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結婚式
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時はあっという間に過ぎて結婚式当日。大聖堂に多くの貴族が集められた。
私が浮気されて捨てられたのを笑っていた人達もいる。浮気して私を捨てた当人もいる。その浮気相手だった人もいる。そんな中で上手く出来るだろうかと緊張してしまう。
でも。
「イザベル!ああ、やっぱり可愛いな」
大人姿の聖王猊下が目の前にいて、優しく微笑んでくれるだけでやっぱりドキドキしてしまって、緊張なんか吹っ飛んだ。
「綺麗だ。この世の誰より美しい」
「えへへ。褒め過ぎですよ、聖王猊下」
「本音だ」
聖王猊下は、私の両手を包むように握り込む。
「もう結婚の書類も提出したし、俺たちはこれから夫婦だ。聖王猊下、ではなく名前で呼んでくれ」
「…ユルリッシュ様?」
「イザベル、可愛い」
そっと頬に口付けされた。
「さあ、行こうか。我が妻の美しい姿を、価値もわからないアホどもの目に焼き付けてやろう」
…浮気されて、捨てられて。幸せな結婚なんて諦めていたのに。
私、今、こんなに満たされてる。
目の前の人へのときめきだけが胸にあって、不安なんて少しもなくて。
そしてユルリッシュ様が先に会場に入り、私もお兄様に連れられてバージンロードを歩く。
ユルリッシュ様しか目に入らなくて、ユルリッシュ様も私しか見てなくて。
「ユルリッシュ様…」
「イザベル。俺が世界一幸せにするから。指輪をはめてもいいか?」
「…はい!今私、もう世界一幸せですっ…!」
「…本当に可愛い」
まだ誓いのキスには早いのに、私の額にキスをするユルリッシュ様。そして指輪をお互いにつけて、誓いのキスを交わした。
すると万雷の拍手が送られて、やっと私は周りに目がいった。
しまった、幸せに浸り過ぎた。
笑顔を見せつつ拍手をくれる人達の顔を見ると、色んな感情が見てとれた。本当に心から祝福してくれる人もいる。羨ましそうに見てくる人も、嫉妬からか憎憎しげな目を向けてくる人もいる。
私が浮気されて捨てられた時に嘲笑っていたご令嬢方に目をやれば、悔しそうな顔や気まずそうな顔。それはそうだろう。見下してた相手が聖王猊下の妻になってしまったのだから。ちょっとだけ、ざまぁみろと思った。
「イザベル」
そっと私だけに聞こえる声で話しかけてくるユルリッシュ様。
「なんですか?」
こちらもこそっと小さな声で返す。
「あっち」
ユルリッシュ様の目線の先を追うと、私の元婚約者とその元浮気相手。
…ものすごぉーく、悔しそうな顔をしていた。絵に描いたような嫉妬と後悔剥き出しの顔。見た瞬間笑ってしまいそうになりぐっと堪える。
「ゆ、ユルリッシュ様、笑ってしまいますから!」
「笑ってやれ笑ってやれ。惨めだなぁ、本当に」
「ぐっ…」
「感動し過ぎたふりか?イザベル。猫被りも上手だな、可愛い」
吹き出してしまったのを感動で泣いたフリで誤魔化す。誤魔化してるのにユルリッシュ様が私にだけ聞こえる声でからかってくるから大変だ。
…本当は、声に出して言いたい。
ざまぁみろ!!!
