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死に戻りした主人公、同じく記憶だけはある妹
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「ゾエ・イヴォン!ジュール・ガスパルの名において貴様との婚約は破棄させてもらう!そして我が愛おしい聖女、ヴァランティーヌ・イヴォンとの婚約を新たに結ぶ!貴様は皇太子の婚約者でもある妹を虐待した罪で斬首刑とする!」
高らかに宣言するのは皇太子殿下。私は牢に入れられる。腹違いの妹、ヴァランティーヌの勝ち誇った顔が憎くてたまらない。
そもそも、私はヴァランティーヌを虐待なんてしていない。冤罪だ。ヴァランティーヌは、私の婚約者である皇太子に近付くためにそんな嘘を吐いたらしい。それどころか、他の男性にもそんな嘘を吐いて擦り寄っているらしい。
「あんな子が聖女だなんて世も末だわ」
妹は私の腹違いの妹だ。当時父の愛人であった、義母が生んだ子供。母が亡くなると、我が屋敷に上がり込んできた。
私は父や義母から見えない場所を鞭打ちされる暴行を受けていた。本当に虐待されていたのは、私の方だった。妹もたまに鞭打ちに参加していた。あのボンクラ皇太子は私がいくら訴えても信じてくれなかったけど。
妹が聖女だったのもたちが悪かった。何故神様はあんな子を選んだのか。聖女である妹と私のどちらを信じるかと言われたら、それはみんな聖女である妹を信じるのも仕方がない。これはもう神様が悪い。それでも婚約者だったボンクラ皇太子だけは、私より妹を信じたことを許す気はないけど。
「クズな父も性悪な義母も、聖女のくせに淫らな妹もそれに騙された元婚約者も!みんな呪われてしまえ!」
私は断頭台の前に立つ。そして呪いの言葉を叫んだ。皇帝陛下がいれば、また違う結末だったかもしれない。だけど、皇帝陛下は今流行病の闘病中。その間この国は皇太子殿下に任されている。もう望みはない。私の首が、胴体から切り離された。
ー…
「ん…ここは?」
見慣れた天井に驚く。ここは、どう見ても子供の頃使っていた私室。ヴァランティーヌに奪われたはずの部屋なのに、何故。
「可愛いゾエ。おはよう。今日も良い朝ね。侍女から、今日はなかなか起きないと聞いたからね。お母様がきちゃった」
母が部屋に来た。何故亡くなった母がいるのか。
「お母様…?」
「ええ、どうしたの?」
ああ、もしかしてここは天国なのだろうか。
「お母様、私天国にいるの?」
「まあ、天国だなんて。たしかにゾエがいれば、お母様にとってはどこでも天国だけどね」
くすくすと笑う母。ふと手足をみれば、縮んでいる。もしかして…もしかして、私過去にいる?それとも全部夢だった?
「…お母様っ!」
「あらあら、いい子いい子。怖い夢はもう退散したから大丈夫よ」
…お母様はそう言うけれど、私にはわかる。怖い夢はまだ去っていない。怖い夢を退散させる方法はただ一つ。自分の未来の記憶を正しく使うこと。
ー…
私は急ぎの用だと言って、すぐに皇帝陛下に謁見する。私は皇帝陛下のお気に入りだから、割と簡単だった。
「急ぎの用とはなんだ、可愛い我が未来の娘よ」
「もうすぐ竜巻が起こります、陛下」
「…ほう?続けてみよ」
「来月、突然竜巻が発生するのです、陛下。そしてフェルグス領が大打撃を受けます。全てが竜巻によって壊されてしまいます」
「それで?」
「フェルグス領の領民達を家畜やペットと共に、持てるだけの財産を全て持たせて避難させるべきです」
私の突然の発言にも国王陛下は耳を傾けてくれる。
「ふむ。面白い話だが、どう信じろと?」
「信じてもらえるのなら、我が命を差し出します。当たればそれでよし。外れたら殺してください」
「ジュールとの婚約は?」
ジュール皇太子…今は第一皇子か。彼との婚約なんて真っ平御免なのでそちらも追い追い考えないと。とりあえず事実だけ告げる。
「ジュール様にはヴァランティーヌがいます」
「ヴァランティーヌ?」
