妾の子として虐げられていた私が、爵位を継いだお兄様から溺愛されるだけ

下菊みこと

文字の大きさ
48 / 103

不謹慎だが嬉しかった

しおりを挟む
エレナが最近、歩く時少しだけふらふらしていると聞いて急いでエレナのいる教室に向かう。オーギュスティナ嬢とジェシカ嬢と話しているエレナ。確かに少しだけ歩き方に違和感がある。ふらふらしているというのはちょっと大袈裟だが、大丈夫そうに見えても痩せ我慢しているだけの可能性もあるしやはり保健室で休ませよう。

オーギュスティナ嬢とジェシカ嬢に対して、このくらいなら大丈夫と言って聞かないエレナ。でも、僕が声を掛けたら案外とすんなり保健室行きを受け入れてくれた。ちょっと優越感に浸る。

お姫様抱っこをしてもびくりとしない。このままスキンシップ恐怖症が治ればいいなぁと思うのは欲張りすぎか。そう思っていたらエレナの瞳から涙が溢れる。お姫様抱っこが怖いという様子でもない。身体が辛いのかな。優しく声を掛けると、うとうとし始めた。可愛い。

エレナを保健室のベッドに下す。保健室の先生にエレナの状況を報告するため離れようとした僕の制服の裾をエレナが弱々しい力で掴む。あんまりにも可愛くて身悶えするかと思った。我慢したけど。

保健室の先生に椅子を借りて、エレナの手を握って安心させる。微睡んだ様子のエレナが、ポツポツと自分の過去を語り出した。

エレナの子供の頃の話は可愛かった。木登りをするわんぱくなエレナなんて、今のエレナを見ていて想像はつかない。けれど、とても可愛かっただろうと思う。あと、マックスがそれを真似したのを聞いて面白い話だなと思った。あのマックスがねぇ。

でも、途中から話の流れがおかしくなった。別邸で育てられたのは、まあ、わんぱく過ぎたからお仕置きのつもりもあったのかなと思ったんだけど。

…使用人が一日で入れ替わって、暴言と暴力をエレナに振るうようになった?

意味がわからない。けど、エレナのスキンシップ恐怖症がそこから来ているのだけはわかった。可哀想に…。流石にマックスも、親の決定には逆らえない。守りたくても、どうしようもなかったんだろう。本当に酷いことをする…。

幸い身体の傷は消えたようだが、心の傷は癒えていない様子。話してはいけないことなのに、話したところで何も変わらないのにと思っているようなので、他の誰にも言わないように釘を刺しつつも甘やかす。だって、こんなに辛い思いをしたんだ。誰かに愚痴りたくもなる。それが僕で、本当に良かった。

きっと、もっと甘えたかった。でも、甘えて拒絶されるのが怖かった。その繊細な心が愛おしい。…なんて、言ったら嫌われるかな。

…クリス様。居てくれて、ありがとう。その言葉が、僕を貫いた。

「…先生。他言無用でお願いします」

「もちろんです。そもそも私には何も聞こえませんでした。」

「…ふふ、そうですか。そうですね」

このか弱い少女を、もっと甘やかしたい、なんて。自分の中にこんな感情があると、初めて知った。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。 昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。 入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。 その甲斐あってか学年首位となったある日。 「君のことが好きだから」…まさかの告白!

【完結】あなたに従う必要がないのに、命令なんて聞くわけないでしょう。当然でしょう?

チカフジ ユキ
恋愛
伯爵令嬢のアメルは、公爵令嬢である従姉のリディアに使用人のように扱われていた。 そんなアメルは、様々な理由から十五の頃に海を挟んだ大国アーバント帝国へ留学する。 約一年後、リディアから離れ友人にも恵まれ日々を暮らしていたそこに、従姉が留学してくると知る。 しかし、アメルは以前とは違いリディアに対して毅然と立ち向かう。 もう、リディアに従う必要がどこにもなかったから。 リディアは知らなかった。 自分の立場が自国でどうなっているのかを。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

本当に現実を生きていないのは?

朝樹 四季
恋愛
ある日、ヒロインと悪役令嬢が言い争っている場面を見た。ヒロインによる攻略はもう随分と進んでいるらしい。 だけど、その言い争いを見ている攻略対象者である王子の顔を見て、俺はヒロインの攻略をぶち壊す暗躍をすることを決意した。 だって、ここは現実だ。 ※番外編はリクエスト頂いたものです。もしかしたらまたひょっこり増えるかもしれません。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

処理中です...