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久しぶりに幼い頃の皇太子殿下を思い出す

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異変に気付いたのはナタリアだった。

「旦那様!エル様の様子がおかしいのです!」

「なに?すぐに行く」

使い魔の異変は所有者の異変。エレナになにかあったのかとエルの様子を見に行く。

「エル様、大丈夫ですか?」

「みゅう…」

「…これ、魔力不足か?」

ということは、エレナからの魔力の供給が途切れているということになる。つまり。

「エレナの身になにかあったということか…」

「…え。お嬢様は大丈夫なんですか!?」

ナタリアの顔が青ざめる。

「エルが消えていないから、まだ大丈夫だ。所有者が…亡くなったりしたら、使い魔は消えるからな。エルが生きていれば大丈夫だ」

「そ、そうですか…」

ほっとしたような心配そうな複雑な表情のナタリア。エレナは使用人に恵まれたな。

「エル。応急処置で私の魔力を注ぐぞ」

「みゅう」

私の魔力を受け取ったエルは元気になった。

「とりあえず皇太子殿下に連絡を取って、エレナは…おそらく魔力封じでも受けているのだろうからそれをなんとかしないとな。セバスチャン」

「今すぐ魔力封じの魔道具の効力を打ち消すための、別の魔道具を探して参ります」

「頼んだ」

そんなことをしていたら皇太子殿下が血相を変えて屋敷に飛び込んできた。皇太子殿下も相当焦っているらしい。それでもなんとか冷静になろうとして、必死に考えを巡らせる皇太子殿下。

そんな皇太子殿下の指示を受ける。不甲斐ないと落ち込む皇太子殿下を慰めつつ指示通りに動く。

学園に馬車を出して、門番に事情を説明した。門番に案内されて職員室に真っ直ぐに向かい、もう一度事情を説明する。新校舎と旧校舎、体育館の鍵をお借りして、エルにエレナの匂いを探ってもらう。

「エレナはいそうか?」

「みゅう」

とりあえず新校舎の中を片っ端から探すが見つからない。エルも首を振る。

「新校舎は外れか。旧校舎に行くぞ」

「みゅう」

旧校舎に行くも、結果は同じだった。エルが悲しそうな顔をするので頭を撫でてやる。

「みゅう」

そこに皇太子殿下が現れた。お互い状況を確認し合い、エレナを探して体育館に行く。中に入るとエルが鳴き出した。そして真っ直ぐに倉庫に向かって飛ぶ。その様子に私と皇太子殿下はここにエレナがいるのだとすぐにわかった。

私は皇太子殿下の指示を受け倉庫の鍵を開ける。真っ暗なその中にはエレナがいた。マットの上でブランケットを掛けて、ぐったりしている。

エレナに駆け寄ると、意識はまだあった。そんなエレナに皇太子殿下は薬を飲ませる。

そして、私は魔力封じの魔道具の効力を打ち消すための、別の魔道具を使ってエレナを解放する。これでもう大丈夫だ。

そうすると、安堵からか泣き出すエレナ。お礼を言われてこちらもほっとする。

皇太子殿下は、多分自分のせいだと自分を責めているため少しバツの悪そうな表情をした。それでもすぐにエレナを安心させるように微笑んでエレナの涙を拭ってくれる。

屋敷に帰ろうと言うと、安心して眠ってしまうエレナ。エレナをお姫様抱っこして運ぶのは皇太子殿下の役目だった。屋敷に戻ってエレナを自室のベッドに寝かせる。

皇太子殿下はその後、私に懺悔する。こうなったのは自分のせいだと。私は大丈夫だと声を掛けるが謝られた。なので許すと答える。子供の頃のように皇太子殿下の頭を撫でる。こうしていると少し懐かしいな。

よく頑張りましたと褒める。少しだけ皇太子殿下の顔色が良くなる。やっぱり自分を追い込んでいたらしい。

そして皇太子殿下は、エレナに皇室の影をつけるという。エレナが目を覚ましたら直接言うらしい。あまり気負う必要はないと言えば、少し穏やかな表情を見せる皇太子殿下。エレナの目が覚めるまでは屋敷にいてくださるらしい。エレナもその方が安心できるだろう。かえって助かる。

ナタリアがすかさずエレナのベッドのすぐ近くに、二人分の椅子を置く。私と皇太子殿下はそれに腰掛ける。

私達はエレナが目を覚ますまで話をした。何か別のことに意識を逸らさないとなんとなく不安だった。その間にセバスチャンがリナリー女医を呼ぶ手配をしてくれて、リナリー女医が眠っているエレナを寝かせたまま診察してくれた。

「大丈夫ですよ、セヴラン公爵様。エレオノール様の体調は落ち着いています。応急処置も必要ありません。あとはゆっくり休んで体力を回復すればすぐに良くなりますよ」

「助かった。礼を言う」

「いえいえ。また何かありましたらすぐに呼んでください」

リナリー女医は帰って行った。エレナが大丈夫そうでほっと安心する。

「今のがエレナの主治医かい?信頼出来そうな人だね」

「ええ、口も堅いので安心して任せられます」

「それはいい。エレナをお嫁さんにもらったら、彼女をエレナのために皇宮に雇い入れようかな」

「彼女の幼馴染も腕の良い薬師のようです」

「なら、その人も雇い入れよう」

そんなことを話しているとだいぶ気が楽になった。なんだかんだで私もだいぶ気を張りつめていたらしい。

「エレナ、はやく目を覚ましてよ」

皇太子殿下がそう呟くと、それに応えるようにエレナの目が覚めた。
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