さすがに直接は言えないけど、本気ですっきりした。
その後は、大聖堂内の別の部屋に移動して披露宴に移る。結婚式の厳かな雰囲気と違い、和やかなムードで祝福される。
「おめでとうございます」
「ありがとうございます」
みんな口々に祝福してくれる。心からの祝福も、羨ましそうな祝福も、嫉妬に塗れた祝福すらも心地いい。
けれどやっぱり、私を嘲笑っていた人達の悔しそうな、あるいは気まずそうな祝福は格別だった。リリーは私を心が綺麗だと言ってくれたけど、これで気分が良くなる私も大概だと思う。ごめんね、リリー。リリーならむしろ一緒に笑ってくれる気もするけど。
「…イザベル」
「…」
ただ。
やっぱり、元婚約者を目の前にするとちょっと身体が強張った。
でも。
「おっと、俺の愛おしい妻を勝手に呼び捨てにしないでもらおうか」
ユルリッシュ様は、そんな私を察して守ってくださる。大人姿のユルリッシュ様はとてもかっこよくて、頼り甲斐があって、そして私の気持ちを上向きにしてくれるのだ。
「…っ!も、申し訳ありません、聖王猊下。…ご結婚、おめでとうございます」
「ああ、ありがとう。お前がこの素晴らしい女性に〝捨てられてくれた〟おかげで、俺はこんなにも幸せだ」
捨てられたのは私の方。でも、ユルリッシュ様がそう言ったら誤解する人もいるだろう。ユルリッシュ様も意地悪だ。そこも好きなんて、私もやっぱり大概だ。
「イザベルは凄いんだぞ?光魔法をそれはもう素晴らしく使いこなすし、星辰語の翻訳の腕も相当だ。俺はプロポーズを受けてもらえなければ、聖女として認定してもいいと思ったくらいの実力者だ」
大きな声で私を自慢するユルリッシュ様。その言葉に他の人達はざわざわと騒ぎ始めた。すごいとか、それで結婚したのかとか。
「ああ、勘違いしてくれるなよ?それだけで結婚するんじゃない。みてくれ、我が妻は美しいだろう。見た目に違わず心も綺麗だ。羨ましいだろう?」
たしかに、お美しいのは間違いない、そんな聞いてるこっちが恥ずかしい声も聞こえてきた。やめて、ユルリッシュ様は元婚約者を虐めたいだけだから。みんなは真に受けなくていいから。
あと普通に光魔法と星辰語の翻訳能力だけを買われた結婚だから!!!
顔が赤くなるのを感じつつ、ユルリッシュ様の方を見ていたのを元婚約者に視線を移す。すると奴は、聖王猊下の目の前だと言うのに顔を歪めて歯軋りしていた。うわぁ、私こんな奴に惚れてたのか。見る目ないわ。
「ま、そういうわけで、俺は妻を愛しているからお前はもう妻に近寄るなよ。しっしっ」
あ、とうとう扱いが雑になった。
そういえば奴ばっかり見ていて隣に立つ奴の婚約者…元浮気相手のご尊顔見てなかったなぁとちらりと見れば、鬼の形相。怖い。美人の怖い顔って普通の倍怖いよね。やだやだ。
でも、それだけ悔しいんだなぁと思うと、やっぱりこれを言いたくなる。
ざまぁみろ!!!
今日何回ざまぁみろと思ったかな。だがスカッとした。よし。
その後は問題も起こらず、穏やかに時間が過ぎた。無事披露宴も終了して、私はほっと息を吐いた。
私が浮気されて捨てられたのを笑っていた人達もいる。浮気して私を捨てた当人もいる。その浮気相手だった人もいる。そんな中で上手く出来るだろうかと緊張してしまう。
でも。
「イザベル!ああ、やっぱり可愛いな」
大人姿の聖王猊下が目の前にいて、優しく微笑んでくれるだけでやっぱりドキドキしてしまって、緊張なんか吹っ飛んだ。
「綺麗だ。この世の誰より美しい」
「えへへ。褒め過ぎですよ、聖王猊下」
「本音だ」
聖王猊下は、私の両手を包むように握り込む。
「もう結婚の書類も提出したし、俺たちはこれから夫婦だ。聖王猊下、ではなく名前で呼んでくれ」
「…ユルリッシュ様?」
「イザベル、可愛い」
そっと頬に口付けされた。
「さあ、行こうか。我が妻の美しい姿を、価値もわからないアホどもの目に焼き付けてやろう」
…浮気されて、捨てられて。幸せな結婚なんて諦めていたのに。
私、今、こんなに満たされてる。
目の前の人へのときめきだけが胸にあって、不安なんて少しもなくて。
そしてユルリッシュ様が先に会場に入り、私もお兄様に連れられてバージンロードを歩く。
ユルリッシュ様しか目に入らなくて、ユルリッシュ様も私しか見てなくて。
「ユルリッシュ様…」
「イザベル。俺が世界一幸せにするから。指輪をはめてもいいか?」
「…はい!今私、もう世界一幸せですっ…!」
「…本当に可愛い」
まだ誓いのキスには早いのに、私の額にキスをするユルリッシュ様。そして指輪をお互いにつけて、誓いのキスを交わした。
すると万雷の拍手が送られて、やっと私は周りに目がいった。
しまった、幸せに浸り過ぎた。
笑顔を見せつつ拍手をくれる人達の顔を見ると、色んな感情が見てとれた。本当に心から祝福してくれる人もいる。羨ましそうに見てくる人も、嫉妬からか憎憎しげな目を向けてくる人もいる。
私が浮気されて捨てられた時に嘲笑っていたご令嬢方に目をやれば、悔しそうな顔や気まずそうな顔。それはそうだろう。見下してた相手が聖王猊下の妻になってしまったのだから。ちょっとだけ、ざまぁみろと思った。
「イザベル」
そっと私だけに聞こえる声で話しかけてくるユルリッシュ様。
「なんですか?」
こちらもこそっと小さな声で返す。
「あっち」
ユルリッシュ様の目線の先を追うと、私の元婚約者とその元浮気相手。
…ものすごぉーく、悔しそうな顔をしていた。絵に描いたような嫉妬と後悔剥き出しの顔。見た瞬間笑ってしまいそうになりぐっと堪える。
「ゆ、ユルリッシュ様、笑ってしまいますから!」
「笑ってやれ笑ってやれ。惨めだなぁ、本当に」
「ぐっ…」
「感動し過ぎたふりか?イザベル。猫被りも上手だな、可愛い」
吹き出してしまったのを感動で泣いたフリで誤魔化す。誤魔化してるのにユルリッシュ様が私にだけ聞こえる声でからかってくるから大変だ。
…本当は、声に出して言いたい。
ざまぁみろ!!!