「私には腹違いの妹がいるらしいのです。遠い未来、私に虐待を受けたと嘘をついてジュール様に擦り寄ります。ジュール様はそんなヴァランティーヌに騙されて、私を捨ててヴァランティーヌを選びます」
「大した悪女だな」
皇帝陛下は自分の長い髭を撫でる。
「ヴァランティーヌは母が亡くなるとすぐに屋敷に転がり込みます。そして私は父と義母、ヴァランティーヌに虐待されます」
「…そうか」
「皇帝陛下。どうか最悪の未来を変えるため、私に力をお貸しください。その代わりに私も、私の知る未来の記憶をこの国のために使います」
私の真剣な表情に、国王陛下は頷いてくれた。
「…よし。では来月、フェルグス領の全ての領民と家畜とペットを、持てるだけの私財と共にこの宮殿に連れてこよう。もちろんフェルグス伯も共に。もし予言が当たれば私は全力でゾエと母君を庇護しよう。外れれば…言葉にするまでもない。それで良いな?」
「はい!ありがとうございます!」
「では、気をつけて帰りなさい」
「はい。失礼致します」
部屋を出る瞬間、聞こえてきた。
「…まさか、ゾエ様が予言の聖女だとは。これは良いのか悪いのか」
「聖王猊下に下された突然の神託。予言の聖女を信じて守れ。ゾエが予言の聖女とは思わなんだ。しかし先の予言ではジュールには将来を期待出来んな。ゾエとの婚約も考え直し、理由をつけて第二王子であるマクシムと挿げ替えねば」
どうやら、婚約の方も大丈夫そうである。
ー…
結局、予言は当たった。人々や家畜、ペット達の命は守られた。私は予言の聖女として、皇帝陛下と聖王猊下の命令で母とともに中央教会に預けられることになった。
「予言の聖女殿。よく来てくれた」
「聖王猊下、これからお世話になります」
「うむ。よろしく頼む」
母は私がどうしてもと頼み込んで行なってもらった健康診断で初期の症状の病気が発見され、すぐに治療を受け回復。病気はすぐに完治した。
そして皇帝陛下によると、父はせっかく目障りな母と私が居なくなったが、母と離婚したわけでもないために義母やヴァランティーヌを引き取ることが出来ずにやきもきしていたらしい。
だがそんな折、ヴァランティーヌが自分こそ本物の聖女だと言い出して大変な騒ぎになった。しかし、ヴァランティーヌは特別な力を使えるわけでもなく予言が出来るわけでもなかった。
「前回の人生では、ヴァランティーヌは一応本物の聖女だったのに。神様が、ヴァランティーヌの行ないに呆れて力を奪ってしまったのかしら。もしかしたら、それで私に人生のやり直しの機会もくださったのかも。あの時の国王陛下の発言が本当なら、神託を下して私を後押ししてくださったようだし」
そんなこんなで、ヴァランティーヌは今回の人生では聖女ではなくなった。それでも自分で聖女だと言うということは、前回の記憶を彼女も持っているらしい。なので遠慮なく仕返しすることにした。
といっても、本来の未来で妹が行う悪行を聖王猊下に告げ口しただけ。私に冤罪を被せたこと、皇太子と浮気して私を処刑させたこと、私からたくさんのモノを奪ったこと、皇太子とそういう関係になっておきながら他の男性ともお付き合いしていたことなど。
「聖王猊下が動いてくれて、聖女を騙ったとしてヴァランティーヌは投獄された。私はあの性悪な妹に勝った。これでやっと安心できる」
そしてその後、義母は何故か行方不明になったとか。そして父は何故か精神を病み療養中らしい。皇帝陛下がなにかしらしたのかなと思うけどあえて突っ込んだりはしない。ちなみに父の爵位は、父の弟であるおじ様が継いだ。おじ様はまともなので安心。
また、私の婚約者は第二王子のマクシム様に変更された。聖王猊下におりた神託に従ってのこと。その関係で、皇太子もマクシム様に決まった。
また、ジュール様は幼い今から騎士団の精鋭部隊に配属が決まったそう。まだ幼い今から入団させられ、めちゃくちゃしごかれて泣き喚く毎日だとか。ざまぁみろ。
「ゾエ」
「はい、マクシム様」
「はやく君と結婚したい。はやく大人になりたいな」
「はい、私もです。こうしてマクシム様と過ごせるだけで幸せですから。結婚したら毎日一緒に過ごしましょうね」
