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彼女は孤児院の子供たちを招く
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「うーん……」
テレーズは一人、ボーモンが来るまでベッドの上で悩んでいた。お小遣いとして渡されていた元婚約者からの慰謝料にまったくと言っていいほど手をつけていない。お金は天下の回りもの。使わずに手元に置いておくのは腐らせるだけでしかない。
「ボーモン様からもお小遣い貰っちゃってるしなぁ……」
しかもボーモンからある程度のお金を渡されている。それも毎月くれるらしい。「侯爵家の夫人として必要なものを買ったり、あとはまあ好きに使え」とのこと。
「ドレスも装飾品も必要なものは今のところ揃ってるし、使い道がないよー」
テレーズは悩んで悩んで、ふと思いついた。
「そうだ!ノブレスオブリージュ!」
高貴な者の義務。それを果たすのに使えばいいじゃないかと。
「すまない、急な仕事が入って遅くなった」
「ボーモン様!ノブレスオブリージュ!」
「……急にどうした?」
要領を得ないテレーズの言葉にボーモンは首をかしげる。
「あの、今度孤児院の子供たちを屋敷に招いてスイーツパーティーしてもいいですか!?喜ばせてあげたいんです!費用は私のお小遣いから出しますから!」
「……なるほど。発想としては悪くない。費用を負担してくれるのはいいが、店で買うのか、シリルに作らせるのかどっちだ?」
「うーん……出来ればシリルさんに作って欲しいです……美味しいし……でも大変かなぁ……」
「大変だろうな。あとでシリルに出来るか確認してみろ。無理そうなら店で買っておいで」
「はーい!」
ということで、話したいことを話し、ボーモンがベッドに入っておやすみを言うと三秒で寝たテレーズ。ボーモンはその寝顔を愛おしい者を見る目で見ていた。
「妹が出来た気分だ」
ボーモンの中で膨らむ庇護欲は、ボーモン自身を変えつつある。
次の日、テレーズは早速シリルに確認を取る。
「シリルさーん!お願いがあって!」
「どうしました?奥様」
「孤児院の子供たちを屋敷に招いて、スイーツパーティーをしたくて!ボーモン様の許可は得たんだけど、子供たちが好きなものを好きなだけ食べられるくらいいっぱいスイーツ作れる?」
言いながらなかなかの無茶振りだよなぁと思うテレーズ。そんなテレーズの表情を見て、シリルは胸を張って言った。
「奥様。奥様は一言、作れと命じてくだされば良いのです」
「え?」
「私はこの屋敷の使用人。シェフです!料理に関することならばなんでもお任せあれ!」
「……作って、シリルさん!」
「拝命致しました!」
こうして孤児院の子供たちのためのスイーツパーティーを開催することが決まった。
そして当日。
「わー!」
「お屋敷ってこんなにキラキラしてるんだー!」
「綺麗!かっこいいね!」
侯爵家領内にある孤児院の子供たちが屋敷に招かれた。子供たちは大興奮である。孤児院を運営する教会のシスターたちは、子供たちが失礼をしないかとハラハラ見守っている。
「皆さん、よくいらっしゃいました!こちらへどうぞ!スイーツパーティーの始まりですよ!」
テレーズは子供たちを食堂に集める。子供たちは食堂に入った瞬間、目を輝かせた。
「わー!すごーい!」
「これ全部食べていいの!?」
「美味しそう!」
「では皆さん、ご遠慮なく食べてくださいね!」
「わーい!」
かくしてテレーズ企画のスイーツパーティーは大成功。普段はあまり甘いものを食べる機会に恵まれない子供たちは、まるで夢を見ているようだと心から喜んでいた。その喜びようを見てテレーズは、毎月同じ日に必ず子供たちをスイーツパーティーに招くことを決める。ボーモンも賛成してくれた。
「子供たちが喜んでくれて良かったな、テレーズ」
「はい!我が事のように嬉しいです!」
「毎月同じ日にスイーツパーティーを開くんだろう?そのうち痩せている子供たちがもっとふくよかになる……と、いいんだが」
「……うーん。孤児院へ寄付もしておいていいですか?お小遣いの範囲内に収めますから」
「もちろんだ」
この日以降、子供たちの孤児院内での食事もある程度豪華になった。テレーズの寄付金のおかげである。美味しくて栄養満点の食事を摂れるようになった子供たちは、テレーズのおかげだとシスターから聞かされてテレーズに心から感謝していた。
