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彼女は和の国との国交の架け橋となる

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着物が流行ると当然のように凛の祖国、和の国の文化にも興味が持たれる。和の国特有の緑茶や抹茶、和菓子がまず女王陛下のお茶会で出されるようになり、やがて貴族全体に広まっていく。次は巾着や風呂敷など日常的に使う物、果ては日本人形や浮世絵などの芸術品まで流行りだした。

「凛さん、なんかすごいことになってますね」

「そう言うテレーズ様がきっかけですけどね」

「えへへ……でも、和の国の色々な物のデザインは素朴で温かいから大好きです!懐かしいし、流行って良かったです」

「懐かしい、ですか。たしかに我が国の物のデザインはそういう印象を与えるかもしれないですね。ですがまさか国交まで樹立するとは思いませんでした」

「本当にびっくりですよね!」

和の国はあまり開かれた国ではない。列強各国との交流は控えめであった。そこに突然のコンスタン王国での和の国ブーム。急に様々な物の輸出が増え、さすがに和の国としてもコンスタン王国を無視できなくなってきた。これを皮切りにコンスタン王国と和の国は国交を樹立する。テレーズは両国の国交の架け橋として一躍時の人となる。

「我が国では女王陛下はもちろんのこと、テレーズ様も有名ですよ。テレーズ様が我が国の文化を広めたと」

「ええ?凛さんと女王陛下こそ立役者だと思うんですけど……」

「私は出稼ぎに来ただけですし、女王陛下に着物を献上したテレーズ様がいてこそですよ。我が国とコンスタン王国の文化交流の機会も増えましたし、これでもうちょっと我が国も自由になるといいんですが」

「……和の国は自由じゃないんですか?」

「なんと言いますか、まだまだ男尊女卑的思想が根強く…女が結婚もせずに仕事に明け暮れて海外に出稼ぎに出るとか、すごく反対されましたね。まあ私はそう言われても仕方がないんですけど。とはいえ、テレーズ様のおかげで私の評判も大分覆りましたけどね。今では英雄扱いです」

和の国は強大なコンスタン王国の〝庇護下〟に入ったと列強各国は見ている。おかげで急に脚光を浴びた和の国もその価値を見出した列強各国から下手に手を出される心配はなく、急な経済成長に浮き足立ってこそいるが国は安泰である。そのきっかけである凛も、一部では女の癖にと揶揄されるが基本的に英雄扱いされていた。

「なにもかもテレーズ様が私を、着物を見出してくださったおかげです。改めまして、ありがとうございます」

「いえいえそんな!これからも女王陛下のお抱えデザイナーとして、よろしくお願いしますね」

「はい。女王陛下に尽くします」

テレーズは凛の返事ににっこりと笑った。
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