き返せって言われたんだけど」
 翼有る者は困ったように頭をぽりぽり掻いた。
 海斗は窓を通して雄大に羽ばたく者たちの前に立った。
「一同。南方鎮守カオナシである」
 名乗ると雄大に羽ばたく者たちは一斉に頭を垂れた。
「お初に御目にかかりますカオナシ様」
「そこを通してもらえないだろうか?」
「残念ながらできません。東方鎮守ジュカン様より、誰であろうと通すなと言われております」
「私でもか?」
「はい。ジュカン様は、例外はないと厳命されました」
「少しよろしいか?」ゴンが話しかけた。「カオナシ様は、テンイの今後について、極めて重要な用件で訪れたのだ。それでも通してもらえないのだろうか?」
「どのような用件であれ、通すことはできません」
「――構わん。通せ」
 どこからともなく、若々しい男性的な声が響いた。その声には、激しい怒りが含まれていた。それはカオナシたちと同じ方法で言葉を伝達したのだが、明確な違いがあった。カオナシたちは優しく言葉を伝えるのに対して、それはとても攻撃的だった。艦橋全体から軋む音が鳴った。振動を全身で受けた海斗たちは、地味に痛い思いをした。今まで思いもしなかったが、カオナシたちはやろうと思えば、喋るだけで相手を傷つけられることに気付いた。
「よろしいのですかジュカン様?」
「カオナシには言いたいことがある。というか、そいつしか言う相手がいない。通せ」
 雄大に羽ばたく者たちは、左右に分かれてズイチョウマルが通るための道を開けた。ズイチョウマルはゆっくり前進する。
 とりあえず通してもらえたことに、海斗は安堵できなかった。逆に緊張感が高まり、頬を嫌な汗が伝う。
「歓迎されてないな……」海斗は言った。
 今までは、どこに行っても、カオナシ。というだけで歓迎されていただけに、ジュカンの態度には不安しかない。到着したらすぐに嫌な目に遭うのではないかと、怖い想像をしてしまう。
「……流石に今回ばかりは、お前たちの安全を保障できん」カオナシは怖いことを言った。
「とはいえ、相手は東方鎮守様です。滅多なことはないと父母神に祈りましょう」ゴンは励ました。
 海斗は気を紛らせるために、周囲の景色に目をやった。新鮮味が無くなってしまった空の光景が広がるのだが、ふと天中星に目が留まった。
 ……なんだ?
 言葉にできないのだが、違和感のようなものを感じた。
「なあゴン。天中星なんだけど、何かおかしくね?」
 ゴンは両前足で窓に掴まり、天中星を観察した。
「……何もおかしなところはないと思うぞ。一体どうしたのだ?」
「ゴンがそう言うなら、気のせいなんだろうな」
 見飽きるぐらいに、天中星を眺めたことはない。多分、緊張しているせいで、変な風に見えてしまったのだろうと結論付けた。
「これはまた……」
 ズイチョウマルの眼下には凄い景色が広がっていた。広大な森の中心は正方形に開けており、色とりどりの花々が咲き誇っている。特に目を引くのは、中心にある巨大な虹色の花だ。化け物みたいな迫力があるせいで、綺麗という感情は湧かない。
 カオナシもそうだが、鎮守たちはどうしてこう一風変わったところに住んでいるのか不思議でならない。
「あれが、地に咲く七色か……」
 ゴンは呟いた。
「どこに停めればいいんだ?」翼有る者が訊いた。
「森の手前で頼む。あの花畑は、ジュカンのお気に入りなんだ。下手に傷つけたら怒られる」
 カオナシの言葉を聞いた海斗の頭の中では、毎日喧嘩三昧の不良が雨に打たれている子犬に優しくしているイメージが湧いた。
 ズイチョウマルは森の手前に着陸した。海斗たちは、ズイチョウマルから降りてすぐに、引き返したくなった。
 大勢のテンイの家族がいるのだ。その中には、初めて見る家族もいる。
 カオナシを歓迎している雰囲気はない。逆に、殺気立った雰囲気が満ちている。下手な言動をとったら殺されそうだ。
「もしかして私たちのせい?」
 アマネは申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「いや。違う」カオナシが否定した。「あいつらとの戦いに備えているだけだろう。ここにいる家族たちは、ジュカンが招集した東方諸族たちだ」
「その通りだ」
 若々しい男性的な声がした。恐らく、本人的にはかなり抑えているかもしれないが、海斗たちは地味に痛い思いをした。
 突如、地中から無数の太い根が飛び出し、絡み合いながら一本の幹になった。その中心が左右に開き、中から根で構成された一対の翼を有する小人が現れた。ぱっと見は妖精のように見えるが、眼球はなく木の根でできた眼窩が見える。鼻と耳と口もない。
 これが東方鎮守ジュカンだ。
「一同。下がっていろ」
 ジュカンが言うと、東方諸族は森の中に引っ込んだ。
「久しぶりだなジュカン。古き家族にして友よ」
「……よくもまあ、俺の前に現れることができたな。カオナシ。お前の中に、恥という概念があれば、こうも堂々と俺の前に姿を現すことはできなかったはずだ」
 これまでと違い、ジュカンは明らかに歓迎していなかった。それどころか、怒っていた。今までの鎮守たちは、翼有る者たちに言及していたが、ジュカンはまるで目に入っていないような態度でもある。
カオナシは沈黙で返答した。
 この時の海斗は、何となくだが、カオナシに顔があったら、目を逸らしたような気まずさを覚えた気がした。
「だから俺は、あの時言ったんだ。どうせ元に戻らないから、皆殺しにしろとな。それなのにお前らは、あいつの言葉にほだされやがって。お前たちのせいで、厄介な状況をさらに厄介にしてくれた」
「お前の言う通りだ。返す言葉もない」
「お前たちの甘い決断のせいで、ガンザンとボドウは死んだぞ」
「ボドウはその通りだが、ガンザンは違う」カオナシは、そこだけはきっぱり否定した。「ガンザンの死は、想定していなかったことの結果だ。異世界から人がやって来て、しかも自力でホコと同じ物を作り出すなど、私たちは想定していなかった」
 ジュカンは暫し黙考した。
「……そういうことか。だが、あいつは死に、こういう状況になった以上、それは些細なことだ。お前たちのせいで、今を生きる家族たちは大変な思いをすることになっている。その一端を担ったお前たちを、俺は許さない」
