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彼女は前世を思い出す
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テレーズ・アルビオン。公爵家の末っ子長女である彼女は悪名高い美しい華である。
曰く、わがままで傲慢。
曰く、使用人達を虐待する。
曰く、嫉妬深く執念深い。
そんな彼女は、生まれながらの婚約者の浮気に腹を立てて浮気相手を虐めたらしい。本来なら浮気された側のテレーズにも同情は集まると思うのだが、いかんせん普段の言動のせいで浮気されて当然だと思われてしまった。
そして、浮気相手を虐めたことで婚約破棄を突きつけられる。一応、浮気したのは相手なので結局は相手有責で慰謝料を受け取り婚約破棄したのだが、テレーズの評判はますます下がった。
そして、そんなテレーズも結婚適齢期なのでどこかに嫁ぐことになる。しかし相手がみんな逃げる。どうしようかと思っていた時、女嫌いで有名な五歳ほど年上の侯爵から嫁にもらいたいと連絡が入り受け入れることになった。
そんなテレーズは、侯爵の嫁に行く前日に階段から足を踏み外して頭を強く打った。
そして、前世の記憶を夢に見た。
前世の彼女は孤独だった。所謂ネグレクトと呼ばれる虐待を受けており、放置児と呼ばれ友達の家にも上げてもらえず一人で寂しく過ごす毎日。ご飯は冷凍食品かお惣菜。とにかく愛情というものに飢えていた彼女は事故死するところまで夢を見て目覚めてから、両親と兄達に心配されたことが嬉しくてしばらく泣いた。
そして、侯爵家に嫁ぐ。結婚式は簡素なものだったが、優しく見守ってくれる家族に嬉しくてずっと笑顔だった。侯爵、ボーモン・バスチアンはなんだか聞いていた話と違うとテレーズを訝しむ。が、妻としての役割さえ果たしてくれればそれで良いと放置することにした。
テレーズは実家から使用人を連れてきていない。というか誰もついてきてくれなかった。なので、侯爵家の使用人が新しいテレーズの専属メイドとなる。
「初めまして。これからよろしくお願いします!」
ものすごく性格が悪いと聞いていたテレーズから笑顔で挨拶をされて困惑するのは、専属メイドに選ばれたマルカ。
「えっと……こちらこそよろしくお願いします、テレーズ様!」
テレーズは心から喜んだ。同世代のお友達が出来るかもしれない!
「マルカさん、明日は一緒にお茶でもどうですか?三時のおやつに!」
「ええ!?私がご一緒したら怒られちゃいますよぉ」
「大丈夫です!なんだか、前の婚約者さんから貰った慰謝料を全部お小遣いとして持たせて貰ったので、それを使ってこっそり二人で喫茶店にでも出かけましょう!」
「テレーズ様ぁ!ありがとうございますー!」
マルカは甘いものが好きである。一発で釣られたのだった。
「今日は初夜ですので気合いを入れて準備しましょう!」
マルカは気合いを入れて夜の準備をする。対するテレーズは自分の周りからの評判とボーモンの女嫌いを考えて、そういうことはまず無いなと悟っていたがマルカの好きにさせる。
「これで良し!では頑張ってくださいね、奥様!」
「マルカさん、ありがとうございます!頑張れるかちょっと自信ないですけど!」
ということで、マルカが下がるとしばらくしてボーモンが現れた。
「……こんばんは?」
「……こんばんは」
ボーモンはテレーズの様子に再び困惑する。なんというか、速攻で色仕掛けしてくるイメージだった。それがベッドの上に何故か正座でちょこんと座っていて、首を傾げながら挨拶をする。ボーモンがテレーズに対して、なんなんだと思ってしまうのも無理はなかった。
「ううん……あー……私は女嫌いで有名だから、君も聞き及んでいると思う。色々な憶測が飛んでいるようだが、私が女嫌いになったのは私の見た目と爵位しか見ない女性たちに辟易したからだ」
