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実は優しい
「なにやってるの!」
「あ、お義母様…その、あの…」
「お前はそんなことしなくていいんだよ!そこに座ってな!」
「は、はい…」
旦那様と結婚してから数ヶ月。
私は、義母と義妹との関係に悩んでいる。
「まったく!これだから貧乏人は嫌だよ!」
「そうよねお母さん!使用人に全部任せればいいのに働きすぎなのよ!」
「ご、ごめんなさい…」
貧乏な村で家族もおらず、身売りをして暮らしていた私。
そこに裕福な都会の地主の地主の息子が旅の途中に現れ、一目惚れしてくれてプロポーズされた。
まるで絵に描いたような幸せ。シンデレラストーリー。
包み隠さず境遇を話したが、旦那様の母と妹である二人は反対しなかった。
そして私たちは結婚。けれど旦那様は地主である義母の息子なのに、様々な土地に赴き地域おこしをする仕事もしている。困った人を放って置けないらしい。今は絶賛私のいた村を助けているそうだ。
だから、今は義母と義妹との三人ぐらしをしている。
けれど使用人に頼る裕福な生活はどうにも慣れなくて。
義母と義妹には、貧乏性が抜けないせいで迷惑ばかりかけている。
「そんなことより読み書きは覚えたのかい!」
「あ、えっと…」
「貸しなさいよ!…下手くそな字ね!覚えは早いのに不器用なのよ!」
「ごめんなさい…」
読み書きそのものはここに来てからなんとか覚えたけれど、なかなか綺麗には書けない。読解不能ではないはずなんだけど…。
「ほら!下働きの真似事をする暇があれば算数の勉強でもしな!」
「は、はい!」
算数はまだ苦手。でも、どうにか足し算くらいはできるようになった。引き算はちょっとだけできる。
ともかく、ここにおいてもらうためにも頑張らないと。
「なぁ奥さん」
「は、はい」
「あんた、身売りをしてたんだって?」
心臓が跳ねる。
どうしよう。
旦那様や義母と義妹に迷惑がかかる。
怯える私は固まってしまう。
義母のお客様の、初めて見るおじさんにネットリとした視線を投げられる。
「黙ってて欲しけりゃどうすればいいか…わかるよな」
「…」
旦那様以外に触れられるなんて嫌。
でも、その脂ぎった指が私に近づいて…私が恐怖に叫びそうになったちょうどその時、途中で止まった。
「うちの嫁になにしてんだい!」
すぱーんと頭を殴られるおじさん。
義母が怖い顔をしておじさんを睨みつける。
「お、大奥様!聞いてください、この女実は…」
「知ってるよ!知ってて嫁にしたんだよ!」
「…え!?」
「生きるために足掻いてきた過去の何が恥ずかしいって言うんだい!?私はこの子が嫁でよかったと思ってんだよ!お前のようなゲスにうちの嫁を貶されてたまるかってんだ!」
義母は言いながら、おじさんに蹴りを入れている。まだまだ元気な義母のキックにおじさんはタジタジだが、立場が下らしく反抗できないらしい。
「お母さん、どうしたの…え、あんた何泣いてんの!?」
そこに登場した義妹は驚いた顔で私を見つめる。
義妹に指摘されて初めて気付いたが、私はいつのまにか泣いていたらしい。
義母の有難い言葉が、心にじーんと来たからだ。
「おっさんうちの嫁に何したのよ!この女の敵!」
「このクソ野郎うちの嫁を脅して乱暴しようとしたんだよ!治安部隊に引き渡してやる!」
「そ、そんなぁ!それだけはやめてくれぇ!」
結局、使用人の男性が取り押さえ義母がおじさんを治安部隊に引き渡した。
おじさんには厳しい処罰が下るらしい。
義母は顔が広いから、治安部隊も無視できないらしかった。
その間義妹が私に付き添ってくれる。何も言わずに背中をさすってくれる義妹に、改めて優しさを感じる。
義母も義妹も、私を受け入れてくれただけでなくここまで守ってくれた。旦那様ももちろん、二人にも感謝と好意が尽きることがない。
「ま、まあ、今日はゆっくり休みな!」
「明日からは読み書き計算をもっとしっかり身につけて、礼儀作法も完璧にしてあんなクズ見返してやりなさい!」
「はい…!」
今までは劣等感と申し訳なさに押しつぶされそうだったけど、これからは感謝と好意を胸に自慢の嫁になれるよう努力しよう。
「…な?うちの嫁は見た目だけじゃないだろう?」
「ここまで素晴らしいお嫁さん、どこで見つけてきたのです?」
「ダメダメ!おだててもうちの嫁は誰にもあげないんだから!」
しばらくが過ぎると、私は読み書き計算も礼儀作法もなんとか身につけた。
そして、たまに帰ってくる旦那様とも順調に愛を育んで今はお腹に子供がいる。
義母と義妹はそんな私を自慢の嫁だと言ってくれている。
いつのまにやら義母と義妹との距離感が近くなったのが、今はとにかく嬉しい。
妊婦だから、余計に大切にしてもらえてるのも有難い。
「子供が生まれる前には息子も帰ってくるからね。息子にも嫁にも、今度は孫にも恵まれて私は幸せだよ」
「はやく甥っ子か姪っ子の顔を見たーい!」
「おやおや、奥さんも幸せ者ですね」
「素敵な旦那様や義母と義妹に恵まれましたからね」
「ふ、ふん…」
義母と義妹の照れ隠しのような目逸らしにも慣れた。
ちゃんと家族になれた気がする。
お腹の子が生まれたら、もっと家族になれるだろうと期待が高まる。
それを知ってか知らずか、今日も義母と義妹は私を大切にしてくれている。
