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彼女は悪の華と呼ばれた理由を語る

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「……もう!アルビオン公爵邸の使用人たちはどうにかしています!」

マルカはプンスカと怒っていた。テレーズに対するアルビオン公爵邸の使用人たちの態度に憤りを覚えていたのだ。

「でも、私もボーモン様と結婚する前は傍若無人だったというか……自業自得なんです」

「たしか使用人たちを虐待していたという噂だったな。だが、君がそんなことをするとは思えないんだが……」

「あ、私もそう思って聞いて回りました!」

テレーズはちょっと困ったように笑った。

「なんて言われました?」

「聞いた人全員、自分は暴力を振るわれたことはないけれど他の使用人たちはわからない。あのわがままお嬢様だからしていてもおかしくない、ですって!絶対絶対あの無責任な使用人たちのせいでテレーズ様の悪評が広まったんです!私にはわかります!」

「……テレーズ。さては君、わかっていて訂正してなかっただろう」

「えへへ」

そう。前世の記憶を取り戻す前のテレーズも、そこまで極悪人ではなかった。それはまあ、良い子ではなかったのだが……悪の華というのは噂が先走っていただけである。

わがままで傲慢。これは本当だったが、ただそれだけで人を虐げたりはしない。

使用人達を虐待する。これは完全な嘘というか誤解だ。〝やりそうだよね〟みたいな噂が段々と〝やってるよね〟という噂に変わったのだ。これに関してはテレーズは完全な被害者である。

嫉妬深く執念深い。執念深いどころか大抵のことに興味がないタイプだったのだが……〝生まれながらの婚約者の浮気に腹を立てて浮気相手を虐めた〟という噂のせいでそう思われていた。実際には婚約者と浮気相手に、床に正座をさせて一時間以上に渡り懇々とお説教をしただけである。浮気されたテレーズには当然の権利だろう。

「……というわけです」

「なんでその場で訂正しないんですか!」

「マルカ。〝やったとでっち上げる〟ことは簡単だが〝やってないと証明する〟ことは難しいものなんだ。テレーズは良く耐えたと思う」

マルカはボーモンを見つめ、その後テレーズに目線を移す。

「まあ、実際悪評を立てられても〝アルビオン公爵家〟が私を守ってくれましたし。周りからの恵まれた生まれへの嫉妬だと理解はしていたので、特別何かする必要もないかなって」

「テレーズ様……」

「でもわがままをたくさん言って困らせてしまいましたから、アルビオン公爵邸の使用人たちともいつか仲直りしてみたいですね」

「テレーズ様なら絶対出来ますよ!」

マルカに励まされ、微笑むテレーズ。ボーモンはそんなテレーズがずっと誤解を受けて来たことに静かに心を痛めた。
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