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幼馴染ばっかり可愛がる婚約者に、嫉妬すら引いて別のベクトルの怒りが湧いてきた
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「グレゴリー様、どうか行かないでください!」
「…酷いことを言うんだな。アリスはお前と違って病弱なんだ。俺がそばにいてやらないとダメなんだよ」
「でも、どうして私達のデートの時に限って…」
「嫉妬は醜いぞ」
「…っ!」
婚約者の、あまりに酷い物言いに私は言葉を失う。
「ルイーズ。俺はお前の婚約者だが、幼馴染との交流を断つつもりはない。不満なら、両親にでも掛け合って婚約を解消すればいい」
そんなの無理だ、結婚とは家同士の約束。個人の気持ちでどうこうできるものじゃない。分かっていて、この人はこんな言い方をするのだ。
「…とにかく俺は、アリスの元に戻る。じゃあな」
帰っていく彼の背中を見て、今まで感じていた嫉妬が引いていくのを感じた。その代わり、別のベクトルの怒りが湧いてきた。
「…ということで、このままでは怒りで頭がおかしくなりそうだから何か気晴らししたいの」
「へー、じゃあ悪いことでもしてみるか?」
「悪いこと?」
「賭博」
「合法のところならいいけど」
幼馴染に相談すれば、賭博に誘われた。
「じゃあ、カジノでも行こうぜ。ビギナーズラック来るかも」
「おすすめの所に連れて行ってくれる?」
「おう」
「やっぱりジャコブは頼りになるわ」
「だろー?」
幼馴染に手を引かれて、合法のカジノで遊ぶ。すると、本当にビギナーズラックが発動した。お小遣い全額をつぎ込むつもりで遊んでいたが、持っていたお小遣いが十倍になった。怖い。
「おー、すごい額になったな。それだけあれば貧乏貴族から領地と爵位買えるんじゃねーの?」
「たしかに…」
「…なあ。もしアレなら、本気で婚約を白紙に戻して貰えば?それだけの金があれば自立できるんだし、お前のご両親だって認めてくれるんじゃねーの?相手の不貞が理由なら、お前のご両親や相手のご家族にだってそれなりに理解してもらえるだろ」
「でも…」
「それで、その金で爵位と領地を買って独立してさ。…俺を執事として雇ってみない?」
彼の突然の発言に、彼の顔をマジマジと見つめてしまう。
「…そこは俺と婚約しよう、じゃないの?」
「だってお前、この婚約を白紙に戻したらもう誰とも結婚する気ないだろ」
「…」
「お前、あんなクソ男でも本気で愛していたじゃん」
「…うん」
やっぱり、私の一番の理解者はジャコブだ。
「だからさ、俺はお前の察した通りお前が好きだけど。無理に恋愛関係にならなくていいよ。ただ、そばにいさせてくれればいい」
「…バカ。もっと自分を大切にしなさいよ」
「自分の気持ちを何よりも大切にしてるから、お前と一緒に居たいんだよ。どうせ貴族の三男なんて、暇なんだし。執事の真似事も、面白そうじゃん?」
「…バカ。でも、大好きよ」
「違うベクトルの愛情なんだろうけど、嬉しいよ。俺も、愛してる」
私達はカジノを出ると、早速私の独立に向けて動き出した。
そして私は、グレゴリー様との婚約を白紙に戻してもらえるよう両親に交渉した。
両親にはグレゴリー様のこれまでの態度を説明して、これ以上は無理だと訴えた。ジャコブが私をカジノに連れ込んで、ビギナーズラックで大金を稼いだことを両親に伝えてくれた。
結局はそれを横で聞いていた兄が、本当に独立できるんなら別に好きにさせてやれば良いと援護してくれて両親も折れた。
「ということで、婚約は白紙に戻していただきます」
「な…」
「どうせなら、幼馴染さんをお嫁さんに貰うと良いかもしれませんね」
私がそう言うと、わずかにグレゴリー様の口角が上がった。嬉しそうですね。
「そ、そうか。それは残念だ」
「ええ、私も残念です。そちらのご両親にももう了承は得てますので、これでさようならですね」
「今までありがとう。お前が身を引いてくれる分、俺はアリスを幸せにすると誓う」
何を勝手な誓いを立てているのか。
「もうこれからは他人ですから、そのおつもりで」
「ああ、さようなら」
「お元気で」
そして私は、グレゴリー様と決別した。
後日グレゴリー様が、アリス様にフラれたと聞いた。幼馴染としか思っていない、自分には心に決めた人がいると言われたらしい。結局、ご両親の用意した別の女性との縁談を受け入れたようだ。
アリス様はアリス様で、心に決めたという人への想いは私への仕打ちがバレて叶わなかったという。そのまま体調を崩して、田舎の領地でもっと本格的な療養を始めたらしい。
「ほ、本当に領地と爵位買っちゃった」
「よっ!女伯爵様!」
「もう。からかわないでよ」
「あはは。領地を買ったからには、これから真面目に働かないとな」
「ちゃんと支えてよね」
私の言葉に彼がウィンクを返す。
「おう!任せろ!」
数年後、彼から実はあの時のはビギナーズラックなんかじゃなくて彼がカジノでイカサマをしたと聞いてバレたらどうするのと叱りつけたり、ようやく気持ちの整理がついて彼の気持ちを受け入れて結婚したりと慌ただしくなるなんてこの頃の私はまだ知らなかった。
