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王太子には後悔しか残らなかった
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「ベルティーユ・オルフェウス!貴様との婚約は破棄させてもらう!そして今ここで、私の愛しいニコル・ペトロニーユとの婚約を宣言する!」
学園の卒業パーティーで、いきなりベルティーユに婚約破棄を言い渡すのは婚約者である王太子。対するベルティーユは公爵令嬢であるが、実はこの展開を覚悟していた。なぜなら前世の記憶によって、自分が乙女ゲームの悪役令嬢だと知っていたからである。
前世で毎日のようにこの乙女ゲームをプレイして、いつも王太子ルートを選んでいたベルティーユ。ベルティーユは本気で王太子が好きだった。二次元とわかっていても、本気で恋をしていた。
それを見た異世界の神があまりの彼女の執着ぶりに一周回って感服し、彼女の次の人生を王太子の婚約者にしたのだ。だが、哀しきかな彼女が望んでいたのはヒロイン転生。彼女はヒロインに向ける柔らかな笑顔、花を愛でるような優しい声、温かな指先、それらを求めていたのだが。
「承知いたしました」
えっ、と驚くニコルと王太子。
「ま、待て、貴様の断罪を…」
「婚約者として至らなかった私を身分剥奪の上国外追放されるのでしょう?」
またしてもえっ、と情け無い表情。仮にも王太子とその婚約者がしていい表情ではない。
「そ、そうだ。だが貴様への断罪は婚約者として至らなかったからだけではなく、ここにいるニコルへの嫌がらせの結果だ!」
「そうです!最後に一言謝ってください!」
「あら、それはごめんあそばせ。だって私、婚約者であったのにも関わらず、ニコル様に向けるような愛を向けていただいたことが一度もないんですもの」
せめて。せめてニコルと出会う前に、少しだけの間でもその愛を向けて貰えればベルティーユは我慢できたのだ。喜んで身を引いたし、なんなら本当に悪役令嬢を演じてもよかったとベルティーユは心から言える。だが王太子は、ベルティーユとはあくまでも政略結婚だと割り切っていた。愛を育むつもりなんてなかったのだ。例えヒロインによる魅了魔法にかかっているとしても、もう情状酌量の余地もない。
「ふん!だからといってニコルに嫌がらせを行うなど、公爵令嬢として恥ずかしくないのか!」
「勘違いしないでくださいませ」
ベルティーユの声は冷たい。絶対零度の声に王太子も固まる。
「私は嫌がらせなどただの一度も行っておりませんわ。証言も証拠もありましてよ。ニコル様が事前に王太子殿下に対し私に虐められたと証言された日、私はいつも早くに帰って王城で王太子妃教育を受けていましてよ」
「なっ…な、」
王太子が口を開く前に終わりにすることにしたベルティーユ。
「では、国王陛下。裁定を。」
「っ!?…父上!?」
ベルティーユの王太子に対する告発を受け、別室で待機し今までの様子を投影魔法を使ってみていた国王陛下がパーティー会場に入ってくる。
「バカ息子め!一体何をしておる!」
「わ、私は…っ!私はただ、婚約者として相応しくないベルティーユを断罪し、愛するニコルを婚約者としようと!」
来るはずのなかった、怒り心頭気味の父王にややたじろいだものの、すぐにそう切り返す王太子。
「それがバカだといっておる!簡単に魅了魔法なんぞにかかりおって!大体ベルティーユ嬢以上に王太子妃に相応しいものはいないだろうが!」
父王のあまりの怒りにちょっと冷静になったのか、王太子は魅了魔法、という言葉に反応した。
「魅了魔法?」
「ああ、そうだ!お前はそこな娘を愛してなどいない!」
「ちょっとま…」
ニコルが会話に入ってこようとするが、国王に俺は発言を許していない!と一喝されて黙った。
「神官長!こやつの魅了魔法を解いてやれ!」
「はい!」
そうして王太子にかかっていた魅了魔法は解かれた。王太子の顔色は真っ青になる。
「王太子殿下…」
ニコルが縋るような瞳で王太子を見つめる。しかし王太子は自分の腕に胸を当てるように抱きついているニコルを突き飛ばす。
「きゃっ…」
「貴様っ!よくも私を謀ったな!」
「王太子殿下…!」
「ベルティーユ、すまなかった。迷惑をかけて…」
