妾の子として虐げられていた私が、爵位を継いだお兄様から溺愛されるだけ

下菊みこと

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皇太子殿下に好きな方がいるそうです

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お昼休みになり、クリス様とティナ様、ジェシー様とランチを楽しみます。

「そういえば、もうすぐダンスパーティーの時期ですね。クリス様はどなたをパートナーに誘われるのですか?」

私が話題を振ると、クリス様は一瞬考えて答えてくれました。

「誰かは言えないけれど、好きな子を誘うよ」

そうクリス様が答えられた時。何故か胸がズキズキとして、呼吸さえ苦しく感じました。どうしてでしょう。クリス様は大切なお友達なのに、クリス様が素敵な恋をしているなら応援しないといけないのに。なんだかとても、嫌な気持ちになってしまいます。

「…エレナ?」

「は、はい」

「どうしたの?具合が悪いなら少し保健室で横になるかい?」

「いえ、大丈夫です…」

「エレナ様、無理は良くありませんわ」

「少し休みますかぁ?」

「本当に大丈夫です。ただ…気持ちの問題なので…」

私がそう言うと、クリス様は目を見張ります。

「エレナ…君は、もしかして…」

「皇太子殿下、ここはぐっと我慢ですわ!ダンスパーティーでロマンチックな告白をされるのでしょう?」

「…そう、だね。思い出に残る素敵なプロポーズにするために、念入りに準備を進めないとね」

ティナ様とクリス様の言葉にまた胸を刺されたような激しい痛み。なんででしょうか?すごく辛いのです。

「エレナ様、大丈夫ですよぉ。その胸の痛みは、幸せなものに変わりますからぁ」

ジェシー様が私の手を取って、両手で握りしめてそう言ってくださいます。この痛みが幸せなものに変わるなんて、いくらジェシー様の言葉でも信じられません。だって、凄く痛いのです。

「エレナ様、よしよし」 

ジェシー様が頭を撫でてくださいます。少しだけ、気持ちが楽になるようです。

「エレナ様。その心の痛み、思い当たる節はありませんの?」

ティナ様がそんなことを仰います。でも、わかりません。

「いえ、全く…」

「そうですのね…私、純粋なエレナが大好きですが、それでエレナ様が必要以上に辛くなるのは嫌ですわ。でも、一世一代の素敵なプロポーズは応援したいから今ここで勢いに任せるのも反対ですし…うーん…」

プロポーズ。クリス様はどなたにプロポーズをされるのでしょうか。私は、クリス様の恋を応援できるのでしょうか。クリス様には幸せでいて欲しい。それはたしかに真実なのに、何故こんな嫌な気持ちになるのでしょう。やっぱり私は悪い子なのでしょうか?
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