「私を許さないのなら、それでも構わない。結果、お前が正しかったのだから。私には弁明する余地がない。だが、テンイの古老としての役目は果たしたい。お前は抗うことを決めたんだな?だから、東方域の力ある家族に招集をかけたのだな?」
「……そうだ。クソ父母神共の定めた秩序とやらに、大人しく従う理由はない」
 ゴンやアマネを始めとする翼有る者たちは、驚きのあまり絶句した。実の父母のように慕っている神々をクソ呼ばわりしたことに。しかもその言葉を吐いたのは、テンイの家族たちが慕っている鎮守が発したのだ。人間である海斗たちには理解できないが、テンイの家族からすれば、我が耳を疑いたくなる大事件だ。
「ジュカン様……」ゴンは遠慮がちに声をかけた。「東方鎮守様ともあろう御方が、父母神をそのように言うのは大問題かと……」
「黙ってろ。思慮深き者」
 ゴンはジュカンが放った言葉の物理的な力で数歩後ずさった。
「……東方鎮守ジュカン」一朗太が声をかけた。「ガンザン、ボドウ、あんたとの会話を聞いていてずっと思っていたが、俺たちに何かを隠してないか?」
「でしゃばるな人間。こいつを含め、あいつらのことだ。どうせ人間を可哀想な被害者と同情しただろう。だが俺はそうは思わん。お前たちがテンイに強制連行されたのは、お前たち自身の愚かさが原因だ。愚かでなければ、平和な日常を送れていたかもな。俺に言わせれば、自業自得だ」
「今の返答で確信した。あんたたちは隠し事をしているな。しかも、俺たち人間を、強制連行した犯人さえも知っているな」
 海斗たち人間は、ジュカンを凝視した。それを教えて貰えば、地球に帰るという目的を達成できるかもしれないからだ。
「……ああ。今さっき知った。そいつは、人間たちを元の世界に帰すことも可能だろうな」
「止めろ!ジュカン!」カオナシは焦った声を出した。
「黙ってろ。だが俺がそれを教えることはない」
「情報を共有すれば、有効的な対策を講じることができるかもしれない」
「……無知ゆえの愚かさだから大目に見るが、この秘密は俺が生きている限りにおいて、守り通す価値があるからだ。どうしても知りたければ、俺が死んだ後に、カオナシに聞け。その時にはもう、意味のない秘密だからな」
「ジュカン……」カオナシは呆然と呼んだ。「お前、まさか……」
「……相手が悪過ぎる。俺はこの戦いで死ぬ可能性が高い。力の全てを一点に使っている。今の俺は、喋るのがやっとで、戦うだけの余裕はない。それでもだ。ほんの僅かでも勝機があるのなら、そこに賭け今度こそ殲滅する。そうすれば、世界は、家族は再び生きながらえることができる」
「……ボドウの時は、何もしてやれなかったが、今度こそ力になりたい」
「好きにしろ」ジュカンから、それまでの威勢が急になくなった。「なあ。カオナシ。古き家族にして友よ。これが俺たちの選択の結果か……」
「……あの頃は、これが最善であり、これ以上はない。と私も思っていた。だが、私たちもまた、愚かであったな……。そう。あいつの言葉を借りれば、『お前たちのやり方では、問題の解決に繋がらない』。その通りの状況になった」
「クソッ!認めたくないぞ。あいつの方が正しかったなんて」
「だが認めるしかない。違う方法を模索していれば、もしかしたら大戦争を回避できていたかもしれない」
「俺たちはどこで間違ってしまったんだろうな……」
 ジュカンは激しい後悔と共に、クソッという言葉を何度も繰り返した。


 夜の森から、夜行性の鳥の鳴き声が聞こえてくる。
 海斗たちは、森の外で久しぶりの野宿をすることになった。ジュカンの話では、敵は明日の早い時間にやってくるそうだ。だから海斗たちは、いつでも戦闘に入れるように、飛行艇から降りて、ズイチョウマルは、避難してもらっている。
 焚火を囲み、食事を済ませ、明日に備えて就寝するだけなのだが、海斗はやっておきたいことがあった。野原の上に横になり、瞼を閉じて共に在るカオナシに声をかける。
 話したいことがある。
 その瞬間、体が吸い込まれるような感覚に襲われた。瞼を開くと、何度見ても不思議な光景としか思えない死者の底にいた。目の前にはカオナシがいる。海斗に対して背中を向けて、枝にいる小動物に果物を与えていた。頭の上では、小鳥の番が寄り添っていた。
「どのような用件だ?」
 カオナシは前置きなしに訊いた。
 どうやって聞き出そうか、自分なりに考えたが、結局いい案が思いつかず、直球で訊くことにしていた。
「カオナシは、どんな秘密を抱えているんだ?」
「それは答えられない」
 そう言われるのは想定していた。
「でも、その秘密は俺たちにも関係があるんだろ?だったら、俺たちには聞く権利があるんじゃないか?」
「一朗太みたいな聞き方をするな」
「はぐらかさないでくれ。俺たちが帰りたがっているのは知っているだろ。だから教えて欲しいんだ。それにほら。人間が帰るのは良い事なんだろ。頼むよ」
 海斗はカオナシの背に対して頭を下げた。
「悪いが教えることはできない。ジュカンが言ったように、守り続けないといけない。可能なら永遠に」
「……その秘密は、俺が考えているより、ずっと重いものなんだろうな。だったら、誰かに話したら、楽になるとかないか?」
「正直に言えば、私自身知りたくなかった。知らないままでいたら、無邪気なままでいられた。だが知ってしまった。誰かに話して楽になりたいという誘惑に駆られたこともある。それでも、これだけは話せない。今となっては、人間も無関係ではない。話さないのは、お前のためでもある」
「……心遣いはありがたいけど、信用されていない気がする。確かに俺は、お前がいないと、大したことができない普通の人間だ。でも友達だ」
「海斗は、美月や一朗太が、秘密を抱えていても、信用できないのか?」
「そんなことはないけど……」
「お前にしては珍しく、自分の欲求をストレートにぶつけてくるな。帰りたい気持ちは私もわかる。私もテンイにずっと帰りたかった」
「それもあるけど、ジュカンと話している時のお前は、辛そうだったからな。心配で様子を見にきたんだよ」
「……すまない。これだけは、本当に話せないんだ」
 海斗は聞き出すことを諦めた。その代わりに、カオナシに対して、今自分ができることをやる。