「いえ、王太子殿下との関係もここまでですもの。最後の置き土産ですわ」
「え?」
呆然とした様子の王太子。いくら推しキャラだったとはいえ、あれだけバカにされて元鞘に戻る者はいないのだ。
「バカ息子が!ここまで迷惑をかけたのだ、ベルティーユ嬢とお前の婚約は解消だ!そしてお前は廃嫡だ!第二王子を王太子とし、ベルティーユ嬢の婚約者とする!」
「なん…で」
「自分の胸に手を当てて考えよ!」
「ベルティーユ!」
「私はここで失礼しますわ。それでは皆様、ご機嫌よう」
最後に綺麗にカーテシーを決め、学園を後にするベルティーユ。ニコルが急に暴れ出したが知らない振りをした。
…ニコルが狙っていたのは王太子ルート後の隠しキャラルートだ。ベルティーユはいつもフラグを折って王太子ルート一直線だったが、王太子ルートの最後の選択肢に王城で第二王子に会えるルートがあるのだ。
隠しキャラの第二王子アンセルムは王太子と正反対。王太子が天才系溺愛王子なら、アンセルムは努力型俺様王子だ。第二王子でありながら、その立場に甘んじずに、ひたすら努力を積み重ねて父や兄の背中を追いかける。そのため自分にも他人にも厳しく、プライドが高い俺様キャラ。
ベルティーユにとってはあまり好みではないのだが、本当は優しくて一途なちょっと不器用なタイプである。ベルティーユも将来の義弟として接したことは何度かあるが、好みでないだけで苦手なタイプではない。ベルティーユの嫁ぎ先としては悪くないはずである。あとは愛を育むことが出来れば完璧だ。
「ベルティーユ!今日も可愛いな、愛しているぞ!」
「ベルティーユ!俺だけのものになってくれ!」
「ベルティーユ!他の男を見るなとは言わないが、俺のことももっと見てくれ!」
実はベルティーユを密かに想っていたアンセルム。押しが強い愛情表現でガンガン攻めてくる。
ちなみに、ニコルへの処罰は内乱罪で打ち首のち晒し首となった。魅了魔法の乱用は元から刑罰が厳しいが、なによりもアンセルムがベルティーユを傷つけたニコルを許さず厳しい処罰を求めたのだ。
ここまで愛されるとそれはそれで悪い気はしないベルティーユである。
「アンセルム殿下、私もアンセルム殿下を愛しております」
「…!そうか、挙式が楽しみだ!」
「ふふ、そうですわね」
なんだかんだで相性が良いかもしれない二人であった。
学園の卒業パーティーで、いきなりベルティーユに婚約破棄を言い渡すのは婚約者である王太子。対するベルティーユは公爵令嬢であるが、実はこの展開を覚悟していた。なぜなら前世の記憶によって、自分が乙女ゲームの悪役令嬢だと知っていたからである。
前世で毎日のようにこの乙女ゲームをプレイして、いつも王太子ルートを選んでいたベルティーユ。ベルティーユは本気で王太子が好きだった。二次元とわかっていても、本気で恋をしていた。
それを見た異世界の神があまりの彼女の執着ぶりに一周回って感服し、彼女の次の人生を王太子の婚約者にしたのだ。だが、哀しきかな彼女が望んでいたのはヒロイン転生。彼女はヒロインに向ける柔らかな笑顔、花を愛でるような優しい声、温かな指先、それらを求めていたのだが。
「承知いたしました」
えっ、と驚くニコルと王太子。
「ま、待て、貴様の断罪を…」
「婚約者として至らなかった私を身分剥奪の上国外追放されるのでしょう?」
またしてもえっ、と情け無い表情。仮にも王太子とその婚約者がしていい表情ではない。
「そ、そうだ。だが貴様への断罪は婚約者として至らなかったからだけではなく、ここにいるニコルへの嫌がらせの結果だ!」
「そうです!最後に一言謝ってください!」
「あら、それはごめんあそばせ。だって私、婚約者であったのにも関わらず、ニコル様に向けるような愛を向けていただいたことが一度もないんですもの」
せめて。せめてニコルと出会う前に、少しだけの間でもその愛を向けて貰えればベルティーユは我慢できたのだ。喜んで身を引いたし、なんなら本当に悪役令嬢を演じてもよかったとベルティーユは心から言える。だが王太子は、ベルティーユとはあくまでも政略結婚だと割り切っていた。愛を育むつもりなんてなかったのだ。例えヒロインによる魅了魔法にかかっているとしても、もう情状酌量の余地もない。
