ショタジジイ猊下は先祖返りのハーフエルフ〜超年の差婚、強制されました〜

下菊みこと

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教会に相談に行く

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「ということでお兄様。出家していいですか?」

兄と兄嫁にことのあらましを説明した。兄は少し寂しそうな顔をする。

「神官になるなら、気軽には会えないかな」

「手紙を書きます」

「それはもちろん。…許される限り、会いに行ってもいいか?」

「はい、お兄様」

兄嫁は、もはや涙目だ。

「イザベルちゃんともう気軽にショッピングに行けないなんて…」

「すみません、お義姉様」

「でも、イザベルちゃんは光魔法も使えて星辰語の翻訳も出来るものね…教会にとっては喉から手が出るほど欲しい存在よね…」

しょぼんとした兄嫁に少し申し訳ないと思ってしまう。だが、兄はそんな兄嫁を抱き寄せて言った。

「君には俺がいるだろう」

「あなた…!」

私、一応傷心中なんだけど。…なんだかんだでラブラブな二人に、癒されている自分もいるけど。

「じゃあ、そういうことでとりあえず今日教会に出家の相談に行っていいですか?」

「…わかった。いいよ」

「私のポケットマネー、全額教会につぎ込んでもいいですか?」

「好きにしていい」

ということで、私はリリーと共に馬車で教会に向かった。
















教会の前には、馬車が一つ。先客がいるらしい。

「あの、私達も中に入って大丈夫…でしょうか」

一応、教会でなにやら神官と険悪そうにしている先客に確認をとる。険悪そうというか、神官が責められていた。神官に楯突くくらいだから、お偉いさんかもしれない。なので教会なんだからいいも悪いもないと思うけど…そんなお偉いさんとの話が立て込んでいる時にお邪魔するほど急ぎの用でもないし。

「なんだお前」

すると、神官を責め立てていたお偉いさん…長い銀髪を伸ばしっぱなしにしていて紫の瞳の、神秘的な容姿の少年が私を睨んできた。

「その、出家したくてご相談にきたんですけど」

「はっ!お前のような小娘に神官が務まるか!」

バカにしてきた少年。不機嫌を隠そうともしない彼に、ちょっとだけカチンときた。大人気ないけど。

「私は光魔法も使えますし、星辰語の翻訳もできます。バカにされる覚えはないです」

「…ほう?なら見せてもらおうか」

「はい?」

少年は自分の腕を突然、懐から取り出した短刀で切りつけた。それもすごく深く、大きく。並みの光魔法では治しきれないほどに。

「え?は?なにしてるんですか!」

「ほら、光魔法が使えるんだろう?治してみろ」

「…あーもう!」

私は光魔法を展開する。魔力を注ぎ込めば、その傷は塞がった。少年の着ていた白い服に染み付いた血も、ついでに浄化する。

少年は目を丸くして驚き、私に話しかけてきた。

「お前、こんな技術どこで身につけた!どこの神学校出身だ!?」

「ジェムゥ神学校出身です」

「専攻は!?」

「星辰語です」

「よし、じゃあこの星辰語を翻訳してみろ!」

少年は興奮した様子で私に星辰語で書かれた古い資料を渡してくる。その場で翻訳して音読してやれば、彼の目はさらに輝いた。

「やるじゃないか!お前、もしかしてベルとかいう星辰語の翻訳家じゃないか!?」

あ、身バレした。

「…ええっと」

「こんな教会で出家などもったいない!俺の元に来い!」

「俺の元に?」

この少年は何者なんだろう。やけに自信満々だし、神官も逆らえないみたいだけど。

「失礼。お嬢様、我が主人が絡んでしまってすみません」

「あ、いえいえ」

少年の護衛だろう人が話しかけてくる。

「我が主人は、とある高貴な…」

「もったいぶるな!全部話して良い!」

「…我が主人は、皇帝陛下の大叔父である聖王猊下です」

「…え?」

「聖王猊下です」

頭が一瞬真っ白になる。キラキラした目で私を見つめてくるのは、どうやら聖王猊下らしい。

「…え?」

やっぱり理解が追いつかない。

「聖王猊下は今日はお忍びで教会の視察に来ておりまして。」

…ふむ。

「聞いたことはあると思いますが、聖王猊下は皇族にも珍しい先祖返りのハーフエルフで、齢七十五歳の御老体です」

御老体と言われて体はまだ若いと言って護衛を蹴る少年。

「ハーフエルフのため寿命が長く、身体の成長が遅くまだ少年に見えますがお爺ちゃんです」

さらに護衛を蹴る少年。

「…まさか、本物ですか?」

「はい」

リリーと私はその場に這い蹲る。しかし少年は、私の頭を上げさせる。

「いい。そんな畏まるな」

「は、はい」

「ほら、立て」

「はい」

私とリリーは立ち上がる。すると聖王猊下は言った。

「お前を俺の妻兼星辰語翻訳の弟子にしてやる!」

「…はぃ?」

「結婚しろ!そして俺の元で働け!」

「…?」

やっぱり理解が追いつかない。

「妻にしてやると言っているんだ」

「な、なんでですか?」

「気に入ったからだ!」

…どうしよう、これ。
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