ショタジジイ猊下は先祖返りのハーフエルフ〜超年の差婚、強制されました〜

下菊みこと

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元婚約者の浮気相手だった女性の噂を聞く

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元婚約者であるノエル様が大聖堂に押しかけてきた事件。ユルリッシュ様が決闘を申し込み、みごとノエル様に対して圧勝した。

その後ノエル様は完全に伸びた状態で、治安部隊を呼ばれて聖妃への名誉毀損で連行された。

牢の中で目が覚めたノエル様は、「イザベルと別れてから散々だ」と泣きじゃくっていたらしい。

その後法廷で聖妃への名誉毀損を裁かれたノエル様。なんとか極刑は免れたものの、与えられた罰は相当厳しいものだった。

「あのクソガキの判決、出たな」

「はい、ユルリッシュ様」

「あのガキ自身は奴隷に落とされ、焼印を入れられて鉱山に連行。正式な鉱山の労働者ではなく奴隷として働かされるから、おそらくロクな扱いは受けないだろう」

「そうですね」

ざまぁみろ、だなんて思ってしまう。スッキリした。…けれど、ちょっとだけ可哀想にも思える。だからと言って、許したりしないけれど。

「そしてその実家。聖妃への侮辱は家族にまで責が及ぶ。爵位と領地は皇室へと返上され、平民に落ちた。聖妃たるイザベルへの賠償金もかなりの額を払ったから、お金もかつかつの状態だろう。平民として生きていくには厳しいな」

「あちらは相当生活の質を落とさなければなりませんね」

「子供をきちんと教育しておかないからこうなる。あのガキがイザベルに理不尽を働いた時点で厳しく対処していればよかったんだ」

ユルリッシュ様の言う通り、早めに反省を促すか縁を切っていればよかったのかもしれない。

「一番笑えるのは、あのクソガキの妻…浮気女だな。速攻で離婚して実家に帰ったらしいが、甘やかして増長させてきた実家はなんとあの女を捨てたらしい」

「え」

「なんだ、知らなかったのか?」

「離婚したところまでしか聞いていませんでした」

「そうか」

ユルリッシュ様はニンマリと笑う。

「あの女、実家の侯爵家に相当甘やかされていたらしい。ところが、その侯爵家は自分たちに責が及ぶと困るからと夫と離婚して帰ってきたあの女を拒否したらしい。あの女は荷物を持って、受け入れてくれない実家の前で呆然としていたそうだ 」

「それはお気の毒ですね…」

「でも、スカッとする話だろ?」

「…はい、ざまぁみろと思ってしまいました」

「いいじゃないか。イザベルを貶めたからこうなったんだ。自業自得だ。ざまぁみろくらい言ったっていい」

ユルリッシュはそう言うと、私の頭を撫でてくれる。

「よく頑張ったな、イザベル。お前の聖妃としての評判は、毎日の治癒と翻訳で上々。一方でお前を貶めた奴らは自滅して落ちぶれた。全ては、お前が腐ったりせず真面目に聖妃として生きてきたからこそだ。お前は偉い。よく頑張ったな」

「ユルリッシュ様…」

頭を撫でてくれる優しい手つき、頑張ったと褒めてくれる優しい声。その全てに、涙が溢れてくる。

「ぅ…ううっ…うわぁーん!」

ユルリッシュ様に抱きついて泣いてしまう。でもこれは、悲しい涙じゃなくて安堵の涙。ようやく、ようやくノエル様に捨てられた過去の私が報われた気がして。

「よしよし。よく頑張ったな、よく頑張った。偉いぞ、イザベル」

ユルリッシュ様は胸を貸してくれる。そして尚も私を褒めて、頭を撫でてくれる。優しい温度に、さらに心が安らいだ。

涙が止まる頃には、少し泣き疲れてしまった。そんな私の涙でぐちゃぐちゃな顔を見て、ユルリッシュ様は笑った。

「はは、我が妻はどんな表情でも可愛らしいな」

「からかわないでください」

「いや、間違いなく本心だ。可愛いよ、イザベル」

すかさずそばで控えていたリリーが、水で濡らして絞ったタオルを渡してくれる。顔を拭けばさっぱりした。

「ああ、なんだか色々とスッキリしました」

「それは良かった」

リリーはタオルを下げると、お茶を淹れてくれる。泣いて枯れていた喉が潤って、さらにスッキリ。

ようやく、ようやくちゃんと心の整理がついた気がした。なのでユルリッシュ様に本音を言おうと思う。
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