「大好きだよ、ゾエ。これからもずっと仲良くしてね」
「私も大好きです、マクシム様。ずっとお側にいると誓います」
そんなこんなで今度こそ幸せな人生になりました。
高らかに宣言するのは皇太子殿下。私は牢に入れられる。腹違いの妹、ヴァランティーヌの勝ち誇った顔が憎くてたまらない。
そもそも、私はヴァランティーヌを虐待なんてしていない。冤罪だ。ヴァランティーヌは、私の婚約者である皇太子に近付くためにそんな嘘を吐いたらしい。それどころか、他の男性にもそんな嘘を吐いて擦り寄っているらしい。
「あんな子が聖女だなんて世も末だわ」
妹は私の腹違いの妹だ。当時父の愛人であった、義母が生んだ子供。母が亡くなると、我が屋敷に上がり込んできた。
私は父や義母から見えない場所を鞭打ちされる暴行を受けていた。本当に虐待されていたのは、私の方だった。妹もたまに鞭打ちに参加していた。あのボンクラ皇太子は私がいくら訴えても信じてくれなかったけど。
妹が聖女だったのもたちが悪かった。何故神様はあんな子を選んだのか。聖女である妹と私のどちらを信じるかと言われたら、それはみんな聖女である妹を信じるのも仕方がない。これはもう神様が悪い。それでも婚約者だったボンクラ皇太子だけは、私より妹を信じたことを許す気はないけど。
「クズな父も性悪な義母も、聖女のくせに淫らな妹もそれに騙された元婚約者も!みんな呪われてしまえ!」
私は断頭台の前に立つ。そして呪いの言葉を叫んだ。皇帝陛下がいれば、また違う結末だったかもしれない。だけど、皇帝陛下は今流行病の闘病中。その間この国は皇太子殿下に任されている。もう望みはない。私の首が、胴体から切り離された。
ー…
「ん…ここは?」
見慣れた天井に驚く。ここは、どう見ても子供の頃使っていた私室。ヴァランティーヌに奪われたはずの部屋なのに、何故。
「可愛いゾエ。おはよう。今日も良い朝ね。侍女から、今日はなかなか起きないと聞いたからね。お母様がきちゃった」
母が部屋に来た。何故亡くなった母がいるのか。
「お母様…?」
「ええ、どうしたの?」
ああ、もしかしてここは天国なのだろうか。
「お母様、私天国にいるの?」
「まあ、天国だなんて。たしかにゾエがいれば、お母様にとってはどこでも天国だけどね」
くすくすと笑う母。ふと手足をみれば、縮んでいる。もしかして…もしかして、私過去にいる?それとも全部夢だった?
「…お母様っ!」
「あらあら、いい子いい子。怖い夢はもう退散したから大丈夫よ」
…お母様はそう言うけれど、私にはわかる。怖い夢はまだ去っていない。怖い夢を退散させる方法はただ一つ。自分の未来の記憶を正しく使うこと。
ー…
私は急ぎの用だと言って、すぐに皇帝陛下に謁見する。私は皇帝陛下のお気に入りだから、割と簡単だった。
「急ぎの用とはなんだ、可愛い我が未来の娘よ」
「もうすぐ竜巻が起こります、陛下」
「…ほう?続けてみよ」
「来月、突然竜巻が発生するのです、陛下。そしてフェルグス領が大打撃を受けます。全てが竜巻によって壊されてしまいます」
「それで?」
「フェルグス領の領民達を家畜やペットと共に、持てるだけの財産を全て持たせて避難させるべきです」
私の突然の発言にも国王陛下は耳を傾けてくれる。
「ふむ。面白い話だが、どう信じろと?」
「信じてもらえるのなら、我が命を差し出します。当たればそれでよし。外れたら殺してください」
「ジュールとの婚約は?」
ジュール皇太子…今は第一皇子か。彼との婚約なんて真っ平御免なのでそちらも追い追い考えないと。とりあえず事実だけ告げる。
「ジュール様にはヴァランティーヌがいます」
「ヴァランティーヌ?」
「私には腹違いの妹がいるらしいのです。遠い未来、私に虐待を受けたと嘘をついてジュール様に擦り寄ります。ジュール様はそんなヴァランティーヌに騙されて、私を捨ててヴァランティーヌを選びます」
「大した悪女だな」
皇帝陛下は自分の長い髭を撫でる。
「ヴァランティーヌは母が亡くなるとすぐに屋敷に転がり込みます。そして私は父と義母、ヴァランティーヌに虐待されます」