「…酷いことを言うんだな。アリスはお前と違って病弱なんだ。俺がそばにいてやらないとダメなんだよ」
「でも、どうして私達のデートの時に限って…」
「嫉妬は醜いぞ」
「…っ!」
婚約者の、あまりに酷い物言いに私は言葉を失う。
「ルイーズ。俺はお前の婚約者だが、幼馴染との交流を断つつもりはない。不満なら、両親にでも掛け合って婚約を解消すればいい」
そんなの無理だ、結婚とは家同士の約束。個人の気持ちでどうこうできるものじゃない。分かっていて、この人はこんな言い方をするのだ。
「…とにかく俺は、アリスの元に戻る。じゃあな」
帰っていく彼の背中を見て、今まで感じていた嫉妬が引いていくのを感じた。その代わり、別のベクトルの怒りが湧いてきた。
「…ということで、このままでは怒りで頭がおかしくなりそうだから何か気晴らししたいの」
「へー、じゃあ悪いことでもしてみるか?」
「悪いこと?」
「賭博」
「合法のところならいいけど」
幼馴染に相談すれば、賭博に誘われた。
「じゃあ、カジノでも行こうぜ。ビギナーズラック来るかも」
「おすすめの所に連れて行ってくれる?」
「おう」
「やっぱりジャコブは頼りになるわ」
「だろー?」
幼馴染に手を引かれて、合法のカジノで遊ぶ。すると、本当にビギナーズラックが発動した。お小遣い全額をつぎ込むつもりで遊んでいたが、持っていたお小遣いが十倍になった。怖い。
「おー、すごい額になったな。それだけあれば貧乏貴族から領地と爵位買えるんじゃねーの?」
「たしかに…」
「…なあ。もしアレなら、本気で婚約を白紙に戻して貰えば?それだけの金があれば自立できるんだし、お前のご両親だって認めてくれるんじゃねーの?相手の不貞が理由なら、お前のご両親や相手のご家族にだってそれなりに理解してもらえるだろ」
「でも…」
「それで、その金で爵位と領地を買って独立してさ。…俺を執事として雇ってみない?」
彼の突然の発言に、彼の顔をマジマジと見つめてしまう。
「…そこは俺と婚約しよう、じゃないの?」
「だってお前、この婚約を白紙に戻したらもう誰とも結婚する気ないだろ」
「…」
「お前、あんなクソ男でも本気で愛していたじゃん」
「…うん」
やっぱり、私の一番の理解者はジャコブだ。
「だからさ、俺はお前の察した通りお前が好きだけど。無理に恋愛関係にならなくていいよ。ただ、そばにいさせてくれればいい」
「…バカ。もっと自分を大切にしなさいよ」
「自分の気持ちを何よりも大切にしてるから、お前と一緒に居たいんだよ。どうせ貴族の三男なんて、暇なんだし。執事の真似事も、面白そうじゃん?」
「…バカ。でも、大好きよ」
「違うベクトルの愛情なんだろうけど、嬉しいよ。俺も、愛してる」
私達はカジノを出ると、早速私の独立に向けて動き出した。
そして私は、グレゴリー様との婚約を白紙に戻してもらえるよう両親に交渉した。
両親にはグレゴリー様のこれまでの態度を説明して、これ以上は無理だと訴えた。ジャコブが私をカジノに連れ込んで、ビギナーズラックで大金を稼いだことを両親に伝えてくれた。
結局はそれを横で聞いていた兄が、本当に独立できるんなら別に好きにさせてやれば良いと援護してくれて両親も折れた。
「ということで、婚約は白紙に戻していただきます」
「な…」
「どうせなら、幼馴染さんをお嫁さんに貰うと良いかもしれませんね」
私がそう言うと、わずかにグレゴリー様の口角が上がった。嬉しそうですね。
「そ、そうか。それは残念だ」
「ええ、私も残念です。そちらのご両親にももう了承は得てますので、これでさようならですね」
「今までありがとう。お前が身を引いてくれる分、俺はアリスを幸せにすると誓う」
何を勝手な誓いを立てているのか。
「もうこれからは他人ですから、そのおつもりで」
「ああ、さようなら」
「お元気で」
そして私は、グレゴリー様と決別した。
後日グレゴリー様が、アリス様にフラれたと聞いた。幼馴染としか思っていない、自分には心に決めた人がいると言われたらしい。結局、ご両親の用意した別の女性との縁談を受け入れたようだ。
アリス様はアリス様で、心に決めたという人への想いは私への仕打ちがバレて叶わなかったという。そのまま体調を崩して、田舎の領地でもっと本格的な療養を始めたらしい。
「ほ、本当に領地と爵位買っちゃった」
「よっ!女伯爵様!」
「もう。からかわないでよ」
「あはは。領地を買ったからには、これから真面目に働かないとな」
「ちゃんと支えてよね」
私の言葉に彼がウィンクを返す。
「おう!任せろ!」
数年後、彼から実はあの時のはビギナーズラックなんかじゃなくて彼がカジノでイカサマをしたと聞いてバレたらどうするのと叱りつけたり、ようやく気持ちの整理がついて彼の気持ちを受け入れて結婚したりと慌ただしくなるなんてこの頃の私はまだ知らなかった。
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