「はい!」
「はい……? うん、まあ、それで、私は君を抱こうとは思っていないし、そういう行為は出来ない。ただ、初夜の跡すらないと君が使用人達から軽んじられる心配があるので工作をしようと思う」
「工作?」
きょとんとするテレーズに、なんだか何も知らない子供を相手にしている気がして謎の罪悪感を持つボーモン。テレーズは、ちょっと前世の記憶に引っ張られて幼くなっているので仕方がないことではある。
「ベッドをこう……乱して、動物の血を撒く」
「わぁ……」
ドン引きしているテレーズに誰の為だと思いつつもボーモンは言った。
「今夜はこのベッドで二人で裸で寝る」
「ええ……」
「我慢してくれ、頼む」
「いいですけど……侯爵様は大丈夫なんですか?」
何かと思えばこちらの心配をしてくれるテレーズに、本当にあのテレーズなのかとまじまじと見てしまうボーモン。
「侯爵様?」
「ボーモンでいい。一応夫婦だしな」
「ボーモン様」
なんだかにやけ顔になるテレーズに、ボーモンはなんだなんだと戸惑う。
「何故そこでにやける」
「私、元婚約者すら名前で呼んだことがありません。何気に兄達以外の異性を名前呼びするの初めてです」
嬉しそうに笑って言うテレーズに、ボーモンはいよいよ訳の分からない庇護欲に駆られ始める。
「子供か。さっさと寝ろ」
「はーい!おやすみなさい!」
言って三秒で寝たテレーズにボーモンはもう好きにしてくれと思う。自分もなんだかんだで速攻で寝たが。
「おはようございます!ボーモン様!」
「元気だな君は」
「今日メイドと喫茶店二人で行っていいですか!?」
「君一人で喫茶店楽しんでどうするんだ」
「二人でです!」
朝から元気なテレーズに呆れつつ、疑問に思うことを聞く。
「まさかと思うが付き人として連れて行くのではなく友人として連れて行くつもりか?」
「はい!」
呆れた。が、色々悪名高いので友達もいないのだろうし、このくらいは好きにさせてやろうとボーモンは考えた。それに、なんだか面白いので許可を出す。
「ちゃんと報告するならいいぞ」
「報告?」
「どんなことがあったとか、楽しかったとか」
「了解です!」
ということで、その後使用人達が来て朝の支度も済んで、二人で一緒に朝食を済ませる。
「それでですね、うちの領地のチーズは絶品なんですよ!」
「君が散々文句を言って改良に改良を重ねたんだもんな。知ってる」
「えーつまんない。でも本当にすごく美味しいんですよ!一度一緒に食べに行きましょうよー」
「考えておく」
使用人達は朝から、朝食時はどんな殺伐とした雰囲気になるだろうと戦々恐々としていた。だが蓋を開けてみればこれである。使用人達は意外とテレーズも悪くない人なのかな?と思いつつ仕事をこなす。
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした。それでは、私は今日は公務があるのでこれで失礼する。喫茶店、楽しんでこい」
まるで子供にするように乱暴に、テレーズの頭を撫でるボーモンに使用人達は驚いた。あのボーモンが自ら女性の頭を撫でるなんてと。
「はい!楽しみます!ボーモン様もお仕事頑張ってくださいね!」
「任せろ」
使用人達は、はやくもボーモンを手懐けたテレーズを素直に賞賛する。そんなことなどつゆ知らず、テレーズはボーモンに懐いていた。
「それでですね、今日行った喫茶店のプリンパフェとチョコプリンパフェを頼んで、二人で半分こしたんですけどこれがまた絶品で!」
「今度は私と昼にでもそこに行くか?オムライスとナポリタンも食べたかったんだろう?」
「いいんですか!?是非!」
「私がオムライスを頼むから、君はナポリタンを食べればいい。半分こしよう」
「わーい!」
ボーモンは素直に懐いてくるテレーズを可愛く思う。恋愛感情というより、庇護欲ではあるが。
「仕事の帰りに買ったものだが、良かったら受け取れ」
