妾の子として虐げられていた私が、爵位を継いだお兄様から溺愛されるだけ

皇太子殿下が来てくださって良かった

最近、エレナ様の様子がおかしい。歩くとふらふら…というほどでもないけれどどこか足取りが重くて、普段はどんな話をしても楽しそうに聞いてくださるのにどこか上の空。何度か心配していると伝えましたし、保健室に行かないかと誘ってみるものの頑なに大丈夫だと繰り返すだけ。心配ですわ。

今日もジェシー様と一緒にエレナ様をなんとか保健室までお連れしようとするのですが、本人にはお気になさらないでくださいと言われてしまう始末。でも、悪化したら大変ですわ。

そこに救世主の皇太子殿下が現れましたわ。いくら意外と意地っ張りなエレナ様でも、皇太子殿下のお言葉なら聞いてくださるでしょう。

私の考え通り、エレナ様は皇太子殿下に言われるとすぐに保健室行きを了承されましたわ。でも、あれは相手が皇太子殿下だから、ではなく…相手が〝クリス様〟だから。そんな気が致しますわ。エレナ様、貴女案外と皇太子殿下のことを深層心理では意識していまして？だったらもちろん、私応援致しますわ！まあ、応援するまでもなくくっつくのでしょうけれどね。

ジェシー様が皇太子殿下のクラスの先生に保健室行きを伝えに行かれたので、私はこのクラスの先生にそっとお伝え致します。まあ、こっそりと伝えたところで皇太子殿下がエレナ様をまたもお姫様抱っこで保健室に連れていかれたのですから、すぐに噂になるでしょうけれども。

これでますます、エレナ様が皇太子殿下のご寵愛を受けていることが知れ渡りますわね。もうあんなふざけた真似をするご令嬢は現れないでしょう。うふふ。ああ、安心しましたわ！

ああ、でもそれは置いておいて…やっぱりエレナ様の体調は心配ですわ。エレナ様の体調の変化を見るに、もしかしたらあの症状の可能性がありますわね。…それでなくても、美しく家柄が良く、成績優秀なエレナ様。そのエレナ様の価値がますます上がったら…だぁれも、皇太子殿下との仲を反対できませんわね？うふふ。

…ああ、いけない。エレナ様はその症状で苦しんでいらっしゃるのだから、まずはその改善からですわよね！でも、腕の良い医者に見せればすぐにわかるはずですわ！腕の良い薬師がいればすぐに解決ですわね！もし必要なら私とジェシー様の方でもお薬を調合できますし…。

でもでも、もし私の見立てが違っていたら？もっと別種の病気でしたらどうしましょう。ああ、なんだかやっぱり心配ですわ。でも私の立場でできることはあまりありませんし…。うう、とにかく早くエレナ様が良くなりますように！