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決闘してスッキリした
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「クソガキ。そんなに吠えるなら当然、俺から決闘を申し込めば受け入れるんだろうな」
「は?」
「お前の妄言で貶された妻の名誉の回復のため、これより正式にお前との決闘を申し込む」
「えっ」
「もちろん受けるよなぁ?」
クソガキに決闘を申し込めば、クソガキも怒りで狂っているのか後に引けないのか頷いた。
「も、もちろんだ!」
「俺が勝てば、お前は聖妃への名誉の毀損で牢に入ってもらう」
「えっ」
「お前が勝てば、妻が受け取った慰謝料は返還させよう。それと、お前の願いを一つ叶えてやる。…破格の条件、だな?」
別に、そんなことをしなくても聖妃への名誉毀損が成立する今、こいつを牢にぶち込むのは容易い。
けれど、この手でボコボコにしてやらないと怒りでどうにかなりそうだった。
だから決闘という名のリンチを科す。
「そ、それなら、剣で勝負だ!実戦殺法有りにしろ!」
「いいだろう」
「それも、今ここで勝負をしろ!後日、条件を変えられたらたまったもんじゃない!」
「…ふん。望むところだ」
「ゆ、ユルリッシュ様っ」
可愛い、愛おしい妻が俺を呼ぶ。振り返れば不安そうな顔。そんな顔も可愛いな。でも、お前には笑顔の方が似合うよ。
「大丈夫だ、イザベル。必ず勝って、お前の名誉を守るよ」
「そんなことどうでもいいです!どうか、怪我はしないでください。ノエル様は、剣はお強いのです!」
ああ、そういえば辺境伯家の人間だったな。それならば剣も多少は出来るか。…俺に勝てるとは、思えないが。
「わかった。必ず無事に戻るよ。約束する。」
「…はい」
「愛してる。絶対勝つから」
「…はい!」
大聖堂内での決闘は流石にご法度なので、外に出て大聖堂の庭で勝負する。夜風が冷たい。見守ってくれているイザベルが風邪を引かなければいいんだが。
「おい、そこの新米」
「は、はい!」
「新米とはいえ、神官だろう。神に誓って、公正な見届け人となれ」
「御意!」
「剣を持て」
クソガキは、元よりそのつもりだったのかなんなのか剣は持っていたので、それを構えさせる。俺は魔法で自分の宝物庫からとっておきの剣を取り出す。…無銘だがとても良い剣だ。決闘用に刃を潰してしまっているのがもったいないくらいだ。手に入れた時にはもう刃は潰されてたんだよなぁ。その前に手に入れたかった。
「では…始め!」
見届け人の掛け声。クソガキが、一瞬で距離を詰めてきて剣を振り下ろす。
「ユルリッシュ様ぁっ!!!」
イザベルの悲痛な叫びが響く。しかし俺は、クソガキの一撃を愛刀で受け止めた。
「なっ…僕の剣を受け止めたっ!?」
「…ふむ。なかなか重い一撃だな。食らっていたら大怪我じゃ済まないな」
「こ、この…!」
「おっと、剣ばかりに気を取られてはダメだぞ?実戦殺法有りの決闘なんだから」
「は?…がっ!?」
剣をなおも押し込んでくるクソガキ。それを受け止めつつ、腹に思いっきり蹴りを入れてやる。いや、これ身体のバランスをとったりとか色々危ないんだけどな。でもおかげでクリティカルヒットだ。もろに食らってくれた。
「ほら、剣での決闘なんだろう?剣を落とすな、まだ終わりじゃないぞ」
「うぐっ」
「まだ蹴りを一発入れただけだろう。呻くな、剣を拾えよ。戦え」
煽って無理矢理立たせる。俺の蹴りを食らってまだ闘志が目に宿ってるあたり、根性はあるらしい。それを別の方向に発揮してればなぁ。
「今度は俺から行くぞ」
フラフラなクソガキと距離を詰めて、剣を振り下ろす。クソガキの持つ剣と違い、こっちは刃はちゃんと潰してある。まあ、死ぬことはないだろう。
「うがぁっ!」
とはいえ、肩にモロに食らったら痛いけどな。
「ほら、また剣を落としたぞ。拾え。逃げるな」
クソガキはこれで利き手は使えない。新米の神官はそろそろ止めた方がいいかと不安そうで、でも高位の神官に今止めたら俺の逆鱗に触れると止められている。正しい。まだ俺の怒りは治ってない。
「…これは、我が妻を泣かせた分だ」
クソガキの身体を剣で突く。刃は潰してあるから貫通はしないが、痛いだろう。
「ぐはっ!」
「これは、妻の名誉を毀損した分」
もう一発蹴りを腹にかます。今度は吐瀉物を吐いた。汚いな。
「これは、俺を不快にさせた分だ」
最後に一発、思いっきり顔に蹴りを入れた。魔法も剣も嗜んでいるが、やっぱり蹴りが一番得意なんだよな。小さな頃兄弟と取っ組み合いの喧嘩をたまにしていたからか?
