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出家を考える
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引きこもりを卒業して、部屋から出るようになった私。兄や兄嫁と過ごす時間がなによりもの慰めとなり、まだ赤ちゃんの可愛い甥っ子にも元気をもらった。
なので、そろそろちゃんと身の振り方を考えようと思う。
「ねえ、リリー」
「はい、お嬢様」
考えに考えて、侍女のリリーに相談することにした。相談という名の愚痴になりそうだけど。
「私って、伯爵家のお荷物よね」
「…はい?」
「せっかくの、辺境伯家との縁談を…」
「お嬢様」
リリーに肩をガシッと掴まれる。
「それ、旦那様や奥様の前で言っちゃダメですよ。烈火のごとく怒られますよ」
「でも…」
「旦那様や奥様にとって、お嬢様は宝です。お二人とも人が良いですし、なによりお嬢様は可愛らしい方ですから」
「ありがとう、でも」
「言っておきますけどお世辞じゃないですからね。見た目は…正直良くも悪くもない平凡な方ですが、中身は誰より愛らしいのがお嬢様です。身内贔屓を差し引いても、お嬢様は可愛らしい方です」
…褒められてる?貶されてる?
「あの浮気野郎は見る目がない。こんなに可憐なお嬢様を捨てるなんて、馬鹿野郎です」
「そ、そうかな」
「そうですとも。リリーはまったく理解できません。あんな見た目と実家の爵位だけの、倫理観ゼロのクソ女よりお嬢様の方が一億倍素敵な女性だというのに」
怒りに燃えるリリーを見て、なんだかわからないけれど笑いがこみ上げてきた。
「ふふっ…あははははは!そうかも。ありがとう、リリー。リリーが代わりに怒ってくれたから、なんだか元気出たかも」
「それはようございました。それはそれとしてリリーはあの浮気野郎とクソ女を呪っておきます」
「ふふ。ダメよ、リリー。そんなことしちゃリリーの手が汚れるわ」
「お嬢様…」
「決めたわ、リリー。私、教会で出家する」
私の言葉に、目が点になるリリー。
「は?え?お嬢様?…出家?お嬢様が?」
「うん」
「な、なななななな…」
リリーはまたもガシッと私の肩を掴んだ。
「何言ってるんですか、お嬢様!お嬢様は素敵な女性です!絶対いい人が見つかります!幸せな結婚をして、子供達に囲まれて、幸せな人生を歩んで、リリーはそんなお嬢様のずっとおそばに…それがリリーの夢なのに…」
リリーは私の乳母の娘で、小さな頃からずっと一緒にいた。だから、私を一番に考えてくれる。そんなリリーだから、私はずっと甘えてきたのだ。そして今もまた、甘えてる。
「ごめんね、リリー。でも私、やっぱり幸せな結婚とかもう考えられないよ」
「お嬢様…」
「それより、教会で神官になって多くの人を助けたい。私には光魔法があるから、傷や病気もある程度は治せる。星辰語の翻訳も出来るし」
星辰語とは、私達の住む皇国ができる遥か昔に存在したとされる国の言語。かなり貴重な魔法の資料なんかも残っていて、その翻訳は国に対する大きな貢献となる。
私は星辰語の翻訳を趣味にしている。国の役に立つ魔法の専門書はちょっと面白くないのでパスしてるけど、星辰語で書かれた遥か昔の御伽噺や小説なんかを訳してこんなのあったよーって発表したりはしている。
結構それで収入を得て、それを半分貯金して半分孤児院に寄付したりもしている。だから、そんな私が出家したいといえば神官として受け入れてもらえる状況ではある。
「いつか大神官になって、あの二人を見返してやるの!…ダメかな」
「…ダメではないです。お嬢様の人生ですから」
「ありがとう、リリー」
「その代わり、リリーも連れて行ってください!」
「え」
リリーが私の両手を包み込むように握る。
「リリーも共に、出家します。お供させてください」
「リリー…うん、ありがとう」
「ずっと一緒です、お嬢様」
「うん、ずっと一緒だよ」
こうして私達は、教会で神官になることを決めた。
なので、そろそろちゃんと身の振り方を考えようと思う。
「ねえ、リリー」
「はい、お嬢様」
考えに考えて、侍女のリリーに相談することにした。相談という名の愚痴になりそうだけど。
「私って、伯爵家のお荷物よね」
「…はい?」
「せっかくの、辺境伯家との縁談を…」
「お嬢様」
リリーに肩をガシッと掴まれる。
「それ、旦那様や奥様の前で言っちゃダメですよ。烈火のごとく怒られますよ」
「でも…」
「旦那様や奥様にとって、お嬢様は宝です。お二人とも人が良いですし、なによりお嬢様は可愛らしい方ですから」
「ありがとう、でも」
「言っておきますけどお世辞じゃないですからね。見た目は…正直良くも悪くもない平凡な方ですが、中身は誰より愛らしいのがお嬢様です。身内贔屓を差し引いても、お嬢様は可愛らしい方です」
…褒められてる?貶されてる?
「あの浮気野郎は見る目がない。こんなに可憐なお嬢様を捨てるなんて、馬鹿野郎です」
「そ、そうかな」
「そうですとも。リリーはまったく理解できません。あんな見た目と実家の爵位だけの、倫理観ゼロのクソ女よりお嬢様の方が一億倍素敵な女性だというのに」
怒りに燃えるリリーを見て、なんだかわからないけれど笑いがこみ上げてきた。
「ふふっ…あははははは!そうかも。ありがとう、リリー。リリーが代わりに怒ってくれたから、なんだか元気出たかも」
「それはようございました。それはそれとしてリリーはあの浮気野郎とクソ女を呪っておきます」
「ふふ。ダメよ、リリー。そんなことしちゃリリーの手が汚れるわ」
「お嬢様…」
「決めたわ、リリー。私、教会で出家する」
私の言葉に、目が点になるリリー。
「は?え?お嬢様?…出家?お嬢様が?」
「うん」
「な、なななななな…」
リリーはまたもガシッと私の肩を掴んだ。
「何言ってるんですか、お嬢様!お嬢様は素敵な女性です!絶対いい人が見つかります!幸せな結婚をして、子供達に囲まれて、幸せな人生を歩んで、リリーはそんなお嬢様のずっとおそばに…それがリリーの夢なのに…」
リリーは私の乳母の娘で、小さな頃からずっと一緒にいた。だから、私を一番に考えてくれる。そんなリリーだから、私はずっと甘えてきたのだ。そして今もまた、甘えてる。
「ごめんね、リリー。でも私、やっぱり幸せな結婚とかもう考えられないよ」
「お嬢様…」
「それより、教会で神官になって多くの人を助けたい。私には光魔法があるから、傷や病気もある程度は治せる。星辰語の翻訳も出来るし」
星辰語とは、私達の住む皇国ができる遥か昔に存在したとされる国の言語。かなり貴重な魔法の資料なんかも残っていて、その翻訳は国に対する大きな貢献となる。
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「…ダメではないです。お嬢様の人生ですから」
「ありがとう、リリー」
「その代わり、リリーも連れて行ってください!」
「え」
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「リリーも共に、出家します。お供させてください」
「リリー…うん、ありがとう」
「ずっと一緒です、お嬢様」
「うん、ずっと一緒だよ」
こうして私達は、教会で神官になることを決めた。
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