テレーズは一人、ボーモンが来るまでベッドの上で悩んでいた。お小遣いとして渡されていた元婚約者からの慰謝料にまったくと言っていいほど手をつけていない。お金は天下の回りもの。使わずに手元に置いておくのは腐らせるだけでしかない。
「ボーモン様からもお小遣い貰っちゃってるしなぁ……」
しかもボーモンからある程度のお金を渡されている。それも毎月くれるらしい。「侯爵家の夫人として必要なものを買ったり、あとはまあ好きに使え」とのこと。
「ドレスも装飾品も必要なものは今のところ揃ってるし、使い道がないよー」
テレーズは悩んで悩んで、ふと思いついた。
「そうだ!ノブレスオブリージュ!」
高貴な者の義務。それを果たすのに使えばいいじゃないかと。
「すまない、急な仕事が入って遅くなった」
「ボーモン様!ノブレスオブリージュ!」
「……急にどうした?」
要領を得ないテレーズの言葉にボーモンは首をかしげる。
「あの、今度孤児院の子供たちを屋敷に招いてスイーツパーティーしてもいいですか!?喜ばせてあげたいんです!費用は私のお小遣いから出しますから!」
「……なるほど。発想としては悪くない。費用を負担してくれるのはいいが、店で買うのか、シリルに作らせるのかどっちだ?」
「うーん……出来ればシリルさんに作って欲しいです……美味しいし……でも大変かなぁ……」
「大変だろうな。あとでシリルに出来るか確認してみろ。無理そうなら店で買っておいで」
「はーい!」
ということで、話したいことを話し、ボーモンがベッドに入っておやすみを言うと三秒で寝たテレーズ。ボーモンはその寝顔を愛おしい者を見る目で見ていた。
「妹が出来た気分だ」
ボーモンの中で膨らむ庇護欲は、ボーモン自身を変えつつある。
次の日、テレーズは早速シリルに確認を取る。
「シリルさーん!お願いがあって!」
「どうしました?奥様」
「孤児院の子供たちを屋敷に招いて、スイーツパーティーをしたくて!ボーモン様の許可は得たんだけど、子供たちが好きなものを好きなだけ食べられるくらいいっぱいスイーツ作れる?」
言いながらなかなかの無茶振りだよなぁと思うテレーズ。そんなテレーズの表情を見て、シリルは胸を張って言った。
「奥様。奥様は一言、作れと命じてくだされば良いのです」
「え?」
「私はこの屋敷の使用人。シェフです!料理に関することならばなんでもお任せあれ!」
「……作って、シリルさん!」
「拝命致しました!」
こうして孤児院の子供たちのためのスイーツパーティーを開催することが決まった。
そして当日。
「わー!」
「お屋敷ってこんなにキラキラしてるんだー!」
「綺麗!かっこいいね!」
侯爵家領内にある孤児院の子供たちが屋敷に招かれた。子供たちは大興奮である。孤児院を運営する教会のシスターたちは、子供たちが失礼をしないかとハラハラ見守っている。
「皆さん、よくいらっしゃいました!こちらへどうぞ!スイーツパーティーの始まりですよ!」
テレーズは子供たちを食堂に集める。子供たちは食堂に入った瞬間、目を輝かせた。
「わー!すごーい!」
「これ全部食べていいの!?」
「美味しそう!」
「では皆さん、ご遠慮なく食べてくださいね!」
「わーい!」
かくしてテレーズ企画のスイーツパーティーは大成功。普段はあまり甘いものを食べる機会に恵まれない子供たちは、まるで夢を見ているようだと心から喜んでいた。その喜びようを見てテレーズは、毎月同じ日に必ず子供たちをスイーツパーティーに招くことを決める。ボーモンも賛成してくれた。
「子供たちが喜んでくれて良かったな、テレーズ」
「はい!我が事のように嬉しいです!」
「毎月同じ日にスイーツパーティーを開くんだろう?そのうち痩せている子供たちがもっとふくよかになる……と、いいんだが」
「……うーん。孤児院へ寄付もしておいていいですか?お小遣いの範囲内に収めますから」
「もちろんだ」
この日以降、子供たちの孤児院内での食事もある程度豪華になった。テレーズの寄付金のおかげである。美味しくて栄養満点の食事を摂れるようになった子供たちは、テレーズのおかげだとシスターから聞かされてテレーズに心から感謝していた。
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