ショタジジイ猊下は先祖返りのハーフエルフ〜超年の差婚、強制されました〜

下菊みこと

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良き伴侶を得た

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結婚式と披露宴が無事終わり、遅めの夕食を食べてお風呂で身を清める。ゆっくりと休んだ後、先に夫婦の寝室でイザベルを待つ。

まだ夫婦の時間を楽しみたいので、子供を作るのは先送りする。そのため、子供姿に戻った。魔力を操作し続けるのも大変なので、やっぱりこの姿が楽だ。

そしてイザベルが可愛らしいネグリジェ姿で寝室にきた。

「イザベル!待ってたぞ!」

「お待たせしました、ユルリッシュ様」

イザベルの可愛らしいネグリジェ姿を堪能しつつ、返事を返す。

「うむ。しかし、今日は良い式を挙げられたな」

「そうですね、その…」

「どうした?」

「ゆ、ユルリッシュ様がかっこよくて…今日は一日中ドキドキしてしまいました」

なんて可愛いんだろう。我が妻は最高の伴侶だ。

「そうだろう?俺もイザベルが可愛すぎてとても幸せな時間だった」

「えへへ…褒めても何も出ませんよ?」

出ないなら奪うまで。柔らかな唇を不意打ちで堪能させてもらうことにした。

「んっ…」

「…ふふ、何も出ないならこっちから奪いに行けばいい」

顔が真っ赤なイザベル。初心で可愛らしい。

「も、もう!ユルリッシュ様ったら!」

「はは、まあ安心しろ。俺としてはしばらくイザベルとの夫婦の時間を大切にするつもりだ。子供はもうちょっと夫婦の親睦を深めてから考えようと思う。いきなり襲ったりはしないから、そう警戒するな」