「あ、お義母様…その、あの…」
「お前はそんなことしなくていいんだよ!そこに座ってな!」
「は、はい…」
旦那様と結婚してから数ヶ月。
私は、義母と義妹との関係に悩んでいる。
「まったく!これだから貧乏人は嫌だよ!」
「そうよねお母さん!使用人に全部任せればいいのに働きすぎなのよ!」
「ご、ごめんなさい…」
貧乏な村で家族もおらず、身売りをして暮らしていた私。
そこに裕福な都会の地主の地主の息子が旅の途中に現れ、一目惚れしてくれてプロポーズされた。
まるで絵に描いたような幸せ。シンデレラストーリー。
包み隠さず境遇を話したが、旦那様の母と妹である二人は反対しなかった。
そして私たちは結婚。けれど旦那様は地主である義母の息子なのに、様々な土地に赴き地域おこしをする仕事もしている。困った人を放って置けないらしい。今は絶賛私のいた村を助けているそうだ。
だから、今は義母と義妹との三人ぐらしをしている。
けれど使用人に頼る裕福な生活はどうにも慣れなくて。
義母と義妹には、貧乏性が抜けないせいで迷惑ばかりかけている。
「そんなことより読み書きは覚えたのかい!」
「あ、えっと…」
「貸しなさいよ!…下手くそな字ね!覚えは早いのに不器用なのよ!」
「ごめんなさい…」
読み書きそのものはここに来てからなんとか覚えたけれど、なかなか綺麗には書けない。読解不能ではないはずなんだけど…。
「ほら!下働きの真似事をする暇があれば算数の勉強でもしな!」
「は、はい!」
算数はまだ苦手。でも、どうにか足し算くらいはできるようになった。引き算はちょっとだけできる。
ともかく、ここにおいてもらうためにも頑張らないと。
「なぁ奥さん」
「は、はい」
「あんた、身売りをしてたんだって?」
心臓が跳ねる。
どうしよう。
旦那様や義母と義妹に迷惑がかかる。
怯える私は固まってしまう。
義母のお客様の、初めて見るおじさんにネットリとした視線を投げられる。
「黙ってて欲しけりゃどうすればいいか…わかるよな」
「…」
旦那様以外に触れられるなんて嫌。
でも、その脂ぎった指が私に近づいて…私が恐怖に叫びそうになったちょうどその時、途中で止まった。
「うちの嫁になにしてんだい!」
すぱーんと頭を殴られるおじさん。
義母が怖い顔をしておじさんを睨みつける。
「お、大奥様!聞いてください、この女実は…」
「知ってるよ!知ってて嫁にしたんだよ!」
「…え!?」
「生きるために足掻いてきた過去の何が恥ずかしいって言うんだい!?私はこの子が嫁でよかったと思ってんだよ!お前のようなゲスにうちの嫁を貶されてたまるかってんだ!」
義母は言いながら、おじさんに蹴りを入れている。まだまだ元気な義母のキックにおじさんはタジタジだが、立場が下らしく反抗できないらしい。
「お母さん、どうしたの…え、あんた何泣いてんの!?」
そこに登場した義妹は驚いた顔で私を見つめる。
義妹に指摘されて初めて気付いたが、私はいつのまにか泣いていたらしい。
義母の有難い言葉が、心にじーんと来たからだ。
「おっさんうちの嫁に何したのよ!この女の敵!」
「このクソ野郎うちの嫁を脅して乱暴しようとしたんだよ!治安部隊に引き渡してやる!」
「そ、そんなぁ!それだけはやめてくれぇ!」
結局、使用人の男性が取り押さえ義母がおじさんを治安部隊に引き渡した。
おじさんには厳しい処罰が下るらしい。
義母は顔が広いから、治安部隊も無視できないらしかった。
その間義妹が私に付き添ってくれる。何も言わずに背中をさすってくれる義妹に、改めて優しさを感じる。
義母も義妹も、私を受け入れてくれただけでなくここまで守ってくれた。旦那様ももちろん、二人にも感謝と好意が尽きることがない。
「ま、まあ、今日はゆっくり休みな!」
「明日からは読み書き計算をもっとしっかり身につけて、礼儀作法も完璧にしてあんなクズ見返してやりなさい!」
「はい…!」
今までは劣等感と申し訳なさに押しつぶされそうだったけど、これからは感謝と好意を胸に自慢の嫁になれるよう努力しよう。
「…な?うちの嫁は見た目だけじゃないだろう?」
「ここまで素晴らしいお嫁さん、どこで見つけてきたのです?」
「ダメダメ!おだててもうちの嫁は誰にもあげないんだから!」
しばらくが過ぎると、私は読み書き計算も礼儀作法もなんとか身につけた。
そして、たまに帰ってくる旦那様とも順調に愛を育んで今はお腹に子供がいる。
義母と義妹はそんな私を自慢の嫁だと言ってくれている。
いつのまにやら義母と義妹との距離感が近くなったのが、今はとにかく嬉しい。
妊婦だから、余計に大切にしてもらえてるのも有難い。
「子供が生まれる前には息子も帰ってくるからね。息子にも嫁にも、今度は孫にも恵まれて私は幸せだよ」
「はやく甥っ子か姪っ子の顔を見たーい!」
「おやおや、奥さんも幸せ者ですね」
「素敵な旦那様や義母と義妹に恵まれましたからね」
「ふ、ふん…」
義母と義妹の照れ隠しのような目逸らしにも慣れた。
ちゃんと家族になれた気がする。
お腹の子が生まれたら、もっと家族になれるだろうと期待が高まる。
それを知ってか知らずか、今日も義母と義妹は私を大切にしてくれている。
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