妾の子として虐げられていた私が、爵位を継いだお兄様から溺愛されるだけ

下菊みこと

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友達がお見舞いに来てくれました

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「じゃあ、僕は皇宮に戻るよ。エレナ、ゆっくり寝てお大事にね」

「はい、クリス様。お見送り出来なくてすみません」

「いいんだよ。愛してる」

朝、私のおでこにキスを落とすクリス様。名残惜しいですが、挨拶を交わして離れます。

「すぐに体調も良くなるだろうけれど、あんな事件があった後だ。しばらく学園には通えないだろうし、皇宮に通うのも止した方がいいだろうね。会えないのは寂しいから、時間を見つけてなるべく通うけど…会えない日もあるだろう。ごめんね」

「寂しいですが、時々でも会いに来てくださればそれで充分です。会えなくても、クリス様のことを想っていれば幸せですから」

「僕も君を想う時間がとても幸せだ。…じゃあ、本当に行くね」

「はい、いってらっしゃいませ」

「ふふ、いってきます」

クリス様は皇宮に戻られます。やっぱり、ちょっと寂しいです。

「ナタリー」

「はい、お嬢様」

「…何をして過ごしましょう」

「とりあえず、今日は大人しく寝ましょうか」

「みゅう」

ということで、エルと寄り添いあって添い寝することになりました。

ー…

どれほど寝ていたのか、起きた頃には身体の調子が良くなっていました。

「ううん…んー」

起き上がって身体を伸ばします。うん、いい感じです。横を見れば、同じく目を覚ましたエルも身体を起こして伸びをします。可愛い。

「おはようございます、お嬢様」

「おはようございます、ナタリー。大分遅くなりましたが、朝の支度をお願いします」

「もうお身体は大丈夫なのですか?」

「はい、すこぶる調子が良くて!」

「お嬢様ー!よかったですー!」

ナタリーが体調の回復を喜んでくれます。

「でもお嬢様、今日はこてこてのドレスより過ごしやすい部屋着に着替えましょう?もしお客様がいらっしゃっても、事情を知ったら許してくださるでしょう」

「そうですね。せっかくですし今日はのんびりしたいので、そうします」

「では、お手伝いさせていただきますね」

ゆったりとした部屋着に着替えて、ちょうど昼食の時間になりお兄様とお昼を食べに行きます。

「お兄様、ご機嫌よう」

「エレナ、起き上がって大丈夫か?」

「もう体調はばっちりです!」

「そうか…それなら良かった。ご機嫌よう、エレナ。食事は食べられそうか?」

「はい!いっぱい食べます!」

私の言葉に微笑むお兄様。

「なら食べよう。今日の夜はエレナの大好きなものばかりにしような」

「お兄様、大好きです!」

「現金な奴め」

そんなことをいいながら、お兄様の私を見つめる目はやっぱり優しいのです。温かな手が、私の頭を撫でます。

「そうだ。今日の夕方には、お前のお友達が見舞いに来るらしい。ただ、本調子じゃないだろうからあまり無理はせずゆっくり休んでいて欲しいとのことだ。良いお友達を持ったな」

「ティナ様とジェシー様でしょうか?嬉しいです」

「そうだ。よかったな」

そしてお兄様とお昼を食べて部屋に戻ると、部屋に戻りベッドの上で読書をします。一番好きな童話集を開きます。実は小説よりこっちが好きです。子供っぽいので誰にも言えませんが…。

そして夕方、ティナ様とジェシー様がお見舞いに来てくださいました。

「エレナ様、大丈夫ですの!?」

「エレナ様ぁ!心配しましたぁ!」

「ティナ様、ジェシー様!」

会うや否や挨拶をすっ飛ばして、ティナ様が私の右手を、ジェシー様が私の左手を握りしめます。

「もう!どうしてすぐに事件に巻き込まれますの!?私、エレナ様が本当に心配ですわ!少しは安心させてくださいまし!」

「エレナ様ぁ、あんまり人を簡単に信用しちゃダメですぅ」

「返す言葉も有りません…」

叱られてしまいました。お二人のおっしゃる通りです…。

「とりあえず、実行犯のポーラ様とリゼット様とサラ様は捕まりましたわ。学園も今大混乱で、臨時休校になりましたの。私とジェシー様はちょっとした情報収集をしていまして、お見舞いに来るのが遅くなってごめんなさい」

「まずぅ、学園は今回の事件の責任を追及されていますぅ。そのためぇ、今後は警備が厳しくなるようですぅ。実行犯のポーラ様とリゼット様とサラ様はぁ、捕まったら素直に白状しているようで、拷問は回避していますぅ。ただ、公爵家の娘であり皇太子殿下の婚約者であるエレナ様に害を為したのでぇ…」

「牢での扱いは酷いと聞いていますわ。それも、貴族牢ではなく奴隷用の牢に入れられていますわね。刑も厳しくなるでしょう。おそらくこのままでは一族郎党公開処刑ですわね。ただ、エレナ様はそれを望まれないでしょう?」

「もちろんです」

強く頷きます。

「ですから私達、普段からポーラ様とリゼット様とサラ様が黒幕のオデット・アダラールに奴隷のような扱いを受け、彼女の命令に逆らえない状態だったという証言を集めましたわ」

「だからといってぇ許されることではないですしぃ、良くて公開処刑は避けてぇ毒杯を賜るだけで済むようになる、といった感じですがぁ、まあ公開処刑よりはぁだいぶマシでしょうねぇ」

「そう、ですか…」

毒杯を賜るのがマシ…ですか…。悲しいですが、これ以上の甘い処分は期待できないのですね。

「とりあえずぅ、その証言を認めた書類を皇太子殿下に渡しましたぁ」

「どうか、気落ちしないでくださいませ。いくら命令されていたとはいえ、エレナ様を傷付けた相手ですわ」

「そうですね…お二人とも、何から何までありがとうございます」

「どういたしましてぇ」

「私達の仲ですもの。当たり前ですわ」

微笑むお二人に、少しだけ気持ちが上向きます。

「それに、あの証言はオデット様を貴族裁判にかける時にも使えますしね」

「オデット様はぁ、おそらくすっとぼけて逃げる算段ですぅ。絶対逃がしませんー」

「今、とある魔道具を密かに開発中ですの。それが完成したら、彼女をもっと追い詰められますわ!」

「あともう少し待っていてくださいねぇ」

「はい」

お二人が何を作っているかはわからないのですが、きっと良い方向にいくと信じます。

「では、私はこれで失礼しますわ。あまり時間が取れなくて、申し訳ありません…」

「エレナ様ぁ、大好きなエレナ様の為に、私達開発を頑張りますねぇ」

「お気になさらないでください、ティナ様。ジェシー様もあまり無理をなさらないでくださいね」

「やっぱり私ぃ、エレナ様が大好きですぅ」

「私もですわ!」

そうしてティナ様とジェシー様を馬車まで見送り、別れます。正直お二人の行動力には驚きましたが、おかげでなんとかなりそうで安心しました。
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