「ぐぇぇ…」
完全に伸びたクソガキ。新米の神官がストップをかけた。
「そ、そこまで!勝者は聖王猊下です!」
「知ってる。治安部隊を呼べ、こいつを聖妃への名誉毀損で連行させろ」
「はい!」
「ユルリッシュ様っ!!!」
愛する妻が走ってきた。そして俺に抱きつく。
「よかった…ご無事で本当に、本当に良かった…」
「約束したからな」
「心配したんですからね!?」
涙目の妻も可愛い。見てくれ、これ俺の自慢の妻なんだ。可愛いだろう?
胸の中のイザベルにポカポカ軽く叩かれながら神官たちに自慢げな顔を向けてやれば、うんざりした顔でパチパチ拍手してきた。なんだ、ノリが悪い奴らめ。
そして奴は伸びたままで治安部隊に連行された。起きたら牢の中だ。後悔するだろうなぁ。なかなか奇抜なサプライズだろう?
「もう無茶はしないでくださいね!」
「無茶なんかしてない。余裕だっただろう?」
「…じゃあ、危ないことはしないでください」
「危なげなく勝っただろう?」
「もう!いいから、こんなこともうしないでください!」
ぷんぷんと怒る顔も可愛いな。我が妻は天使か?
「わかったわかった。お前のことが絡まない限りは大人しくしとく」
「私のことが絡んでもダメです!」
「愛おしい妻の名誉がかかっていたら、俺は我慢出来ない」
「…むぅ」
俺の言葉に困った顔のイザベル。やっぱりどんな顔でも俺の妻は可愛い。あのクソガキは、どうしてこんな可愛い子を手放せたんだろうな。
「は?」
「お前の妄言で貶された妻の名誉の回復のため、これより正式にお前との決闘を申し込む」
「えっ」
「もちろん受けるよなぁ?」
クソガキに決闘を申し込めば、クソガキも怒りで狂っているのか後に引けないのか頷いた。
「も、もちろんだ!」
「俺が勝てば、お前は聖妃への名誉の毀損で牢に入ってもらう」
「えっ」
「お前が勝てば、妻が受け取った慰謝料は返還させよう。それと、お前の願いを一つ叶えてやる。…破格の条件、だな?」
別に、そんなことをしなくても聖妃への名誉毀損が成立する今、こいつを牢にぶち込むのは容易い。
けれど、この手でボコボコにしてやらないと怒りでどうにかなりそうだった。
だから決闘という名のリンチを科す。
「そ、それなら、剣で勝負だ!実戦殺法有りにしろ!」
「いいだろう」
「それも、今ここで勝負をしろ!後日、条件を変えられたらたまったもんじゃない!」
「…ふん。望むところだ」
「ゆ、ユルリッシュ様っ」
可愛い、愛おしい妻が俺を呼ぶ。振り返れば不安そうな顔。そんな顔も可愛いな。でも、お前には笑顔の方が似合うよ。
「大丈夫だ、イザベル。必ず勝って、お前の名誉を守るよ」
「そんなことどうでもいいです!どうか、怪我はしないでください。ノエル様は、剣はお強いのです!」
ああ、そういえば辺境伯家の人間だったな。それならば剣も多少は出来るか。…俺に勝てるとは、思えないが。
「わかった。必ず無事に戻るよ。約束する。」
「…はい」
「愛してる。絶対勝つから」
「…はい!」
大聖堂内での決闘は流石にご法度なので、外に出て大聖堂の庭で勝負する。夜風が冷たい。見守ってくれているイザベルが風邪を引かなければいいんだが。
「おい、そこの新米」
「は、はい!」
「新米とはいえ、神官だろう。神に誓って、公正な見届け人となれ」
「御意!」
「剣を持て」
クソガキは、元よりそのつもりだったのかなんなのか剣は持っていたので、それを構えさせる。俺は魔法で自分の宝物庫からとっておきの剣を取り出す。…無銘だがとても良い剣だ。決闘用に刃を潰してしまっているのがもったいないくらいだ。手に入れた時にはもう刃は潰されてたんだよなぁ。その前に手に入れたかった。