「わあ……!可愛い!こんな素敵なネックレスもらっていいんですか?」
「首輪だと思ってつけておけ」
「わーい!」
案外この夫婦がきちんと〝夫婦〟になる日は近いかもしれない。
曰く、わがままで傲慢。
曰く、使用人達を虐待する。
曰く、嫉妬深く執念深い。
そんな彼女は、生まれながらの婚約者の浮気に腹を立てて浮気相手を虐めたらしい。本来なら浮気された側のテレーズにも同情は集まると思うのだが、いかんせん普段の言動のせいで浮気されて当然だと思われてしまった。
そして、浮気相手を虐めたことで婚約破棄を突きつけられる。一応、浮気したのは相手なので結局は相手有責で慰謝料を受け取り婚約破棄したのだが、テレーズの評判はますます下がった。
そして、そんなテレーズも結婚適齢期なのでどこかに嫁ぐことになる。しかし相手がみんな逃げる。どうしようかと思っていた時、女嫌いで有名な五歳ほど年上の侯爵から嫁にもらいたいと連絡が入り受け入れることになった。
そんなテレーズは、侯爵の嫁に行く前日に階段から足を踏み外して頭を強く打った。
そして、前世の記憶を夢に見た。
前世の彼女は孤独だった。所謂ネグレクトと呼ばれる虐待を受けており、放置児と呼ばれ友達の家にも上げてもらえず一人で寂しく過ごす毎日。ご飯は冷凍食品かお惣菜。とにかく愛情というものに飢えていた彼女は事故死するところまで夢を見て目覚めてから、両親と兄達に心配されたことが嬉しくてしばらく泣いた。
そして、侯爵家に嫁ぐ。結婚式は簡素なものだったが、優しく見守ってくれる家族に嬉しくてずっと笑顔だった。侯爵、ボーモン・バスチアンはなんだか聞いていた話と違うとテレーズを訝しむ。が、妻としての役割さえ果たしてくれればそれで良いと放置することにした。
テレーズは実家から使用人を連れてきていない。というか誰もついてきてくれなかった。なので、侯爵家の使用人が新しいテレーズの専属メイドとなる。
「初めまして。これからよろしくお願いします!」
ものすごく性格が悪いと聞いていたテレーズから笑顔で挨拶をされて困惑するのは、専属メイドに選ばれたマルカ。
「えっと……こちらこそよろしくお願いします、テレーズ様!」
テレーズは心から喜んだ。同世代のお友達が出来るかもしれない!
「マルカさん、明日は一緒にお茶でもどうですか?三時のおやつに!」
「ええ!?私がご一緒したら怒られちゃいますよぉ」
「大丈夫です!なんだか、前の婚約者さんから貰った慰謝料を全部お小遣いとして持たせて貰ったので、それを使ってこっそり二人で喫茶店にでも出かけましょう!」
「テレーズ様ぁ!ありがとうございますー!」
マルカは甘いものが好きである。一発で釣られたのだった。
「今日は初夜ですので気合いを入れて準備しましょう!」
マルカは気合いを入れて夜の準備をする。対するテレーズは自分の周りからの評判とボーモンの女嫌いを考えて、そういうことはまず無いなと悟っていたがマルカの好きにさせる。
「これで良し!では頑張ってくださいね、奥様!」
「マルカさん、ありがとうございます!頑張れるかちょっと自信ないですけど!」
ということで、マルカが下がるとしばらくしてボーモンが現れた。
「……こんばんは?」
「……こんばんは」
ボーモンはテレーズの様子に再び困惑する。なんというか、速攻で色仕掛けしてくるイメージだった。それがベッドの上に何故か正座でちょこんと座っていて、首を傾げながら挨拶をする。ボーモンがテレーズに対して、なんなんだと思ってしまうのも無理はなかった。
「ううん……あー……私は女嫌いで有名だから、君も聞き及んでいると思う。色々な憶測が飛んでいるようだが、私が女嫌いになったのは私の見た目と爵位しか見ない女性たちに辟易したからだ」
「はい!」
「はい……? うん、まあ、それで、私は君を抱こうとは思っていないし、そういう行為は出来ない。ただ、初夜の跡すらないと君が使用人達から軽んじられる心配があるので工作をしようと思う」
