20 / 103
お兄様から貴族の子女の通う学園に通ってみないかとお誘いを受ける
しおりを挟む
あのお兄様からの多分野にわたるテストを受けてから数日。特に何事もなくお兄様との日々を送って心が癒されていく中で、リュシアン学園のパンフレットがお兄様に届いたそうです。何に使うのでしょうか?
リュシアン学園とは、私でも知っている知識としては…そうですね、まず貴族の子女の通う学園となります。ただし、貴族の子女なら誰でも入れる訳ではないのです。厳しい入学試験があり、それに受かった者だけが入れるハイレベルな学園なのです。逆に言えば、入れたら将来は約束されたも同然。箔が付きます。最強レベルで。
学園内では全ての生徒が身分に依らず平等とされます。基本的に男子が多く、特に次男や三男など爵位を持てないことが決まっている生徒はやる気が違うそうです。女子生徒は和気藹々の雰囲気で学園生活を楽しみつつ、将来貴族に嫁いだらもう楽しめない研究やら仕事やらに心血を注ぐといいます。
とても楽しそうだなぁと憧れていましたが、そんな優秀な方々の集まる場所に私が行くなど場違いですし、そもそも入学試験に受かるはずもありません。無理だと諦めもつきました。
「お兄様、そのパンフレットはいかがなさるのでしょうか?」
「エレナに渡そうと思って用意させたんだ。受け取ってくれるか?」
「えっ…お兄様、もしかして私がリュシアン学園に憧れているのを知ってパンフレットを取り寄せてくださったのですか?」
お兄様はエスパーなのでしょうか?
「いや、これはエレナをリュシアン学園に入れるために取り寄せたんだよ」
「…今なんと?」
「エレナの実力なら簡単に入学出来る。入学試験は厳しいし、まして編入試験ともなるとさらに厳しい。けれど、エレナなら大丈夫だ。エレナはさっきリュシアン学園に憧れていると言ったな?…挑戦してみないか?」
「…でも」
私なんかが受かるはずもないし、もし受かったとしても浮いてしまいます。私、研究にも興味がないし、お仕事も出来ません。学園生活自体はお友達が出来れば楽しめそうですが、そのお友達を作るのも私には困難です。出来損ないだから。
「…エレナ。私はエレナの幸せを一番に考えたい。だから、行きたくないならそれでも良いんだ。けれど、今行かずに後悔するより、行ってみて無理だったら逃げ帰ってくるとかでも良いんじゃないか?」
「え…」
「大丈夫。エレナの逃げ帰って来れる場所はここにある。最高なことにここからリュシアン学園は馬車で通える距離だ。寮生活を送る必要もない。いつでも逃げられるんだよ」
「お兄様…私…」
「ああ」
「チャレンジしてみたいです」
するりと言葉が零れ落ちました。お兄様は満足そうににこりと微笑んで抱きしめてくれました。またびくりと震えてしまったけれど、今日は抱きしめ返すことが出来ました。大きな進展だと思っていいですよね?
リュシアン学園とは、私でも知っている知識としては…そうですね、まず貴族の子女の通う学園となります。ただし、貴族の子女なら誰でも入れる訳ではないのです。厳しい入学試験があり、それに受かった者だけが入れるハイレベルな学園なのです。逆に言えば、入れたら将来は約束されたも同然。箔が付きます。最強レベルで。
学園内では全ての生徒が身分に依らず平等とされます。基本的に男子が多く、特に次男や三男など爵位を持てないことが決まっている生徒はやる気が違うそうです。女子生徒は和気藹々の雰囲気で学園生活を楽しみつつ、将来貴族に嫁いだらもう楽しめない研究やら仕事やらに心血を注ぐといいます。
とても楽しそうだなぁと憧れていましたが、そんな優秀な方々の集まる場所に私が行くなど場違いですし、そもそも入学試験に受かるはずもありません。無理だと諦めもつきました。
「お兄様、そのパンフレットはいかがなさるのでしょうか?」
「エレナに渡そうと思って用意させたんだ。受け取ってくれるか?」
「えっ…お兄様、もしかして私がリュシアン学園に憧れているのを知ってパンフレットを取り寄せてくださったのですか?」
お兄様はエスパーなのでしょうか?