「では…始め!」
見届け人の掛け声。クソガキが、一瞬で距離を詰めてきて剣を振り下ろす。
「ユルリッシュ様ぁっ!!!」
イザベルの悲痛な叫びが響く。しかし俺は、クソガキの一撃を愛刀で受け止めた。
「なっ…僕の剣を受け止めたっ!?」
「…ふむ。なかなか重い一撃だな。食らっていたら大怪我じゃ済まないな」
「こ、この…!」
「おっと、剣ばかりに気を取られてはダメだぞ?実戦殺法有りの決闘なんだから」
「は?…がっ!?」
剣をなおも押し込んでくるクソガキ。それを受け止めつつ、腹に思いっきり蹴りを入れてやる。いや、これ身体のバランスをとったりとか色々危ないんだけどな。でもおかげでクリティカルヒットだ。もろに食らってくれた。
「ほら、剣での決闘なんだろう?剣を落とすな、まだ終わりじゃないぞ」
「うぐっ」
「まだ蹴りを一発入れただけだろう。呻くな、剣を拾えよ。戦え」
煽って無理矢理立たせる。俺の蹴りを食らってまだ闘志が目に宿ってるあたり、根性はあるらしい。それを別の方向に発揮してればなぁ。
「今度は俺から行くぞ」
フラフラなクソガキと距離を詰めて、剣を振り下ろす。クソガキの持つ剣と違い、こっちは刃はちゃんと潰してある。まあ、死ぬことはないだろう。
「うがぁっ!」
とはいえ、肩にモロに食らったら痛いけどな。
「ほら、また剣を落としたぞ。拾え。逃げるな」
クソガキはこれで利き手は使えない。新米の神官はそろそろ止めた方がいいかと不安そうで、でも高位の神官に今止めたら俺の逆鱗に触れると止められている。正しい。まだ俺の怒りは治ってない。
「…これは、我が妻を泣かせた分だ」
クソガキの身体を剣で突く。刃は潰してあるから貫通はしないが、痛いだろう。
「ぐはっ!」
「これは、妻の名誉を毀損した分」
もう一発蹴りを腹にかます。今度は吐瀉物を吐いた。汚いな。
「これは、俺を不快にさせた分だ」
最後に一発、思いっきり顔に蹴りを入れた。魔法も剣も嗜んでいるが、やっぱり蹴りが一番得意なんだよな。小さな頃兄弟と取っ組み合いの喧嘩をたまにしていたからか?
「ぐぇぇ…」
完全に伸びたクソガキ。新米の神官がストップをかけた。
「そ、そこまで!勝者は聖王猊下です!」
「知ってる。治安部隊を呼べ、こいつを聖妃への名誉毀損で連行させろ」
「はい!」
「ユルリッシュ様っ!!!」
愛する妻が走ってきた。そして俺に抱きつく。
「よかった…ご無事で本当に、本当に良かった…」
「約束したからな」
「心配したんですからね!?」
涙目の妻も可愛い。見てくれ、これ俺の自慢の妻なんだ。可愛いだろう?
胸の中のイザベルにポカポカ軽く叩かれながら神官たちに自慢げな顔を向けてやれば、うんざりした顔でパチパチ拍手してきた。なんだ、ノリが悪い奴らめ。
そして奴は伸びたままで治安部隊に連行された。起きたら牢の中だ。後悔するだろうなぁ。なかなか奇抜なサプライズだろう?
「もう無茶はしないでくださいね!」
「無茶なんかしてない。余裕だっただろう?」
「…じゃあ、危ないことはしないでください」
「危なげなく勝っただろう?」
「もう!いいから、こんなこともうしないでください!」
ぷんぷんと怒る顔も可愛いな。我が妻は天使か?
「わかったわかった。お前のことが絡まない限りは大人しくしとく」
「私のことが絡んでもダメです!」
「愛おしい妻の名誉がかかっていたら、俺は我慢出来ない」
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