あんまり警戒されたら悲しいからな。

「ただまあ、いつかはそういう夫婦の触れ合いも…な?」

さらに真っ赤になるイザベルに、これ以上いじめると可哀想かと話題を変える。

「それはそうと、結婚式と披露宴での奴らの顔は傑作だったなぁ?」

「まあ、そうですね」

「あの悔しそうな、後悔や嫉妬に塗れた顔!…イザベル、少しはすっきりしたか?」

まあ、まだ完全に吹っ切れたとは言えないだろうが。…少しでも前向きになれていればいいのだが。

「えっと…すっきりスカッとはしました。正直ざまぁみろと思ったというか」

「ははは!そうだろうな!俺もざまぁみろと思ったよ」

「けど…その…」

「…うん。まだ、引っかかりがあるんだろう?」

「え」

心の傷なんて、そう簡単に癒えるもんじゃない。

「裏切られた苦しみは、痛みは、そう簡単には消えない。それでも少しでも楽になったならいいんだが」

「は、はい。それは…楽になりました」

「そうか。でも、あんまり無理はするなよ。辛かったら俺に言え。お前の心も、俺が守ってやる」

我が愛しき伴侶。夫婦となったからには、慈しみ守る。まあ、この結婚の最初の目的である仕事に関しては頑張ってもらうがな。

「まあ、ともかく。話は変わるが明日からイザベルには色々と頑張ってもらおうと思っているから、よろしくな」

「あ、は、はい!頑張ります!」

「なに、隣には俺がいるから緊張する必要はない。何かあればフォローしてやるし、イザベルはただ自分の力を発揮してくれるだけでいい」

まあ、光魔法と星辰語の翻訳ならばイザベルには余裕だろうが。

「イザベル。今日はよく頑張ったな。偉いぞ」

「ユルリッシュ様…」

「明日は早い。今はゆっくりとお休み」

イザベルの頭を撫でれば、結婚式と披露宴での疲れもあったのかイザベルはスッと眠りについた。















「んん…」

「起きたか?おはよう、イザベル」

「おはようございます、ユルリッシュ様…ふぁ」

「ふふ、まだ眠いか?」

「んー、少しだけ」

眠り姫は、まだ睡魔に勝てないらしい。ならば。

「眠り姫には、王子様のキスが必要だな」

「…?」

チュッと軽いリップノイズ。柔らかな感触を堪能したかったが、イザベルは割とすぐ目を開けた。

「わわわわわわ!ユルリッシュ様ったら!」

「ほら、目が覚めただろう?」

「もう!」

「ははは!」

どうもイザベルは子供姿の俺にはときめくことが少ないらしいので、積極的にドキドキさせてやろうと思う。

「さあ、朝の支度をしてしまおう」

「はい、ユルリッシュ様」

サクッと身支度を済ませる。朝ごはんも一緒に食べて、あとは仕事に向かうだけ。

「さて、じゃあ平民達に我が妻のお披露目と行こうか」

「私は何をすればいいでしょうか」

「俺の仕事の大体の流れはわかるか?」

「午前中は平民達への施し、午後は星辰語の翻訳です」

「その通りだ。イザベルにはこれから、その両方を手伝ってもらう」

「…頑張ります!」

まあつまり、光魔法で平民達に治癒を施して、星辰語の翻訳をするということだ。イザベルなら出来るだろう。治癒を施すのは魔力が大量に必要なので、ヘトヘトになるまで疲れるだろうが。

「じゃあ、早速まずは平民達への施しから始めようか」

「はい!」

イザベルを連れて、大聖堂に集まった平民の前に出る。

「皆に告ぐ!私は良き伴侶を得た!妻にならなければ聖女にしてもいいくらいの実力者だ!今日から妻にもお前たちの治癒を手伝ってもらうことになっている!異論はないな?」

まあ、みんなそんなに関心はないだろうと思っていた。治癒さえ受けられれば文句はないだろうと。

でも、帰ってきたのは温かな祝福の言葉だった。

「ご結婚おめでとうございます!聖王猊下、聖妃様!」

「おめでとうございます!」

「聖王猊下万歳!聖妃様万歳!」

「治癒をよろしくお願いします!」

意外と、みんな俺にも興味あったんだな。びっくりした。

そこで、イザベルがちらりと俺を見てくる。頷いてやれば、イザベルは大聖堂内の広範囲に一気に光魔法を発動する。傷や病の症状が目に見えている人達は、それが治ったのがわかる。見えない怪我や病気の人も、表情が明るくなったので大丈夫だろう。

「聖妃様万歳!」

「ありがとうございます!」

「こんなに一気に治るなんて!」

…どうやら、イザベルは俺が思うより優秀らしい。

「ほら、いつまでもここに残っていたら他の患者が入れないだろう。交代しろ」

「はい、聖王猊下!ありがとうございました!」

みんな口々にお礼を言って、大聖堂を出て行く。入れ替わるようにまた患者達が入ってきた。

「…ユルリッシュ様」

「なんだ?」

「数が多いと思うのですが」

「気付いたか?」

そういうところは、察しがいいんだな。

「お布施してない人もこっそりいますか?」

「お金がない平民達やスラムの棄民達もこっそり受け入れている。こっそり、な。まあ、ちゃんとお布施を払ってる平民達も文句はあるだろうが黙認してくれているし大丈夫だろう」

暗黙の了解というやつだ。

「ただし、いずれも平民向けの治癒術師の手に余る症状の者に限るがな。治癒術師の仕事を奪っては、意味がない」

「そうですね」

その辺はきっちりと線引きがある。

「俺とイザベルで、交代で光魔法を使っていこう。…出来るよな?」

「お任せください」

「我が妻は頼もしい限りだ」

ということで、午前中はずっと光魔法を使い続けた。イザベルは終わる頃には魔力切れでヘトヘト。俺も大分魔力を使ったので少し疲れた。ハーフエルフの俺は魔力が多いからまだマシだけど、イザベルは本当に頑張ったと思う。

「よく頑張ったな、イザベル」

「えへへ。ありがとうございます、ユルリッシュ様」

「少し休んでから、星辰語の翻訳を始めようか」

「はい!」

ということで、午後。お昼ご飯を食べつつ労いあって、少し休憩にお昼寝を挟むことになった。
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