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皇太子殿下と会いました
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ジェシー様とティナ様と一緒に過ごすようになって数日。学園生活はとても楽しいです。それをお兄様に報告するたびに素敵な笑顔を見られるので、お兄様に毎日たくさん学園生活についてお話しています。
数日経つとさすがに学園生活にも慣れ、油断していました。
そう。このリュシアン学園には、公爵家でさえ頭を下げるべき相手がいらっしゃるのです。…といっても、リュシアン学園の校則によって私達生徒は平等とされてはいますが。
「やあ、エレオノール嬢。ご機嫌いかがかな?」
「…あの、皇太子殿下」
「なにかな?」
「私は何故、皇太子殿下専用のサロンにいるのでしょうか」
「そりゃあ、僕が呼んだからからだねぇ」
目の前でニコニコしていらっしゃるのは皇太子殿下。怖い。逃げたい。どうしよう。
「改めまして。僕はクリストフ・リュシアン。リュシアン帝国の皇太子にして、今はリュシアン学園の生徒会長。コネでリュシアン学園に入ることは不可能な時点で察してもらえると思うけれど、まあ皇族の中でも優秀な方だよ。文武両道と言われるね。学園内でも成績は常にトップを走っている」
「は、はい」
「でね、そんな僕は〝婚約者を定めるのはリュシアン学園に入ってからにせよ〟との神託を受けたため、まだ婚約者がいない。そのせいで野心家の女の子達から毎日狙われていてね。媚薬を盛られそうになって毒味役が大変なことになることも多いよ」
「その…はい、ご愁傷様です…」
「…ふふ。うん、本当にね。だからさ、まあそんな中でも一応、未来の皇后選びにリュシアン学園の女の子は皆把握しているんだけど」
「…はい」
「そっちからアピールしてくるかなぁと思って放置してたのに全然来ないからさ」
「はい」
「呼び出しちゃった」
「…はい」
私が悪いのでしょうか?
「君、僕に媚を売らなくていいの?」
「私はそんな大それたこと出来ません」
「なにそれ。君くらい美しければ大抵の男は落ちるだろう?」
「え」
「無自覚なの?たしかに少し痩せ過ぎなくらいだけど…顔は良いと思うよ?良すぎるくらいかも。高嶺の花?」
「いえ、そんな」
「編入試験でも全問正解の偉業を成し遂げたんだろう?優秀だし、頭も回るんだろう。僕に粉かけた方が良いんじゃないの?」
「…そんな。選ぶのは皇太子殿下ですし、それに」
「なに?」
「せっかく、そんな神託が下ったなら…素敵な恋をして、愛する方と幸せになっていただきたいです」
「…」
皇太子殿下は目を丸くする。ああ、言ってしまった。
「いえ、あの、生意気なことを言ってすみません」
「いや…じゃあ、僕が君に恋をしたら?君は僕を愛してくれるの?僕に愛されてくれる?」
「えっと…万が一にもあり得ませんが、もしそうなったら…」
「なったら?」
「皇太子殿下のアピール次第かと」
「…ふっ。あはははははは!」
皇太子殿下は何故か笑い出します。何故。
「いいねぇ、気に入った!エレオノール嬢、エレナって呼んでいいかい?」
「あ、はい」
「エレナ、僕のことはクリスと呼ぶように」
「クリス皇太子殿下?」
「クリス」
「…クリス様?」
「よろしい」
クリス様は私に手を伸ばして頭を撫でます。その手に一瞬びくりとしますが、クリス様は気にせず撫でてくれます。
「今の一瞬の怯えは僕は気付かなかったことにしておくけど、いろんな奴にバレたら色々面倒くさくなりそうだから気をつけてね」
「は、はい」
「誰にでもそうなの?」
「はい」
「…何かあったんだね。可哀想に…僕に何か出来ることがあればいつでも頼るといい。じゃあ、今回はここで解散。またね」
「はい、また」
皇太子殿下は優しい方のようです。
数日経つとさすがに学園生活にも慣れ、油断していました。
そう。このリュシアン学園には、公爵家でさえ頭を下げるべき相手がいらっしゃるのです。…といっても、リュシアン学園の校則によって私達生徒は平等とされてはいますが。
「やあ、エレオノール嬢。ご機嫌いかがかな?」
「…あの、皇太子殿下」
「なにかな?」
「私は何故、皇太子殿下専用のサロンにいるのでしょうか」
「そりゃあ、僕が呼んだからからだねぇ」
目の前でニコニコしていらっしゃるのは皇太子殿下。怖い。逃げたい。どうしよう。
「改めまして。僕はクリストフ・リュシアン。リュシアン帝国の皇太子にして、今はリュシアン学園の生徒会長。コネでリュシアン学園に入ることは不可能な時点で察してもらえると思うけれど、まあ皇族の中でも優秀な方だよ。文武両道と言われるね。学園内でも成績は常にトップを走っている」
「は、はい」
「でね、そんな僕は〝婚約者を定めるのはリュシアン学園に入ってからにせよ〟との神託を受けたため、まだ婚約者がいない。そのせいで野心家の女の子達から毎日狙われていてね。媚薬を盛られそうになって毒味役が大変なことになることも多いよ」
「その…はい、ご愁傷様です…」
「…ふふ。うん、本当にね。だからさ、まあそんな中でも一応、未来の皇后選びにリュシアン学園の女の子は皆把握しているんだけど」
「…はい」
「そっちからアピールしてくるかなぁと思って放置してたのに全然来ないからさ」
「はい」
「呼び出しちゃった」
「…はい」
私が悪いのでしょうか?
「君、僕に媚を売らなくていいの?」
「私はそんな大それたこと出来ません」
「なにそれ。君くらい美しければ大抵の男は落ちるだろう?」
「え」
「無自覚なの?たしかに少し痩せ過ぎなくらいだけど…顔は良いと思うよ?良すぎるくらいかも。高嶺の花?」
「いえ、そんな」
「編入試験でも全問正解の偉業を成し遂げたんだろう?優秀だし、頭も回るんだろう。僕に粉かけた方が良いんじゃないの?」
「…そんな。選ぶのは皇太子殿下ですし、それに」
「なに?」
「せっかく、そんな神託が下ったなら…素敵な恋をして、愛する方と幸せになっていただきたいです」
「…」
皇太子殿下は目を丸くする。ああ、言ってしまった。
「いえ、あの、生意気なことを言ってすみません」
「いや…じゃあ、僕が君に恋をしたら?君は僕を愛してくれるの?僕に愛されてくれる?」
「えっと…万が一にもあり得ませんが、もしそうなったら…」
「なったら?」
「皇太子殿下のアピール次第かと」
「…ふっ。あはははははは!」
皇太子殿下は何故か笑い出します。何故。
「いいねぇ、気に入った!エレオノール嬢、エレナって呼んでいいかい?」
「あ、はい」
「エレナ、僕のことはクリスと呼ぶように」
「クリス皇太子殿下?」
「クリス」
「…クリス様?」
「よろしい」
クリス様は私に手を伸ばして頭を撫でます。その手に一瞬びくりとしますが、クリス様は気にせず撫でてくれます。
「今の一瞬の怯えは僕は気付かなかったことにしておくけど、いろんな奴にバレたら色々面倒くさくなりそうだから気をつけてね」
「は、はい」
「誰にでもそうなの?」
「はい」
「…何かあったんだね。可哀想に…僕に何か出来ることがあればいつでも頼るといい。じゃあ、今回はここで解散。またね」
「はい、また」
皇太子殿下は優しい方のようです。
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