 カオナシの隣に立ち、近くの木から実をもぎ取った。
「これも食べるのか?」
 枝にいる小動物を見つめる。リスのような骨格をした爬虫類のような見た目をした生き物だ。
「この子たちは、何でも食べる」
 海斗は木の実を小動物の前に出した。小動物は首を伸ばして、実をちょっとずつ食べる。見慣れない見た目のせいか、可愛い。という感情は湧かない。だけど、動物に手渡しで餌を与える。というのは初めての経験で、新鮮な気持ちになれた。
「この世界ってさ。カオナシの記憶を元に再現してあるんだよな?」
 小動物はもっとくれ。というように海斗を見つめる。その期待に応えるべく、海斗は木の実をもぎ取って小動物の前に出した。
「そうだぞ」
「じゃあ、頭の上に小鳥が乗っているのも、経験があるのか?」
「そうだ。私はこう見えて、ここの動物たちには慕われている」
 カオナシは頭に乗っている番に手を伸ばすと、小鳥の方から嬉しそうにすり寄った。
「てってきり寂しさを紛らわすためにやっているのかと思っていた」
「酷いな。だが、死者の底に住んでいる人は、私だけだからな、そう思われても仕方ない」
「それは違うぞ。ここが再現された場所でも、今は俺もいるぞ」
「……ありがとう。我が友よ」


「……カオナシのところにいるみたい」
 アマネは、海斗の胸から手を離し、焚火を囲んでいる美月たちに顔を向けた。海斗が誰にも何も告げずに、さっさと寝たことに、皆が不思議がっていたのでちょっと調べてみたのだ。
「あいつなりに考えがあってのことだろう」一朗太は言った。「カオナシはあいつに任せるとしてだ。俺としては、話し合いたいことがある」
 日奈以外が頷いた。彼女は半分、船を漕いでおり眠たそうだ。テンイに来てからというもの、良いことなのだが、規則正しい生活を送る時間が多かったため、体が夜更かしに向いていない。いつもなら、寝ている時間だ。美月は寝ることを薦めたが、本人は意地でも起きて、皆と一緒の時間を過ごしたいらしい。
「カオナシとジュカンの会話で、人間を帰せる人物が浮上した。その人物について、テンイの家族に心当たりはないか?」
「ないな」ゴンは言った。「それだけの強い力を有する家族なら、知らない方がおかしいだろうからな」
「私も、心当たりはないな」アマネも言った。「ゴンの言う通り、知らない方がおかしいよ。強いて挙げるなら、父母神しか思いつかない」
 だけど、それはないと思っている。神々からすれば、テンイの家族は子供たちであり、わざわざ子供たちを苦しめるようなことをする理由がない。
「強い力というのなら、父母神ぐらいしか私も思いつかないが、それはないだろ」ゴンも同じ考えだった。
「だな」一朗太も肯定した。「人間がテンイでやったことを思えばデメリットしかない。神々にとって、メリットがないのに、何度も人間をテンイに招く理由がない」
「っていうかさ」美月は不機嫌に口を開いた。「カオナシは、その人のことを最初から知っていたわけだよね?」
「そうなるだろうな」一朗太が肯定した。
「酷くない?私たちが帰りたがっているのを知っているのに教えてくれないなんて」
 アマネは彼女が怒っている気持ちが何となく理解できた。カオナシは人間の望みを知っていながら、口にしなかったのだ。裏切られたような気持になってもおかしくない。
「秘密とやらが関わっているんだろう。二人の口ぶりから察するに、そいつはテンイの家族とは認められてない可能性がある。もしかしたら、問答無用で襲い掛かってくるような奴かもしれない。強い力を持っているのは確実だ。言葉を発する間もなく、殺されるかもしれない。カオナシなりに、俺たちの安全を考えてくれたかもしれない」
「だとしても、納得し辛いんですけど」
「俺としては、カオナシの慎重さを支持する。最初から知っていたら、勢い任せのワンチャンに賭けて行動していただろう。俺たちは、今こうして焚火を囲っていなかったかもしれない」
 そう言われると、アマネとしてもカオナシの慎重さを支持したくなる。
「テンイの家族として認められていない」ゴンが言葉を発した。「その仮説を元に、各地の口伝を思い出してみたが、翼有る者以外で、そのような話は聞いたことがない」
「でも、翼有る者ではないよ。確かに私たちは、鎮守たちに次ぐ強い力を有しているけど、異世界から人間を招くなんて真似はできないよ。エアイの皆の力を合わせても無理。それ以前に、テンイ以外の世界。っていう発想そのものがなかったよ」
 人間たちの存在を知って、初めてその発想に至ったのだ。
「その誰かさんは、存在するのは確実だが、何を目的としているのか知りたいところだな。そいつにとって、何らかのメリットがあるから、人間を招いたと考えるべきだろう。その辺を知れば、交渉の余地が生まれるかもしれない」
 海斗たちが、故郷に帰れるという現実味が急に帯びてくると、アマネは喜びの感情と焦りの感情が同時に沸き上がった。
 好きな人が故郷に帰れるというのは、我が事のように喜ばしいが、自分はどうしたいのかまだ答えが出ない。一緒に行きたいと思うが、残していく家族や友人、それに加えて、地球に行った際にどのようなリスクが生じるのか。いくら海斗のことが好きでも、身近な人たちへの思いを断ち切れないし、何が起こるのかわからないことが多すぎる。
 一朗太がアマネをじっと見つめていることに気付いた。その目は、こちらの心の内を見透かしているようである。
「確実ではないが、帰れる前提で話をするが、お前はどうする?テンイに残るか?一緒に来るか?」
「……私はどうすればいいと思う?」
 この件はあまり考えないようにしていた。いつかは答えを出さないといけないだろうが、考えれば考えるほどに頭の中がぐちゃぐちゃになる。
「……俺は、恋愛は当人同士の問題であり、外部があれこれ言うべきじゃないと思っている。それでも何か言って欲しいのか?」
 アマネは頷いた。
「これはあくまで俺の考えだ。何も言わずに、さよなら。をして欲しい。関係が進展していなければ、傷は浅いだろうからな。時間が癒やして、新しい恋をするかもしれない」