「…そうか」
「皇帝陛下。どうか最悪の未来を変えるため、私に力をお貸しください。その代わりに私も、私の知る未来の記憶をこの国のために使います」
私の真剣な表情に、国王陛下は頷いてくれた。
「…よし。では来月、フェルグス領の全ての領民と家畜とペットを、持てるだけの私財と共にこの宮殿に連れてこよう。もちろんフェルグス伯も共に。もし予言が当たれば私は全力でゾエと母君を庇護しよう。外れれば…言葉にするまでもない。それで良いな?」
「はい!ありがとうございます!」
「では、気をつけて帰りなさい」
「はい。失礼致します」
部屋を出る瞬間、聞こえてきた。
「…まさか、ゾエ様が予言の聖女だとは。これは良いのか悪いのか」
「聖王猊下に下された突然の神託。予言の聖女を信じて守れ。ゾエが予言の聖女とは思わなんだ。しかし先の予言ではジュールには将来を期待出来んな。ゾエとの婚約も考え直し、理由をつけて第二王子であるマクシムと挿げ替えねば」
どうやら、婚約の方も大丈夫そうである。
ー…
結局、予言は当たった。人々や家畜、ペット達の命は守られた。私は予言の聖女として、皇帝陛下と聖王猊下の命令で母とともに中央教会に預けられることになった。
「予言の聖女殿。よく来てくれた」
「聖王猊下、これからお世話になります」
「うむ。よろしく頼む」
母は私がどうしてもと頼み込んで行なってもらった健康診断で初期の症状の病気が発見され、すぐに治療を受け回復。病気はすぐに完治した。
そして皇帝陛下によると、父はせっかく目障りな母と私が居なくなったが、母と離婚したわけでもないために義母やヴァランティーヌを引き取ることが出来ずにやきもきしていたらしい。
だがそんな折、ヴァランティーヌが自分こそ本物の聖女だと言い出して大変な騒ぎになった。しかし、ヴァランティーヌは特別な力を使えるわけでもなく予言が出来るわけでもなかった。
「前回の人生では、ヴァランティーヌは一応本物の聖女だったのに。神様が、ヴァランティーヌの行ないに呆れて力を奪ってしまったのかしら。もしかしたら、それで私に人生のやり直しの機会もくださったのかも。あの時の国王陛下の発言が本当なら、神託を下して私を後押ししてくださったようだし」
そんなこんなで、ヴァランティーヌは今回の人生では聖女ではなくなった。それでも自分で聖女だと言うということは、前回の記憶を彼女も持っているらしい。なので遠慮なく仕返しすることにした。
といっても、本来の未来で妹が行う悪行を聖王猊下に告げ口しただけ。私に冤罪を被せたこと、皇太子と浮気して私を処刑させたこと、私からたくさんのモノを奪ったこと、皇太子とそういう関係になっておきながら他の男性ともお付き合いしていたことなど。
「聖王猊下が動いてくれて、聖女を騙ったとしてヴァランティーヌは投獄された。私はあの性悪な妹に勝った。これでやっと安心できる」
そしてその後、義母は何故か行方不明になったとか。そして父は何故か精神を病み療養中らしい。皇帝陛下がなにかしらしたのかなと思うけどあえて突っ込んだりはしない。ちなみに父の爵位は、父の弟であるおじ様が継いだ。おじ様はまともなので安心。
また、私の婚約者は第二王子のマクシム様に変更された。聖王猊下におりた神託に従ってのこと。その関係で、皇太子もマクシム様に決まった。
また、ジュール様は幼い今から騎士団の精鋭部隊に配属が決まったそう。まだ幼い今から入団させられ、めちゃくちゃしごかれて泣き喚く毎日だとか。ざまぁみろ。
「ゾエ」
「はい、マクシム様」
「はやく君と結婚したい。はやく大人になりたいな」
「はい、私もです。こうしてマクシム様と過ごせるだけで幸せですから。結婚したら毎日一緒に過ごしましょうね」
「大好きだよ、ゾエ。これからもずっと仲良くしてね」
「私も大好きです、マクシム様。ずっとお側にいると誓います」
そんなこんなで今度こそ幸せな人生になりました。
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