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三日月教の主
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ナハトはアンリエットの血を入れたケースを大事に抱えて集落に戻る。それをナハトを送り出した老人…族長が出迎えた。
「ナハト…天使を攫うのはやはりそう簡単にはいかなかったか…」
「いえ、族長。その天使が、血を捧げてくれました」
血の入ったケースを見せるナハト。族長は目を見開いた。
「おお…!平和的に回収できたか!」
「ええ。天使であったアンリエット嬢は、我ら三日月教の信徒に偏見がありませんでした。血を捧げてくれた上、僕から三日月教の話を聞いて楽しそうに笑ってくれて…」
「なんと…!なんと、有り難いことか…!」
族長はナハトの話に涙を流す。それほどに、新月教の三日月教への迫害は酷いものだったのだ。
それが理由で、三日月教の信徒である彼らは魔物の巣窟となっている失われた聖域の近くに集落を築いている。
幸いというか、彼らにはヴァンパイヤからの加護があるため魔物の被害に遭うことはなかった。それでも、元々いた地域からそんなところにまで追いやられてしまったというのは彼らにとっては悲しいことだった。
「その…アンリエット嬢はまた僕の話を聞きたいと言ってくれています。また会いに行って、少しずつでも交流を深めていくのも悪い選択肢ではないのではないでしょうか?」
ナハトは期待を込めて族長を見る。族長は頷いた。
「良い、許す。時間が許す時には、ぜひそうしてくれ」
「…ありがとうございます!」
こうしてナハトは、アンリエットとの交流の許可を得た。
「さて、ナハトよ」
「はっ!」
「天使の血を、こちらに」
彼らが主と仰ぐヴァンパイヤの一族、そのトップであるアーベントはナハトからアンリエットの血を入れられたケースを捧げられる。魔法で血を吸い取り、口にする。
「…ああ、久方ぶりの天使の血。実に甘美だ。力が溢れてくる」
美味しそうに血を味わうアーベントだが、少ない量のその血を独り占めすることはない。
「我が息子よ。おいで」
「はい、ちちうえ!」
幼い息子にも、血を授ける。アーベントは、若くして亡くした妻の忘れ形見であるモルゲンロートを溺愛していた。
「ん、おいしい!まりょくばいぞー!」
「良い子だ」
モルゲンロートは、アーベントに頭を撫でられて無邪気に喜ぶ。そんな幼き主にナハトは微笑ましい気持ちになる。
「ナハトよ、よくやってくれた。褒美に、お前達信徒への加護を与えよう。特に、お前には多めにな」
そうアーベントが言うが早いか、ナハトの身体が光に包まれた。これでまたナハトは加護を得られた。
「主よ、ありがとうございます。これでまた我ら信徒は主に尽くせます」
「良い。お前達を守るのは我らの役目でもある故。それより…この血を捧げた殊勝な心がけの娘と、やり取りを続けるそうだな」
「…はい」
「久方ぶりの天使の血、実に甘美であった。感謝すると、伝えてくれ」
「かしこまりました。お任せください」
アーベントがそう言えば、モルゲンロートも手を挙げる。
「はい!はい!なはと、よもかんしゃしているとつたえて!とってもとってもおいしくて、げんきでたよ!ありがとうっていって!」
「お任せください、我らが主よ」
「わーい!なはと、ありがとう!」
どこまでも無邪気で可愛らしい主に、頬が緩むナハト。そんなナハトに、我が息子は可愛いだろうと気を良くしたアーベント。三日月教の神殿にて、穏やかな時間が流れた。
「ナハト…天使を攫うのはやはりそう簡単にはいかなかったか…」
「いえ、族長。その天使が、血を捧げてくれました」
血の入ったケースを見せるナハト。族長は目を見開いた。
「おお…!平和的に回収できたか!」
「ええ。天使であったアンリエット嬢は、我ら三日月教の信徒に偏見がありませんでした。血を捧げてくれた上、僕から三日月教の話を聞いて楽しそうに笑ってくれて…」
「なんと…!なんと、有り難いことか…!」
族長はナハトの話に涙を流す。それほどに、新月教の三日月教への迫害は酷いものだったのだ。
それが理由で、三日月教の信徒である彼らは魔物の巣窟となっている失われた聖域の近くに集落を築いている。
幸いというか、彼らにはヴァンパイヤからの加護があるため魔物の被害に遭うことはなかった。それでも、元々いた地域からそんなところにまで追いやられてしまったというのは彼らにとっては悲しいことだった。
「その…アンリエット嬢はまた僕の話を聞きたいと言ってくれています。また会いに行って、少しずつでも交流を深めていくのも悪い選択肢ではないのではないでしょうか?」
ナハトは期待を込めて族長を見る。族長は頷いた。
「良い、許す。時間が許す時には、ぜひそうしてくれ」
「…ありがとうございます!」
こうしてナハトは、アンリエットとの交流の許可を得た。
「さて、ナハトよ」
「はっ!」
「天使の血を、こちらに」
彼らが主と仰ぐヴァンパイヤの一族、そのトップであるアーベントはナハトからアンリエットの血を入れられたケースを捧げられる。魔法で血を吸い取り、口にする。
「…ああ、久方ぶりの天使の血。実に甘美だ。力が溢れてくる」
美味しそうに血を味わうアーベントだが、少ない量のその血を独り占めすることはない。
「我が息子よ。おいで」
「はい、ちちうえ!」
幼い息子にも、血を授ける。アーベントは、若くして亡くした妻の忘れ形見であるモルゲンロートを溺愛していた。
「ん、おいしい!まりょくばいぞー!」
「良い子だ」
モルゲンロートは、アーベントに頭を撫でられて無邪気に喜ぶ。そんな幼き主にナハトは微笑ましい気持ちになる。
「ナハトよ、よくやってくれた。褒美に、お前達信徒への加護を与えよう。特に、お前には多めにな」
そうアーベントが言うが早いか、ナハトの身体が光に包まれた。これでまたナハトは加護を得られた。
「主よ、ありがとうございます。これでまた我ら信徒は主に尽くせます」
「良い。お前達を守るのは我らの役目でもある故。それより…この血を捧げた殊勝な心がけの娘と、やり取りを続けるそうだな」
「…はい」
「久方ぶりの天使の血、実に甘美であった。感謝すると、伝えてくれ」
「かしこまりました。お任せください」
アーベントがそう言えば、モルゲンロートも手を挙げる。
「はい!はい!なはと、よもかんしゃしているとつたえて!とってもとってもおいしくて、げんきでたよ!ありがとうっていって!」
「お任せください、我らが主よ」
「わーい!なはと、ありがとう!」
どこまでも無邪気で可愛らしい主に、頬が緩むナハト。そんなナハトに、我が息子は可愛いだろうと気を良くしたアーベント。三日月教の神殿にて、穏やかな時間が流れた。
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