「私も止めるべきだと思う」ゴンは言った。「お前が異世界に行った際に、どのような問題が起こるのか不明だが、一つだけはっきりしている。人間の食べ物が合わず、栄養失調とやらで死ぬ。死ぬとわかっている家族を、送り出したくないな」
 ゴンは青葉に居た時に、色々と勉強したので、簡単にではあるが栄養学というものを理解している。
美月は眉間に深い皺を寄せ、顎に手を当てて考えていた。
「……私は同じ女として、アマネの気持ちはわかるつもりだから、どうすればいいのかわからない。でもさ」美月は、二人の男を軽く睨む。「幾ら時間があっても、癒されない傷はあるし、死んでもいいから、一緒に居たいっていう人もいるよ」
「それはお前の体験か?」
 美月は目を逸らした。
「私は……」船を漕ぎながら日奈が口を開いた。「どうするにせよ、時間をかけて二人で話し合うべきだと思う……。今更だけどさ……。ちゃんと話し合ってお互いの気持ちを知っていたら、私とお兄ちゃんとの関係は、違っていたかもしれない……。もしかしたら、この輪の中にお兄ちゃんがいたかもしれない……。一人で自己完結するのは、危ないことだと思う……」
 最年少の言葉に、大人たちは黙って耳を傾けていた。言い終えたところで限界を迎えたらしく、首がかくんと落ちてそのまま寝てしまった。美月は日奈を優しく横にした。
「……濃い人生を歩んできたつもりだが、教えられた気分だな……」一朗太は、日奈を優しい目つきで見た。
「時間がある時に、海斗と話し合ってみるよ」
 アマネの言葉に、皆が頷いた。


「すげー……」海斗は遠くから接近してくる都市を、まじまじと見つめた。「マジで都市が空を飛んでいる……」
 アニメかゲームでしかお目に掛かれない代物だ。あそこには、敵が居るとはいえ、素直に感動してしまった。
 惜しむらくは、かなりボロボロの状態だ。都市の底部には、大きな穴が開いており、都市の残骸が、地上に落下していく。できれば、完全な状態で見てみたかった。その時は当然、世界は平和であることが前提だ。
「ちょっと待って!?」アマネは驚きの声を上げた。「空中都市の作り方は、大昔に失われた伝説の技術だよ!?あれは一体なんなの!?」
「……あれこそが、かつての翼有る者たちの中心都市ミヤコだ」カオナシが答えた。
「伝説のミヤコ……」
「生きて伝説を目撃できるなど、最近までは夢にも思いませんでした……」ゴンは感慨深そうだった。
「……あれには人間だった連中が乗っているのは間違いないだろうが、疑問が生じる」一朗太は言った。「翼有る者の技術をこんな短期間に理解し、使いこなすなんてできるのか?技術に関しては、前提が異なるために、元とはいえ人間が簡単に使えるとは思えない」
「実際に動かしているのは、翼有る者たちだ」
 カオナシが答えた瞬間、全員の目がアマネに向かってしまった。
「私たちは全然知らないからね!」アマネは、慌てて顔の前で両手を左右に振った。
「翼有る者と言っても、大戦争当時の連中だ」
「……いやいやいやいや」一朗太は否定した。「どれぐらい昔か知らないが、大昔なら白骨になってないと理屈が合わないぞ」
「それこそが、ボドウの力だ。状態はそのままに、長い眠りにつかせた」
 日奈は首を傾げた。
「どうして、そんなことをしたの?」
「……奇跡。というものを信じてみたくなった。……今だから言うが、あいつらの処遇にジュカンは猛反対した」
「……敵の中には、翼有る者がいるんだよね……」美月は、アマネに顔を向けた。「同族なんでしょう?戦ってもいいの?」
「気にしないで。あいつらの馬鹿な行動のせいで、先祖や私たちはしなくていい苦労を負わされた。怒りしかないよ」
「……これは独り言として聞き流して欲しい」カオナシは独白した。「必ずしも馬鹿な行動とは言い切れない」
 カオナシの願いは虚しく、アマネは聞き流せずに怒りの矛先を向けた。彼女が何かを言う前に、海斗が口を開いた。
「しっかし、敵は空に居る。どうやって戦えばいいんだ?ミサイル?とかないし」
 これは極めて重要な問題だった。
 海斗とアマネは空を飛べるから、そこまで重要ではないが、多くの人は空を飛べない。戦うことを意識している影響か、ミヤコの高度は決して高くないが、絶望的な距離であり都市に乗り込んで切り込む、という真似はできない。決定打に欠け、ダラダラと戦い続ける消耗戦になりそうだ。
「それは見ていればわかる。それよりも重要なのは、ホウが消滅していることだ。ボドウ。お前の命を賭けた頑張りには感謝しかない。これで戦いは、だいぶ楽になる」
「私たちはどうすればいいの?」日奈が訊いた。
「ここの総大将はジュカンだ。あいつの指示に従うつもりだ」
「だったら、そこで待機していろ」
 ジュカンの言葉がどこからともなく届いた。
 海斗たちは、言われた通り大人しくその場で待つ。ミヤコはゆっくり距離を詰め、親指ぐらいの大きさになったところで、一斉に敵が飛び立った。
「本隊。攻撃開始」
 敵が動くのを待っていたかのように、ジュカンは命じた。森の中から雄大に羽ばたく者を筆頭に空を飛べるものは一斉に飛び立ち、飛べない者も敵を目指して前進する。大勢の人たちが、海斗たちを避けながらミヤコへと向かって行く。海斗たちは、慌てて身を寄せ合った。接触事故が起こったら、簡単に踏み殺されそうで本能的に危険を感じとったのだ。
 双方が一定の距離に達したところで、壮絶な撃ち合いが始まった。
 色とりどりの光が無数に咲き誇る様は、何も知らずに見たら、その美しさに魅入っていたかもしれない。
だが、散って行くのは命。
「これが…、テンイの戦争かよ……」
 海斗は戦慄した。
 青葉攻略戦とはまるっきり様相が異なる。もしあの時、こんな風に攻め込まれていたら、青葉の何割かは確実に焦土と化していた。人間が銃で撃ち合っているのに対して、テンイでは大砲で撃ち合っているようなものだ。カオナシは、本当に最小限の被害に留めるように努力してくれたことを正しく理解できた。
「……人間は勝てんわな……」一朗太はぼやいた。「この世界で俺たち人間は、本当に取るに足らない最弱種族なんだな……」
「……カオナシ様。私たちは、いつまでここで待機していればよろしいのでしょうか?」ゴンはすぐにでも、あの場に駆け付けたがっているようで落ち着きがない。
 その気持ちは、海斗は痛いほど理解できた。
