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妹がびっくりするほど優秀だった

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ティータイムの後、エレナの実力を測るためにテストを行うことにする。その成績によって家庭教師を選ぶためだ。場合によってはリュシアン学園への入学も考えてもいいが…流石にそこまで優秀ではないだろうと高を括る。あの家庭教師ではそこまでの教養は身に付かないだろうと。

でも、それで良い。将来、誠実で優しい男に嫁ぐために必要な教養さえあればそれでいいのだ。リュシアン学園に入学するのなんてよっぽどだし、ましてや女子ならば尚更のこと。そこまでする必要はない。後のことは全部私がなんとかするし。

テストの前に別邸の使用人達や家庭教師のことについて聞かれたが、まあ言葉を濁して誤魔化す。適切に処理だの相応しい処遇だのと言ったのでバレるかなとは思ったが、エレナは気付かないでくれた。よかった。エレナの悲しい表情は見たくない。優しい子だから、その処遇を聞けばきっと悲しむから。

そうしてエレナに問題を出す。分野は多岐に渡り、帝国語、数学、王国語、生物学、物理学、薬学、化学、地学、歴史、世界史、地理学、経済学、経営学、法学、政治学、社会学、哲学などだ。

最初はエレナの解答に満足して頷いていたが、問題をたくさん出すにつれてこちらが驚いた。貴族の子女として必要な知識をもうすでに完璧に習得していたからだ。それどころか将来爵位を継ぐ令息方にも負けないレベル…男と渡り合えるレベルの教養があると思われる。

段々と自分の表情が硬くなるのがわかる。エレナが思った以上に優秀だったからだ。これはリュシアン学園への入学も本当に考えるべきかも知れない。ただ、私の表情が硬くなるにつれてエレナの表情が暗くなる。不安にさせてしまい申し訳なくなる。ちょっと困って、エレナの頭を撫でる。エレナはびくりと震えるが、大人しく撫でさせてくれた。

その時出た〝出来損ない〟という言葉に言葉に悲しくなる。エレナには自分のことをそんな風に言って欲しくないし思って欲しくない。でも、今のエレナにはそんな言葉は届かないだろう。長年の別邸での監禁生活で、自尊心を粉々にされたのだろうから。

だからあえて、軽く返す。

「出来損ない?とんでもないな。むしろ天才と言っても過言じゃない」

「え?」

「ナタリー。お前の仕える主人は優秀だな?」

「はい、旦那様!」

さりげなく褒める。わざとらしく褒めても届かないだろうから。それで伝わるものがあればいい。

しかし、勉強法が教科書や参考書の丸暗記というのは驚いた。なるほど、それならあの如何にも教養が無い家庭教師でも出来ることだろう。その無理難題を成し遂げたエレナのポテンシャルの高さがすごい。

これが最後の後押しとなり、私はエレナをリュシアン学園に入れることを決めた。といっても、エレナが嫌がるなら行かせないので決定権はエレナにあるが。後日パンフレットが届き次第、エレナに話して見ようと思う。…でも、出来れば行かせてやりたい。友達を作って、思い出を作って、良い男を見つけて。

ー…幸せになって欲しい。
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