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彼女は初めての貴族のお友達が出来る

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「テレーズ、よく来ましたね」

「はい、女王陛下!」

テレーズは招かれていた女王陛下のお茶会に参加する。最近活躍しているテレーズ。やっと真人間になったかと思う者もいれば、元々優しい人で噂が一人歩きしていたのかと誤解する者もいる。テレーズはそんな様々な憶測や噂、不躾な視線にも気付かずに女王陛下御用達のお店のケーキを美味しそうに食べていた。

「……あの、テレーズ様」

そこでテレーズに自ら声をかける勇者が一人。周りはなんだなんだと視線を寄越す。彼女は凄く注目を集めてしまったと緊張するが、当のテレーズは呑気に答えた。

「はい、なんですか?」

「わ、私とお友達になってくださいませんか!?」

彼女の言葉に、ある者は正気を疑い、ある者は羨ましがった。テレーズを警戒する者ももちろん多いが、興味がある者も多い。

「もちろんいいですよ!テレーズ・バスチアンです。よろしくお願いしますね!」

「ありがとうございます……!マドロン・モデストです!よろしくお願いします!」

「あ、モデスト家って確か魔道具の開発事業によって最近男爵位を授与された……ということは、モデスト家の天才三姉妹のお一人です!?」

「えっ、えっと……そんな風に言われると照れちゃいます……天才は姉二人で、私は思いつくまま魔道具を作ってるだけで……」

「すごーい!マドロン様、そもそもぽんぽんと魔道具を思いつくのがすごいですー!マドロン様は紛うことなき天才ですよ!」

興奮気味なテレーズにマドロンは押され気味である。が、本当に照れているらしく耳まで赤い。その頬は緩んでいるので、満更でもないらしい。

「ふふふ。テレーズ様は、お噂と違ってお優しいんですね」

「んー?そうでもないですよ?極悪非道のつもりはないですけど、普通です。優しいってほどじゃないです」

「そんなに謙遜なさらないでください。新興貴族の私なんかに、見下すどころか天才だなんて優しい言葉を下さるテレーズ様は本当に素敵です」

そのマドロンの言葉に、何人かは顔を赤くする。マドロンを新興貴族風情と見下していた者達だ。しかし、女王陛下のお茶会の席を汚すわけにもいかずぐっと堪えて押し黙る。

「新興貴族でも、貴族は貴族ですよ?それに、貴族は弱い者を守るためにいるんです。新興貴族にせよ平民にせよ、庇護するならともかく見下すなんて有り得ません。もしマドロン様が誰かに虐められたらすぐに言ってくださいね?私、ボーモン様に相談してみますから!」

テレーズのその言葉に、今度は顔色を青くする者もいた。そんな彼女たちの様子に、散々新興貴族風情がと罵られたマドロンも溜飲が下がる。しばらくはちょっかいも出されないだろう。

「ふふ。本当に、テレーズ様は素敵です」

「そんなことないですよー」

そんな無邪気だが、無意識のうちにマドロンを守るための釘を刺したテレーズに成長を感じ、女王陛下は満足そうに微笑んだ。
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