 ただ待つと言うのは、思ったよりも忍耐力を有する。あの場では、恐ろしい速度で次々と命が散って行く。すぐにでも駆け付けて、助けたいという強い衝動に駆られる。一人を倒せば、一人は助かるかもしれない。
「慌てるな。そろそろ戦局が動く。その時が私たちの出番だ」
 海斗たちはじっとこらえながら、戦況を見守った。カオナシが言った通り、数では圧倒しているはずのテンイ連合軍は押され、一部の敵が突出してきた。
「攻撃開始だ」
「防衛隊。攻撃開始」
 カオナシとジュカンは同時に言った。
 海斗は頭上に何千もの黒い杭を、美月は無数の青い炎を、ゴンは頭上に無数のプラズマを、アマネは周辺に無数の光弾を出現させ、一斉に敵集団に向かって放った。森の中からも、無数の攻撃が放たれた。攻撃手段を持たない一朗太と日奈は、見守るしかなかった。
 地上からの一斉攻撃に対し、防御しようとしたり回避したりしようとしたが、全てが無駄に終わり地上へ落下した翼有る者たち。その中には、子供と老人もいた。非戦闘員としか思えない人たちを手にかけてしまったことに、海斗は強いショックを受けた。
「……俺たちは正しいことをしているんだよな?」
 訊かずにいられなかった。長い眠りから目覚めて、やりたかったことがあっただろう。将来の夢とかあっただろう。まだまだ遊びたかっただろう。どうして戦争に参加しているのか謎だが、あの人たちを手にかけたことで、実は自分たちはとても悪い事をしているのではないかと思ってしまう。
「間違いなくお前たちは正しい」カオナシは即答した。「同情は禁物だ。そんなことをすれば、お前が死ぬ。奴らは迷わず攻撃してくる。大戦争の時もそうだった」
「そうか。気を強く持たないとな……」
 単に自分の正当性を確認したかっただけかもしれない。それを察して、聞きたい言葉を言ってくれたかもしれない。それでも十分で、揺らいでしまった心を立て直せた。
 突出してくる敵は、彼らだけではなかった。
 次々にやってくるが、その度に海斗たちは撃ち落とした。そして子供と老人の死体を見る度に、海斗は気が狂いそうになる自分を必死に支えた。
 善戦していた本隊は崩れた。
 向こうの本隊と言える、人間だった者たちの大部分が向かってくる。残りは、残敵の掃討に入った。東方連合軍は必死に抵抗する。
 海斗たちは今度も撃ち落とそうと一斉に攻撃したが失敗した。人間だった者たちは、身を守るために赤い盾を出現させた。攻撃は盾に直撃したが、触れた瞬間にこちらの攻撃は全て破壊されてしまった。
「あれは一体なんだ?」
 一朗太の疑問には誰も答えなかった。
「俺たちを素通りしていくのか?」
 海斗は、攻撃しながら自分たちを無視していく人間だった者たちを目で追いかけた。こちらに目を配ったが、それだけで何もしてこない。森の中にいる防衛隊が必死に攻撃するが、やはり無視していく。
「当然だ。連中の狙いはジュカンだからな」
「であるならば、助けにいかねば」ゴンが言った。
「今度こそ助けないと」
 海斗は同意した。ボドウの時のように、何もできないのは嫌だった。助けられる命があるのなら助けたい。
「……そうだな」


 ジュカンは、地に咲く七色の花弁の一つに、両足を投げ出すように座って、迫り来る人間だった者たちを見つめていた。
 この命を終わらせる存在。
 東方連合軍は一生懸命に攻撃するが、赤い盾に触れた瞬間に全ての攻撃が破壊される。ただの一人も撃ち落とすことができない。
 まあ、そうだよな。
 一人で納得した。
 あの力の性質の前では、こちらの攻撃は全て無意味になる。この圧倒的な差を、数で引っ繰り返そうとしたが失敗した。今度こそ殲滅してやると息巻いたができなかった。情けない気持ちになる。
「ここまでか……」
 これ以上の戦闘行為は無意味であり、無駄死を出すだけだ。テンイの古老として、そのようなことは望んでいない。ただただ、申し訳ない気持ちで胸が一杯になる。
「全軍に告げる」ジュカンは場違いな優しい声色で最後の言葉を伝える。「もう十分だ。各々引き揚げよ。お前たちに未来を約束することができずにすまなかった。一日一日を大切に生きよ。後悔だけはするな」
「ジュカン……」どこからともなくカオナシの言葉が届いた。
「お前がどういう選択をするのか知らないが、後悔だけはするなよ。最後にお前に会えて良かった。カオナシ。古き家族にして友よ。さよならだ」
「…………さよならだ」
 カオナシと最後の会話をしたことで、満足感を得ていたのだが、ジュカンの命令を破って、防衛隊が花畑に入ってきた。
 ここはお気に入りの場所であり、普段であれば怒っているところだが、やんちゃをする子供を見守る大人のような心境になった。
 だが、目の前で起こっていることは、壮絶な戦闘。人間だった者たちを撃ち落とそうとする。敵集団は、邪魔されないように反撃を始めた。
「もう止めてくれ」
 ジュカンは家族たちに懇願した。目の前で、家族たちが次々と死んでいく。同時に蹂躙される花畑。それに対して、助けることができず、ただ見ることしかできない。涙が流れてもおかしくないが、残念ながらジュカンには涙腺がない。心の中でしか泣けない。
 これがかつての選択の結果であるなら、自分たちの愚かさを見せつけられている。もしくは、神々が下した罰であるなら、あまりにも惨い仕打ちに嘆きたくなる。
「もう戦うな。逃げろ」
 防衛隊は言うことを聞かずに戦い続ける。命を賭してまで慕ってくれるのは、純粋に嬉しいが無駄死にさせたくない。
 ジュカンは、力の配分を僅かに変えた。滅茶苦茶になった花畑から、無数の木の根が飛び出し、死体を含めた防衛隊の全員に巻き付いて、強制的に森の外へと移動させた。人間だった者たちは、防衛隊を追いかけなかった。というより、邪魔者がいなくなって興味が失せたようだ。彼らがこの場で唯一興味を示すのは、ジュカンだけだ。
 腹から血を流し続けている人間だった者が、ジュカンの視界を塞いだ。
「……負けたよ」


 カオナシとジュカンのやり取りは、海斗たちの耳朶にも届いた。
 姿は見えなくても、死を覚悟した人の言葉であるのは、嫌というほどに感じ取れた。
 ジュカンは、本当に死ぬ気だ。
 海斗の中で言葉では表現し辛い焦りが生じた。
