一国の姫として第二の生を受けたけど兄王様が暴君で困る

下菊みこと

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晩餐です!

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ご機嫌よう。リンネアル・サント・エルドラドです。今から、ティラン兄様と晩餐です!

「良い子にしてたか?」

軽く頭を撫でてから私を椅子の上に乗せるティラン兄様。

「うん!今日もお勉強頑張ったよ!」

「お前、理科と数学だけはマジで天才的らしいな。この国の基礎理化学を変えるレベルらしいぞ」

そりゃあ魔法学が発展してそれに頼っているかわりに理科と数学を捨てたこの国では天才でしょうよ。

「えへへ、私、ティラン兄様の役に立った?」

「ん。魔法学の方が重要だけど、魔力の少ない平民達には理化学の知識も必要不可欠だからな」

上機嫌なティラン兄様。役に立ってよかった。これでまた一歩ティラン兄様攻略に近づいたよね!

「我が愚妹は思ったよりも役に立つらしいな。これからもこの調子で頑張れよ」

「はーい!」

「でも、理科と数学と国語はともかく、社会と帝王学は年相応みたいだな」

ぎくり。

「社会は苦手か?」

「知らないことばっかりで難しいよ!でも頑張るね!」

「そうか。まあ無理はするなよ。今は理科と数学と魔法学の方に力を入れろ」

「はーい!」

よかったー、見逃された。

「今日はハンバーグを用意させた。子供は好きだろ?」

自分だって子供じゃん!

「うん、私、ハンバーグだーいすき!」

「…ふうん、そうか。よかったな」

あれ?なんだろう、この反応。…まさか。

「…ティラン兄様?」

「なんだよ」

「ティラン兄様もだーいすきだよ?」

ティラン兄様はとてもいい笑顔になり愚妹のくせに生意気だと私の頬をむにむにと摘んだり伸ばしたりします。ハンバーグにやきもち妬くって…ティラン兄様…。

「じゃあいただきまーす!」

「いただきます」

…。

「ねえねえ、ティラン兄様。私は公務はしなくていいの?」

「六歳の子供にそんなこと求めるわけないだろ」

今は大人しく王城で過ごしていれば良い、とティラン兄様。もしかして心配してくれてたり?

「でもティラン兄様も十九歳だよ?」

「ばか。この国では十八歳で成人だろ」

「でも、六年前は十三歳でしょう?」

「俺は天才だからいいの」

「私も天才だよ?」

ティラン兄様は面倒臭そうに髪をかきあげると、私の頭を撫でます。

「方向が違うだろ。俺は魔法学の天才なの。自分の身は自分で守れる。一応、エルドラドの騎士もついてるし。お前は違うだろ」

「じゃあ私に護衛騎士さんつけたら?」

「そんなことしたら俺がお前を可愛がってるみたいだろ」

「…かわいがっちゃダメなの?」

「…お前は、暴君の兄に家族を奪われて王城で閉じ込められてる可哀想なお姫様なの。わかったら良い子にしてろ」

それ以上は話す気がない、とばかりにハンバーグに集中するティラン兄様。

「…でも、私にはティラン兄様がいるよ」

ごほっ、ごほっと噎せるティラン兄様。どうだ、私の愛嬌作戦!

「お前なぁ。…まあ、いいや。そのうちお前も、俺がお前にしたことを理解するだろうし」

「ティラン兄様がなにをしても、私はティラン兄様が大好きだよ?」

「…あー、もう!いいから食え!」

ティラン兄様は照れた様子で私の頬をつんつんしてからまたハンバーグに集中してしまいました。

…これでまた一歩、兄王様攻略に近づいたかな?
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