「工作?」
きょとんとするテレーズに、なんだか何も知らない子供を相手にしている気がして謎の罪悪感を持つボーモン。テレーズは、ちょっと前世の記憶に引っ張られて幼くなっているので仕方がないことではある。
「ベッドをこう……乱して、動物の血を撒く」
「わぁ……」
ドン引きしているテレーズに誰の為だと思いつつもボーモンは言った。
「今夜はこのベッドで二人で裸で寝る」
「ええ……」
「我慢してくれ、頼む」
「いいですけど……侯爵様は大丈夫なんですか?」
何かと思えばこちらの心配をしてくれるテレーズに、本当にあのテレーズなのかとまじまじと見てしまうボーモン。
「侯爵様?」
「ボーモンでいい。一応夫婦だしな」
「ボーモン様」
なんだかにやけ顔になるテレーズに、ボーモンはなんだなんだと戸惑う。
「何故そこでにやける」
「私、元婚約者すら名前で呼んだことがありません。何気に兄達以外の異性を名前呼びするの初めてです」
嬉しそうに笑って言うテレーズに、ボーモンはいよいよ訳の分からない庇護欲に駆られ始める。
「子供か。さっさと寝ろ」
「はーい!おやすみなさい!」
言って三秒で寝たテレーズにボーモンはもう好きにしてくれと思う。自分もなんだかんだで速攻で寝たが。
「おはようございます!ボーモン様!」
「元気だな君は」
「今日メイドと喫茶店二人で行っていいですか!?」
「君一人で喫茶店楽しんでどうするんだ」
「二人でです!」
朝から元気なテレーズに呆れつつ、疑問に思うことを聞く。
「まさかと思うが付き人として連れて行くのではなく友人として連れて行くつもりか?」
「はい!」
呆れた。が、色々悪名高いので友達もいないのだろうし、このくらいは好きにさせてやろうとボーモンは考えた。それに、なんだか面白いので許可を出す。
「ちゃんと報告するならいいぞ」
「報告?」
「どんなことがあったとか、楽しかったとか」
「了解です!」
ということで、その後使用人達が来て朝の支度も済んで、二人で一緒に朝食を済ませる。
「それでですね、うちの領地のチーズは絶品なんですよ!」
「君が散々文句を言って改良に改良を重ねたんだもんな。知ってる」
「えーつまんない。でも本当にすごく美味しいんですよ!一度一緒に食べに行きましょうよー」
「考えておく」
使用人達は朝から、朝食時はどんな殺伐とした雰囲気になるだろうと戦々恐々としていた。だが蓋を開けてみればこれである。使用人達は意外とテレーズも悪くない人なのかな?と思いつつ仕事をこなす。
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした。それでは、私は今日は公務があるのでこれで失礼する。喫茶店、楽しんでこい」
まるで子供にするように乱暴に、テレーズの頭を撫でるボーモンに使用人達は驚いた。あのボーモンが自ら女性の頭を撫でるなんてと。
「はい!楽しみます!ボーモン様もお仕事頑張ってくださいね!」
「任せろ」
使用人達は、はやくもボーモンを手懐けたテレーズを素直に賞賛する。そんなことなどつゆ知らず、テレーズはボーモンに懐いていた。
「それでですね、今日行った喫茶店のプリンパフェとチョコプリンパフェを頼んで、二人で半分こしたんですけどこれがまた絶品で!」
「今度は私と昼にでもそこに行くか?オムライスとナポリタンも食べたかったんだろう?」
「いいんですか!?是非!」
「私がオムライスを頼むから、君はナポリタンを食べればいい。半分こしよう」
「わーい!」
ボーモンは素直に懐いてくるテレーズを可愛く思う。恋愛感情というより、庇護欲ではあるが。
「仕事の帰りに買ったものだが、良かったら受け取れ」
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