 それなのに、カオナシはジュカンをあっさり見捨てた。普通の人間である海斗からすれば、死ぬことを思い留まるように説得するとか、俺たちが到着するまで気を強く持てとか勇気づける努力を一切しなかったことに納得がいかなかった。助けられるかもしれない命がある。急げばまだ間に合うかもしれない。海斗は助けたい一心なのだが、体は言うことを利かない。体の自由をカオナシに奪われているからだ。ジュカンが居る方向とは、真逆の方向に向かっている。
「いい加減にしろよ!」
「頼むから、私に従ってくれ」
 海斗とカオナシは口論していた。
海斗は体の主導権を取り戻そうとするのだが、今回もがっちりとカオナシに握られており、指一本に至るまで言うことを全く効かない。
 二人が喧嘩している影響が、美月たちにも出ていた。今はとりあえずカオナシに従って付いて行くが、ジュカンのことも気になっている様子だ。どの判断が正しいのか悩んでいる。
「大切な家族なんだろ!」
「その通りだ」
「だったら最後まで諦めるなよ!」
「私にはやらなくてはならないことがある。戦場に飛び込んで、万が一があっては、それこそ取り返しが付かない」
 海斗たちが森を抜けると同時に、地上に無数の影が現れた。頭上を見上げると、人間だった者たちが飛んでいた。海斗たちは反射的に構えたが、人間だった者たちは、無視して何もしてこない。ミヤコへ戻ろうとしている。
「引き上げていくのか……?」この時、海斗はジュカンが追い払ったという都合の良い妄想をした。
「どうやら目的を達したようだ」
 カオナシの言葉の意味を理解すると、海斗は腹の底から怒りが湧き上がった。
「薄情だろ!」
 海斗的には、これは許せないことであり、非難せずにはいられない。対してカオナシは、絶望的な声を出した。
「好きなだけ言え……。もうそれどころではない……」
「どういう意味だ?」一朗太が訊いた。
「空を見ろ……」
 海斗たちは空を見上げて、心底から驚いた。
「星が落ちてくる……」海斗は呆然と呟いた。
 天中星が重力に従って落下しているのだ。
「海斗!日奈!分厚い壁を出せ!」一朗太はすぐに指示を出した。
 学のない海斗でも、あんなのが地上に激突したらどうなるのか漠然と想像できた。恐竜が絶滅したと考えられるような甚大な被害が出る。海斗は、すぐに壁を出そうとしたが、日奈の盾が無数に出ただけだった。一刻を争う事態なのに、カオナシが非協力的なことに海斗は苛立った。
「力を貸してくれ!」
「心配するな。あれは星ではない」
「星じゃなくてもヤバいだろ!」
「黙って見ていろ」
 黙って見ていることができない海斗は、抗議の声を上げようとしたが、天中星が地上に激突することはなかった。大地から巨大な樹が伸びて、天中星をしっかりと受け止めたのだ。遠く離れた位置からでもはっきりと目視できるぐらい、それは本当に巨大な樹だ。
「私たちでは、神々の定めた秩序に抗えないということか……」カオナシは絶望に打ちひしがれる。
「あれは一体なんだ?」一朗太が訊いた。
 カオナシが答えるまで、少々時間を要した。「あれこそが、生命の大樹だ」
「お待ちください」ゴンが言った。「生命の大樹は、役目を終えて枯れたはずではないのですか?」
「まだ役目を終えておらず、休眠状態にあっただけだ。そして、お前たちが天中星と呼ぶ、あれこそ、最後に誕生する生命の実だ」
「じゃあ家族が増えるんだね!」アマネは無邪気に喜んだ。
 カオナシは笑った。人間的に言えば、腹の底から笑っているに違いないのだが、その笑い声にはどこか狂ったような響きがある。海斗たちは顔を見合わせた。今までカオナシが、こんな態度を取ったことはないので、言いようのない不安に急に襲われた。
「おい……。カオナシ……。どうしたんだ?」海斗は恐る恐る声をかけた。
「……もはや、秘密にしておく意味はなくなった。全てを話そう。どうして大戦争が勃発したのか。どうして人間たちが強制連行されたのか。私は答えを知っている。だが、これだけは言っておく。答えを知ったら、お前たちには絶望しか残らない」


 ニューイーラ本社ビルの会議室の一室に、海斗たちは居た。人間と翼有る者、両種族にとって、極めて重要な話をしてくれるからだ。翼有る者の代表としてクウコが参加することになった。
 彼女は、青葉に向かう途中で、エアイに寄って拾ってきた。人間側の代表はまだ来ていない。単純に仕事が忙しいようだ。
 会議室の空気はとても重い。アマネやクウコが軽口を叩かないぐらいだ。黙って代表の到着を待っていた。
「すまない。遅れた」
 洋平が会議室に入ってきた。続いてショーンも入ってきた。
「この非常時に呑気なものだな」
 カオナシがいきなり攻撃的な挨拶をしたことに、海斗、美月、一朗太、日奈は目を丸くした。少なくとも、海斗たちが知る南方鎮守カオナシは、そのようなことをする人ではない。逆に言うと、付き合いの長い海斗たちからすると、カオナシの精神状態は普通ではないと察せた。
「本当にすまない……」洋平は席に着いた。
「ここでの会話は、記録させてもらってもよろしいか?」ショーンが訊いた。
「好きにしろ」
 ショーンはポケットからテープレコーダーを取り出して録音機能を押した。
「これで役者は揃ったわけだ。話を聞かせて欲しい。どうやら私たち、翼有る者にも深く関わる案件のようだからな」
 椅子に座って腕を組んでいるクウコは、カオナシを睨みつけた。と言っても、体は海斗であるため、海斗はまるで自分が睨まれているように感じてしまった。
「どこから話そうか……」カオナシは暫し黙考した。「テンイのことを知らない人間もいるから、まずはこの世界の成り立ちから説明しよう。この世界は、神々が創造し、そこに一粒の種を植えた。それは生命の大樹と呼ばれる巨大な樹へと生長し、数多の命を産み落とした。私や思慮深き者。翼有る者。テンイに生きる全ての命は、大樹から誕生した」
「ファンタジー感がすげぇ……」思わずという感じで、洋平は呟いた。
 その気持ちは海斗も理解できる。進化論を学んだ身としては、どう聞いてもファンタジー設定にしか聞こえない。