「いや、これはエレナをリュシアン学園に入れるために取り寄せたんだよ」
「…今なんと?」
「エレナの実力なら簡単に入学出来る。入学試験は厳しいし、まして編入試験ともなるとさらに厳しい。けれど、エレナなら大丈夫だ。エレナはさっきリュシアン学園に憧れていると言ったな?…挑戦してみないか?」
「…でも」
私なんかが受かるはずもないし、もし受かったとしても浮いてしまいます。私、研究にも興味がないし、お仕事も出来ません。学園生活自体はお友達が出来れば楽しめそうですが、そのお友達を作るのも私には困難です。出来損ないだから。
「…エレナ。私はエレナの幸せを一番に考えたい。だから、行きたくないならそれでも良いんだ。けれど、今行かずに後悔するより、行ってみて無理だったら逃げ帰ってくるとかでも良いんじゃないか?」
「え…」
「大丈夫。エレナの逃げ帰って来れる場所はここにある。最高なことにここからリュシアン学園は馬車で通える距離だ。寮生活を送る必要もない。いつでも逃げられるんだよ」
「お兄様…私…」
「ああ」
「チャレンジしてみたいです」
するりと言葉が零れ落ちました。お兄様は満足そうににこりと微笑んで抱きしめてくれました。またびくりと震えてしまったけれど、今日は抱きしめ返すことが出来ました。大きな進展だと思っていいですよね?
3
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?
灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。
しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない
春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。
願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。
そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。
※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
【完結】離縁王妃アデリアは故郷で聖姫と崇められています ~冤罪で捨てられた王妃、地元に戻ったら領民に愛され「聖姫」と呼ばれていました~
猫燕
恋愛
「――そなたとの婚姻を破棄する。即刻、王宮を去れ」
王妃としての5年間、私はただ国を支えていただけだった。
王妃アデリアは、側妃ラウラの嘘と王の独断により、「毒を盛った」という冤罪で突然の離縁を言い渡された。「ただちに城を去れ」と宣告されたアデリアは静かに王宮を去り、生まれ故郷・ターヴァへと向かう。
しかし、領地の国境を越えた彼女を待っていたのは、驚くべき光景だった。
迎えに来たのは何百もの領民、兄、彼女の帰還に歓喜する侍女たち。
かつて王宮で軽んじられ続けたアデリアの政策は、故郷では“奇跡”として受け継がれ、領地を繁栄へ導いていたのだ。実際は薬学・医療・農政・内政の天才で、治癒魔法まで操る超有能王妃だった。
故郷の温かさに癒やされ、彼女の有能さが改めて証明されると、その評判は瞬く間に近隣諸国へ広がり──
“冷徹の皇帝”と恐れられる隣国の若き皇帝・カリオンが現れる。
皇帝は彼女の才覚と優しさに心を奪われ、「私はあなたを守りたい」と静かに誓う。
冷徹と恐れられる彼が、なぜかターヴァ領に何度も通うようになり――「君の価値を、誰よりも私が知っている」「アデリア・ターヴァ。君の全てを、私のものにしたい」
一方その頃――アデリアを失った王国は急速に荒れ、疫病、飢饉、魔物被害が連鎖し、内政は崩壊。国王はようやく“失ったものの価値”を理解し始めるが、もう遅い。
追放された王妃は、故郷で神と崇められ、最強の溺愛皇帝に娶られる!「あなたが望むなら、帝国も全部君のものだ」――これは、誰からも理解されなかった“本物の聖女”が、
ようやく正当に愛され、報われる物語。
※「小説家になろう」にも投稿しています
聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~
夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力!
絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。
最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り!
追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる