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彼女は旦那様を連れて歩く

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テレーズとボーモンはアルビオン公爵邸に泊まり、朝にはアルビオン公爵邸を出た。

「フロラン殿が寂しがっていたな」

「お兄様は私が手元から離れるといつもああですから、気にしないでください!」

「愛されているな……」

ちょっと過剰な兄妹愛だが、テレーズの能力を考えれば仕方がない。テレーズの能力は、無茶をすればいつ命を落としてもおかしくないのだから。

「さあ、観光して帰りましょう!」

「そうだな」

テレーズはボーモンを連れてアルビオン公爵領の観光地に連れまわす。

「まずはチーズですね!チーズを買いましょう!」

「そうだな、チーズを買おう」

すっかりチーズの虜となったボーモンと一緒に、テレーズは贔屓にしていた農家の元へ行く。

「おじいちゃーん!おばあちゃーん!」

「おお、おお、テレーズさまぁ……よく来たなぁ」

「あれまあテレーズさまぁ!結婚したんだべ?」

「うん!この方が旦那様!」

「おんやまあよく来たべなぁ……」

訛りが強い。仲が良すぎる。言いたいことは色々あったが、ボーモンはあえて突っ込まない。

「テレーズの夫のボーモン・バスチアンだ。妻が世話になる」

「ボーモン様、よろしくなぁ。とりあえず今あっためるからホットミルク飲むべ」

「ああ、その間にテレーズ様にチーズさ包んどいてくんろ」

「あいよー」

「チーズは金貨六枚分ちょうだいねー!」

テレーズはにこにこしている。なんなら公爵邸よりこっちが実家だと言われても違和感がない。

「ほれ、ホットミルクだぁ。ボーモン様は蜂蜜いれるけ?」

「少しいただきたい」

「あいよー」

少しどころかたくさん蜂蜜を入れられたが、飲むと温かくすごく美味しい。

「ちゃんと殺菌はしてあるけど、やっぱり新鮮な牛乳は美味しいですよね!」

「これは驚いた。チーズだけでなく牛乳も買い取りたい」

「持ってけぇるか?だども悪くなんねぇかなぁ……」

「魔法があるから大丈夫だよ、おじいちゃん」

「んならおらの奢りだ。結婚祝いだと思って持ってってくんろ」

農家のおじいちゃんが大きな瓶に詰められた牛乳を何本か持たせてくれる。テレーズは遠慮はせず、笑顔でお礼を言った。

「おじいちゃん、ありがとう!大好き!」

「おらもテレーズ様が大好きだべ。四人目の孫だぁ」

「お孫さんたちに今年は挨拶出来そうになくて残念だよ」

「いつでも好きな時に来たらよかっぺ。あいつらも会いたがってるだよ」

「そっかあ。ありがとう!」

そしておばあちゃんがチーズを包んで持ってきてくれた。牛乳とチーズに保存魔法を掛けて空間魔法でしまい込む。

「じゃあ、おじいちゃん、おばあちゃん、また来るね!」

「待ってるだよ」

「結婚したからって無理はするななぁ?」

「わかってるよー。じゃあまたね!」

そして、テレーズはボーモンをスキー場や凍った滝、冬に咲く珍しい桜など観光地に引っ張り回して楽しんだ。
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