「私たちは、次々に誕生する命を祝福しながら、平和に暮らしていた。……そう。あの日までは。それに最初に気付いたのはガンザンだった。大樹が最後の実を付けた時、ガンザンはどのような家族が誕生するのか見守っていた。だが、幸か不幸かあいつは、その性質に気付いてしまったのだ。その事実は、あまりにも重すぎたために、当時、自分と同等以上の力を有している三名を呼び寄せた。それが、私、ボドウ、ジュカンだ。その話を――」
「ちょっと待ってくれ」一朗太が遮った。「非常時という割には、核心部分をいつになったら話す?そこを話してくれないと、危機感を持って話に耳を傾けるのが難しい」
「……心して聞け。あの最後の実から誕生しようとしているのは――」できうるなら、言葉にしたくないという感じで、カオナシは間を置いた。
「全てを破壊する者だ」
 その名を聞いた瞬間、テンイの家族は強いショックを受けゆっくり俯く。
 三人の反応を理解できなかった海斗は、一朗太に身を寄せて小声で問いかける。「どういうことだ?」
「つまりだ。神々は、この世界に関心はないし、テンイの家族への愛情は一片も持ち合わせていないということだ。この世界の全てを愛しているなら、全てを破壊する理由はないからな」
 海斗は何度も頷いて納得した。
「お前たちが味わっている絶望は、かつて私たち四人も味わったものだ。だからこの事実は、永遠の秘密にしなければならなかった」
「……本当に父母神たちは私たちを愛していないのですか?」ゴンはとても辛そうに問い質した。
「これは何かの間違いだと思い、神々に訴えたことがある。だが返事は一切なかった。あの実が変化や消滅することもなく、今も存在し続けている。それが全てだ」
「……どうして秘密にしていたのかよくわかりました……。これは知らずにいた方が、幸せで残酷な事実です……」
 ゴンは今にも泣きそうだ。
「あの人間が、テンイに新秩序を打ち立てようとしているのを聞いて、私は吹き出しそうになった。やっていることは破滅に向かうことだからな」
 カオナシは、鼻で笑い飛ばすような音を発したが、海斗たちからすれば、笑い話ではない。彼らからすれば、テンイの家族に酷いことをするのを止めさせるための戦いだったのだ。ところが、その実は世界の命運に関わる一戦だったのだ。勝ったから良かったものの、もし負けていたら、何も知らずに世界は終わりを迎えていた恐ろしい話だ。
「話を戻そう。絶望を味わい、神々は何もしてくれないと知った私たちは、世界は最初から破壊されることを悟った。種子を植えたのは神々だからな。全てを破壊する者をどうするか話し合った。私とジュカンは、実を破壊することを提案したが、ガンザンとボドウに反対された。そんなことは今までやったことがないから、どのような結果を招くのかわからなかった。誕生を速めるだけかもしれなかった。試してみるにはリスクが高過ぎた。取り返しが付かないほどの。話し合った末に、四人の力を合わせて、大樹から切り離して空へと上げた。これで誕生することはできなくなった。この試みは、成功したと思っていた。事実、平和な日々が続いた。ところが、思いもしなかった事態が発生した。それが、翼有る者たちだ」
 自分たちの先祖が関わってくるので、アマネとクウコは身を乗り出すような格好で耳を傾ける。彼女たちからすれば、先祖どうして迫害され、自分たちが隠れ住むようになったのか、その真実を知る唯一の機会だろう。
「翼有る者たちは、強い好奇心と冒険心を持ち合わせている種族で、それ故にテンイで最も高度な文明を築いた。これでも私は、文明を発展させていく様を、楽しく見守っていた。だが、それが災いしてしまった。一部の翼有る者が、飛行艇で全てを破壊する者の実に近づき触れてしまったのだ。その際、彼らの魂は侵食され、奴の先兵と化した。それは伝染病のように広がり、翼有る者たちは次々と先兵と化した。地に咲く七色で戦った翼有る者たちは、奴の先兵だ。これが原因で、当時の指導者層は、全てを破壊する者の存在を知った。この事実を隠していたことに、私たちは非難されたよ。『お前たちのやり方では、問題の解決に繋がらない』と。そこであいつは、抜根的解決を図るため、ひいては神々と戦うことさえも視野に入れて行動を開始した。そのために、新たな世界秩序を構築しようとした。こうして勃発したのが大戦争だ」
「ちょっといい」アマネが遮った。「伝染病のように――。って言うけど、私たちの先祖は、そんな風にならなかったんだよね?」
「そうだな」クウコは同意した。「テンイの家族の一員であると、主張し続けたと伝わっている。その先兵と化した連中と、私たちは何が違ったのだ?」
「文明が発達するに従って、翼有る者は二つの派閥に分かれた。一方が空中都市で暮らし始めた者たちだ。先兵と化したのは、こいつらだ。もう一方は、家族らしく同じ大地で暮らすことを選んだ者たちだ。それがお前たちの先祖で、先兵と化すのを免れた」
「やっぱりとばっちりじゃん……」
 アマネはぼやいた。
「……これだけは知っておいて欲しいが、両者は活発に交流していた。考え方は違っても、家族だから仲良くしていた。だが全てを破壊する者の存在を知ってからは、あいつはそれまであった両者の交流を打ち切った。被害を拡大させないために。お前たちの先祖には、事実を知らされていないから、この決定には不満しかなかったようだが」
「……当然だろうな」クウコは言った。「話してくれていれば、何かしら力になれたかもしれないのに。酷い優しさだ……」
「……ついでに教えておくが、たった一種族で世界に戦いを挑むのは無謀だと、あいつらも理解していた。そこで目を付けたのが、全てを破壊する者だ。奴の力だけを利用できないかと研究し、それは成功した。飛行艇を数人で動かせたのも、あれだけ激しい戦いになったのも、利用していたからだ」
「神々に戦いを挑むのなら、利用できるものは利用しないと無謀だろ」一朗太は納得した。
「大戦争は私たちが勝ったが、私たちは同時に恐れた。全てを破壊する者は、誕生していないのに、力が使えるという事実に。そこで私たちはまた話し合った。その結果、鎮守という役目を作った。……全てを暴露するが、お前たちは鎮守を、世界と家族を見守る存在と思っているようだが違う。本当は、また奴の先兵と化す家族がいないかを監視するのが目的だ」
 またも出た衝撃の事実にショックを受けたのはゴンだけだった。
