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前編
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これは小さな頃の大切な思い出。
「ねえ、大きくなったら俺と結婚してくれる?」
「うん、いいよ!」
そんな幼い約束が、私にとっては宝物だった。
いつか彼と結婚して、大きな庭付きの家で子供もたくさんいて…なんてませた夢まで持って。
でも、幼馴染の彼は約束を果たす前に居なくなってしまった。
当時は理解していなかったが、両親を突然亡くした彼は遠縁の親戚に引き取られたらしかった。
会えなくなれば、浮かされるような幼い熱は、執着は、解けていく。
「元気にしているかな…」
時たま思い出す程度の、でも大切な思い出となった彼。
せめてどこかで幸せであって欲しい、なんて思う程度には幸せをくれた人だから。
また、いつか何かの形で会えればいいな。…なんて。
「何考えてるの?」
「昔引っ越していった幼馴染のこと」
「アリスの初恋の人?…妬けるな。今は目の前にいる恋人のことに集中してよ」
「ふふ、もう。…ルーク、大好きだよ」
「僕も」
彼のことが大好きだった頃の私にはきっと信じられないだろうけれど、今は彼より大切な人が出来た私。もう五年も付き合っている恋人のルークは、とても私を大切にしてくれる。
私は付き合って五年目の今、ルークとの結婚を考えている。
「…家、ついちゃったね」
「まだ離れたくないな」
「僕も。…また明日ね」
「うん、またね」
今日もルークとのしばしの別れを惜しみつつ、家まで送ってくれた彼の背中を見送った。
ルークの背中が見えなくなって、さあ家に戻ろうと玄関に向かったら声をかけられた。
「アリス、久しぶり」
聞き慣れない声に誰だろうと振り返ると、随分と大人になった懐かしい顔。
「…え、もしかしてグレイ?」
「…!気付いてくれたんだ。随分と久しぶりなのに」
「うん!久しぶりだね!」
「ふふ、本当に久しぶり。アリスは可愛くなったね」
「えへへ。グレイはかっこよくなったね!」
思わぬ再会に嬉しくなる。大人になってから故郷を離れてこの地に来て、一人暮らしをしている私。だから、この再会は完全に偶然だろうけど。
「会えて嬉しいよ!」
「俺もだよ」
「せっかくだし、家に上がっていく?紅茶淹れるよ!」
「じゃあ、お邪魔します」
懐かしい幼馴染との再会を喜ぶ私は、グレイを部屋に上げた。
紅茶とお茶菓子を出した私に、グレイはどこかソワソワして落ち着かない様子。
どうしたんだろうと思うと、グレイは言った。
「そろそろ、幼い日の約束を果たそうか」
「え?」
「俺と結婚してくれる?」
グレイの言葉に固まる。でも、さすがに冗談だろうと笑って流すことにした。
「あはは。そんな約束もしたよね。でも私今付き合って五年目の彼氏がいるんだ。だから無理かな!」
「…は?」
私の言葉に反応したグレイの表情を見て、プロポーズが冗談ではないことを悟った。
「…なんで?なんで待っててくれなかったの?」
「いや、えっと」
「寂しい思いをさせた俺が一番悪いとは思うけど、浮気は酷くない?」
「浮気ってそんな」
「俺がいるのに彼氏を作ったんだから浮気だろ」
グレイの冷たい目に、心臓が凍りつきそう。
「…でもまあ、いいや。許してあげる。寂しい思いをさせたのは、俺だもんな。…で、俺と結婚してくれるよね?俺が迎えに来たんだから、その男とはもう別れるよな?」
…怖い。なんでそんな、昔の約束だったはずなのに。
「…チッ。わかった。じゃあ、お前が誰のものか身体で分からせてやるよ」
「え、なに…っ」
「大人しくして?大丈夫、痛くないよ」
彼に魔法で拘束された。私は治癒魔法しか使えないヒーラーだから、魔法の拘束から抜け出す術はない。
