妾の子として虐げられていた私が、爵位を継いだお兄様から溺愛されるだけ

お兄様が勉強を見てくれます

ティータイムも終わり、お兄様は執務が全て片付いたからと私のために時間を割いてくださっています。具体的に言えばお勉強を見てくださっています。私は出来損ないですので、お兄様に実力を知られるのはちょっと恥ずかしいのですが…。それでもお兄様の優しさは嬉しいので、お願いすることにしました。

…そういえば、家庭教師の先生はいつから復帰なさるのでしょうか？本邸に来てから会っていません。そろそろお勉強を再開したいのですが。というか、別邸の使用人達に誰一人として会っていないのですが皆さんどうしてらっしゃるのでしょうか？

「それじゃあ、まずは簡単なテストから始めるぞ」

「お兄様、その前にお伺いしたいことが…」

「どうした？エレナ」

「あの。別邸の使用人達に会っていないのですが、彼らはどうなったのでしょうか？なんだか心配なのです」

「…エレナが心配することはないぞ？大丈夫。適切に処理した」

「適切に処理？」

「ああ、相応しい処遇を課した。だから、エレナが心配することはない」

「そう…なのですか？」

よくわからないけれど、お兄様がそういうならそうなのでしょう。相応しい処遇というと、別邸の管理が必要無くなって、新しい仕事を斡旋してもらったとかそのあたりでしょうか？お兄様は気遣いが出来る素敵な方ですから、きっと新しい職場も素晴らしいところでしょう。安心しました。

「家庭教師の先生はいつから復帰なさるのでしょうか？まだまだ私には勉強が足りませんので…」

「…ああ、家庭教師。エレナには悪いが今まで依頼していた家庭教師はこちらの都合で解雇した」

「え？そうなのですか？」

「ああ。だから私がこの目でエレナの実力を測り、それを元に新しい家庭教師を決めようと思う」

「でも、それでは先生は？」

「大丈夫だ。適切に処理したからな」

「そうなのですね！わかりました！」

「じゃあ改めて。まずは簡単なテストからだ」

そうしてお兄様に問題を出されます。分野は多岐に渡り、帝国語、数学、王国語、生物学、物理学、薬学、化学、地学、歴史、世界史、地理学、経済学、経営学、法学、政治学、社会学、哲学などです。

最初は私の解答に満足そうに頷いてくれていたお兄様ですが、問題をたくさん出されるにつれて驚いた表情をなさり、段々と表情が硬くなります。そして、最後には困った顔をなさいました。そのまま頭を撫でてくださいます。またびくりと震えてしまいましたが、それ以上にお兄様の期待に応えられず申し訳無さが半端ではないのです。

「お兄様…出来損ないで申し訳ありません…」

「出来損ない？とんでもないな。むしろ天才と言っても過言じゃない」

「え？」

「ナタリー。お前の仕える主人は優秀だな？」

「はい、旦那様！」

「あの…」

「エレナ。どうやってこれだけの知識を身につけたんだ？」

「家庭教師の先生に教えていただきました」

「…そこまで教養のある男には見えなかったが？」

「そんなことはありません。素敵な先生でした」

「…そうか。エレナがそう言うなら、そういうことにしておこうか」

「ですが、勉強法は独特でしたね。教科書や参考書を丸暗記でしたから」

「…は？」

「でも、その勉強法のおかげで出来損ないの私でもどうにか必要最低限の知識は身に付けられました」

「…エレナ、それは、本当か？」

「はい、お兄様」

お兄様とナタリーがぽかんとこちらを見つめます。何かおかしなことを言ったでしょうか？

「…ナタリー。リュシアン学園のパンフレットを至急用意しろ」

「はい、旦那様！」

「え？」

「エレナ、後日改めて話がある。悪い話ではないから、期待して待っていてくれ」

「お兄様がそう仰るのでしたら…」

でも、一体なんのお話でしょうか？