 異世界からやってきた人間たちからすれば、鎮守のありがたみは全くわからない。翼有る者たちは、迫害されたのと隠れ住んでいたいので、ありがたみは感じていないし、むしろ敵だと認識していてもおかしくない。
「翼有る者たちを利用した試みが失敗したのが利いたのか、それとも監視体制が功を奏したのか不明だったが、先兵と化す家族は現れず、テンイには長い平和が訪れた。だが、またしても問題が発生した。今度は人間たちだ」
 ようやく人間が関わってくることに、海斗たちは姿勢を正して耳を傾ける。
「今だから言うが、異世界からやってくるなど、私たちにはできない。それそこ神々にしかできないことだ。これでも私は、人間と初めて接触した時は、内心で恐々としていた。人間とは神々に匹敵する力を有していると思っていた。もし戦うことになったら、私は死ぬだろうと覚悟していた。ところが実際に会ってみたら、そもそも力を持ち合わせていなかった。お前たちが信奉する科学の力かと思ったが、人間の世界を見た結果、そこまでの科学力はなかった。人間はどうやってテンイにやってきたのか?ずっと疑問だったが、この街がテンイに強制連行されたあの日に、その疑問が解けた。全てを破壊する者が、テンイとあの世界を繋いでいたのだ。そして、クリストファー・クリスティーナという人間と会って確信した。お前たち人間もまた、奴の先兵と化していたことを。全てを破壊する者は、諦めたわけではなかった。誕生するため、自分の手駒として利用できる種族を、テンイより外の世界に求めていたのだ。そして目を付けたのが人間だ」
 洋平が小さく手を挙げた。
「それは伝染病のように広がるんだろ?でも俺たちは何ともないぞ。誰か異常だと思う奴はいるか?」
 海斗たちはそれぞれ顔を見合わせてから、首を横に振った。
「流石の奴でも、世界を跨いで先兵とするのは難しかったのだろう。加えて、お前たち人間は、テンイの法則の埒外にいる異種族だ。テンイの家族のように、上手くはいかなかったのだろう。それでも可能としたのは、人間が言うところの高度な社会と、お前たち人間の性質が関係している」
「というと?」
 一朗太は先を促した。
「人間の社会では、余程のことがなければ指導者の言葉に、末端まで大勢の人間が大人しく従うだろ。奴からすれば、極少数の人間を先兵とすれば良かった。また、お前たち人間は、同族殺しを平気で行える異常な攻撃性を持ち合わせている。そこが奴との波長が合ったのだろうし、利用し易かったのだろう。私に言わせれば、お前たち人間は、良いように利用された被害者だ」
 これで話は終わりとばかりに、カオナシは言葉を切った。
「……確認したいことがある」一朗太が口を開いた。「人間が化け物になったあの現象に、あんたは本当に心当たりがないのか?」
「あの現象は、本当に私も初めて見た。だが、どうして起きたのか想像はできた。全てを破壊する者は、前回の失敗を繰り返さないために、力を与えてあのようにしたのだろう。あれは小さな全てを破壊する者だ。そして、あの力の性質は破壊であり、どのような力でも破壊してしまう」
 洋平が再び小さく手を挙げた。
「そいつの目的が達成されたのなら、人間は用済みだろ?俺たちを地球に帰してくれることはないのか?」
「あいつの目的は誕生することだ。目的はまだ達成されていない。仮に誕生しても、帰すことなく全てを破壊する。あいつにとって、破壊というのは、腹が減ったから食事をする。のと同じぐらい自然な欲求であり行為だ」
「神様って何を考えているんだろうね……?」独白するように言った美月。
「それは私も知りたい」
「説得して破壊を止めさせることはできないのか?」海斗は縋るように訊いた。
「不可能だな。だからこそ、あいつだけは家族と認められない」
 海斗は頭を抱えた。
 ズイチョウマルで見たあの大きさだ。誕生したらそこいらの怪獣が、ミニサイズに思えるぐらいの巨体なのは容易に想像できる。しかも全てを破壊する力を有している。戦っても勝ち目はない。
「……何とかしないとな……」海斗は呟いた。
 良いように利用された挙句、理不尽に殺される。
 そう思うと、ふつふつと怒りが湧いてきた。
 そのような未来は、絶対に受け入れられない。全てを破壊する者からすれば、人間は取るに足らない矮小な生物かもしれないが、それでもこっちは生きているのだ。この世に未練が沢山ある。日奈が独り立ちする日を迎えたいし、美月の花嫁姿だって見たい。黒い残暑のように、何もかも失うなんて、もう二度と経験したくない。
「どうすればいいと思う?」
 決意しても、すぐに妙案を思い付かないのが海斗である。
「時間的な余裕はどれぐらいあるんだ?」一朗太が訊いた。
「あまりないな。正確な日時はわからないが、今年以内に誕生するのは間違いない」
「もしかしたら今日中に誕生するかもしれないということか。本当に時間がないな……。作戦と呼べないだろうが、一つだけ思い付いた」
 全員の目が一朗太に集まった。
「お前らは、一寸法師の話を覚えているか?」
 その話を知らないテンイの家族は首を傾げた。
「あれだろ。掌サイズの人間が、鬼を退治する話だろ」海斗が答えた。
「あれと同じことをしてみるのはどうだ?つまりだ。誕生した全てを破壊する者の、口、耳、鼻のどっかから侵入して、脳なり心臓なりを破壊する。生物である以上、脳なり心臓なりを潰されたら、流石に死ぬだろう」
「乗った」海斗は即座に賛同した。
「本気か?」カオナシが聞き返した。
「本気だよ。うだうだ言っている暇があったら、肚を括って行動するしかないだろ。俺は理不尽に殺される気はない」
 海斗がそう言うと、絶望に打ちひしがれた人たちの顔に、活力が戻っていった。
「それもそうだね」美月が返事をすると、続くように次々と賛同者が現れた。
「そういうお前はどうしたいんだ?」海斗が訊いた。
「ボドウとジュカンは、神々の定めた秩序に抗おうとした。それなのに、どうして私だけ大人しく秩序だからと従えよう。従えなかったから、大樹から奴を切り離したのだ。今度もまた抗うさ」
「ならもう、決まりだろ」
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