さすがに直接は言えないけど、本気ですっきりした。
その後は、大聖堂内の別の部屋に移動して披露宴に移る。結婚式の厳かな雰囲気と違い、和やかなムードで祝福される。
「おめでとうございます」
「ありがとうございます」
みんな口々に祝福してくれる。心からの祝福も、羨ましそうな祝福も、嫉妬に塗れた祝福すらも心地いい。
けれどやっぱり、私を嘲笑っていた人達の悔しそうな、あるいは気まずそうな祝福は格別だった。リリーは私を心が綺麗だと言ってくれたけど、これで気分が良くなる私も大概だと思う。ごめんね、リリー。リリーならむしろ一緒に笑ってくれる気もするけど。
「…イザベル」
「…」
ただ。
やっぱり、元婚約者を目の前にするとちょっと身体が強張った。
でも。
「おっと、俺の愛おしい妻を勝手に呼び捨てにしないでもらおうか」
ユルリッシュ様は、そんな私を察して守ってくださる。大人姿のユルリッシュ様はとてもかっこよくて、頼り甲斐があって、そして私の気持ちを上向きにしてくれるのだ。
「…っ!も、申し訳ありません、聖王猊下。…ご結婚、おめでとうございます」
「ああ、ありがとう。お前がこの素晴らしい女性に〝捨てられてくれた〟おかげで、俺はこんなにも幸せだ」
捨てられたのは私の方。でも、ユルリッシュ様がそう言ったら誤解する人もいるだろう。ユルリッシュ様も意地悪だ。そこも好きなんて、私もやっぱり大概だ。
「イザベルは凄いんだぞ?光魔法をそれはもう素晴らしく使いこなすし、星辰語の翻訳の腕も相当だ。俺はプロポーズを受けてもらえなければ、聖女として認定してもいいと思ったくらいの実力者だ」
大きな声で私を自慢するユルリッシュ様。その言葉に他の人達はざわざわと騒ぎ始めた。すごいとか、それで結婚したのかとか。
「ああ、勘違いしてくれるなよ?それだけで結婚するんじゃない。みてくれ、我が妻は美しいだろう。見た目に違わず心も綺麗だ。羨ましいだろう?」
たしかに、お美しいのは間違いない、そんな聞いてるこっちが恥ずかしい声も聞こえてきた。やめて、ユルリッシュ様は元婚約者を虐めたいだけだから。みんなは真に受けなくていいから。
あと普通に光魔法と星辰語の翻訳能力だけを買われた結婚だから!!!
顔が赤くなるのを感じつつ、ユルリッシュ様の方を見ていたのを元婚約者に視線を移す。すると奴は、聖王猊下の目の前だと言うのに顔を歪めて歯軋りしていた。うわぁ、私こんな奴に惚れてたのか。見る目ないわ。
「ま、そういうわけで、俺は妻を愛しているからお前はもう妻に近寄るなよ。しっしっ」
あ、とうとう扱いが雑になった。
そういえば奴ばっかり見ていて隣に立つ奴の婚約者…元浮気相手のご尊顔見てなかったなぁとちらりと見れば、鬼の形相。怖い。美人の怖い顔って普通の倍怖いよね。やだやだ。
でも、それだけ悔しいんだなぁと思うと、やっぱりこれを言いたくなる。
ざまぁみろ!!!
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