「ふん!だからといってニコルに嫌がらせを行うなど、公爵令嬢として恥ずかしくないのか!」
「勘違いしないでくださいませ」
ベルティーユの声は冷たい。絶対零度の声に王太子も固まる。
「私は嫌がらせなどただの一度も行っておりませんわ。証言も証拠もありましてよ。ニコル様が事前に王太子殿下に対し私に虐められたと証言された日、私はいつも早くに帰って王城で王太子妃教育を受けていましてよ」
「なっ…な、」
王太子が口を開く前に終わりにすることにしたベルティーユ。
「では、国王陛下。裁定を。」
「っ!?…父上!?」
ベルティーユの王太子に対する告発を受け、別室で待機し今までの様子を投影魔法を使ってみていた国王陛下がパーティー会場に入ってくる。
「バカ息子め!一体何をしておる!」
「わ、私は…っ!私はただ、婚約者として相応しくないベルティーユを断罪し、愛するニコルを婚約者としようと!」
来るはずのなかった、怒り心頭気味の父王にややたじろいだものの、すぐにそう切り返す王太子。
「それがバカだといっておる!簡単に魅了魔法なんぞにかかりおって!大体ベルティーユ嬢以上に王太子妃に相応しいものはいないだろうが!」
父王のあまりの怒りにちょっと冷静になったのか、王太子は魅了魔法、という言葉に反応した。
「魅了魔法?」
「ああ、そうだ!お前はそこな娘を愛してなどいない!」
「ちょっとま…」
ニコルが会話に入ってこようとするが、国王に俺は発言を許していない!と一喝されて黙った。
「神官長!こやつの魅了魔法を解いてやれ!」
「はい!」
そうして王太子にかかっていた魅了魔法は解かれた。王太子の顔色は真っ青になる。
「王太子殿下…」
ニコルが縋るような瞳で王太子を見つめる。しかし王太子は自分の腕に胸を当てるように抱きついているニコルを突き飛ばす。
「きゃっ…」
「貴様っ!よくも私を謀ったな!」
「王太子殿下…!」
「ベルティーユ、すまなかった。迷惑をかけて…」
「いえ、王太子殿下との関係もここまでですもの。最後の置き土産ですわ」
「え?」
呆然とした様子の王太子。いくら推しキャラだったとはいえ、あれだけバカにされて元鞘に戻る者はいないのだ。
「バカ息子が!ここまで迷惑をかけたのだ、ベルティーユ嬢とお前の婚約は解消だ!そしてお前は廃嫡だ!第二王子を王太子とし、ベルティーユ嬢の婚約者とする!」
「なん…で」
「自分の胸に手を当てて考えよ!」
「ベルティーユ!」
「私はここで失礼しますわ。それでは皆様、ご機嫌よう」
最後に綺麗にカーテシーを決め、学園を後にするベルティーユ。ニコルが急に暴れ出したが知らない振りをした。
…ニコルが狙っていたのは王太子ルート後の隠しキャラルートだ。ベルティーユはいつもフラグを折って王太子ルート一直線だったが、王太子ルートの最後の選択肢に王城で第二王子に会えるルートがあるのだ。
隠しキャラの第二王子アンセルムは王太子と正反対。王太子が天才系溺愛王子なら、アンセルムは努力型俺様王子だ。第二王子でありながら、その立場に甘んじずに、ひたすら努力を積み重ねて父や兄の背中を追いかける。そのため自分にも他人にも厳しく、プライドが高い俺様キャラ。
ベルティーユにとってはあまり好みではないのだが、本当は優しくて一途なちょっと不器用なタイプである。ベルティーユも将来の義弟として接したことは何度かあるが、好みでないだけで苦手なタイプではない。ベルティーユの嫁ぎ先としては悪くないはずである。あとは愛を育むことが出来れば完璧だ。
「ベルティーユ!今日も可愛いな、愛しているぞ!」
「ベルティーユ!俺だけのものになってくれ!」
「ベルティーユ!他の男を見るなとは言わないが、俺のことももっと見てくれ!」
実はベルティーユを密かに想っていたアンセルム。押しが強い愛情表現でガンガン攻めてくる。
ちなみに、ニコルへの処罰は内乱罪で打ち首のち晒し首となった。魅了魔法の乱用は元から刑罰が厳しいが、なによりもアンセルムがベルティーユを傷つけたニコルを許さず厳しい処罰を求めたのだ。
ここまで愛されるとそれはそれで悪い気はしないベルティーユである。
「アンセルム殿下、私もアンセルム殿下を愛しております」
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