「や、やめてっ」
「大丈夫、マッサージするだけだから」
「マッサージ…?」
「ねえ、大きくなったら俺と結婚してくれる?」
「うん、いいよ!」
そんな幼い約束が、私にとっては宝物だった。
いつか彼と結婚して、大きな庭付きの家で子供もたくさんいて…なんてませた夢まで持って。
でも、幼馴染の彼は約束を果たす前に居なくなってしまった。
当時は理解していなかったが、両親を突然亡くした彼は遠縁の親戚に引き取られたらしかった。
会えなくなれば、浮かされるような幼い熱は、執着は、解けていく。
「元気にしているかな…」
時たま思い出す程度の、でも大切な思い出となった彼。
せめてどこかで幸せであって欲しい、なんて思う程度には幸せをくれた人だから。
また、いつか何かの形で会えればいいな。…なんて。
「何考えてるの?」
「昔引っ越していった幼馴染のこと」
「アリスの初恋の人?…妬けるな。今は目の前にいる恋人のことに集中してよ」
「ふふ、もう。…ルーク、大好きだよ」
「僕も」
彼のことが大好きだった頃の私にはきっと信じられないだろうけれど、今は彼より大切な人が出来た私。もう五年も付き合っている恋人のルークは、とても私を大切にしてくれる。
私は付き合って五年目の今、ルークとの結婚を考えている。
「…家、ついちゃったね」
「まだ離れたくないな」
「僕も。…また明日ね」
「うん、またね」
今日もルークとのしばしの別れを惜しみつつ、家まで送ってくれた彼の背中を見送った。
ルークの背中が見えなくなって、さあ家に戻ろうと玄関に向かったら声をかけられた。
「アリス、久しぶり」
聞き慣れない声に誰だろうと振り返ると、随分と大人になった懐かしい顔。
「…え、もしかしてグレイ?」
「…!気付いてくれたんだ。随分と久しぶりなのに」
「うん!久しぶりだね!」
「ふふ、本当に久しぶり。アリスは可愛くなったね」
「えへへ。グレイはかっこよくなったね!」
思わぬ再会に嬉しくなる。大人になってから故郷を離れてこの地に来て、一人暮らしをしている私。だから、この再会は完全に偶然だろうけど。
「会えて嬉しいよ!」
「俺もだよ」
「せっかくだし、家に上がっていく?紅茶淹れるよ!」
「じゃあ、お邪魔します」
懐かしい幼馴染との再会を喜ぶ私は、グレイを部屋に上げた。
紅茶とお茶菓子を出した私に、グレイはどこかソワソワして落ち着かない様子。
どうしたんだろうと思うと、グレイは言った。
「そろそろ、幼い日の約束を果たそうか」
「え?」
「俺と結婚してくれる?」
グレイの言葉に固まる。でも、さすがに冗談だろうと笑って流すことにした。
「あはは。そんな約束もしたよね。でも私今付き合って五年目の彼氏がいるんだ。だから無理かな!」
「…は?」
私の言葉に反応したグレイの表情を見て、プロポーズが冗談ではないことを悟った。
「…なんで?なんで待っててくれなかったの?」
「いや、えっと」
「寂しい思いをさせた俺が一番悪いとは思うけど、浮気は酷くない?」
「浮気ってそんな」
「俺がいるのに彼氏を作ったんだから浮気だろ」
グレイの冷たい目に、心臓が凍りつきそう。
「…でもまあ、いいや。許してあげる。寂しい思いをさせたのは、俺だもんな。…で、俺と結婚してくれるよね?俺が迎えに来たんだから、その男とはもう別れるよな?」
…怖い。なんでそんな、昔の約束だったはずなのに。
「…チッ。わかった。じゃあ、お前が誰のものか身体で分からせてやるよ」
「え、なに…っ」
「大人しくして?大丈夫、痛くないよ」
彼に魔法で拘束された。私は治癒魔法しか使えないヒーラーだから、魔法の拘束から抜け出す術はない。
「や、やめてっ」
「大丈夫、マッサージするだけだから」
「マッサージ…?」
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